パケット通信の仕組みを徹底解説 – データはどう届く?技術的な流れを完全理解

インターネットでWebサイトを見たり、メールを送ったり、動画を視聴したりする時、裏側では「パケット通信」という仕組みが働いています。
データは小さなパケットに分割されて送られ、受信側で元の形に復元されます。

しかし、具体的にどのようにパケットが作られ、どのような経路を通って目的地に届くのか、詳しく理解している方は少ないかもしれません。
この記事では、パケット通信の技術的な仕組みを、初心者の方にもわかりやすく解説します。

なお、パケットの基本的な意味については、パケットとは?通信の仕組みから携帯電話の「ギガ」まで徹底解説の記事で詳しく説明していますので、まずはそちらもご覧ください。

スポンサーリンク

パケット通信とは – 基本的な考え方

パケット通信は、データを小さな単位(パケット)に分割して送受信する通信方式です。
英語では「Packet Switching(パケット交換)」と呼ばれます。

この仕組みは、1960年代にアメリカのポール・バランとイギリスのドナルド・デイビスによって独立して考案されました。
当時の電話回線を使った通信では、通信中は回線を占有してしまうため、非効率でした。
パケット通信は、この問題を解決するために生まれた技術です。

回線交換方式との違い

パケット通信を理解するには、従来の回線交換方式と比較するとわかりやすいでしょう。

回線交換方式(Circuit Switching)

従来の電話回線で使われていた方式です。
通信を開始する前に、送信側と受信側の間に専用の通信経路を確立します。
通信中はこの経路を占有し、通信が終了するまで他の人は使えません。

通話中は回線を占有するため、安定した通信ができます。
しかし、データ通信では通信量にムラがあり、使っていない時間も回線を占有するため無駄が多くなります。

パケット交換方式(Packet Switching)

データを小さなパケットに分割して送信します。
各パケットは独立して送られ、それぞれが最適な経路を選んで目的地に向かいます。
受信側では、到着したパケットを順番に並べ直して元のデータに復元します。

回線を占有しないため、複数のユーザーが同じ回線を共有できます。
インターネットをはじめとする現代のデータ通信は、ほとんどがパケット交換方式を採用しています。

パケット通信の詳しい仕組み

パケット通信がどのように行われるのか、ステップごとに詳しく見ていきましょう。

1. データの分割とパケット化

送信したいデータ(メール、画像、動画など)は、まず小さなパケットに分割されます。

各パケットには以下の情報が付加されます。

ヘッダ(Header): 送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、シーケンス番号、プロトコル情報などの制御情報が含まれます。
ペイロード(Payload): 実際に送りたいデータの断片が入ります。
トレーラ(Trailer): エラーチェック用の情報(プロトコルによっては含まれない場合もあります)。

例えば、1MBの画像を送信する場合、これを約1,500バイトずつのパケットに分割すると、約700個のパケットになります。
各パケットには「何番目のパケットか」という順序情報が含まれます。

2. ルーティング – パケットの経路選択

作成されたパケットは、ネットワークに送り出されます。
ルーターは、各パケットのヘッダ情報を読み取り、最適な経路を選択して次のルーターに転送します。

フォワーディングテーブル(転送テーブル)

ルーターは、「フォワーディングテーブル」という経路情報のデータベースを持っています。
このテーブルには、「宛先IPアドレスの範囲」と「次に転送すべきルーター」の対応関係が記録されています。

ルーターは、パケットの宛先IPアドレスの一部を確認し、フォワーディングテーブルを参照して、どのルーターに転送すべきかを決定します。

動的ルーティング

インターネットでは、パケットは常に同じ経路を通るわけではありません。
ネットワークの混雑状況やリンクの障害などに応じて、パケットごとに異なる経路を選択することがあります。

これにより、ネットワークの一部に障害が発生しても、別の経路を使って通信を継続できます。

3. ストア・アンド・フォワード

ほとんどのパケット交換では、「ストア・アンド・フォワード(Store and Forward)」という方式が使われます。

ルーターは、パケット全体を受信してから次のルーターに転送します。
受信中にエラーがないかチェックし、問題がなければ次に転送するという仕組みです。

この方式により、途中でデータが壊れた場合でも検出でき、再送信を要求できます。
ただし、各ルーターで待ち時間が発生するため、遅延(レイテンシ)が増加するという側面もあります。

4. パケットの到着と復元

パケットは異なる経路を通って目的地に到着するため、送信した順番とは異なる順序で届くことがあります。

受信側のコンピュータは、各パケットのヘッダに含まれるシーケンス番号を確認し、正しい順序に並べ替えます。
すべてのパケットが揃ったら、ペイロード部分を結合して元のデータを復元します。

もし一部のパケットが届かなかった場合、受信側は送信側に再送を要求します。

TCP/IPとUDP – 2つの主要なプロトコル

パケット通信では、用途に応じて異なるプロトコルが使われます。
代表的なものが、TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)です。

詳しくはプロトコルスタック完全ガイドネットワークプロトコル名を徹底解説の記事もご覧ください。

TCP – 信頼性重視の通信

TCPは、データを確実に届けることを重視したプロトコルです。

主な特徴:

通信前に接続を確立します(3ウェイハンドシェイク)。
パケットの到着確認を行います(確認応答)。
パケットが失われた場合、自動的に再送します。
パケットの順序を保証します。
フロー制御により、受信側の処理能力に応じて送信速度を調整します。

主な用途:

Webブラウジング(HTTP/HTTPS)
メール送受信(SMTP、POP3、IMAP)
ファイル転送(FTP)
リモート接続(SSH)

TCPは確実性を重視するため、多少の遅延が発生しても問題ない用途に適しています。

UDP – 速度重視の通信

UDPは、速度を重視し、確認応答などのオーバーヘッドを省いたプロトコルです。

主な特徴:

接続確立の手続きがありません(コネクションレス)。
パケットの到着確認を行いません。
パケットが失われても再送しません。
パケットの順序を保証しません。

主な用途:

動画・音声のストリーミング配信
オンラインゲーム
DNS(ドメイン名解決)
VoIP(インターネット電話)

UDPは、多少データが欠けても問題ない、またはリアルタイム性が重要な用途に適しています。
動画配信では、1フレームが欠けても視聴には大きな影響がないため、確認応答をせずに次々とデータを送る方が効率的です。

パケットロス(Packet Loss)とは

パケット通信では、すべてのパケットが必ず届くとは限りません。
パケットが目的地に到達しない現象を「パケットロス(Packet Loss)」と呼びます。

パケットロスの原因

ネットワークの混雑

ルーターの処理能力を超える量のパケットが到着すると、バッファ(一時保管場所)があふれてパケットが破棄されます。

通信エラー

無線通信では電波の干渉、有線通信ではケーブルの劣化などにより、データが壊れることがあります。

ルーターの障害

ルーターやスイッチの故障により、パケットが転送できなくなることがあります。

経路の問題

ネットワークの一部が切断されている場合、パケットが目的地に到達できません。

パケットロスの影響

パケットロスが発生すると、以下のような影響が出ます。

TCPの場合

失われたパケットは自動的に再送されるため、最終的には正しいデータが届きます。
ただし、再送のために時間がかかり、通信速度が低下します。

UDPの場合

失われたパケットは再送されません。
動画配信では画質の劣化、オンラインゲームではラグ(遅延)の増加、VoIPでは音声の途切れなどが発生します。

パケットロスの確認方法

Windowsでは、pingコマンドを使ってパケットロスを確認できます。

例えば、Googleの公開DNSサーバー(8.8.8.8)に対してpingを実行すると、以下のような結果が表示されます。

C:\> ping 8.8.8.8

8.8.8.8 に ping を送信しています 32 バイトのデータ:
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =10ms TTL=117
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =9ms TTL=117
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =10ms TTL=117
8.8.8.8 からの応答: バイト数 =32 時間 =9ms TTL=117

8.8.8.8 の ping 統計:
    パケット数: 送信 = 4、受信 = 4、損失 = 0 (0% の損失)

「損失 = 0 (0% の損失)」と表示されれば、パケットロスは発生していません。
もし「損失 = 2 (50% の損失)」などと表示された場合、ネットワークに問題がある可能性があります。

パケット通信のメリットとデメリット

パケット通信には、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。

メリット

回線の効率的利用

複数のユーザーが同じ回線を共有できるため、回線を有効活用できます。
データを送信していない時間は、他のユーザーのパケットを流せます。

障害に強い

ネットワークの一部に障害が発生しても、別の経路を使って通信を継続できます。
冗長性が高く、信頼性の高いネットワークを構築できます。

柔軟性が高い

送信速度が異なる機器同士でも通信できます。
パケットは一時的にバッファに蓄積されるため、送信側と受信側の速度差を吸収できます。

拡張性が高い

新しい機器をネットワークに追加しても、既存の通信に大きな影響を与えません。
インターネットのように、何億もの機器が接続された巨大なネットワークを構築できます。

エラー訂正が容易

問題のあるパケットだけを再送すればよいため、効率的です。
全データを最初から送り直す必要がありません。

デメリット

混雑時の通信品質低下

ネットワークが混雑すると、パケットの転送が遅れたり、パケットロスが発生したりします。
動画のストリーミングやオンラインゲームでは、品質が低下する可能性があります。

遅延(レイテンシ)の発生

各ルーターでストア・アンド・フォワードの処理が行われるため、遅延が発生します。
リアルタイム性が重要なアプリケーションでは、問題になることがあります。

通信量の増加

各パケットにヘッダ情報を付加する必要があるため、実際のデータ量よりも通信量が増えます。
また、エラーが発生した場合の再送によっても通信量が増加します。

複雑な制御が必要

ルーターは動的にパケットをルーティングする必要があり、高度な処理能力が求められます。
順序の入れ替え、エラー検出、再送制御などの複雑な処理が必要です。

実際の通信フロー – メール送信の例

実際にメールを送信する場合を例に、パケット通信の流れを見てみましょう。

あなたがメールソフトで「こんにちは」というメッセージを送信したとします。

1. アプリケーション層でのデータ作成

メールソフトは、SMTPプロトコルに従ってメッセージを整形します。
送信元、宛先、件名、本文などの情報が含まれます。

2. トランスポート層でのセグメント化

TCPプロトコルが、メールデータを適切なサイズのセグメントに分割します。
各セグメントにTCPヘッダ(送信元ポート番号、宛先ポート番号、シーケンス番号など)を付加します。

3. ネットワーク層でのパケット化

IPプロトコルが、TCPセグメントをIPパケットにカプセル化します。
IPヘッダ(送信元IPアドレス、宛先IPアドレスなど)を付加します。

4. データリンク層でのフレーム化

Ethernetプロトコルが、IPパケットをEthernetフレームにカプセル化します。
Ethernetヘッダ(送信元MACアドレス、宛先MACアドレス)を付加します。

5. 物理層での送信

電気信号または光信号に変換され、ケーブルまたは無線で送信されます。

6. ルーターでの転送

各ルーターは、IPヘッダの宛先IPアドレスを確認し、フォワーディングテーブルに基づいて次のルーターに転送します。
この処理が、目的地に到達するまで繰り返されます。

7. 受信側での復元

受信側では、逆の手順でデータを復元します。
物理層→データリンク層→ネットワーク層→トランスポート層→アプリケーション層と、各層でヘッダを取り除いていきます。
最終的に、メールソフトが元のメッセージを受け取ります。

この一連の処理は、プロトコルスタックと呼ばれる階層構造で管理されています。

まとめ

パケット通信は、データを小さなパケットに分割して送受信する仕組みです。
各パケットは独立してネットワークを移動し、受信側で元のデータに復元されます。

パケット通信の主な流れは以下の通りです。

データをパケットに分割し、ヘッダ情報を付加します。
ルーターがフォワーディングテーブルを参照し、最適な経路を選択します。
各ルーターでストア・アンド・フォワードの処理を行います。
受信側でパケットを順序通りに並べ替え、元のデータを復元します。

パケット通信には、回線の効率的利用、障害に強い、柔軟性が高いなどのメリットがあります。
一方で、混雑時の品質低下、遅延の発生、通信量の増加などのデメリットもあります。

TCPは信頼性を重視し、UDPは速度を重視したプロトコルです。
用途に応じて使い分けられています。

パケット通信は、インターネットをはじめとする現代のデータ通信の基盤となる重要な技術です。
この仕組みを理解することで、ネットワークの動作原理やトラブルシューティングの際に役立つでしょう。

参考情報

本記事は以下の信頼できる情報源を参照して作成しました。

この記事は2025年2月7日時点の情報に基づいています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました