Pale Moonは、Firefoxから派生したオープンソースのウェブブラウザです。
カスタマイズ性とプライバシー保護を重視した設計が特徴で、Firefoxの旧バージョン(4~28)のインターフェースを保持しています。
また、Firefoxが既にサポートを終了したレガシーアドオンやNPAPIプラグインにも対応しており、特定の用途で高い評価を得ています。
この記事では、Pale Moonの基本情報から特徴、メリット・デメリット、インストール方法まで詳しく解説します。
Pale Moonの基本情報

Pale Moonは、2009年にM.C. Straverによって開発が開始されました。
当初はFirefoxの最適化版として始まりましたが、現在では完全に独立したブラウザへと進化しています。
開発元と歴史
開発元はMoonchild Productionsで、主に一人の開発者(M.C. Straver)によって維持されています。
2016年のバージョン26から、FirefoxのGeckoエンジンから派生した独自のGoannaレンダリングエンジンを採用しました。
2017年には、Firefox 52 ESRをベースとしたUnified XUL Platform(UXP)の開発を開始し、Firefoxから完全に独立した開発体制を確立しています。
ライセンスと料金
Pale MoonはMozilla Public License 2.0(MPL-2.0)のもとで公開されており、完全に無料で利用できます。
オープンソースプロジェクトとして、ソースコードも公開されています。
ただし、バイナリ(実行ファイル)の再配布については、Moonchild Productionsによる独自ライセンスの条件があります。
最新バージョンと対応OS
2026年2月時点での最新バージョンは34.0.0で、2026年1月20日にリリースされました。
対応OSは以下の通りです。
- Windows 7 SP1以降
- Linux(AVXまたはSSE2対応のCPUが必要)
- FreeBSD 13.0以降
- macOS(OS X Lion以降、Apple SiliconにはmacOS Big Sur以降)
ポータブル版も提供されており、USBメモリなどに入れて持ち運ぶことができます。
Pale Moonの主な特徴
Pale Moonには、他のブラウザと差別化される独自の特徴があります。
Firefoxの旧インターフェースを採用
Pale Moonは、Firefox 4~28時代の「Strata」と呼ばれるインターフェースを採用しています。
これは、現在のFirefoxが採用する「Photon」や「Australis」とは異なるデザインです。
メニューバーやステータスバーなど、旧Firefoxユーザーに馴染み深い要素が保持されています。
高いカスタマイズ性
Pale Moonのモットーは「Your browser, Your way(あなたのブラウザ、あなたのやり方で)」です。
ユーザーインターフェース全体をカスタマイズできる「Complete Themes(完全テーマ)」に対応しています。
また、軽量なPersonas(ライトウェイトテーマ)も利用可能です。
タブの位置、スムーズスクロール、画像読み込みなど、細かな設定項目が多数用意されています。
レガシーアドオンとNPAPIプラグインのサポート
Pale Moonは、Firefoxがバージョン57で廃止したXUL/XPCOMベースのレガシーアドオンをサポートしています。
これにより、古いFirefox拡張機能の多くが引き続き利用できます。
また、Adobe Flash PlayerなどのNPAPIプラグインにも対応しており、これらのプラグインが必要なレガシーコンテンツを閲覧できます。
プライバシー保護とデータ収集の排除
Pale Moonには、テレメトリー(使用状況データの収集)、スパイウェア、広告が一切含まれていません。
デフォルトの検索エンジンはDuckDuckGoで、プライバシーを重視した検索が可能です。
位置情報サービスもGoogleではなくIP-APIサービスを使用しています。
独自レンダリングエンジン「Goanna」
Pale Moonは、バージョン26以降、独自のGoannaレンダリングエンジンを使用しています。
GoannaはFirefoxのGeckoエンジンから派生したもので、独自の最適化が施されています。
これにより、Firefoxとは異なる動作や表示になることがあります。
シングルプロセスモード
Pale Moonは常にシングルプロセスモードで動作します。
これは、Firefoxが採用しているマルチプロセスアーキテクチャとは対照的です。
シングルプロセスモードは、メモリ使用量を抑えられる一方、セキュリティ面ではマルチプロセスに劣る側面があります。
Pale Moonのメリット
Pale Moonを使用することで得られる利点を紹介します。
軽量で高速な動作
Pale Moonは、不要な機能を削ぎ落とし、効率的なコードベースを維持しています。
これにより、比較的古いハードウェアでも快適に動作する可能性があります。
ただし、ベンチマークテストでは必ずしも最新のFirefoxより高速とは限りません。
プライバシー重視の設計
データ収集やテレメトリーが一切ないため、プライバシーを重視するユーザーに適しています。
トラッキング防止機能も搭載されており、オンライン上の追跡からユーザーを保護します。
豊富なカスタマイズオプション
インターフェースから機能まで、細かくカスタマイズできます。
Complete Themesにより、ブラウザの見た目を大幅に変更できます。
上級者向けの設定項目も多数用意されています。
レガシー拡張機能の利用
Firefoxで使えなくなった旧拡張機能を引き続き使用できます。
XUL/XPCOMベースの拡張機能は、Pale Moon専用のアドオンサイトで提供されています。
ただし、すべての旧Firefox拡張機能が動作するわけではありません。
安定性重視の開発
Pale Moonはコミュニティによる継続的なテストを経てリリースされます。
安定性を重視した開発が行われており、クラッシュやフリーズを最小限に抑えることを目指しています。
Pale Moonのデメリット
一方で、Pale Moonにはいくつかの制約や欠点もあります。
最新のWeb標準への対応が遅れる場合がある
Pale Moonは独自のレンダリングエンジンを使用しているため、最新のWeb標準への対応が遅れることがあります。
一部の最新技術を使用したウェブサイトでは、表示が崩れたり機能が動作しなかったりする可能性があります。
ただし、開発チームは継続的に対応を進めています。
アドオンの数が限られている
Pale Moon専用のアドオンは、Firefoxに比べて数が限られています。
公式アドオンサイトでは厳格な審査が行われており、プライバシーとセキュリティが優先されています。
すべての旧Firefox拡張機能がそのまま動作するわけではありません。
モバイル版が存在しない
現在、Pale Moonにはモバイル版(AndroidやiOS版)が提供されていません。
これは、デスクトップとモバイルでブラウジング体験を同期したいユーザーにとっては不便です。
マルチプロセスモードに非対応
シングルプロセスモードのため、セキュリティ面ではマルチプロセスブラウザに劣ります。
一つのタブで問題が発生すると、ブラウザ全体に影響する可能性があります。
ただし、メモリ使用量は抑えられる傾向にあります。
コミュニティとサポートが限定的
開発チームが小規模なため、サポートやドキュメントがFirefoxほど充実していません。
問題が発生した場合、公式フォーラムでの質問が主な解決手段となります。
日本語の情報も限られています。
Pale MoonとFirefoxの違い
Pale MoonとFirefoxの主な違いを整理します。
インターフェース
- Pale Moon: Firefox 4~28時代の「Strata」インターフェース
- Firefox: 「Photon」インターフェース
レンダリングエンジン
- Pale Moon: Goanna(Geckoから派生)
- Firefox: Gecko
プロセスモード
- Pale Moon: シングルプロセス
- Firefox: マルチプロセス(e10s)
アドオン対応
- Pale Moon: XUL/XPCOMベースのレガシーアドオン対応
- Firefox: WebExtensionsのみ対応
プラグイン対応
- Pale Moon: NPAPIプラグイン対応
- Firefox: NPAPIプラグイン非対応
プライバシー
- Pale Moon: テレメトリーなし、DuckDuckGoがデフォルト
- Firefox: テレメトリーあり(オフ可能)、Googleがデフォルト
対応プラットフォーム
- Pale Moon: Windows、Linux、FreeBSD、macOS
- Firefox: Windows、Linux、macOS、Android、iOS
開発体制
- Pale Moon: 小規模チーム(主に1人)
- Firefox: Mozilla Foundationの大規模チーム
Pale Moonのインストール方法
Pale Moonのインストール手順を説明します。
Windowsでのインストール
- Pale Moon公式サイトにアクセスします。
- 「Download」セクションから、お使いのシステムに合ったバージョン(32bitまたは64bit)をダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラーを実行します。
- セットアップウィザードが表示されるので、「Next」をクリックします。
- インストールタイプを選択します(StandardまたはCustom)。
- インストールが完了したら、Pale Moonを起動します。
Linuxでのインストール
Linuxでは、公式サイトから.tar.bz2アーカイブをダウンロードして展開する方法が一般的です。
一部のディストリビューションでは、パッケージマネージャーからインストールできる場合もあります。
ポータブル版の利用
ポータブル版を使用すると、USBメモリなどに入れて持ち運べます。
公式サイトの「Download」→「Pale Moon Portable」からダウンロードできます。
インストール不要で、設定やブックマークも保存できます。
Pale Moonの日本語化方法

Pale Moonは初期状態では英語表示ですが、日本語化できます。
日本語言語パックのインストール
- Pale Moonを起動します。
- Pale Moon日本語言語パックにアクセスします。
- 「Japanese (ja)」を探し、「Install」ボタンをクリックします。
- アドオンのインストール画面が表示されるので、「Install Now」をクリックします。
- インストールが完了すると、通知が表示されます。
Locale Switcherで言語を切り替え
- Pale Moon Locale Switcherにアクセスします。
- 「Install」ボタンをクリックしてアドオンをインストールします。
- インストール後、アドレスバー横に追加されたアイコンをクリックします。
- 表示されたメニューから「ja – Japanese」を選択します。
- 確認ダイアログが表示されるので、「OK」をクリックします。
- Pale Moonが再起動し、日本語表示になります。
手動での日本語化(上級者向け)
上級者向けの手動方法もあります。
- アドレスバーに「about:config」と入力してEnterキーを押します。
- 警告ページが表示されるので、「I promise to be careful!」をクリックします。
- 検索ボックスに「general.useragent.locale」と入力します。
- 表示された項目をダブルクリックします。
- 値を「ja-JP」に変更してOKをクリックします。
- Pale Moonを再起動します。
Pale Moonの使い方
基本的な使い方はFirefoxと同じです。
基本操作
- 新しいタブを開く: Ctrl + T
- タブを閉じる: Ctrl + W
- ブックマークを追加: Ctrl + D
- 履歴を表示: Ctrl + H
- ダウンロードを表示: Ctrl + J
- 検索: Ctrl + F
アドオンのインストール
- Pale Moonメニューから「アドオン」を選択します。
- アドオンマネージャが開きます。
- Pale Moonアドオンサイトで必要なアドオンを探します。
- 「Install」ボタンをクリックしてインストールします。
テーマの変更
- Pale Moonメニューから「アドオン」を選択します。
- 「テーマ」タブをクリックします。
- Pale Moonテーマサイトで好みのテーマを探します。
- テーマをインストールし、「有効化」をクリックします。
- Pale Moonを再起動すると、新しいテーマが適用されます。
設定のカスタマイズ
Pale Moonは豊富な設定項目を持っています。
Pale Moonメニューから「オプション」を選択すると、設定画面が開きます。
一般、タブ、コンテンツ、プライバシー、セキュリティ、詳細など、カテゴリごとに設定できます。
システム要件
Pale Moonを快適に動作させるためのシステム要件は以下の通りです。
Windows版
- OS: Windows 7 SP1以降(Windows 10、11推奨)
- CPU: AVX対応プロセッサ(64bit版)、SSE2対応プロセッサ(32bit版)
- メモリ: 1GB以上(2GB以上推奨)
- ストレージ: 200MB以上の空き容量
Linux版
- OS: 最新のLinuxディストリビューション
- CPU: AVX対応プロセッサ(64bit)、SSE2対応プロセッサ(32bit)
- メモリ: 1GB以上(2GB以上推奨)
macOS版
- OS: OS X Lion以降(Intel Mac)、macOS Big Sur以降(Apple Silicon)
- メモリ: 1GB以上(2GB以上推奨)
AVXサポートは、過去10年間のほとんどの主流CPUに含まれています。
非常に古いCPUを使用している場合は、32bit版(Windows)を使用するか、コミュニティビルドを検討してください。
Pale Moonはこんな人におすすめ
Pale Moonは、以下のようなユーザーに適しています。
プライバシーを重視する人
テレメトリーやデータ収集が一切ないため、プライバシーを最優先したい方に向いています。
DuckDuckGoをデフォルトで使用することで、検索履歴も保存されません。
旧Firefox拡張機能を使い続けたい人
Firefoxで廃止されたXUL/XPCOMベースの拡張機能を引き続き使用したい方に最適です。
ただし、すべての拡張機能が動作するわけではないため、事前に確認が必要です。
カスタマイズ性を重視する人
ブラウザの外観や機能を細かくカスタマイズしたい方に向いています。
Complete Themesにより、UI全体を自分好みに変更できます。
軽量なブラウザを求める人
比較的古いハードウェアでも動作する軽量なブラウザを探している方に適しています。
ただし、最新のFirefoxやChromeと比べて常に高速というわけではありません。
旧Firefoxのインターフェースが好きな人
Firefox 4~28時代のインターフェースに愛着がある方にとって、Pale Moonは懐かしい選択肢です。
Pale Moonが向いていない人
一方で、以下のような方にはPale Moonは適していません。
最新のWeb技術を必要とする人
最新のWeb標準やAPI への対応が遅れる場合があるため、常に最先端の技術を使いたい方には向いていません。
モバイルとの同期が必要な人
モバイル版がないため、スマートフォンやタブレットとブラウジングを同期したい方には不向きです。
豊富なアドオンから選びたい人
アドオンの数がFirefoxやChromeに比べて少ないため、多様な拡張機能から選びたい方には物足りないかもしれません。
初心者や手軽に使いたい人
日本語化が必要だったり、一部のサイトで表示が崩れたりすることがあるため、初心者や手軽にブラウザを使いたい方には向いていません。
Pale Moonの安全性とセキュリティ
Pale Moonは、セキュリティにも配慮して開発されています。
定期的なセキュリティアップデート
開発チームは、発見された脆弱性に対して定期的にセキュリティパッチをリリースしています。
Firefoxで発見されたセキュリティ問題のうち、Pale Moonに該当するものは適切に修正されています。
シングルプロセスモードのセキュリティ
シングルプロセスモードは、マルチプロセスブラウザに比べてセキュリティ面で劣る側面があります。
マルチプロセスブラウザでは、各タブが独立したプロセスで動作するため、一つのタブで問題が発生しても他のタブに影響しません。
Pale Moonでは、一つのタブの脆弱性がブラウザ全体に影響する可能性があります。
2019年のセキュリティ侵害事件
2019年4月から6月にかけて、Pale Moonのアーカイブサーバーがハッキングされ、古いインストーラーにマルウェアが混入される事件がありました。
当時の最新版には影響がなく、7月9日に問題のサーバーは停止されました。
この事件以降、セキュリティ対策が強化されています。
HTTPS対応とプライバシー保護
Pale MoonはHTTPSサイトの表示に対応しており、暗号化された通信をサポートしています。
トラッキング防止機能も搭載されており、プライバシー保護に貢献しています。
まとめ
Pale Moonは、Firefoxから派生した独自性の高いオープンソースブラウザです。
プライバシー保護、カスタマイズ性、レガシーアドオンのサポートなど、特定のニーズに応える特徴を持っています。
一方で、最新のWeb標準への対応の遅れ、モバイル版の不在、限定的なアドオンなどの制約もあります。
Pale Moonは、プライバシーを重視し、旧Firefoxの拡張機能を使い続けたいユーザーや、ブラウザを細かくカスタマイズしたいユーザーに適しています。
ただし、最新のWeb技術を必要とする場合や、モバイルとの同期が必要な場合は、FirefoxやChromeなどの主流ブラウザの方が適しているでしょう。
自分のニーズと照らし合わせて、Pale Moonが自分に合っているかを検討してみてください。

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