【完全版】ギリシャ神話と星座一覧|48星座の由来と神話を徹底解説

神話・歴史・伝承

夜空に輝く星座を見上げたとき、「オリオン座」「ペルセウス座」「アンドロメダ座」という名前を聞いたことはありませんか?

これらの名前は、すべて古代ギリシャ神話に登場する英雄や神々、怪物たちから取られています。

星座の歴史はとても古く、約5000年前のメソポタミア文明にまでさかのぼります。
その後、古代ギリシャ人たちが神話と結びつけて整理し、2世紀には天文学者プトレマイオスが48の星座をまとめ上げました。

「でも、どの星座にどんな神話があるの?」「星座と神話の関係がよくわからない」という方も多いでしょう。

この記事では、ギリシャ神話に由来する星座を一覧形式で紹介し、それぞれの神話エピソードをわかりやすく解説していきます。


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星座とギリシャ神話の関係って?

星座の起源

星座の始まりは、約5000年前のメソポタミア地方(現在のイラク周辺)だとされています。

当時の人々は、夜空の星々を線で結んで動物や人の形を描き、季節や方角を知るために使っていました。
農業や航海において、星の位置を把握することは生活に直結する重要な知識だったんです。

なぜギリシャ神話と結びついたの?

紀元前5世紀ごろ、地中海を行き来するフェニキア人によって星座がギリシャに伝わりました。

ギリシャ人たちは星座を単なる目印ではなく、神々や英雄たちの物語を語り継ぐ手段として活用しました。
夜空に浮かぶ星座は、いわば「天空に描かれた神話の絵本」だったわけです。

プトレマイオスの48星座

2世紀、エジプトのアレクサンドリアで活躍した天文学者クラウディオス・プトレマイオスは、著書『アルマゲスト』で48の星座をまとめました。

この48星座が、現代の88星座の基礎となっています。
プトレマイオスの星座の多くにはギリシャ神話の物語が結びついており、古代の人々の想像力と宇宙への畏敬の念が感じられます。


黄道十二星座とギリシャ神話

黄道十二星座とは、太陽の通り道である「黄道」上に位置する12の星座のこと。
占いでおなじみの「12星座」は、まさにこれを指しています。

メソポタミア時代から重要視されてきたこれらの星座には、ゼウスをはじめとする神々の物語が深く関わっています。

おひつじ座(牡羊座、Aries)

項目内容
学名Aries(アリエス)
主な星ハマル(α星、2等星)
見頃12月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

おひつじ座のモデルは、金色の毛皮を持つ空飛ぶ羊です。

ボイオティア王アタマースの子どもである兄プリクソスと妹ヘレーは、継母イーノーの陰謀で生贄にされそうになりました。
それを知った実母(雲の精霊ネペレー)は、大神ゼウスに助けを求めます。

ゼウスは金色の毛皮を持つ羊を遣わし、兄妹は羊の背中に乗って逃げ出しました。
しかし妹ヘレーは飛行中に海へ落ちてしまい、兄だけがコルキス国にたどり着きます。

プリクソスは羊をゼウスへの感謝として生贄に捧げ、その金の毛皮は国の宝として守られました。
この「金羊毛」を求める冒険が、有名なアルゴー号の冒険(アルゴナウタイ)の物語へとつながっていきます。

おうし座(牡牛座、Taurus)

項目内容
学名Taurus(タウラス)
主な星アルデバラン(α星、1等星)
見頃1月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

おうし座は、ゼウスが変身した白い牡牛の姿です。

フェニキアの王女エウローペーの美しさに心を奪われたゼウスは、嫉妬深い妻ヘラに見つからないよう白い牡牛に姿を変えました。

優しく美しい牡牛に心を許したエウローペーが背中に乗ると、牡牛は突然海を渡り始めます。
こうしてエウローペーはクレタ島へ連れ去られ、ゼウスとの間に3人の息子をもうけました。

ちなみに、エウローペーが海を渡った西方の地域は、彼女の名にちなんで「ヨーロッパ(Europa)」と呼ばれるようになったと伝えられています。

また、おうし座にはプレアデス星団(すばる)ヒアデス星団という2つの有名な星の集まりがあります。
プレアデス星団は、巨人アトラスの7人の娘たち「プレイアデス」が星になったものとされています。

ふたご座(双子座、Gemini)

項目内容
学名Gemini(ジェミニ)
主な星ポルックス(β星、1等星)、カストル(α星、2等星)
見頃2月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

ふたご座は、仲の良い双子の兄弟カストルとポルックスの姿です。

スパルタの王妃レダに惹かれたゼウスは、白鳥の姿に変身して近づきました。
レダは双子を産みますが、兄カストルは人間の父王の血を引く普通の人間、弟ポルックスはゼウスの血を引く不死の半神でした。

双子は武術に秀で、とても仲が良かったのですが、ある戦いで兄カストルが命を落としてしまいます。
不死であるポルックスは、兄と離れることを拒み、自らの不死を半分だけ兄に分け与えることを父ゼウスに願い出ました。

こうして二人は天上界と冥界を交互に行き来するようになり、やがてともに天へ昇って双子座となったのです。

かに座(蟹座、Cancer)

項目内容
学名Cancer(キャンサー)
主な星プレセペ星団(M44)
見頃3月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

かに座は、英雄ヘラクレスに踏み潰された蟹の姿です。

ゼウスと人間の女性アルクメーネーの間に生まれたヘラクレスは、ゼウスの正妻ヘラから激しく憎まれていました。

ヘラクレスが十二の試練の1つとして九つの頭を持つ怪物ヒュドラと戦っているとき、ヘラはヒュドラを助けるために巨大な蟹を差し向けました。
蟹は果敢にヘラクレスの足を挟もうとしますが、戦いに集中していた英雄はあっさり蟹を踏み潰してしまいます。

ヘラはその健気さを哀れみ、蟹を天に上げて星座にしたと伝えられています。

しし座(獅子座、Leo)

項目内容
学名Leo(レオ)
主な星レグルス(α星、1等星)
見頃4月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

しし座は、ネメアの谷に住む不死身のライオンの姿です。

このライオンは普通の武器では傷つけることができませんでした。
ヘラクレスの十二の試練の最初の課題が、このネメアの獅子の退治だったんです。

ヘラクレスは弓矢も棍棒も効かないことを知ると、素手でライオンの首を絞めて倒しました。
そしてライオンの皮をはいで鎧として身にまとうようになります。

倒されたライオンは天に上げられ、しし座として永遠に輝くことになりました。

おとめ座(乙女座、Virgo)

項目内容
学名Virgo(バルゴ)
主な星スピカ(α星、1等星)
見頃6月上旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

おとめ座には複数の説がありますが、最も有名なのは豊穣の女神デメテル、またはその娘ペルセポネの姿だという説です。

デメテルの娘ペルセポネは、冥界の王ハデスにさらわれてしまいます。
娘を失ったデメテルは深く悲しみ、大地は不毛になってしまいました。

ゼウスの仲介により、ペルセポネは1年の半分を地上で、残り半分を冥界で過ごすことになります。
ペルセポネが冥界にいる間(秋から冬)は大地が枯れ、地上に戻る間(春から夏)は豊かに実る──これが季節の変化の由来とされています。

おとめ座の1等星スピカは、ラテン語で「麦の穂」という意味があり、豊穣の女神が手に持つ穂を表しています。

てんびん座(天秤座、Libra)

項目内容
学名Libra(ライブラ)
主な星ズベンエルゲヌビ(α星、3等星)
見頃7月上旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

てんびん座は、正義の女神アストライアーが持っていた天秤です。

アストライアーは人間の善悪を天秤で裁いていました。
天秤は正しい者が上に、悪い者が下に傾く仕組みだったと言われています。

彼女は神々が人間に愛想を尽かして次々と天界へ帰っていく中、最後まで地上に残って人々に正義を説き続けました。
しかし、争いを止めない人間たちについに諦めをつけ、天界へと帰っていきます。

このとき彼女の持っていた天秤が、てんびん座になったとされています。
アストライアー自身は隣のおとめ座と同一視されることもあります。

もともとこの星座は、さそり座のハサミの部分だったという説もあり、黄道十二星座の中では比較的新しく成立した星座だと考えられています。

さそり座(蠍座、Scorpius)

項目内容
学名Scorpius(スコルピウス)
主な星アンタレス(α星、1等星)
見頃7月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

さそり座は、狩人オリオンを刺し殺した巨大なサソリです。

オリオンは「この世に自分に倒せない獣などいない」と豪語していました。
その傲慢さに怒った大地の女神ガイア(あるいは女神ヘラ)は、猛毒を持つ大サソリを遣わします。

サソリは忍び寄ってオリオンのかかとを刺し、その猛毒で英雄を死に至らしめました。

このエピソードから、さそり座とオリオン座は決して同時に夜空に現れないという特徴があります。
さそり座が東の空に昇るとき、オリオン座は西に沈んでいく──まるでオリオンが今でもサソリから逃げているかのようです。

いて座(射手座、Sagittarius)

項目内容
学名Sagittarius(サジタリウス)
主な星カウス・アウストラリス(ε星、2等星)
見頃8月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

いて座は、弓を引くケンタウロス(半人半馬)の賢者ケイローンの姿です。

ケイローンは音楽、医術、狩猟、予言などあらゆる分野に通じた賢人で、ギリシャ神話に登場する多くの英雄たち──ヘラクレス、アキレウス、イアソンなどを教育しました。

ある日、ヘラクレスがケンタウロス族と戦っていたとき、誤って放った毒矢がケイローンの膝に刺さってしまいます。
ケイローンは不死身でしたが、猛毒による苦しみは永遠に続くことになります。

彼は苦しみから逃れるため、自らの不死を巨人プロメテウスに譲り、死を選びました。
その死を悼んだゼウスは、ケイローンの姿を天に上げていて座としたのです。

やぎ座(山羊座、Capricornus)

項目内容
学名Capricornus(カプリコーヌス)
主な星デネブ・アルゲディ(δ星、3等星)
見頃9月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

やぎ座は、上半身がヤギ、下半身が魚という奇妙な姿をしています。

神々がナイル川のほとりで宴会を開いていたとき、突然怪物テュポーンが襲ってきました。
慌てた神々は動物の姿に変身して逃げ出します。

牧神パーン(パン)はヤギに変身してナイル川に飛び込みましたが、慌てていたため下半身だけが魚になってしまいました。
この滑稽な姿を見た神々は面白がり、パーンをやぎ座として天に上げたと言われています。

また別の説では、幼いゼウスを育てた山羊のアマルテイアの姿だともされています。

みずがめ座(水瓶座、Aquarius)

項目内容
学名Aquarius(アクエリアス)
主な星サダルメリク(α星、3等星)
見頃10月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

みずがめ座は、美少年ガニュメデスの姿です。

トロイアの王子ガニュメデスは、人間の中で最も美しい少年でした。
その美しさに魅了されたゼウスは、大鷲に変身して(または鷲を遣わして)ガニュメデスをオリュンポス山へ連れ去りました。

ガニュメデスは神々の宴会で酒を注ぐ役目を任され、永遠の若さを与えられます。
息子と離れ離れになった父王を慰めるため、ゼウスはガニュメデスの姿をみずがめ座として夜空に映し出したのです。

うお座(魚座、Pisces)

項目内容
学名Pisces(ピスケス)
主な星アルレシャ(α星、4等星)
見頃11月下旬(20時頃南中)

ギリシャ神話の由来

うお座は、2匹の魚がリボンで結ばれた姿をしています。

愛と美の女神アフロディーテと、その息子エロス(キューピッド)がユーフラテス川のほとりを歩いていたとき、怪物テュポーンが襲ってきました。

二人は魚の姿に変身して川に飛び込み、はぐれないようにお互いの尾をリボンで結びつけて逃げました。
こうして無事に難を逃れた親子の姿が、うお座として天に上げられたのです。


秋の星座とペルセウス神話群

秋の夜空には、ひとつの神話でつながった星座たちが集まっています。
エチオピア王家の物語と英雄ペルセウスの冒険を描いたこの星座群は、「秋の星座物語」として親しまれています。

アンドロメダ座

項目内容
学名Andromeda
主な星アルフェラッツ(α星、2等星)
見頃11月下旬

ギリシャ神話の由来

アンドロメダ座は、岩に鎖でつながれた王女アンドロメダの姿です。

エチオピア王ケフェウスと王妃カシオペアの娘アンドロメダは、母の発言がきっかけで海の怪物への生贄にされることになってしまいます。

岩につながれたアンドロメダを救ったのは、メドゥーサ退治の帰りだった英雄ペルセウスでした。
二人は結婚し、ペルセウスはのちにギリシャの大英雄ヘラクレスの先祖となります。

カシオペア座

項目内容
学名Cassiopeia
主な星シェダル(α星、2等星)
見頃11月下旬

ギリシャ神話の由来

カシオペア座は、「W」または「M」の形をした王妃カシオペアの姿です。

カシオペアは自分の娘アンドロメダの美しさを自慢し、「海の妖精ネレイデス(ネレイドたち)より美しい」と言い放ちました。
これを聞いた海神ポセイドンは怒り、海の怪物を送ってエチオピアを襲わせます。

アンドロメダが生贄にされそうになったのは、母カシオペアの傲慢さが原因だったのです。

カシオペア座は一年中沈まない星座ですが、これは彼女が天に上げられた後も「椅子に縛り付けられて逆さまに回り続ける罰」を受けているからだと言われています。

ケフェウス座

項目内容
学名Cepheus
主な星アルデラミン(α星、2等星)
見頃10月下旬

ギリシャ神話の由来

ケフェウス座は、エチオピア王ケフェウスの姿です。

妻カシオペアの軽率な発言により国が危機に陥り、愛娘を生贄に差し出さなければならなくなった悲劇の王として描かれています。

ペルセウスに救われた後は、娘の婚礼を喜んで認めました。

ペルセウス座

項目内容
学名Perseus
主な星ミルファク(α星、2等星)、アルゴル(β星)
見頃12月下旬

ギリシャ神話の由来

ペルセウス座は、怪物メドゥーサを退治した英雄ペルセウスの姿です。

ペルセウスはゼウスと人間の王女ダナエとの間に生まれました。
あるとき、継父から「メドゥーサの首を持ってこい」という無理難題を課せられます。

メドゥーサは見る者を石に変えてしまう恐ろしいゴルゴン三姉妹の一人。
ペルセウスは神々から翼のあるサンダル、姿を消す帽子、アダマスの鎌、そして鏡のように磨かれた盾を借り受け、メドゥーサの首を見事に切り落としました。

その帰り道でアンドロメダを救い、彼女と結婚したのです。

ペルセウス座のβ星アルゴルは、ペルセウスが持つメドゥーサの首の位置にあります。
この星は明るさが変化する変光星で、「悪魔の星」という意味の名前がつけられています。

くじら座(ケートゥス)

項目内容
学名Cetus(ケートゥス)
主な星デネブ・カイトス(β星、2等星)、ミラ(ο星)
見頃12月上旬

ギリシャ神話の由来

くじら座は、アンドロメダを襲おうとした海の怪物ケートゥスの姿です。

ポセイドンに遣わされたこの怪物は、エチオピアの海岸を荒らし回りました。
岩につながれたアンドロメダを食べようとしたところ、ペルセウスがメドゥーサの首を使って石に変えてしまいます。

くじら座には有名な変光星ミラがあり、約332日の周期で明るさが大きく変化します。

ペガスス座

項目内容
学名Pegasus
主な星シェアト(β星、2等星)
見頃10月下旬

ギリシャ神話の由来

ペガスス座は、天を駆ける翼のある馬ペガサスの姿です。

ペガサスは、ペルセウスがメドゥーサの首を切り落としたとき、その血から生まれました。
英雄ベレロフォンはこのペガサスに乗って怪物キマイラを退治しましたが、傲慢になってオリュンポス山へ飛ぼうとしたため、ゼウスの怒りを買って落馬してしまいます。

ペガサスだけは許されて天に上げられ、星座となりました。

秋の夜空で大きな四角形(ペガススの大四辺形)を形作っているのが、このペガスス座です。


冬の星座とオリオン神話

冬の夜空で最も目立つのがオリオン座です。
このオリオン座を中心に、狩りに関わる星座たちが集まっています。

オリオン座

項目内容
学名Orion
主な星ベテルギウス(α星、1等星)、リゲル(β星、1等星)
見頃2月上旬

ギリシャ神話の由来

オリオン座は、ギリシャ神話で最も優れた狩人オリオンの姿です。

オリオンは海神ポセイドンの息子で、巨大な体と抜群の狩りの腕を持っていました。
しかし「この世に自分が倒せない獣などいない」と豪語する傲慢な性格でした。

オリオンの死にはいくつかの説があります。

  • 傲慢さに怒ったガイア(またはヘラ)が放った大サソリに刺されて死んだ
  • 月と狩りの女神アルテミスと親しくなったことを快く思わなかった兄アポロンの策略で、アルテミス自身の矢で射られて死んだ
  • アルテミスに恋したが、彼女と恋仲になった暁の女神エオスに嫉妬され殺された

いずれにせよ、オリオンは天に上げられて星座となりました。
冬の夜空で、三つ星を含む堂々とした姿は、多くの人々を魅了し続けています。

面白いことに、オリオン座とさそり座は同時に夜空に現れることがありません
これは、今でもオリオンがサソリを恐れているからだと言われています。

おおいぬ座

項目内容
学名Canis Major
主な星シリウス(α星、-1.5等星、全天で最も明るい恒星)
見頃2月中旬

ギリシャ神話の由来

おおいぬ座は、オリオンが連れていた猟犬の姿です。

一説では、どんな獲物も逃さない足の速い犬ラエラプスだとされています。
ラエラプスはもともとゼウスがエウローペーに贈った犬で、最終的にはテーベの狐テウメッソスを追いかけることになりました。

「決して逃げられない犬」と「決して捕まらない狐」の追いかけっこは永遠に続くことになるため、ゼウスは両者を石に変えて天に上げました。

全天で最も明るい恒星シリウスは、「焼き焦がす者」という意味を持ち、夏に太陽と一緒に昇ることから暑い時期を「dog days(犬の日々)」と呼ぶ由来にもなっています。

こいぬ座

項目内容
学名Canis Minor
主な星プロキオン(α星、1等星)
見頃2月下旬

ギリシャ神話の由来

こいぬ座も、オリオンの猟犬の一匹とされています。

おおいぬ座のシリウスとともに、主人オリオンに付き従って冬の夜空を駆けています。

「プロキオン」という名前は「犬の前に」という意味で、シリウスよりも先に地平線から昇ってくることに由来します。


北天の星座

北の空には、一年を通して見られる有名な星座があります。
北極星を含むこぐま座や、北斗七星で有名なおおぐま座など、古くから航海や方角の目印として重要視されてきました。

おおぐま座

項目内容
学名Ursa Major
主な星北斗七星を構成する7つの星
見頃春(一年中見える)

ギリシャ神話の由来

おおぐま座は、女神アルテミスに仕えていたニンフ(妖精)のカリストの姿です。

森の中で狩りをしていた美しいカリストを、大神ゼウスが見初めました。
ゼウスはアルテミスの姿に化けて近づき、カリストを自分のものにしてしまいます。

カリストはゼウスの子を身ごもりますが、純潔の女神でもあったアルテミスに追放されてしまいました。
さらにゼウスの妻ヘラが激怒し、呪いをかけてカリストを熊の姿に変えてしまいます。

熊となったカリストは森で長い年月を過ごし、やがて成長した息子アルカスと偶然出会います。
母と気づかないアルカスが矢を射ようとしたそのとき、ゼウスが二人を天に上げました。

こうしてカリストはおおぐま座に、息子アルカスはこぐま座になったのです。

熊のしっぽが不自然に長いのは、ゼウスが急いでしっぽをつかんで天に投げ上げたときに伸びてしまったからだと言われています。

こぐま座

項目内容
学名Ursa Minor
主な星ポラリス(α星、北極星)
見頃一年中見える

ギリシャ神話の由来

こぐま座は、カリストの息子アルカスの姿です。

母と引き離されて育ったアルカスは立派な狩人に成長しました。
ある日、森で出会った大きな熊が自分の母親だとは知らず、弓を引こうとしました。

寸前でゼウスが二人を天に上げ、親子は星座として永遠に一緒にいられるようになったのです。

こぐま座のα星ポラリスは現在の北極星で、夜空でほぼ動かないことから航海の目印として古来重要視されてきました。

りゅう座

項目内容
学名Draco
主な星ツバン(α星)、エルタニン(γ星、2等星)
見頃夏(一年中見える)

ギリシャ神話の由来

りゅう座には複数の説がありますが、有名なのは黄金のリンゴを守っていた竜ラードーンの姿です。

ヘスペリデス(西の果てに住む妖精たち)の庭には、黄金のリンゴがなる木がありました。
この木を守っていたのが、決して眠らない百の頭を持つ竜ラードーン。

ヘラクレスの十二の試練の1つが、この黄金のリンゴを持ち帰ることでした。
ヘラクレスは巨人アトラスの助けを借りてリンゴを手に入れ、ラードーンは天に上げられて星座になったと言われています。


英雄ヘラクレスにまつわる星座

ギリシャ神話最大の英雄ヘラクレスは、「十二の試練」と呼ばれる冒険を成し遂げました。
その試練に関わる怪物たちの多くが、星座として夜空に残っています。

ヘルクレス座

項目内容
学名Hercules
主な星コルネフォロス(β星、3等星)、ラス・アルゲティ(α星)
見頃7月下旬

ギリシャ神話の由来

ヘルクレス座は、ギリシャ神話最大の英雄ヘラクレスの姿です。

ゼウスと人間の女性アルクメーネーの子として生まれたヘラクレスは、ゼウスの妻ヘラから激しく憎まれました。
ヘラの呪いで一時的に狂気に陥ったヘラクレスは、自分の子どもたちを殺してしまいます。

正気を取り戻した彼は、その罪を償うためにエウリュステウス王のもとで「十二の試練」をこなすことになりました。

十二の試練には以下のようなものがあります。

  1. ネメアの獅子退治(しし座)
  2. レルネのヒュドラ退治(うみへび座)
  3. ケリュネイアの鹿の捕獲
  4. エリュマントスの猪の捕獲
  5. アウゲイアスの家畜小屋の掃除
  6. ステュムパロスの怪鳥退治
  7. クレタの牡牛の捕獲(おうし座と関連)
  8. ディオメデスの人食い馬の捕獲
  9. アマゾンの女王の帯の入手
  10. ゲリュオンの牛の入手
  11. ヘスペリデスの黄金のリンゴの入手(りゅう座と関連)
  12. 冥界の番犬ケルベロスの捕獲

すべての試練を終えたヘラクレスは、最終的にオリュンポスの神々の一員となりました。

うみへび座

項目内容
学名Hydra
主な星アルファルド(α星、2等星)
見頃4月上旬

ギリシャ神話の由来

うみへび座は、九つの頭を持つ怪物ヒュドラの姿です。

レルネの沼に住むヒュドラは、頭を切り落としても2本に増えるという恐ろしい怪物でした。
さらに中央の頭は不死身だったのです。

ヘラクレスは甥のイオラーオスと協力して、切り口を松明で焼いて再生を防ぎながら頭を切り落としていきました。
不死身の頭は巨大な岩の下に封じ込め、ついにヒュドラを倒すことに成功します。

ヘラクレスはヒュドラの猛毒を矢に塗り、後の冒険で使用しました。
(この毒矢が、のちにケイローンに当たってしまう悲劇を生みます)

うみへび座は全天で最も長い星座で、約100度にわたって空を横切っています。

ケンタウルス座

項目内容
学名Centaurus
主な星リギル・ケンタウルス(α星、-0.1等星)、ハダル(β星)
見頃5月(日本からは南の低い位置にしか見えない)

ギリシャ神話の由来

ケンタウルス座は、半人半馬のケンタウロス族の姿です。

いて座のケイローンとは別に、もう一人のケンタウロスとしてフォロスの姿だという説があります。
フォロスはケンタウロス族の中では穏やかな性格で、ヘラクレスをもてなしましたが、他のケンタウロスたちが酒の香りに引き寄せられて争いになり、フォロスは流れ矢で命を落としました。

ケンタウルス座には太陽に最も近い恒星アルファ・ケンタウリがあり、約4.4光年の距離にあります。


プトレマイオスの48星座一覧

2世紀の天文学者プトレマイオスがまとめた48星座のうち、ギリシャ神話に関連する主な星座を一覧にまとめました。

黄道十二星座

星座名学名ギリシャ神話との関連
おひつじ座Aries金の毛皮を持つ空飛ぶ羊
おうし座Taurusゼウスが変身した白い牡牛
ふたご座Gemini双子の兄弟カストルとポルックス
かに座Cancerヘラクレスに踏み潰された蟹
しし座Leoネメアの不死身のライオン
おとめ座Virgo豊穣の女神デメテル(または娘ペルセポネ)
てんびん座Libra正義の女神アストライアーの天秤
さそり座Scorpiusオリオンを刺し殺した大サソリ
いて座Sagittarius賢者ケイローン
やぎ座Capricornus牧神パーンの変身した姿
みずがめ座Aquarius美少年ガニュメデス
うお座Piscesアフロディーテとエロスの変身した魚

北天の星座

星座名学名ギリシャ神話との関連
おおぐま座Ursa Majorニンフのカリスト
こぐま座Ursa Minorカリストの息子アルカス
りゅう座Draco黄金のリンゴを守る竜ラードーン
ケフェウス座Cepheusエチオピア王ケフェウス
カシオペア座Cassiopeiaエチオピア王妃カシオペア
アンドロメダ座Andromeda王女アンドロメダ
ペルセウス座Perseus英雄ペルセウス
ぎょしゃ座Auriga馬車の発明者エリクトニオス
ヘルクレス座Hercules英雄ヘラクレス
こと座Lyraオルフェウスの竪琴
はくちょう座Cygnusゼウスが変身した白鳥
かんむり座Corona Borealisアリアドネの冠
うしかい座Boötesおおぐま座を追う狩人(諸説あり)
へび座Serpens医神アスクレピオスの蛇
へびつかい座Ophiuchus医神アスクレピオス
や座Sagittaアポロンやヘラクレスの矢
わし座Aquilaゼウスの鷲

南天の星座(プトレマイオス時代から)

星座名学名ギリシャ神話との関連
くじら座Cetus海の怪物ケートゥス
オリオン座Orion狩人オリオン
エリダヌス座Eridanusパエトンが落ちた川
うさぎ座Lepusオリオンが狩る野うさぎ
おおいぬ座Canis Majorオリオンの猟犬
こいぬ座Canis Minorオリオンの猟犬
アルゴ座Argo Navisアルゴー号(現在は分割)
うみへび座Hydraヒュドラ
コップ座Craterアポロンの盃
からす座Corvusアポロンの使者のカラス
ケンタウルス座Centaurusケンタウロス族
おおかみ座Lupusリュカーオン(諸説あり)
みなみのかんむり座Corona Australisバッカスの冠(諸説あり)
みなみのうお座Piscis Austrinusシリアの女神が変身した魚

星座にまつわる雑学

すべての星座にギリシャ神話があるわけではない

現在、国際天文学連合(IAU)が認定している星座は全部で88個です。

このうち、プトレマイオスが古代にまとめた48星座の多くにはギリシャ神話が結びついています。
しかし、残りの40星座は16世紀以降にヨーロッパの天文学者たちが南天の星を観測して作ったもので、ギリシャ神話とは無関係です。

例えば、以下のような星座はギリシャ神話に由来しません。

  • 望遠鏡座(Telescopium)
  • 顕微鏡座(Microscopium)
  • とけい座(Horologium)
  • コンパス座(Circinus)
  • テーブルさん座(Mensa)

これらは科学機器や航海道具にちなんで名付けられています。

オリオン座とさそり座は同時に見えない

オリオン座とさそり座は、夜空で同時に見ることができません

オリオン座が西に沈むころ、さそり座が東から昇ってきます。
まるでオリオンが今でもサソリから逃げているかのようです。

これは神話に合わせて意図的に配置されたわけではなく、偶然にも神話と合致する天文現象なんです。

北斗七星は星座ではない

「北斗七星」という名前は有名ですが、実はこれは星座ではありません

北斗七星は、おおぐま座の一部を構成する7つの明るい星の並び(アステリズム)です。
おおぐま座全体はもっと大きく、熊の体全体を表しています。


まとめ

ギリシャ神話と星座の関係を見てきました。

星座は単なる星の並びではなく、古代の人々が夜空に描いた神々と英雄たちの物語でした。

星座神話のポイント

  • プトレマイオスの48星座の多くにギリシャ神話が結びついている
  • 黄道十二星座はすべてギリシャ神話の物語を持つ
  • 星座は季節を知り、航海の目印にするための実用的な役割もあった
  • 現代の88星座のうち、約半分がギリシャ神話に由来する

今度、夜空を見上げるときは、星座に込められた物語を思い浮かべてみてください。
オリオンが獲物を追う姿、アンドロメダが救いを待つ姿、ペガサスが天を駆ける姿──古代の人々と同じ星を見ながら、数千年前の物語に思いを馳せることができるはずです。

興味を持った星座があれば、プラネタリウムや天体観測会に足を運んでみるのもおすすめです。
実際の夜空で星座を見つけると、神話がもっと身近に感じられるでしょう。

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