AlmaLinuxをインストールしたら、GUIではなくCUI(コマンドラインのみ)で起動したい…
サーバー用途でAlmaLinuxを使う場合、GUIは不要でリソースの無駄遣いです。CUI起動に切り替えれば、メモリ消費を大幅に削減でき、パフォーマンスも向上します。
この記事では、AlmaLinuxをCUI起動する方法、GUIとCUIの切り替え方、トラブルシューティングまで、初心者にも分かりやすく徹底解説します。
CUIとGUIの違い

まず、CUIとGUIの基本的な違いを理解しましょう。
CUI(Character User Interface)とは
すべての操作をキーボードで行う文字ベースのインターフェース
- マウス操作なし
- グラフィカルな要素なし
- 黒い画面に白い文字(ターミナル)
- コマンドを入力して操作
別名:
- コマンドラインインターフェース(CLI)
- テキストモード
- コンソールモード
GUI(Graphical User Interface)とは
マウスで操作できるグラフィカルなインターフェース
- ウィンドウ、アイコン、メニュー
- マウスでクリック操作
- Windowsのような見た目
- AlmaLinuxではGNOMEデスクトップ環境が標準
CUIとGUIの比較
| 項目 | CUI | GUI |
|---|---|---|
| 操作方法 | キーボードのみ | マウス+キーボード |
| メモリ使用量 | 少ない(数百MB) | 多い(1.5GB以上) |
| CPU使用率 | 低い | 高い |
| 起動時間 | 速い | 遅い |
| 学習難易度 | 難しい | 易しい |
| サーバー用途 | 最適 | 不向き |
| デスクトップ用途 | 不向き | 最適 |
| リモート接続 | SSH(軽量) | VNC/RDP(重い) |
なぜサーバーではCUIを使うのか?
理由1:リソース効率
GUIのデスクトップ環境は、メモリを1.5GB以上消費します。サーバー用途では、このリソースをアプリケーション(Webサーバー、データベースなど)に使いたいです。
理由2:セキュリティ
GUIが動作すると、多くのプロセスとサービスが起動します。これらはすべて潜在的な攻撃対象になります。CUIは最小限のプロセスのみで、攻撃面が小さくなります。
理由3:安定性
GUIのクラッシュやフリーズは、サーバーの運用に影響を与えません。CUIは非常に安定しています。
理由4:リモート管理
サーバーはSSHでリモート管理するのが一般的です。SSHはCUIなので、ローカルでもCUIに慣れておいたほうが効率的です。
AlmaLinuxの起動モード(Target)の仕組み
AlmaLinuxは「systemd」というシステムで管理されており、起動モードを「ターゲット(Target)」で制御します。
主なターゲット
multi-user.target(CUIモード)
- ネットワーク機能あり
- マルチユーザー対応
- GUIなし
- サーバー用途に最適
- 旧称:ランレベル3
graphical.target(GUIモード)
- multi-user.targetの機能 + GUI
- GNOMEデスクトップ環境
- デスクトップ用途に最適
- 旧称:ランレベル5
その他のターゲット
- rescue.target:レスキューモード(シングルユーザー、最小限のサービス)
- emergency.target:緊急モード(最小限の環境)
- reboot.target:再起動
- poweroff.target:シャットダウン
現在の起動モードを確認する
まず、現在の設定を確認しましょう。
デフォルトのターゲットを確認
systemctl get-default
出力例:
graphical.target
または
multi-user.target
現在のターゲットを確認
systemctl list-units --type=target
このコマンドで、現在アクティブなすべてのターゲットが表示されます。
GUIからCUIに切り替える方法
「Server with GUI」や「Workstation」でインストールした場合、デフォルトでGUI起動になっています。これをCUI起動に変更します。
方法1:一時的にCUIに切り替え【再起動で元に戻る】
現在のセッションだけCUIに切り替えます。再起動すると元のGUI起動に戻ります。
手順
- ターミナルを開く(GUIの場合)
- 以下のコマンドを実行
sudo systemctl isolate multi-user.target
- すぐにCUIモードに切り替わる
実行後の状態:
- 画面が黒くなり、ログインプロンプトが表示される
- マウスは使えなくなる
- キーボードでログインして操作
元に戻す(CUI→GUIに一時的に戻す):
sudo systemctl isolate graphical.target
方法2:恒久的にCUIをデフォルトにする【推奨】
起動時のデフォルトをCUIに変更します。以降、すべての起動でCUIになります。
手順
sudo systemctl set-default multi-user.target
確認:
systemctl get-default
出力:
multi-user.target
再起動して確認:
sudo reboot
再起動後、CUIのログイン画面になっていればOKです。
GUIをアンインストールするべきか?
アンインストールは不要です。
CUI起動に設定すれば、GUIは起動しません。GUIのパッケージが残っていても、リソースは消費されません(プロセスが起動しないため)。
後でGUIが必要になった場合、すぐに切り替えられるので、パッケージは残しておいたほうが便利です。
CUIからGUIに切り替える方法
最初に「最小限のインストール」でインストールした場合や、CUIに切り替えた後でGUIに戻したい場合の方法です。
パターンA:GUIがインストール済みの場合
すでにGUIパッケージがインストールされている場合(元々「Server with GUI」などでインストールした場合)
一時的にGUIに切り替え:
sudo systemctl isolate graphical.target
恒久的にGUIをデフォルトにする:
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
パターンB:GUIがインストールされていない場合
「最小限のインストール」や「サーバー」でインストールした場合、GUIパッケージ自体がありません。
手順
- GUIパッケージをインストール
sudo dnf groupinstall "Server with GUI" -y
または
sudo dnf groupinstall "Workstation" -y
インストール時間:
- ネットワーク速度にもよりますが、20〜40分程度
- 大量のパッケージ(1000以上)がインストールされる
- デフォルトをGUI起動に変更
sudo systemctl set-default graphical.target
- 再起動
sudo reboot
GUIで起動するか確認:
再起動後、GNOMEデスクトップのログイン画面が表示されればOKです。
X Window SystemとWaylandの違い
AlmaLinuxのGUIには、2つのディスプレイサーバーがあります。
X Window System(X11)
- 伝統的なディスプレイサーバー
- 古い技術だが安定している
- リモートデスクトップに対応
Wayland
- 新しいディスプレイサーバー
- よりモダンで効率的
- セキュリティが高い
- AlmaLinux 9ではデフォルト
どちらを使うかは、ログイン画面で選択できます。
CUI起動後の基本操作

CUIモードでログインした後の基本的な操作方法です。
ログイン
ログインプロンプトが表示される:
AlmaLinux 9.x (emerald)
Kernel 5.14.0-xxx.el9.x86_64 on an x86_64
localhost login: _
ユーザー名を入力してEnter:
localhost login: root
Password: _
パスワードを入力してEnter:
- パスワードは画面に表示されません(セキュリティのため)
- 入力後、Enterを押す
ログイン成功:
[root@localhost ~]# _
ログアウト
exit
または
logout
または Ctrl + D
シャットダウン
sudo shutdown -h now
または
sudo poweroff
再起動
sudo reboot
CUIで一時的にGUIを起動
CUIで起動していても、一時的にGUIを起動できます。
sudo systemctl start gdm
または(GNOMEがインストールされている場合)
startx
注意:
startxコマンドは、SSH接続時には使えません。物理コンソールまたは仮想マシンのコンソールからのみ実行できます。
トラブルシューティング
CUI/GUI切り替えでよくある問題と解決法です。
問題1:GUIに切り替えたのに、CUIのまま
原因1:GUIパッケージがインストールされていない
確認方法:
dnf group list --installed | grep -i gui
何も表示されない場合、GUIがインストールされていません。
解決法:
sudo dnf groupinstall "Server with GUI" -y
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
原因2:デフォルトターゲットが変更されていない
確認方法:
systemctl get-default
multi-user.targetと表示される場合、まだCUI設定です。
解決法:
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
問題2:CUIに切り替えたのに、GUIのまま
原因:デフォルトターゲットが変更されていない
確認方法:
systemctl get-default
解決法:
sudo systemctl set-default multi-user.target
sudo reboot
問題3:systemctl コマンドで「Permission denied」エラー
エラーメッセージ:
Failed to execute operation: Access denied
原因:管理者権限がない
解決法:
sudoを付けて実行
sudo systemctl set-default multi-user.target
問題4:起動時に黒い画面で止まる
症状:
- 起動後、黒い画面で白いカーソル(アンダースコア)が点滅
- 何も表示されない
原因:GUIの起動に失敗している
解決法:
Ctrl + Alt + F2を押してCUIターミナルに切り替え
そこからログインして以下を実行:
sudo systemctl set-default multi-user.target
sudo reboot
問題5:GUIがすごく遅い・固まる
原因:メモリ不足またはグラフィックドライバの問題
解決法1:CUIに切り替えてリソースを節約
sudo systemctl set-default multi-user.target
sudo reboot
解決法2:メモリを増やす(仮想マシンの場合)
仮想マシンの設定で、メモリを2GB以上(推奨4GB以上)に増やす
問題6:startx コマンドが見つからない
エラーメッセージ:
bash: startx: command not found
原因:X Window Systemがインストールされていない
解決法:
sudo dnf install xorg-x11-xinit -y
問題7:SSH接続時に「Cannot open display」エラー
エラーメッセージ:
Error: Cannot open display: :0
原因:SSH接続時にGUIアプリを起動しようとしている
解決法:
SSH接続時は、X11転送を有効にする必要があります。
ssh -X user@hostname
または、GUIアプリは使わず、CUIコマンドで操作します。
仮想コンソールの切り替え
AlmaLinuxには複数の仮想コンソール(tty)があり、切り替えられます。
仮想コンソールとは?
Linuxには、複数の独立した端末(tty)が用意されています。
- tty1〜tty6:CUIコンソール
- tty7(またはtty2):GUIセッション(GUIモード時)
コンソールの切り替え方法
キーボードショートカット:
Ctrl + Alt + F1:tty1(CUI)Ctrl + Alt + F2:tty2(CUI)Ctrl + Alt + F3:tty3(CUI)- …
Ctrl + Alt + F7:tty7(GUI、GUIモード時)
使用例:
GUIで作業中に、Ctrl + Alt + F2を押すと、CUIコンソールに切り替わります。別のユーザーでログインしたり、トラブル時の診断に便利です。
GUIに戻る:
Ctrl + Alt + F7(またはF1、環境によって異なる)
CUI起動のメリット・デメリット
実際にCUI起動を使うべきか判断するための情報です。
CUI起動のメリット
1. リソース効率が良い
- メモリ使用量:約500MB(GUIは2GB以上)
- CPU使用率:ほぼ0%(GUIは5〜10%)
- 起動時間:20〜30秒(GUIは1〜2分)
2. セキュリティが向上
- 動作するプロセスが少ない
- 攻撃面が小さい
- ログ監視が容易
3. 安定性が高い
- GUIのクラッシュやフリーズがない
- 長時間稼働に向いている
4. リモート管理に適している
- SSHで効率的に管理できる
- ネットワーク帯域を消費しない
5. サーバー用途に最適
- Webサーバー、データベースサーバーなどに最適
- すべてのリソースをサービスに割り当てられる
CUI起動のデメリット
1. 学習曲線が急
- コマンドを覚える必要がある
- Linux初心者には難しい
2. 直感的な操作ができない
- マウスが使えない
- ビジュアル的な確認ができない
3. 一部の作業が不便
- ブラウザが使えない(テキストブラウザはあるが不便)
- 画像や動画の確認ができない
- グラフィカルなツールが使えない
どちらを選ぶべきか?
| 用途 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| Webサーバー | CUI | リソース効率、安定性 |
| データベースサーバー | CUI | リソース効率、セキュリティ |
| ファイルサーバー | CUI | シンプルさ、安定性 |
| 開発環境 | GUI | IDEなどのツールが使いやすい |
| Linux学習 | GUI→CUI | 段階的に慣れる |
| デスクトップOS | GUI | 日常的な作業に便利 |
サーバー用途なら、迷わずCUI起動を選びましょう。
よくある質問
Q: CUI起動に設定すると、もうGUIは使えなくなりますか?
A: いいえ、いつでもGUIに切り替えられます。sudo systemctl isolate graphical.targetで一時的にGUI起動、またはsudo systemctl set-default graphical.targetで恒久的にGUI起動に戻せます。
Q: 仮想マシン(VirtualBox、VMwareなど)でもCUI起動すべきですか?
A: サーバー用途なら、仮想マシンでもCUI起動をおすすめします。ホストOSのリソースを節約できます。ただし、学習目的ならGUIのほうが扱いやすいです。
Q: SSHでリモート接続している場合、CUIとGUIどちらで起動していても関係ないですか?
A: SSH接続自体は、サーバーがCUIでもGUIでも関係ありません。ただし、サーバーをCUI起動にしておくほうが、リソースを節約でき、SSH接続も速くなります。
Q: CUIからWebブラウザは使えますか?
A: テキストブラウザ(lynx、w3m、linksなど)は使えますが、JavaScriptや画像は表示できません。Webブラウジングが必要なら、GUIを使うか、SSHでポートフォワーディングしてローカルブラウザで確認します。
Q: GUIをアンインストールしてディスク容量を節約したいです。
A: sudo dnf groupremove "Server with GUI"で削除できます。ただし、将来GUIが必要になったとき、再インストールに時間がかかります。ディスク容量に余裕があれば、残しておくことをおすすめします。
Q: CUI起動でも、GUIアプリケーション(Firefox、LibreOfficeなど)をインストールできますか?
A: はい、インストールは可能です。ただし、CUI起動では実行できません。実行するには、一時的にGUIに切り替える(sudo systemctl isolate graphical.target)か、SSH X11転送を使用します。
Q: systemdのターゲットと、古いランレベルの対応関係は?
A: 以下の通りです。
- ランレベル0 → poweroff.target
- ランレベル1 → rescue.target
- ランレベル3 → multi-user.target(CUI)
- ランレベル5 → graphical.target(GUI)
- ランレベル6 → reboot.target
Q: CUI起動に設定したら、ログイン画面も表示されなくなりますか?
A: いいえ、CUIのログインプロンプト(テキストベース)は表示されます。ユーザー名とパスワードを入力してログインします。
まとめ
AlmaLinuxのCUI起動について、重要なポイントをまとめます。
CUI起動とGUI起動の選び方
| 目的 | 推奨 |
|---|---|
| サーバー構築 | CUI起動 |
| 開発環境 | GUI起動 |
| Linux学習(初心者) | GUI起動 |
| Linux学習(中級以上) | CUI起動 |
CUI起動に切り替える基本コマンド
# 恒久的に変更(推奨)
sudo systemctl set-default multi-user.target
sudo reboot
# 一時的に変更
sudo systemctl isolate multi-user.target
GUI起動に切り替える基本コマンド
# GUIがインストール済みの場合
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
# GUIがインストールされていない場合
sudo dnf groupinstall "Server with GUI" -y
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
現在の設定を確認
systemctl get-default
トラブル時の対処
- 黒い画面で止まったら:
Ctrl + Alt + F2でCUIコンソールに切り替え - GUIに切り替わらない:GUIパッケージがインストールされているか確認
- CUIに切り替わらない:デフォルトターゲットを確認
CUI起動のメリット
- メモリ使用量が劇的に減る(2GB → 500MB)
- セキュリティが向上
- 起動が速い
- サーバー用途に最適
覚えておくべき仮想コンソール切り替え
Ctrl + Alt + F1〜F6:CUIコンソール(tty1〜tty6)Ctrl + Alt + F7:GUIセッション(GUI起動時)
サーバー管理者へのアドバイス
本番環境のサーバーは、必ずCUI起動に設定しましょう。GUIはリソースの無駄遣いであり、セキュリティリスクも高まります。どうしてもGUIが必要な管理作業は、Cockpit(Web管理コンソール)やSSH X11転送を使いましょう。
初心者へのアドバイス
最初はGUI起動で始めて、徐々にターミナル操作に慣れてから、CUI起動にチャレンジしましょう。いきなりCUIだと挫折しやすいです。GUIのターミナルアプリで十分コマンドの練習ができます。
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