「漫画の神様」と呼ばれる作家がいるのをご存知ですか?
今では当たり前のように読んでいる漫画ですが、実は過去に何度も「革命」が起きています。
ストーリー漫画の誕生、少女漫画の変革、世界への進出——。
一つひとつの革命を起こしたのは、すべて「漫画」でした。
この記事では、漫画の歴史を変えた革命的な名作を一挙に紹介します。
「え、この作品ってそんなにすごかったの?」という発見があるはずです。
漫画史を変えた革命とは
漫画の歴史には、いくつかの大きな転換点があります。
まず1947年、手塚治虫が登場して「ストーリー漫画」という概念が生まれました。
それまでの漫画といえば、風刺画や4コマ漫画が主流。
長編で物語を描くという発想自体が、革命的だったんです。
1970年代には少女漫画に革新が起き、1980年代には日本の漫画が世界へ飛び出していきました。
2000年代以降はデジタル化の波が押し寄せ、漫画の読み方そのものが変わりつつあります。
それぞれの時代に、業界の常識を覆した作品があります。
では、具体的に見ていきましょう。
戦後漫画の原点を作った作品
新宝島(1947年)
作者:手塚治虫・酒井七馬
すべてはここから始まりました。
『新宝島』を読んだ当時の少年たちは「異次元のものに出会った」と語っています。
落語家の立川談志さんもその一人で、小学生のときに受けた衝撃を生涯忘れなかったそうです。
何がそんなに革新的だったのか?
それは「映画のような漫画」を初めて実現したことです。
スピード感のあるコマ運び、アクションで物語を進める手法。
今では当たり前ですが、当時は誰もやっていませんでした。
藤子不二雄、石ノ森章太郎、ちばてつや——。
後に日本漫画界を支える巨匠たちが、こぞって「漫画家を志すきっかけになった」と証言しています。
鉄腕アトム(1952年)
作者:手塚治虫
ロボットが主人公という設定だけでも斬新でしたが、アトムの本当のすごさは別のところにあります。
「心を持つロボット」というテーマです。
感情を持ち、悩み、時に人間と対立するアトム。
子供向けの漫画で、これほど深いテーマを扱った作品は前例がありませんでした。
1963年には日本初の連続テレビアニメとして放送開始。
漫画とアニメのメディアミックスの先駆けにもなりました。
ちなみに、この作品に対抗して生まれたのが横山光輝の『鉄人28号』です。
「アトムに正面からぶつかっても勝てない」と考えた横山は、「人格を持たないロボット」という真逆の発想で勝負しました。
名作同士が刺激し合って、漫画界全体のレベルが上がっていったんですね。
火の鳥(1954年〜)
作者:手塚治虫
手塚治虫のライフワークとして知られる超大作です。
過去から未来まで、壮大な時間軸を行き来しながら「生命とは何か」を問い続けます。
哲学的なテーマを漫画で描くという挑戦は、当時としては異例中の異例でした。
掲載誌を変えながら、手塚が亡くなる直前まで描き続けられました。
残念ながら未完に終わりましたが、それでも漫画史に残る傑作として語り継がれています。
少女漫画に革命を起こした作品
リボンの騎士(1953年)
作者:手塚治虫
「少女漫画にストーリー漫画を持ち込んだ」という点で、革命的な作品です。
主人公サファイアは、男として育てられた王女。
男装の麗人という設定は、後の多くの作品に影響を与えました。
宝塚歌劇の影響を受けた華やかな絵柄と、少年漫画にも負けないアクション。
この作品がなければ、少女漫画の歴史は全く違うものになっていたでしょう。
ベルサイユのばら(1972年)
作者:池田理代子
少女漫画史上、最も影響力のある作品と言っても過言ではありません。
フランス革命を舞台に、男装の麗人オスカルとマリー・アントワネットの運命を描いた歴史ロマン。
「少女漫画に歴史ものはウケない」という当時の常識を完全に覆しました。
宝塚歌劇での舞台化は社会現象となり、漫画のメディアミックスの成功例としても語り継がれています。
2000万部以上を売り上げ、50年以上経った今でもファンを増やし続けています。
連載開始時、池田理代子さんはまだ24歳。
編集者に「歴史ものはうけない」と言われても「必ずヒットさせます」と返したエピソードは有名です。
ポーの一族(1972年)
作者:萩尾望都
「24年組」と呼ばれる女性漫画家たちの代表作です。
永遠に年を取らない吸血鬼(バンパネラ)の少年エドガーを主人公に、時を超えた物語が展開されます。
詩的な表現、繊細な心理描写、哲学的なテーマ——。
少女漫画の表現の幅を一気に広げました。
萩尾望都、竹宮惠子、山岸凉子など、1949年前後に生まれた女性漫画家たちは「花の24年組」と呼ばれ、1970年代の少女漫画に革新をもたらしました。
風と木の詩(1976年)
作者:竹宮惠子
少年愛ものの決定版として知られる作品です。
19世紀フランスの寄宿学校を舞台に、美少年たちの愛と葛藤を描きました。
現在のBL(ボーイズ・ラブ)というジャンルの源流とも言える作品です。
実は初回部分は早い段階で完成していたのですが、あまりにもセンセーショナルな内容だったため、発表まで7年かかったそうです。
少年漫画の黄金時代を築いた作品
あしたのジョー(1968年)
原作:高森朝雄(梶原一騎)、作画:ちばてつや
「燃え尽きたぜ…真っ白にな…」
この最終回のセリフを知らない人はいないでしょう。
ボクシング漫画の金字塔であり、スポーツ漫画というジャンルを確立した作品です。
主人公・矢吹丈の「燃え尽きる」生き様は、当時の若者たちの心を鷲掴みにしました。
連載中にライバルの力石徹が死んだときには、実際に葬式が行われたほどの社会現象となっています。
「週刊少年マガジン」のエモーショナルな作風は、この作品から始まったと言っても過言ではありません。
巨人の星(1966年)
原作:梶原一騎、作画:川崎のぼる
スポ根漫画の原点です。
「大リーグボール養成ギプス」「消える魔球」など、現実離れした設定が話題を呼びました。
努力・友情・勝利という少年漫画の黄金パターンを確立した作品でもあります。
野球漫画という一大ジャンルを生み出し、後の『タッチ』『MAJOR』などに繋がる流れを作りました。
ドラゴンボール(1984年)
作者:鳥山明
バトル漫画の頂点に君臨する作品です。
『西遊記』をモチーフにした冒険活劇として始まりましたが、途中からバトル路線に転換。
「強い敵が現れる→修行する→倒す→もっと強い敵が現れる」というシンプルな構造が、世界中の読者を熱狂させました。
2024年に鳥山明さんが亡くなったとき、世界中から追悼のメッセージが寄せられました。
フランスのマクロン大統領までコメントを出したことからも、その影響力の大きさがわかります。
『ONE PIECE』の尾田栄一郎さん、『NARUTO』の岸本斉史さんなど、現代の人気漫画家の多くが鳥山明を「最大の影響を受けた漫画家」として挙げています。
現代のバトル漫画は、すべてドラゴンボールの延長線上にあると言っても過言ではありません。
SLAM DUNK(1990年)
作者:井上雄彦
バスケットボール漫画のみならず、スポーツ漫画全体に革命を起こした作品です。
不良少年・桜木花道がバスケに目覚め、成長していく物語。
試合シーンのリアルな描写と、キャラクターたちの人間ドラマが絶妙にマッチしています。
この作品をきっかけにバスケットボールを始めた人は数知れず。
日本のバスケ人口を増やしたとも言われています。
2022年に公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、原作完結から27年を経てもなお、大ヒットを記録しました。
ONE PIECE(1997年)
作者:尾田栄一郎
現在進行形で記録を塗り替え続けている怪物的作品です。
海賊王を目指す少年ルフィと仲間たちの冒険を描いた物語。
単行本の発行部数は5億部を突破し、「最も多く発行された単一作家によるコミックシリーズ」としてギネス世界記録に認定されています。
28年以上も連載が続きながら、常にトップクラスの人気を維持。
その存在自体が漫画史における「事件」と言えるでしょう。
漫画を世界に広めた作品
AKIRA(1982年)
作者:大友克洋
日本の漫画とアニメを世界に知らしめた、まさに「世界を変えた」作品です。
2019年のネオ東京を舞台に、超能力者たちの戦いを描いたSF大作。
緻密な描き込みと映画的な演出は、それまでの漫画の常識を完全に覆しました。
1988年のアニメ映画版は、日本だけでなく世界中で大ヒット。
「ジャパニメーション」という言葉が生まれるきっかけとなりました。
手塚治虫がハリウッドのジョージ・ルーカスのスタジオを訪れた際、スタッフたちが『AKIRA』の漫画版を持ってきて「こんなアニメを作りたい」と語ったというエピソードが残っています。
「大友以前・大友以後」という言葉があるほど、漫画の表現技法に与えた影響は絶大です。
浦沢直樹、谷口ジロー、吉田秋生など、多くの漫画家が大友克洋の影響を受けて作風を変えています。
ドラえもん(1969年)
作者:藤子・F・不二雄
日本を代表するキャラクターであり、世界中で愛されている作品です。
22世紀から来たネコ型ロボットと少年のび太の日常を描いたSFコメディ。
「どこでもドア」「タケコプター」など、秘密道具の数々は子供たちの夢を具現化しました。
海外でも多くの国で翻訳・放送され、日本文化を広める役割を果たしています。
その影響力は「ドラえもん外交」という言葉が生まれるほどです。
大人向け漫画の地位を確立した作品
ゴルゴ13(1968年)
作者:さいとう・たかを
世界最長の連載漫画として知られる作品です。
超一流のスナイパー、デューク東郷(ゴルゴ13)の活躍を描いたハードボイルド。
政治、経済、軍事など、リアルな国際情勢を題材にした大人向けの内容が特徴です。
2021年に作者のさいとう・たかをさんが亡くなった後も、スタジオ体制で連載が続いています。
「大人が読む漫画」というジャンルを確立した功績は計り知れません。
カムイ伝(1964年)
作者:白土三平
劇画というジャンルを代表する作品です。
江戸時代を舞台に、忍者カムイの過酷な運命を描いた歴史大作。
封建社会の矛盾や人間の尊厳をテーマに、深い社会的メッセージを込めた作品として高く評価されています。
「劇画」という表現スタイルは、それまでの「漫画」とは一線を画するものでした。
大人向けの漫画市場を開拓した功績は大きいです。
ゲゲゲの鬼太郎(1960年代)
作者:水木しげる
妖怪漫画の金字塔です。
墓場から生まれた幽霊族の少年・鬼太郎が妖怪たちと戦う物語。
ユーモアとホラーを絶妙に混ぜた独特の世界観が人気を博しました。
水木しげるさん自身の戦争体験を反映した深みのある作品でもあります。
日本の妖怪文化を広く知らしめた功績は計り知れません。
現代漫画のスタンダードを作った作品
NARUTO(1999年)
作者:岸本斉史
忍者という日本文化を世界に広めた作品です。
落ちこぼれの忍者・うずまきナルトが「火影」を目指して成長していく物語。
『ドラゴンボール』の影響を受けながらも、独自の世界観を構築しました。
海外での人気は特に高く、「NARUTO走り」が世界的に流行するなど、日本のポップカルチャーを代表する作品の一つとなっています。
鬼滅の刃(2016年)
作者:吾峠呼世晴
令和時代に社会現象を巻き起こした作品です。
家族を鬼に殺された少年・炭治郎が、鬼になった妹を人間に戻すため戦う物語。
アニメ化をきっかけに爆発的な人気となり、劇場版『無限列車編』は日本映画史上最高の興行収入を記録しました。
漫画とアニメの相乗効果で社会現象化するという、現代のヒットの形を示した作品と言えます。
進撃の巨人(2009年)
作者:諫山創
ダークファンタジーの傑作として、世界中で高い評価を得ています。
人類を捕食する巨人と、城壁に囲まれた世界で暮らす人々の戦いを描いた物語。
衝撃的な展開と伏線回収の巧みさで、読者を最後まで釘付けにしました。
2021年に完結するまで、常にトップクラスの人気を維持。
海外のファンも非常に多く、日本漫画のグローバル化を象徴する作品の一つです。
漫画史を変えた名作一覧表
| 作品名 | 発表年 | 作者 | 革新的だった点 |
|---|---|---|---|
| 新宝島 | 1947年 | 手塚治虫・酒井七馬 | ストーリー漫画の原点 |
| 鉄腕アトム | 1952年 | 手塚治虫 | TVアニメ化の先駆け |
| リボンの騎士 | 1953年 | 手塚治虫 | 少女漫画のストーリー化 |
| 火の鳥 | 1954年〜 | 手塚治虫 | 哲学的テーマの追求 |
| カムイ伝 | 1964年 | 白土三平 | 劇画ジャンルの確立 |
| ゲゲゲの鬼太郎 | 1960年代 | 水木しげる | 妖怪漫画の金字塔 |
| 巨人の星 | 1966年 | 梶原一騎・川崎のぼる | スポ根漫画の原点 |
| あしたのジョー | 1968年 | 高森朝雄・ちばてつや | スポーツ漫画の確立 |
| ゴルゴ13 | 1968年 | さいとう・たかを | 大人向け漫画の開拓 |
| ドラえもん | 1969年 | 藤子・F・不二雄 | 国民的キャラクターの誕生 |
| ベルサイユのばら | 1972年 | 池田理代子 | 少女漫画の歴史もの |
| ポーの一族 | 1972年 | 萩尾望都 | 少女漫画の表現革新 |
| 風と木の詩 | 1976年 | 竹宮惠子 | BLジャンルの源流 |
| AKIRA | 1982年 | 大友克洋 | 世界への漫画・アニメ発信 |
| ドラゴンボール | 1984年 | 鳥山明 | バトル漫画の頂点 |
| SLAM DUNK | 1990年 | 井上雄彦 | スポーツ漫画の革新 |
| ONE PIECE | 1997年 | 尾田栄一郎 | 世界記録の発行部数 |
| NARUTO | 1999年 | 岸本斉史 | 日本文化の世界発信 |
| 進撃の巨人 | 2009年 | 諫山創 | ダークファンタジーの傑作 |
| 鬼滅の刃 | 2016年 | 吾峠呼世晴 | 令和の社会現象 |
まとめ
- 漫画史には何度も「革命」が起きている
- 手塚治虫がストーリー漫画という概念を生み出した
- 1970年代に少女漫画が大きく変革した
- 『AKIRA』や『ドラゴンボール』が日本漫画を世界に広めた
- 現代も『鬼滅の刃』など新たな革命が続いている
一作品が業界全体を変えてしまう——。
それが漫画という文化のすごさです。
今この瞬間も、どこかで「次の革命」を起こす作品が生まれているかもしれません。


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