インターネットのNATとは?仕組みから設定まで完全理解ガイド

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家にあるWi-Fiルーター、実は通訳のような仕事をしているって知っていましたか?

スマホ、パソコン、ゲーム機、スマートTV…家の中の機器が同時にインターネットを使えるのは、**NAT(ナット)**という技術のおかげなんです。

「オンラインゲームで『NATタイプが…』って表示を見たことがある」 「ポート開放がうまくいかない」 「IPv4とかIPv6とか聞くけど、よく分からない」

こんな経験がある方も多いはず。

この記事では、NATの仕組みを身近な例えで分かりやすく解説し、日常生活でどう関わっているのか、トラブルの解決方法まで詳しく説明していきます。


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  1. NATを一言で説明すると
    1. NAT = Network Address Translation(ネットワーク・アドレス・トランスレーション)
    2. マンションの例えで理解する
  2. なぜNATが必要なのか:IPアドレス不足問題
    1. IPアドレスって何?
    2. 深刻な住所不足
    3. NATが問題を解決
  3. NATの仕組み:どうやって変換しているの?
    1. 基本的な動作
    2. NATテーブルの役割
  4. NATの種類と特徴
    1. 1. スタティックNAT(1対1 NAT)
    2. 2. ダイナミックNAT
    3. 3. NAPT/PAT(最も一般的)
  5. NATタイプ:ゲームで重要な3つの分類
    1. オンラインゲームでよく見る「NATタイプ」
    2. 3つのNATタイプ
  6. 実生活でのNATの影響
    1. オンラインゲーム
    2. リモートワーク
    3. 防犯カメラ・スマートホーム
    4. P2Pファイル共有
  7. NATのメリット・デメリット
    1. メリット
    2. デメリット
  8. トラブルシューティング:よくある問題と解決法
    1. 問題1:オンラインゲームでNATタイプが「厳しい」
    2. 問題2:外部から自宅サーバーにアクセスできない
    3. 問題3:VPN接続ができない
    4. 問題4:複数のゲーム機で同時にオンラインプレイできない
  9. ルーター設定ガイド
    1. 基本的な設定手順
    2. メーカー別設定例
  10. IPv6時代のNAT
    1. IPv6でNATは不要?
    2. IPv6でのNAT(NAT64/DNS64)
  11. 実践:NATタイプを改善する手順
    1. ステップ1:現状確認
    2. ステップ2:ゲーム機に固定IP割り当て
    3. ステップ3:必要なポートを転送
    4. ステップ4:動作確認
  12. セキュリティを保ちながらNATを緩和する
    1. 推奨設定の優先順位
    2. セキュリティ対策
  13. まとめ:NATと上手に付き合う方法

NATを一言で説明すると

NAT = Network Address Translation(ネットワーク・アドレス・トランスレーション)

日本語にすると「ネットワークアドレス変換」です。

もっと簡単に言うと: 「家の中の機器のプライベートな住所を、インターネット用の公開住所に変換する技術」

マンションの例えで理解する

NATの仕組みは、マンションの郵便受けによく似ています。

インターネット = 外の世界
マンション = あなたの家
マンションの住所 = グローバルIPアドレス(公開住所)
部屋番号 = プライベートIPアドレス(内部住所)
管理人 = ルーター(NAT機能)

郵便物(データ)の流れ:

  1. 外から郵便物が「○○マンション」宛に届く
  2. 管理人が「部屋番号」を確認して各部屋に配達
  3. 住人が郵便を出すときは、管理人が「○○マンション発」として外に出す

これがまさにNATがやっていることなんです!


なぜNATが必要なのか:IPアドレス不足問題

IPアドレスって何?

IPアドレスは、インターネット上の住所です。 世界中のすべての機器が通信するには、それぞれ固有の住所が必要です。

例:
192.168.1.1(プライベートIPアドレス)
203.0.113.1(グローバルIPアドレス)

深刻な住所不足

IPv4アドレスの限界:

  • 総数:約43億個(2^32)
  • 世界人口:約80億人
  • スマホ、PC、IoT機器…一人で複数台

明らかに足りません!

NATが問題を解決

外の世界(インターネット)
    ↑
グローバルIP: 203.0.113.1(1つだけ)
    ↑
  [ルーター]
    ↑
家の中(プライベートネットワーク)
├─ PC: 192.168.1.2
├─ スマホ: 192.168.1.3
├─ ゲーム機: 192.168.1.4
└─ タブレット: 192.168.1.5

1つのグローバルIPを家族全員でシェア!


NATの仕組み:どうやって変換しているの?

基本的な動作

1. 内部から外部への通信(アウトバウンド)

[変換前]
送信元: 192.168.1.2:5000(PC)
宛先: 93.184.216.34:80(Webサイト)
    ↓
[NATによる変換]
    ↓
[変換後]
送信元: 203.0.113.1:30000(ルーターが割り当て)
宛先: 93.184.216.34:80(そのまま)

2. 外部から内部への返信(インバウンド)

[返信データ]
送信元: 93.184.216.34:80(Webサイト)
宛先: 203.0.113.1:30000
    ↓
[NATテーブルを確認]
30000番 → 192.168.1.2:5000 へ転送
    ↓
[変換後]
送信元: 93.184.216.34:80
宛先: 192.168.1.2:5000(PC)

NATテーブルの役割

ルーターは「NATテーブル」という対応表を持っています。

外部ポート内部IP:ポート状態タイムアウト
30000192.168.1.2:5000有効300秒
30001192.168.1.3:8080有効300秒
30002192.168.1.4:3074有効120秒

この表を使って、どのデータをどの機器に送るか判断します。


NATの種類と特徴

1. スタティックNAT(1対1 NAT)

特徴:

  • 1つの内部IPを1つの外部IPに固定マッピング
  • 常に同じ変換ルール

使用例:

192.168.1.10 ←→ 203.0.113.10(常に固定)

用途:

  • Webサーバーの公開
  • 企業の特定機器への外部アクセス

2. ダイナミックNAT

特徴:

  • 複数の外部IPアドレスをプール
  • 使用時に動的に割り当て

使用例:

IPプール: 203.0.113.1 〜 203.0.113.10
内部機器が通信開始時に空いているIPを割り当て

3. NAPT/PAT(最も一般的)

NAPT = Network Address Port Translation PAT = Port Address Translation

特徴:

  • 1つの外部IPを複数の内部機器で共有
  • ポート番号で識別

家庭用ルーターはほぼこれ!

外部IP:ポート ←→ 内部IP:ポート
203.0.113.1:30000 ←→ 192.168.1.2:5000
203.0.113.1:30001 ←→ 192.168.1.3:8080
203.0.113.1:30002 ←→ 192.168.1.4:3074

NATタイプ:ゲームで重要な3つの分類

オンラインゲームでよく見る「NATタイプ」

PlayStationやXbox、Nintendo Switchでオンラインプレイをする時、こんな表示を見たことはありませんか?

NATタイプ: タイプ2
NATタイプ: モデレート
NATタイプ: B

これは通信のしやすさを表しています。

3つのNATタイプ

タイプ1 / オープン / A

特徴:

  • 最も制限が少ない
  • すべてのユーザーと接続可能
  • 直接インターネットに接続またはDMZ設定

メリット: ✅ マッチングが早い ✅ ボイスチャットが安定 ✅ ホストになれる

デメリット: ❌ セキュリティリスクが高い

タイプ2 / モデレート / B

特徴:

  • 適度な制限
  • ほとんどのユーザーと接続可能
  • 一般的な家庭用ルーター設定

メリット: ✅ バランスが良い ✅ セキュリティも確保 ✅ 多くのゲームで問題なし

デメリット: ❌ タイプ3のユーザーとは接続困難な場合も

タイプ3 / ストリクト / C

特徴:

  • 最も制限が厳しい
  • 接続できるユーザーが限定的
  • ポート開放されていない

メリット: ✅ セキュリティは最も高い

デメリット: ❌ マッチングに時間がかかる ❌ ボイスチャットが不安定 ❌ ホストになれない


実生活でのNATの影響

オンラインゲーム

影響を受ける要素:

  • マッチングの速度
  • 接続の安定性
  • ボイスチャット品質
  • ホストプレイヤーになれるか

改善方法:

1. UPnP を有効化
2. 必要なポートを開放
3. DMZ設定(最終手段)

リモートワーク

VPN接続:

  • NATが厳しいと接続できない場合がある
  • IPsec、PPTP、L2TPなど方式により影響度が違う

リモートデスクトップ:

  • 外部から自宅PCへの接続にはポート転送が必要
  • TeamViewerなどはNATを回避する仕組みあり

防犯カメラ・スマートホーム

外出先からの確認:

  • 専用アプリはクラウド経由でNATを回避
  • 直接接続にはポート転送設定が必要

P2Pファイル共有

BitTorrent等:

  • NATが厳しいと速度低下
  • ポート開放で改善

NATのメリット・デメリット

メリット

1. IPアドレスの節約

1つのグローバルIP → 数百台の機器で共有可能
月額料金の節約(プロバイダーのIPアドレス追加料金不要)

2. セキュリティの向上

外部から内部機器への直接アクセスを防ぐ
ファイアウォールのような役割
プライベートIPは外部から見えない

3. ネットワーク構成の柔軟性

内部ネットワークの変更が外部に影響しない
機器の追加・削除が簡単

デメリット

1. エンドツーエンド通信の制限

P2P通信が困難
ビデオ通話の品質低下
オンラインゲームの制限

2. 設定の複雑さ

ポート転送の設定が必要
トラブルシューティングが難しい

3. パフォーマンスへの影響

変換処理による遅延(通常は数ミリ秒)
ルーターの負荷増大

トラブルシューティング:よくある問題と解決法

問題1:オンラインゲームでNATタイプが「厳しい」

解決法1:UPnPを有効化

ルーター管理画面 → 詳細設定 → UPnP → 有効

解決法2:ポート転送設定

PlayStation:
TCP: 80, 443, 3478, 3479, 3480
UDP: 3478, 3479

Xbox:
TCP: 3074
UDP: 88, 500, 3074, 3544, 4500

Nintendo Switch:
TCP: 6667, 12400, 28910
UDP: 1-65535(推奨範囲)

解決法3:DMZ設定(最終手段)

ゲーム機のIPアドレスをDMZに設定
※セキュリティリスクあり

問題2:外部から自宅サーバーにアクセスできない

解決法:ポート転送設定

例:Webサーバー(ポート80)を公開
外部ポート: 80 → 内部IP: 192.168.1.10:80

問題3:VPN接続ができない

解決法:パススルー設定

PPTPパススルー: 有効
IPSecパススルー: 有効
L2TPパススルー: 有効

問題4:複数のゲーム機で同時にオンラインプレイできない

解決法:

  1. 各ゲーム機に固定IPを割り当て
  2. それぞれ異なるポート範囲を転送
  3. またはUPnPで自動設定

ルーター設定ガイド

基本的な設定手順

1. ルーター管理画面にアクセス

一般的なアドレス:
・192.168.1.1
・192.168.0.1
・192.168.11.1

ブラウザのアドレスバーに入力

2. ログイン

初期設定の例:
ユーザー名: admin
パスワード: admin または password
※必ず変更しましょう

3. NAT関連の設定場所

一般的な場所:
・詳細設定 → NAT
・セキュリティ → ポート転送
・ゲーム&アプリケーション
・仮想サーバー

メーカー別設定例

Buffalo(バッファロー):

Internet → ポート変換
ゲーム&アプリ → ポート変換

NEC Aterm:

詳細設定 → ポートマッピング

ELECOM(エレコム):

WAN&LAN設定 → ポート転送

IPv6時代のNAT

IPv6でNATは不要?

IPv6の特徴:

  • アドレス数:約340澗個(実質無限)
  • すべての機器にグローバルIPを割り当て可能

でも実際は…

  • セキュリティのためNATを使う場合も
  • IPv4との共存期間はまだ続く
  • 当面はIPv4とIPv6の併用(デュアルスタック)

IPv6でのNAT(NAT64/DNS64)

IPv6のみの機器 → NAT64 → IPv4のWebサイト

IPv4とIPv6の橋渡し役として活躍しています。


実践:NATタイプを改善する手順

ステップ1:現状確認

# Windows
ipconfig /all

# 確認項目
・デフォルトゲートウェイ(ルーターのIP)
・自分のプライベートIP

ステップ2:ゲーム機に固定IP割り当て

例:PS5に192.168.1.50を割り当て

1. PS5のMACアドレスを確認
2. ルーターでDHCP予約設定
3. 常に同じIPが割り当てられる

ステップ3:必要なポートを転送

ルーター設定例:
名前: PS5_TCP
プロトコル: TCP
外部ポート: 80,443,3478-3480
内部IP: 192.168.1.50
内部ポート: 80,443,3478-3480

ステップ4:動作確認

ゲーム機のネットワーク診断
NATタイプの確認
接続テスト実施

セキュリティを保ちながらNATを緩和する

推奨設定の優先順位

  1. UPnP(最も安全)
    • 必要な時だけポートを開く
    • 自動で管理
  2. 個別ポート転送(やや安全)
    • 必要最小限のポートのみ
    • 特定の機器のみ
  3. DMZ(危険)
    • 最終手段
    • ゲーム専用機のみ

セキュリティ対策

✅ ファームウェアを最新に保つ
✅ 管理画面のパスワードを強固に
✅ 不要なポートは閉じる
✅ ログを定期的に確認
✅ ゲスト用と家庭用でネットワークを分離

まとめ:NATと上手に付き合う方法

NATは、限られたIPアドレスを有効活用し、セキュリティも提供する重要な技術です。

押さえておくべきポイント:

NATの基本

  • 内部IPと外部IPを変換
  • 1つのグローバルIPを複数機器で共有
  • セキュリティの向上にも貢献

日常生活への影響

  • オンラインゲームのマッチング
  • リモートワークの接続
  • スマートホーム機器の外部アクセス

トラブル解決の基本

  1. UPnPを試す
  2. 必要なポートを開放
  3. それでもダメならDMZ(要注意)

将来の展望

  • IPv6普及でNATの役割は変化
  • しばらくは共存が続く
  • セキュリティ面でのNATは残る

NATを理解することで、ネットワークトラブルの多くが解決できるようになります。

この知識を活かして、快適なインターネット生活を楽しんでください!

Happy Networking! 🌐


用語集:

  • NAT: Network Address Translation
  • IP: Internet Protocol
  • UPnP: Universal Plug and Play
  • DMZ: DeMilitarized Zone(非武装地帯)
  • DHCP: Dynamic Host Configuration Protocol

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