Mozilla系ブラウザとは、Mozilla Foundationが開発したレンダリングエンジン「Gecko」を採用しているウェブブラウザの総称です。
本記事では、Mozilla系ブラウザの基本情報から主要な種類、それぞれの特徴までを分かりやすく解説します。
Mozilla系ブラウザの基本情報

Mozilla系ブラウザは、Mozillaプロジェクトが開発した「Gecko」というレンダリングエンジンを使用しています。
レンダリングエンジンとは、Webページの元となるHTML・CSSなどのデータを受け取って、実際に画面に表示する処理を行うプログラムのことです。
Geckoエンジンとは
GeckoはMozilla Foundationによって開発されたオープンソースのレンダリングエンジンで、C++、JavaScript、そして2016年からはRustでも書かれています。
FirefoxやThunderbirdなどの多くのMozilla製品で使用されており、オープンなインターネット標準をサポートすることを設計思想としています。
2017年にリリースされたFirefox 57(Firefox Quantum)では、実験的なServoプロジェクトから取り込んだ多数の改良により、大幅なパフォーマンス向上を実現しました。
ChromiumベースとMozilla系の違い
現在のWebブラウザ市場では、Google ChromeやMicrosoft EdgeなどのChromiumベース(Blinkエンジン)のブラウザが大きなシェアを占めています。
それに対してMozilla系ブラウザは、独立したGeckoエンジンを使用することで、特定企業に依存しない選択肢を提供しています。
Mozilla Foundationは非営利組織であり、利益追求ではなくユーザーのためのソフトウェア開発を理念としている点も、営利企業のGoogleやAppleとは大きく異なります。
主要なMozilla系ブラウザ
Mozilla系ブラウザには、本家のFirefoxをはじめ、さまざまな派生ブラウザが存在します。
以下では、代表的なMozilla系ブラウザを紹介します。
1. Mozilla Firefox
Mozilla Firefoxは、Mozilla Foundationおよびその傘下のMozilla Corporationによって開発されているオープンソースのウェブブラウザです。
2004年にバージョン1がリリースされ、大きなシェアを獲得することに成功しました。
Firefoxの主な特徴
Firefoxは、Windows、macOS、Linux、Android、iOSなど、マルチプラットフォームに対応しています。
プライバシーを重視した設計で、強化型トラッキング防止機能が既定で有効になっており、トラッカーへの情報提供をブロックします。
豊富なアドオン(拡張機能)により、ユーザーの好みに合わせて機能を追加できる高いカスタマイズ性も魅力です。
特にAndroid端末においては、標準ブラウザであるChromeがアドオンに非対応であるのに対し、Firefoxはアドオンが使える貴重なブラウザとなっています。
Firefoxのシェア状況
2024年1月時点でのFirefoxの世界シェアは約8%となっています。
2009年12月時点では32%のシェアを占めていましたが、その後Chromeの台頭により徐々にシェアを下げました。
しかし、2017年のFirefox Quantum登場により、一時的にシェアが回復する動きも見られています。
2. Floorp(フロープ)
Floorpは、日本の学生コミュニティ「Ablaze」が開発している、FirefoxベースのWebブラウザです。
高校2年生だった浅野凌輔氏が2021年にリリースし、現在は東洋大学情報連携学部に通いながら開発を続けています。
Floorpの主な特徴
Floorpは、Firefox ESR版をベースに4週間ごとにアップデートを受け取っており、最新のセキュリティが維持されています。
多機能なサイドバー、ワークスペース機能、PWA(プログレッシブウェブアプリ)対応、カスタムCSSなど、多数の独自機能が追加されています。
垂直タブや多段タブに対応し、大量のタブを扱うのに適した設計となっています。
また、分割ビュー機能により、2つのタブで開いたウェブページを左右または上下に並べて同時に閲覧することも可能です。
Floorpのプライバシー機能
Floorpではユーザーからデータを収集しておらず、Firefoxに含まれる不要なテレメトリオプションも無効化されています。
フィンガープリントに対する強力な保護を設定できるほか、WebGLやWebRTCの有効/無効を切り替えられるなど、個人や端末を特定するメカニズムを抑制できる機能が備わっています。
2024年10月時点でアクティブユーザー数が5万人を超えており、日本製ブラウザとして着実に成長を続けています。
3. Waterfox
Waterfoxは、プライバシーとユーザビリティのバランスを重視したFirefox派生ブラウザです。
初期の64ビットブラウザの先駆けとして、速度向上を主な目標として開発がスタートしました。
Waterfoxの主な特徴
Waterfoxは、Chrome Web Store、Opera Web Store、Firefox Storeに対応しており、最も広範な拡張機能サポートを提供しています。
プライバシー重視の設計でありながら、過度なプライバシー保護によってWebが使いにくくなることを避け、実用性とのバランスを取っています。
ユーザーのオンライン活動が他者と共有されないことを保証しており、プライバシー保護がブラウザの基本理念となっています。
なお、一部の情報によるとセキュリティアップデートの適用が遅れる傾向があるため、セキュリティを重視する場合は注意が必要です。
4. LibreWolf
LibreWolfは、Firefoxの最新安定版をベースにした、プライバシーとセキュリティに特化したフォークです。
2020年3月7日にLinux向けに初めてリリースされ、その後WindowsやmacOS版も登場しました。
LibreWolfの主な特徴
LibreWolfは、実験的機能、アドウェア、テレメトリを一切含まず、クリーンなブラウジング体験を提供します。
デフォルトでは、ブラウザを閉じるとCookieや履歴を削除する設定になっていますが、この機能は無効にすることも可能です。
uBlock Originが標準でインストールされており、追加の推奨アドオンは個別に手動でインストールする必要があります。
LibreWolfの注意点
強力なプライバシー保護機能により、一部のWebサイトでは正常に動作しない可能性があります。
デフォルトでFirefox Syncが無効になっているため、デバイス間の同期機能を使用したい場合は設定で有効化する必要があります。
2025年12月には、開発者が生成AIに関連する機能をサポートせず、Firefoxに既に存在する機能も削除すると表明しました。
5. Pale Moon
Pale Moonは、かつてFirefox ESRから派生したブラウザでしたが、現在は「Goanna」という独自のレンダリングエンジンを使用しています。
GoannaはGeckoからフォークされたエンジンで、Pale Moon独自の開発方針に沿って進化しています。
Pale Moonの主な特徴
Pale Moonは、広く受け入れられたWeb標準と仕様に厳密に従うことを設計哲学としています。
完全なテーマのカスタマイズに対応しており、Firefox 57以前に存在していたような外観の変更が可能です。
また、XUL拡張機能プラットフォームを維持しており、レガシーアドオンを引き続き使用できます。
Pale Moonの注意点
Mozillaのセキュリティアップデートをすべて実装しているわけではないと、公式サイトで明記されています。
そのため、セキュリティを最優先する場合は、他のより頻繁にアップデートされるブラウザを検討することをおすすめします。
また、一部の最新Web技術に対応していないため、現代的なWebサイトで互換性の問題が発生する可能性があります。
6. SeaMonkey
SeaMonkeyは、ウェブブラウザ、メールクライアント、HTMLエディター、IRCクライアントを統合したインターネットアプリケーションスイートです。
2005年にMozilla Foundationが独立したFirefoxとThunderbirdに注力することを決めた後、コミュニティ主導で開発が継続されています。
SeaMonkeyの主な特徴
SeaMonkeyは、Netscape Communicatorの構成をルーツとしており、複数のインターネットツールが1つのアプリケーションに統合されています。
ウェブブラウザ部分はGeckoエンジンを採用し、メールクライアント部分はThunderbirdと同じコードを共有しています。
Firefoxよりも伝統的なインターフェースを保持しており、レガシーXPCOMベースのアドオンシステムを引き続きサポートしています。
また、WYSIWYG HTMLエディター「Composer」も含まれており、ウェブページの作成が可能です。
7. Tor Browser
Tor Browserは、Firefoxをベースに開発された、匿名性とプライバシー保護に特化したウェブブラウザです。
Torネットワークを使用することで、ユーザーの身元とオンライン活動を保護します。
Tor Browserの主な特徴
Tor Browserを使用すると、インターネット上での活動がISPや政府、監視型マーケティング業者から見えなくなります。
ただし、外部からはTorを使用していること自体は分かってしまう点に注意が必要です。
プライバシー保護を最優先する設計のため、通常のブラウザと比べて読み込み速度が遅くなる傾向があります。
Mozilla系ブラウザの共通する特徴
Mozilla系ブラウザには、いくつかの共通する特徴があります。
プライバシー重視の設計
多くのMozilla系ブラウザは、ユーザーのプライバシー保護を重要視しています。
トラッキング防止機能、プライベートブラウジングモード、テレメトリの無効化など、さまざまなプライバシー保護機能が標準搭載されています。
高いカスタマイズ性
Firefoxのアドオンシステムに対応しており、豊富な拡張機能を利用できます。
また、userChrome.cssやカスタムCSSによる外観のカスタマイズも可能で、自分好みのブラウザ環境を構築できます。
オープンソース
Mozilla系ブラウザの多くはオープンソースとして公開されており、誰でもソースコードを確認できます。
これにより、セキュリティ上の問題をコミュニティが発見・指摘できるほか、改善のアイデアを自由に反映することも可能です。
独立したレンダリングエンジン
ChromiumベースのブラウザがWeb市場を独占する中、Geckoエンジンを使用することで、特定企業に依存しない選択肢を提供しています。
これは、健全なWeb生態系の維持にとって重要な役割を果たしています。
Mozilla系ブラウザを選ぶメリット

Mozilla系ブラウザには、以下のようなメリットがあります。
プライバシー保護の強化
ChromeやEdgeと比較して、ユーザーのプライバシー保護に重点を置いた設計となっています。
データ収集が最小限に抑えられており、広告追跡やトラッキングから身を守りやすくなっています。
多様な選択肢
プライバシー重視のLibreWolf、日本製のFloorp、統合スイートのSeaMonkeyなど、用途に応じて最適なブラウザを選べます。
それぞれが独自の特徴を持っているため、自分のニーズに合ったものを見つけやすくなっています。
拡張性の高さ
豊富なアドオンとカスタマイズオプションにより、自分だけのブラウジング環境を構築できます。
特にAndroid版Firefoxでは、モバイルでもアドオンが使える貴重な存在となっています。
非営利組織による開発
Mozilla Foundationは非営利組織であり、ユーザーの利益を最優先に開発が進められています。
営利企業のように、広告収入やデータ収集を目的とした機能が強制されることがありません。
Mozilla系ブラウザのデメリット
一方で、Mozilla系ブラウザには以下のようなデメリットも存在します。
シェアの低下
かつては高いシェアを誇っていましたが、現在はChromeに押されて市場シェアが減少しています。
このため、一部のWebサイトでは動作確認が不十分で、表示崩れや機能の不具合が発生する可能性があります。
パフォーマンスの課題
Firefox Quantumにより大幅に改善されたものの、Chromeと比較すると、一部のケースでパフォーマンスが劣ることがあります。
特に大量のタブを開いた際のメモリ使用量が多くなる傾向があります。
派生ブラウザのアップデート遅延
一部の派生ブラウザでは、セキュリティアップデートの適用が本家Firefoxより遅れる場合があります。
セキュリティを最優先する場合は、定期的にアップデートされているブラウザを選ぶ必要があります。
Mozilla系ブラウザの選び方
用途や重視するポイントに応じて、適切なMozilla系ブラウザを選びましょう。
安定性と互換性を重視する場合
本家のMozilla Firefoxが最も安定しており、定期的なアップデートとサポートが受けられます。
Webサイトの互換性も高く、日常使いに最適です。
プライバシーを最優先する場合
LibreWolfやTor Browserがおすすめです。
ただし、一部のWebサイトで動作しない可能性があることを理解しておく必要があります。
カスタマイズ性を重視する場合
Floorpは、垂直タブ、ワークスペース、分割ビューなど、豊富なカスタマイズ機能を標準搭載しています。
日本製で日本語サポートも充実しているため、日本のユーザーには特におすすめです。
メール機能も必要な場合
SeaMonkeyは、ブラウザとメールクライアント、HTMLエディターなどが統合されたスイートです。
複数のアプリケーションを使い分ける手間を省けます。
まとめ
Mozilla系ブラウザは、Geckoエンジンを採用したプライバシー重視のウェブブラウザです。
本家のFirefoxをはじめ、日本製のFloorp、プライバシー特化のLibreWolf、統合スイートのSeaMonkeyなど、さまざまな選択肢があります。
Chromiumベースのブラウザが主流となる中、独立したエンジンを使用するMozilla系ブラウザは、健全なWeb生態系を維持する上で重要な役割を果たしています。
プライバシー保護、高いカスタマイズ性、オープンソースという特徴を持つMozilla系ブラウザは、自分のデータを大切にしたいユーザーにとって魅力的な選択肢となるでしょう。
自分の用途や重視するポイントに合わせて、最適なMozilla系ブラウザを選んでみてください。

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