ドメインを取得したり、レンタルサーバーを契約したりすると、「ネームサーバーを設定してください」という指示が出てきます。
でも、「ネームサーバーって何?」「DNSとどう違うの?」「どうやって設定すればいいの?」と疑問だらけになりますよね。
この記事では、インターネットの住所録とも言える「ネームサーバー」と「DNS」について、初心者の方にも分かりやすく、仕組みから実際の設定方法まで徹底解説します。
DNSとネームサーバーの基礎知識
DNSとは?インターネットの住所録
DNS(ディーエヌエス)
- 正式名称:Domain Name System(ドメインネームシステム)
- インターネット上の「住所録」のような仕組み
- ドメイン名をIPアドレスに変換する
具体的な役割
私たちは「google.com」や「yahoo.co.jp」といった分かりやすい名前でWebサイトにアクセスします。しかし、コンピューターは「142.250.207.46」のような数字の羅列(IPアドレス)で通信しています。
DNSは、この2つを結びつける役割を担っているのです。
例え話
- ドメイン名:「渋谷駅」という誰でも分かる名前
- IPアドレス:「東京都渋谷区道玄坂1-1-1」という正確な住所
- DNS:名前を聞いて住所を教えてくれる案内係
ネームサーバーとは?
ネームサーバー(Name Server)
- DNSの情報を管理しているサーバー
- ドメイン名とIPアドレスの対応表を持っている
- 「このドメインはどこにあるか」を教えてくれる
役割
質問:「example.com のIPアドレスは?」
↓
ネームサーバーが回答:「203.0.113.1 です」
別名
- DNSサーバー
- ネームサーバ(最後の「ー」を省略することも)
DNSとネームサーバーの違い
よく混同される2つの用語ですが、厳密には違います。
DNS
- システム全体の仕組み
- インターネット上の名前解決の仕組み全体を指す
ネームサーバー
- DNSを実現するための具体的なサーバー
- 実際に問い合わせに答える機械
例え
- DNS = 図書館システム全体
- ネームサーバー = 図書館の建物と司書
DNSの仕組み|ドメイン名からIPアドレスへの変換プロセス
実際にWebサイトにアクセスする時、裏側でどんなことが起きているのでしょうか。
名前解決の流れ
あなたがブラウザで「example.com」と入力したときの流れです。
ステップ1:ブラウザがリクエスト
- あなた:「example.com を開きたい」
- ブラウザ:「このIPアドレスが分からない、調べよう」
ステップ2:リゾルバに問い合わせ
- ブラウザ → リゾルバ(ISPのDNSサーバー)
- 「example.com のIPアドレスを教えて」
ステップ3:キャッシュの確認
- リゾルバが自分のメモ(キャッシュ)を確認
- 最近調べたことがあれば、すぐに回答
- なければ、次のステップへ
ステップ4:ルートサーバーに問い合わせ
- リゾルバ → ルートDNSサーバー
- 「.com を管理しているサーバーはどこ?」
- ルート:「.com の情報は◯◯サーバーにあるよ」
ステップ5:TLDサーバーに問い合わせ
- リゾルバ → .com のTLDサーバー
- 「example.com を管理しているサーバーはどこ?」
- TLD:「それは△△サーバーだよ」
ステップ6:権威DNSサーバーに問い合わせ
- リゾルバ → example.com の権威DNSサーバー
- 「example.com のIPアドレスは?」
- 権威DNS:「203.0.113.1 だよ」
ステップ7:ブラウザに回答
- リゾルバ → ブラウザ
- 「example.com は 203.0.113.1 です」
- この情報をキャッシュに保存
ステップ8:Webサイトにアクセス
- ブラウザ → 203.0.113.1 のサーバー
- Webページを取得して表示
このすべてのプロセスが、わずか数ミリ秒で完了します。
DNSサーバーの種類
DNS を支える様々な種類のサーバーがあります。
1. 権威DNSサーバー(Authoritative DNS Server)
- ドメインの正式な情報を持っているサーバー
- そのドメインについて「最終的な答え」を知っている
- ドメイン所有者が設定する
2. キャッシュDNSサーバー(Recursive DNS Server / Resolver)
- ユーザーからの問い合わせを代行するサーバー
- 一度調べた情報を記憶(キャッシュ)する
- ISPや Google(8.8.8.8)が提供
3. ルートDNSサーバー
- DNSの最上位にあるサーバー
- 世界に13個のグループ(実際は数百台)
- トップレベルドメインの場所を知っている
4. TLDサーバー(Top Level Domain Server)
- .com、.jp、.org などを管理
- 各ドメインの権威サーバーの場所を知っている
ネームサーバーの確認方法
自分のドメインがどのネームサーバーを使っているか、確認する方法です。
Webサービスで確認
最も簡単な方法は、専用のWebサービスを使うことです。
おすすめサービス
1. WHOIS検索サービス
- お名前.com の WHOIS検索
- CyberAgent の WHOIS検索
- ドメイン名を入力するだけ
表示される情報例
Name Server: ns1.example-server.com
Name Server: ns2.example-server.com
2. DNSチェッカー
- MXToolbox(mxtoolbox.com)
- DNSChecker(dnschecker.org)
- 詳細なDNS情報が見られる
コマンドで確認(Windows)
Windowsのコマンドプロンプトで確認できます。
nslookup コマンド
- コマンドプロンプトを開く
- Windows + R キー
- 「cmd」と入力してEnter
- コマンドを実行
nslookup -type=ns example.com
- 結果の見方
example.com nameserver = ns1.example-server.com
example.com nameserver = ns2.example-server.com
コマンドで確認(Mac / Linux)
ターミナルでの確認方法です。
dig コマンド
- ターミナルを開く
- アプリケーション → ユーティリティ → ターミナル
- コマンドを実行
dig example.com NS
- 結果の見方
;; ANSWER SECTION:
example.com. 3600 IN NS ns1.example-server.com.
example.com. 3600 IN NS ns2.example-server.com.
host コマンド(よりシンプル)
host -t ns example.com
ネームサーバーの設定方法
実際にネームサーバーを設定する手順を、状況別に解説します。
レンタルサーバーを契約した場合
新しくレンタルサーバーを契約して、ドメインを紐付ける場合の流れです。
全体の流れ
- レンタルサーバーのネームサーバー情報を確認
- ドメイン管理サービス(レジストラ)でネームサーバーを変更
- 反映を待つ(数時間〜48時間)
具体的な手順
ステップ1:ネームサーバー情報の確認
レンタルサーバーから提供される情報を確認します。
エックスサーバーの例
ネームサーバー1: ns1.xserver.jp
ネームサーバー2: ns2.xserver.jp
ネームサーバー3: ns3.xserver.jp
ネームサーバー4: ns4.xserver.jp
ネームサーバー5: ns5.xserver.jp
さくらインターネットの例
プライマリネームサーバー: ns1.dns.ne.jp
セカンダリネームサーバー: ns2.dns.ne.jp
ステップ2:ドメイン管理画面でネームサーバーを変更
お名前.comの場合
- お名前.com Naviにログイン
- 「ドメイン設定」をクリック
- 「ネームサーバーの設定」→「ネームサーバーの変更」
- 「他のネームサーバーを利用」を選択
- レンタルサーバーから提供された情報を入力
- 「確認」→「設定する」
ムームードメインの場合
- コントロールパネルにログイン
- 「ドメイン管理」→「ドメイン操作」
- 対象ドメインの「ネームサーバ設定変更」
- 「GMOペパボ以外のネームサーバを使用する」を選択
- ネームサーバー情報を入力
- 「ネームサーバ設定変更」をクリック
ステップ3:反映を待つ
DNS情報の変更は、すぐには反映されません。
反映にかかる時間
- 最短:数時間
- 最長:72時間(3日間)
- 一般的:24時間程度
この期間を「DNS浸透期間」や「プロパゲーション」と呼びます。
複数のネームサーバーを設定する理由
通常、ネームサーバーは2つ以上設定します。
なぜ複数必要?
冗長化(バックアップ)
- プライマリが故障しても、セカンダリが応答
- サービスの可用性を高める
負荷分散
- 問い合わせを分散して処理
- 応答速度の向上
標準的な構成
プライマリネームサーバー(Primary/Master)
セカンダリネームサーバー(Secondary/Slave)
多くのサービスでは、3〜5個のネームサーバーを提供しています。
DNSレコードの種類と役割
ネームサーバーが管理している情報は、いくつかの種類に分かれています。
主要なDNSレコードタイプ
Aレコード(Address Record)
- ドメイン名とIPv4アドレスを紐付け
- 最も基本的なレコード
example.com. A 203.0.113.1
AAAAレコード(IPv6 Address Record)
- ドメイン名とIPv6アドレスを紐付け
- 「A」が4つで「クワッドエー」と読む
example.com. AAAA 2001:0db8::1
CNAMEレコード(Canonical Name Record)
- ドメイン名の別名を設定
- 「www.example.com」を「example.com」に転送など
www.example.com. CNAME example.com.
MXレコード(Mail Exchange Record)
- メールサーバーの場所を指定
- メール配信に必須
example.com. MX 10 mail.example.com.
数字(10)は優先度を表し、小さいほど優先されます。
TXTレコード(Text Record)
- テキスト情報を記録
- SPF(メール認証)などに使用
example.com. TXT "v=spf1 include:_spf.google.com ~all"
NSレコード(Name Server Record)
- ドメインのネームサーバーを指定
- 権威DNSサーバーの情報
example.com. NS ns1.example-server.com.
TTL(Time To Live)
各レコードには、TTL(生存時間)が設定されています。
TTLとは
- そのDNS情報をキャッシュしておく時間
- 秒単位で指定
- 期限が切れたら、再度問い合わせる
例
example.com. 3600 A 203.0.113.1
3600秒(1時間)は、この情報を記憶しておいて良いという意味です。
TTLの使い分け
- 長いTTL(86400秒 = 24時間):変更が少ない安定した設定
- 短いTTL(300秒 = 5分):頻繁に変更する場合やメンテナンス前
DNS設定の変更とプロパゲーション
DNS設定を変更すると、全世界に反映されるまで時間がかかります。
プロパゲーション(DNS浸透)とは
定義
- DNS情報の変更が、世界中のDNSサーバーに広がること
- 「DNS浸透」「DNS伝播」とも呼ばれる
なぜ時間がかかる?
1. キャッシュの問題
- 各DNSサーバーが古い情報をキャッシュしている
- TTLの期限が切れるまで、新しい情報を取得しない
2. 段階的な更新
- ルートサーバー → TLDサーバー → 権威サーバー → キャッシュサーバー
- この流れで順番に情報が更新される
3. 地理的な距離
- 世界中に散らばったDNSサーバー
- 更新のタイミングがバラバラ
反映状況の確認方法
1. DNSチェッカーを使う
複数の地点から確認できるWebサービスがあります。
おすすめサービス
- whatsmydns.net
- dnschecker.org
これらのサイトで、世界中の複数地点での反映状況を確認できます。
2. コマンドで確認
# Macの場合
dig example.com @8.8.8.8
# Windowsの場合
nslookup example.com 8.8.8.8
@8.8.8.8
や 8.8.8.8
は、GoogleのパブリックDNSサーバーを指定しています。
DNS変更時の注意点
変更前にやるべきこと
- 現在の設定をメモまたはスクリーンショット
- TTLを短く設定(24時間前が理想)
- メンテナンス時間を設定(アクセスが少ない時間帯)
変更後にやるべきこと
- 複数の地点から反映を確認
- Webサイトの表示確認
- メールの送受信テスト
- TTLを元に戻す
避けるべきタイミング
- 大型連休の直前
- 重要なイベントやキャンペーン中
- 深夜や早朝(トラブル対応が難しい)
パブリックDNSサーバーの活用
ISPが提供するDNSサーバー以外にも、選択肢があります。
パブリックDNSとは
定義
- 誰でも無料で利用できる公開DNSサーバー
- 大手IT企業が提供
メリット
- 高速な名前解決
- 安定性が高い
- セキュリティ機能付きのものも
主要なパブリックDNSサーバー
Google Public DNS
プライマリ: 8.8.8.8
セカンダリ: 8.8.4.4
- 最も有名
- 高速で安定
Cloudflare DNS
プライマリ: 1.1.1.1
セカンダリ: 1.0.0.1
- 最速を謳う
- プライバシー重視
OpenDNS(Cisco)
プライマリ: 208.67.222.222
セカンダリ: 208.67.220.220
- セキュリティ機能
- フィルタリング機能
Quad9
プライマリ: 9.9.9.9
セカンダリ: 149.112.112.112
- セキュリティ重視
- マルウェアドメインをブロック
パブリックDNSの設定方法
Windowsの場合
- 設定 → ネットワークとインターネット
- 状態 → アダプターのオプションを変更
- ネットワーク接続を右クリック → プロパティ
- 「インターネット プロトコル バージョン 4(TCP/IPv4)」を選択
- プロパティをクリック
- 「次のDNSサーバーのアドレスを使う」を選択
- 優先DNSサーバー:8.8.8.8
- 代替DNSサーバー:8.8.4.4
Macの場合
- システム環境設定 → ネットワーク
- 使用中の接続(Wi-Fiなど)を選択
- 「詳細」をクリック
- 「DNS」タブを選択
- 左下の「+」ボタンをクリック
- 8.8.8.8 と 8.8.4.4 を追加
トラブルシューティング
DNSやネームサーバーで問題が起きた時の対処法です。
問題1:Webサイトにアクセスできない
症状
このサイトにアクセスできません
example.com のサーバーの IP アドレスが見つかりませんでした
原因と対処法
原因1:DNS設定が間違っている
- ネームサーバー情報を再確認
- 正しい情報を再設定
原因2:DNS変更の反映待ち
- 最大72時間待つ
- DNSチェッカーで確認
原因3:DNSキャッシュの問題
- キャッシュをクリアする
Windowsでキャッシュクリア
ipconfig /flushdns
Macでキャッシュクリア
sudo dscacheutil -flushcache
sudo killall -HUP mDNSResponder
原因4:ローカルDNSサーバーの障害
- パブリックDNS(8.8.8.8)に変更してみる
問題2:一部の人だけアクセスできない
原因
- DNS情報の反映が地域によってバラバラ
- キャッシュが古い情報を保持
対処法
- 時間を置いて待つ
- 相手にDNSキャッシュのクリアを依頼
- パブリックDNSの使用を提案
問題3:メールが届かない・送れない
原因
- MXレコードの設定ミス
- ネームサーバー変更でMX情報が消えた
確認方法
# Macの場合
dig example.com MX
# Windowsの場合
nslookup -type=mx example.com
対処法
- MXレコードを正しく設定
- SPFレコードも確認
問題4:「権限がありません」エラー
原因
- ドメインの所有者確認ができていない
- レジストラでロックがかかっている
対処法
- ドメインのロック状態を確認
- レジストラの管理画面で認証
- 移管ロックを解除
よくある質問(FAQ)
Q1. ネームサーバーとDNSサーバーは同じもの?
A. はい、ほぼ同じ意味で使われます。
厳密には、DNSサーバーが正式な呼び方で、ネームサーバーはその俗称です。実務では、どちらを使っても問題ありません。
Q2. ネームサーバーの変更は無料?
A. はい、基本的に無料です。
ドメインを持っていれば、ネームサーバーの変更に追加費用はかかりません。ただし、一部のレジストラでは、短期間に何度も変更すると制限がかかる場合があります。
Q3. ネームサーバーを間違えて設定したらどうなる?
A. Webサイトにアクセスできなくなります。
間違ったネームサーバーを設定すると、ドメインの情報が見つからず、サイトが表示されません。正しい情報に戻せば、数時間で復旧します。
Q4. 複数のドメインを1つのネームサーバーで管理できる?
A. はい、可能です。
1つのネームサーバーで、複数のドメインを管理できます。レンタルサーバーで複数のドメインを使う場合も、同じネームサーバーを設定します。
Q5. DNS設定変更中はWebサイトが見られなくなる?
A. 基本的には見られます。
DNS変更中も、古い情報がキャッシュされている間は、通常通りアクセスできます。ただし、新旧両方のサーバーにデータがないと、一時的にアクセスできない人が出る可能性があります。
Q6. 自分でネームサーバーを運用できる?
A. 技術的には可能ですが、推奨しません。
VPSなどでネームサーバーソフト(BINDなど)を動かすことはできますが、高い可用性とセキュリティが求められるため、専門知識が必要です。通常は、サービス提供者のネームサーバーを使う方が安全で確実です。
まとめ|ネームサーバーとDNSはインターネットの基盤
ネームサーバーとDNSは、私たちが普段意識することはありませんが、インターネットを支える重要な仕組みです。
この記事の重要ポイント
- DNSはドメイン名とIPアドレスを結びつけるシステム
- ネームサーバーはDNS情報を管理するサーバー
- 名前解決は複数のサーバーを経由して行われる
- ネームサーバーの変更は、ドメイン管理画面から設定
- 変更の反映には最大72時間かかる
- 複数のネームサーバーを設定することで冗長化できる
- DNSレコードには複数の種類があり、それぞれ役割が異なる
ネームサーバー設定のチェックリスト
- レンタルサーバーのネームサーバー情報を確認
- ドメイン管理画面でネームサーバーを変更
- 反映を待つ(24〜72時間)
- 複数の地点から動作確認
- 問題があれば設定を見直す
最初は難しく感じるかもしれませんが、一度理解してしまえば、ドメインとサーバーの管理がずっと楽になります。
この記事を参考に、あなたのWebサイトを正しくインターネットに公開してくださいね。きっと、うまくいくはずです!
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