ICANNとは?インターネットの住所管理を支える組織を徹底解説

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「example.comってドメイン名、誰が管理しているんだろう?」
「インターネットって、誰かが全体を管理してるの?」

私たちが毎日使っているインターネット。実は、その裏側で重要な役割を果たしている組織があります。それがICANN(アイキャン)です。

ICANNは、ドメイン名やIPアドレスなど、インターネットの「住所システム」を管理している国際的な非営利組織。あまり知られていませんが、インターネットが正常に機能するために欠かせない存在なんです。

この記事では、ICANNの役割から実際の影響まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます!


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  1. ICANNとは?基本を理解しよう
    1. 一言で説明すると
    2. 身近な例で理解しよう
    3. 設立の背景
  2. ICANNの主な役割
    1. 1. ドメイン名の管理
    2. 2. IPアドレスの管理
    3. 3. ルートサーバーの監督
    4. 4. プロトコルパラメータの管理
  3. ドメイン名の仕組み
    1. ドメイン名の構造
    2. トップレベルドメイン(TLD)の種類
  4. レジストリとレジストラ
    1. レジストリ(登録管理組織)
    2. レジストラ(登録事業者)
    3. 階層構造
  5. WHOISデータベース
    1. WHOISとは
    2. WHOISの検索方法
    3. プライバシー保護
  6. ICANNの組織構造
    1. マルチステークホルダーモデル
    2. 主要な組織
    3. 日本との関わり
  7. ドメイン名紛争解決
    1. UDRP(統一ドメイン名紛争処理方針)
    2. 実際のケース
  8. ICANNとインターネットガバナンス
    1. IANAの役割
    2. アメリカ政府からの独立
  9. 新gTLDプログラム
    1. 2012年の大規模拡大
    2. 申請プロセス
    3. 人気の新gTLD
  10. ICANNとセキュリティ
    1. DNSSEC(DNS Security Extensions)
    2. ルートサーバーの保護
  11. ドメイン名の取得方法
    1. ステップ1:ドメイン名を考える
    2. ステップ2:レジストラを選ぶ
    3. ステップ3:空き状況を確認
    4. ステップ4:登録
    5. ステップ5:ネームサーバー設定
  12. ICANNの課題と未来
    1. 現在の課題
    2. IPv6への移行
    3. IDN(国際化ドメイン名)
  13. よくある質問
    1. Q1. ICANNにドメインを申請するの?
    2. Q2. ICANNはインターネットの内容も管理してる?
    3. Q3. ドメイン名は買い取り?
    4. Q4. .comと.jpの違いは?
    5. Q5. ICANNの会議は見学できる?
  14. まとめ:ICANNはインターネットの縁の下の力持ち

ICANNとは?基本を理解しよう

一言で説明すると

ICANN(アイキャン)は、インターネットのドメイン名とIPアドレスを管理する国際的な非営利組織です。

正式名称は「Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(インターネット名前番号割当機関)」といいます。

身近な例で理解しよう

郵便システムをイメージしてください。

郵便番号の管理(IPアドレス管理):

  • 日本郵便が全国の郵便番号を決めている
  • 重複しないように管理
  • 新しい住所には新しい番号を割り当て

住所の登録(ドメイン名管理):

  • 「東京都新宿区〇〇」という住所を記録
  • 誰が使っているか管理
  • 同じ住所が二重登録されないようにする

ICANNは、インターネット版の「郵便システム管理者」のような役割を果たしているんです。

設立の背景

1998年設立:
アメリカ・カリフォルニア州に本部を置く非営利法人として誕生しました。

設立理由:

  • インターネットの商業化
  • 国際的な管理体制の必要性
  • アメリカ政府からの独立

それ以前は、アメリカ政府が主導していましたが、インターネットの世界的な普及に伴い、国際的で民間主導の組織が必要になったんです。


ICANNの主な役割

1. ドメイン名の管理

最も重要な役割の一つです。

ドメイン名とは:

https://www.example.com
              ↑
    この部分(example.com)

管理内容:

  • 新しいドメイン名の登録ルール策定
  • トップレベルドメイン(TLD)の承認
  • ドメイン名の紛争解決
  • WHOISデータベースの管理

具体例:
「.com」「.jp」「.net」などのルールを決めているのがICANNです。

2. IPアドレスの管理

インターネット上の「住所」を管理します。

IPアドレスとは:

192.168.1.1(IPv4)
2001:db8::1(IPv6)

コンピュータやサーバーに割り当てられる数字の住所です。

管理方法:

  • 地域ごとにIPアドレスを割り当て
  • 枯渇対策(IPv6への移行)
  • 使用状況の監視

ICANNは直接割り当てるのではなく、地域インターネットレジストリ(RIR)を通じて管理しています。

3. ルートサーバーの監督

DNSの頂点にあるルートサーバーを監督します。

ルートサーバーとは:
インターネットの「住所録の大元」となるサーバー。世界に13個のルートサーバーシステムがあります。

役割:

  • 全てのドメイン名検索の起点
  • インターネットの安定性の要
  • 24時間365日の稼働が必須

4. プロトコルパラメータの管理

インターネットの通信ルールに関する番号を管理します。

管理対象:

  • ポート番号
  • プロトコル番号
  • 文字コード

例:

HTTP:ポート80
HTTPS:ポート443

これらの番号が重複しないよう管理しています。


ドメイン名の仕組み

ドメイン名の構造

ドメイン名は階層構造になっています。

www.example.co.jp
 │    │      │  │
 │    │      │  └─ トップレベルドメイン(TLD)
 │    │      └──── セカンドレベルドメイン
 │    └─────────── サードレベルドメイン
 └──────────────── ホスト名

右から左へ読む:

  • jp:日本の国別TLD
  • co:企業(commercial)
  • example:企業名や団体名
  • www:サーバー名

トップレベルドメイン(TLD)の種類

ICANNが承認・管理する最上位のドメインです。

gTLD(Generic TLD – 分野別TLD):
特定の国に限定されないドメイン

.com:商業用(最も人気)
.net:ネットワーク関連
.org:非営利組織
.edu:教育機関
.gov:アメリカ政府機関
.info:情報提供
.biz:ビジネス

ccTLD(Country Code TLD – 国別TLD):
各国に割り当てられたドメイン

.jp:日本
.us:アメリカ
.uk:イギリス
.cn:中国
.de:ドイツ
.kr:韓国

新gTLD:
2013年以降、ICANNが新たに承認した多様なTLD

.tokyo:東京
.shop:ショップ
.app:アプリケーション
.blog:ブログ
.xyz:汎用

現在、1,000種類以上のTLDが存在します。


レジストリとレジストラ

ドメイン名管理には、重要な2つの役割があります。

レジストリ(登録管理組織)

役割:
各TLDのデータベースを管理する大元の組織

例:

  • .com / .net:Verisign(ベリサイン)
  • .jp:JPRS(日本レジストリサービス)
  • .org:Public Interest Registry

仕事内容:

  • ドメイン名のデータベース管理
  • DNSルートサーバーへの情報提供
  • レジストラへのサービス提供

レジストラ(登録事業者)

役割:
一般ユーザーからドメイン名の登録申請を受け付ける事業者

例:

  • お名前.com
  • ムームードメイン
  • GoDaddy
  • Google Domains(現在はSquarespaceに移管)

仕事内容:

  • 個人や企業からのドメイン登録受付
  • 更新手続きの管理
  • カスタマーサポート

階層構造

ICANN(ルール策定)
  ↓
レジストリ(データベース管理)
  ↓
レジストラ(窓口)
  ↓
ユーザー(あなた)

私たちがドメインを取得する時は、レジストラを通じて申請しているんです。


WHOISデータベース

WHOISとは

ドメイン名の登録者情報を公開するデータベースシステムです。

公開される情報:

  • 登録者名
  • 登録者の連絡先(メール、電話、住所)
  • ドメイン登録日
  • 有効期限
  • ネームサーバー情報

WHOISの検索方法

Webサイトから:
多くのドメイン管理会社が検索サービスを提供しています。

https://whois.icann.org/

ICANNの公式WHOISページで検索できます。

コマンドラインから:

whois example.com

プライバシー保護

WHOIS情報の公開は義務:
ドメイン登録時、正確な情報提供が求められます。

個人情報保護サービス:
多くのレジストラが「WHOISプライバシー保護」サービスを提供しています。

仕組み:

  • 個人情報の代わりにレジストラの情報を表示
  • 実際の連絡先は隠される
  • メールは転送される

GDPR(EU一般データ保護規則)の影響:
2018年以降、ヨーロッパのプライバシー法により、WHOISの公開情報が制限されるようになりました。


ICANNの組織構造

マルチステークホルダーモデル

ICANNの特徴は、様々な利害関係者が意思決定に参加する点です。

参加者:

  • 政府代表
  • 企業
  • 技術者コミュニティ
  • 市民団体
  • 個人ユーザー

一つの国や企業が独占するのではなく、国際的な協力体制で運営されています。

主要な組織

理事会(Board of Directors):
最終的な意思決定機関

GNSO(Generic Names Supporting Organization):
gTLDに関する政策を議論

ccNSO(Country Code Names Supporting Organization):
ccTLDに関する政策を議論

ALAC(At-Large Advisory Committee):
個人インターネットユーザーの代表

GAC(Governmental Advisory Committee):
各国政府の代表による助言組織

日本との関わり

JPNIC(Japan Network Information Center):
日本のIPアドレスやAS番号の管理を担当

JPRS(株式会社日本レジストリサービス):
.jpドメインのレジストリ

日本からもICANNの会議や政策決定に参加しています。


ドメイン名紛争解決

UDRP(統一ドメイン名紛争処理方針)

商標権などを侵害するドメイン名の問題を解決する制度です。

対象となる問題:

サイバースクワッティング:
有名企業や商標を悪用したドメイン取得

例:

  • 「nike-shoes.com」を第三者が登録
  • 「apple-support.com」で詐欺サイト運営

解決の流れ:

  1. 商標権者が申立て
  2. 仲裁機関が審査
  3. 判断(移転、削除、維持)

日本の仲裁機関:

  • 日本知的財産仲裁センター

実際のケース

有名な事例:

  • microsoft.com:初期に第三者が登録していたが、Microsoftが取り戻した
  • 多数の企業が、自社商標を含むドメインを回収

ICANNとインターネットガバナンス

IANAの役割

IANA(Internet Assigned Numbers Authority):
ICANNの一部門で、実際の技術的管理を担当

管理内容:

  • ルートゾーンファイルの管理
  • IPアドレス空間の割り当て
  • プロトコルパラメータの登録

アメリカ政府からの独立

2016年:歴史的な転換点

それまでアメリカ商務省が監督していたIANA機能が、国際的なマルチステークホルダーコミュニティに移管されました。

意義:

  • インターネットの真の国際化
  • 単一国家の影響力排除
  • グローバルガバナンスの実現

新gTLDプログラム

2012年の大規模拡大

ICANNは2012年、新しいgTLDを大量に認可しました。

背景:

  • 既存のTLD(.com、.netなど)の不足
  • 多様性の要求
  • ビジネス機会の創出

申請プロセス

費用:

  • 申請料:約185,000ドル(約2,000万円)
  • 高額なため、主に大企業や自治体が申請

審査基準:

  • 技術的能力
  • 財政的安定性
  • 運営計画

日本の例:

  • .tokyo(東京都)
  • .nagoya(名古屋市)
  • .yokohama(横浜市)

人気の新gTLD

.xyz:最も人気の新gTLD
.top:中国で人気
.online:オンラインビジネス向け
.site:汎用
.app:Googleが運営、アプリ開発者向け

ICANNとセキュリティ

DNSSEC(DNS Security Extensions)

DNSの通信を保護する技術で、ICANNが推進しています。

目的:

  • DNSキャッシュポイズニング攻撃の防止
  • なりすましサイトへの誘導防止

仕組み:
DNS応答にデジタル署名を付けて、改ざんを検知します。

ルートサーバーの保護

Anycast技術:
13個の論理的なルートサーバーは、実際には世界中に数百のサーバーが分散配置されています。

目的:

  • DDoS攻撃への耐性
  • 災害時の冗長性
  • 地理的に近いサーバーへのアクセス

ドメイン名の取得方法

実際にドメインを取得する流れを見てみましょう。

ステップ1:ドメイン名を考える

ポイント:

  • 短くて覚えやすい
  • ブランド名やサービス名
  • スペルミスされにくい

ステップ2:レジストラを選ぶ

日本の主要レジストラ:

  • お名前.com
  • ムームードメイン
  • さくらインターネット
  • Value Domain

海外の主要レジストラ:

  • GoDaddy
  • Namecheap
  • Cloudflare Registrar

ステップ3:空き状況を確認

レジストラのサイトで、希望するドメイン名が利用可能か検索します。

ステップ4:登録

必要情報:

  • 氏名または組織名
  • メールアドレス
  • 住所
  • 電話番号

料金:

.com:年間1,000〜2,000円程度
.jp:年間3,000〜4,000円程度
.tokyo:年間1,500円程度

価格はレジストラによって異なります。

ステップ5:ネームサーバー設定

ドメイン名をウェブサイトやメールサーバーに紐付けます。

DNS設定:

Aレコード:example.com → 192.0.2.1
MXレコード:メールサーバーの指定
CNAMEレコード:www.example.com → example.com

ICANNの課題と未来

現在の課題

1. プライバシーとセキュリティのバランス

  • WHOIS情報の公開範囲
  • GDPRなどの法規制との調整

2. gTLDの乱立

  • 新gTLDが増えすぎて混乱
  • フィッシング詐欺の増加

3. 国際的な利害調整

  • 各国政府の意見対立
  • 検閲と表現の自由

IPv6への移行

IPv4の枯渇:
約43億個のアドレスが不足

IPv6の普及:

  • 340澗(かん)個のアドレス
  • 実質無限

ICANNは、IPv6への円滑な移行を支援しています。

IDN(国際化ドメイン名)

多言語ドメイン:
日本語、中国語、アラビア語などでのドメイン名

例:

日本語.jp
مثال.السعودية(アラビア語)
中文.中国(中国語)

インターネットの真の国際化を実現する取り組みです。


よくある質問

Q1. ICANNにドメインを申請するの?

いいえ、直接ICANNには申請しません。

お名前.comやGoDaddyなどのレジストラを通じて申請します。ICANNは、その大元のルールを決める組織です。

Q2. ICANNはインターネットの内容も管理してる?

いいえ、管理していません。

ICANNが管理するのは、ドメイン名やIPアドレスなどの「住所システム」だけです。ウェブサイトの内容やメールの中身には関与しません。

Q3. ドメイン名は買い取り?

いいえ、レンタルです。

ドメイン名は「登録」であり「購入」ではありません。年間契約で、更新しないと失効します。

Q4. .comと.jpの違いは?

管理組織の違い:

  • .com:Verisignが管理(国際的)
  • .jp:JPRSが管理(日本のみ)

信頼性:
.jpは日本国内の住所確認が必要なため、信頼性が高いとされています。

Q5. ICANNの会議は見学できる?

はい、可能です。

ICANNは年に3回、世界各地で会議を開催しており、一般参加も歓迎しています。リモート参加も可能です。


まとめ:ICANNはインターネットの縁の下の力持ち

ICANNについて、基礎から実際の影響まで解説してきました。

重要ポイントのおさらい:

  1. インターネットの住所を管理する組織
    ドメイン名とIPアドレスの管理が主な役割
  2. 国際的な非営利組織
    特定の国や企業に支配されない運営
  3. マルチステークホルダーモデル
    様々な立場の人々が参加して意思決定
  4. TLDの承認と管理
    .comや.jpなどの最上位ドメインを監督
  5. 私たちの日常に影響
    ウェブサイトへのアクセスを支えている

ICANNは、普段意識することは少ないですが、インターネットが正常に機能するために欠かせない組織です。私たちが毎日使うウェブサイトのアドレスも、ICANNの管理システムがあって初めて成り立っているんですね。

この記事を通じて、インターネットの裏側で働く仕組みへの理解が深まれば嬉しいです!

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