「URLの最初についている『http』と『https』って何が違うの?」
「たった1文字の『s』があるかないかで、何が変わるの?」
インターネットを使っていると、必ず目にするこの表記。実は、この小さな違いが、あなたの個人情報を守るための重要な鍵なのです。
この記事では、HTTPとHTTPSの違いを、専門用語を避けてわかりやすく解説します。
HTTPとは

HTTPの基本
HTTP(Hypertext Transfer Protocol:ハイパーテキスト転送プロトコル)は、Webサイトのデータをやり取りするための「通信ルール」です。
簡単に言えば:
あなたのスマホやパソコン(クライアント)とWebサイトのサーバーが会話するための「共通言語」です。
HTTPが誕生した経緯:
1991年、「Webの考案者」として知られるティム・バーナーズ=リー氏が開発しました。
当時はインターネットそのものが今ほど普及しておらず、セキュリティよりも「情報を効率よく共有する」ことが優先されていました。
HTTPの仕組み
HTTPは「要求(リクエスト)」と「応答(レスポンス)」のシンプルなやり取りで動作します。
通信の流れ:
- あなた(ブラウザ):「このページを見せて!」とサーバーに要求
- サーバー:「はい、どうぞ!」とHTMLや画像データを返す
- ブラウザ:受け取ったデータを画面に表示
使用されるポート番号:
通常は80番ポートを使用します。
HTTPの特徴
メリット:
- シンプルで処理が速い
- 軽量で効率的
デメリット:
- データが暗号化されない
- 第三者に通信内容を見られる可能性がある
- データを改ざんされるリスクがある
HTTPSとは
HTTPSの基本
HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secure:ハイパーテキスト転送プロトコル セキュア)は、HTTPに「セキュリティ」を追加したものです。
HTTPSの「S」:
Secure(安全)の頭文字です。
仕組み:
HTTPにSSL/TLS(暗号化技術)を組み合わせることで、通信内容を保護します。
HTTPSの仕組み
HTTPSでは、データが暗号化されて送受信されます。
通信の流れ:
- ブラウザとサーバーが「握手」(ハンドシェイク)
- お互いの身元を確認
- 暗号化用の「鍵」を交換
- 暗号化された通信開始
- ブラウザ:データを暗号化して送信
- サーバー:暗号化されたデータを受信・解読
- サーバー:応答を暗号化して返信
- ブラウザ:暗号化された応答を解読・表示
使用されるポート番号:
通常は443番ポートを使用します。
SSL/TLSとは
SSL(Secure Socket Layer)とTLS(Transport Layer Security)は、暗号化通信を実現する技術です。
現在の状況:
- SSL:古い技術(現在は使用されていない)
- TLS:現在使われている最新技術
ただし、「SSL」という言葉の方が一般的なため、今でも「SSL証明書」「SSL化」と呼ばれています。
HTTPとHTTPSの違い
比較表
| 項目 | HTTP | HTTPS |
|---|---|---|
| 正式名称 | Hypertext Transfer Protocol | Hypertext Transfer Protocol Secure |
| 暗号化 | なし | あり(SSL/TLS) |
| ポート番号 | 80 | 443 |
| URLの表示 | http:// | https:// |
| ブラウザの表示 | ⚠️警告マーク | 🔒鍵マーク |
| 通信速度 | やや速い | やや遅い(差は小さい) |
| セキュリティ | 低い | 高い |
| 証明書 | 不要 | 必要 |
| 盗聴・改ざんリスク | 高い | 低い |
| SEO評価 | 低い | 高い |
見た目の違い
HTTPの場合:
⚠️ 保護されていない通信 | http://example.com
ブラウザが警告を表示します。
HTTPSの場合:
🔒 | https://example.com
鍵マークが表示され、安全な通信であることを示します。
HTTPの危険性

盗聴のリスク
HTTP通信は「平文」(暗号化されていない文字)でデータが送られます。
わかりやすい例:
ハガキで秘密の情報を送るようなものです。郵便配達員や途中で見た人全員に内容が読まれてしまいます。
具体的な危険:
- パスワードが盗まれる
- クレジットカード番号が漏洩する
- 個人情報(住所、電話番号など)が流出する
改ざんのリスク
第三者が通信内容を書き換えることができます。
具体例:
- 勝手に広告を挿入される
- 偽のサイトに誘導される
- ウイルスを仕込まれる
なりすましのリスク
本物そっくりの偽サイト(フィッシングサイト)に誘導される危険があります。
被害例:
- 偽の銀行サイトでログイン情報を盗まれる
- 偽のショッピングサイトで商品代金を騙し取られる
HTTPSのメリット
1. 通信内容の保護
暗号化の効果:
たとえ通信を傍受されても、内容を読み取ることができません。
わかりやすい例:
封筒に入れた手紙のようなものです。途中で誰かが見ても、開封しない限り中身は読めません。
2. Webサイトの信頼性向上
HTTPSを使用するには「SSLサーバ証明書」が必要です。
証明書の役割:
- Webサイトの運営者が実在することを証明
- なりすましサイトでないことを保証
証明書の種類:
- DV認証(ドメイン認証)
- 最も簡単・安価
- ドメインの所有権のみを確認
- OV認証(企業認証)
- 中級レベル
- 企業・組織の実在を確認
- EV認証(拡張認証)
- 最高レベル
- 厳格な審査
- ブラウザのアドレスバーに組織名が表示される
3. SEO対策に有利
Googleは2014年から、HTTPSをランキングシグナル(検索順位の評価要素)として使用しています。
影響:
- HTTPSサイト:検索順位が上がりやすい
- HTTPサイト:検索順位が下がる可能性がある
現状:
世界中のWebサイトの約80%がHTTPSを採用しています。
4. HTTP/2・HTTP/3が利用可能
HTTPSを導入すると、新しい通信技術が使えるようになります。
HTTP/2の特徴:
- 複数のファイルを同時にダウンロード
- ページの表示速度が向上
HTTP/3の特徴:
- さらなる高速化
- 接続の安定性向上
5. リファラー情報の保持
アクセス解析において重要な「リファラー」(訪問元URL)情報が正しく記録されます。
HTTPの場合:
HTTPSサイトからHTTPサイトへ移動すると、リファラー情報が消える
HTTPSの場合:
HTTPSサイト間ならリファラー情報が保持される
HTTPSの導入方法
必要なもの
- SSLサーバ証明書
- 認証局(CA)から発行
- 有効期限あり(通常1年)
- Webサーバーへのインストール
- 証明書をサーバーに設定
証明書の取得方法
無料の証明書:
- Let’s Encrypt(最も人気)
- CloudflareのSSL
有料の証明書:
- DigiCert
- GlobalSign
- GMOグローバルサイン
価格の目安:
- DV認証:無料〜数千円/年
- OV認証:数万円/年
- EV認証:10万円以上/年
常時SSL化の手順
- SSLサーバ証明書を取得
- Webサーバーにインストール
- サイト内のリンクをHTTPSに変更
- 画像
- CSS
- JavaScript
- 内部リンク
- リダイレクト設定
- HTTPでアクセスされたらHTTPSに自動転送
- .htaccessファイルで設定
- 外部サービスの設定変更
- Google Analytics
- Google Search Console
- SNSシェアボタン
リダイレクト設定例
.htaccessファイル:
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTPS} off
RewriteRule ^(.*)$ https://%{HTTP_HOST}%{REQUEST_URI} [R=301,L]
この設定で、HTTPアクセスを自動的にHTTPSにリダイレクトします。
HTTPS化の注意点

完全に安全とは限らない
重要:
HTTPSは「通信の暗号化」であり、サイト自体の安全性を保証するものではありません。
実例:
- 詐欺サイトでもHTTPSを導入できる
- フィッシングサイトにも鍵マークが表示される
確認すべきこと:
- 鍵マークをクリックして証明書を確認
- URLのドメイン名が正しいか確認
- 証明書の発行元を確認
混在コンテンツ(Mixed Content)
HTTPSページ内にHTTPコンテンツが混在すると、警告が表示されます。
問題になる例:
- HTTPSページ内にHTTPの画像を表示
- HTTPのJavaScriptやCSSを読み込む
対処法:
すべてのコンテンツをHTTPSに変更する必要があります。
速度への影響
HTTPSは暗号化・復号化の処理が必要なため、わずかに遅くなります。
現実的な影響:
最近のサーバーとHTTP/2の普及により、体感できる差はほとんどありません。
HTTPSの確認方法
ブラウザでの確認
Chrome・Edge・Firefox:
- アドレスバーの鍵マークをクリック
- 「この接続は保護されています」と表示される
- 証明書の詳細を確認できる
証明書の確認項目:
- 発行先(サイトのドメイン)
- 発行元(認証局)
- 有効期限
コマンドでの確認
OpenSSLを使用:
openssl s_client -connect example.com:443
証明書の詳細情報が表示されます。
今後の動向
すべてがHTTPSに
GoogleやMozillaは、すべてのWebサイトのHTTPS化を推進しています。
現状:
- Chrome:HTTPサイトに「保護されていない通信」と警告表示
- Firefox:HTTPサイトへの警告を強化
- Safari:HTTPSを推奨
HTTP/3の普及
次世代プロトコル「HTTP/3」が普及しつつあります。
特徴:
- UDPベースの高速通信
- 接続の安定性向上
- モバイル環境での性能向上
前提条件:
HTTP/3を使用するにはHTTPSが必須です。
よくある質問
Q1:HTTPSにするとお金がかかりますか?
無料のSSL証明書(Let’s Encryptなど)があるため、費用をかけずにHTTPS化できます。
ただし、企業サイトなど信頼性を重視する場合は、有料証明書(OV認証やEV認証)を検討すべきです。
Q2:個人のブログでもHTTPSは必要ですか?
はい、必要です。理由は以下の通りです:
- Googleの検索順位に影響
- 訪問者の安全性確保
- ブラウザの警告表示を避ける
Q3:HTTPSにするとアクセス解析がおかしくなりますか?
Google AnalyticsなどのURLをHTTPSに変更すれば問題ありません。
Q4:HTTPSサイトなら絶対に安全ですか?
いいえ。HTTPSは「通信の暗号化」のみを保証します。
詐欺サイトやフィッシングサイトでもHTTPSを導入できるため、鍵マークがあっても安全とは限りません。
Q5:HTTPとHTTPSは混在できますか?
技術的には可能ですが、推奨されません。
混在コンテンツによりブラウザが警告を表示し、ユーザーの信頼を失う可能性があります。
Q6:スマホアプリでもHTTPSは使われていますか?
はい。スマホアプリとサーバー間の通信でもHTTPSが標準です。
まとめ
HTTPとHTTPSの違いをまとめます。
最も重要な違い:
HTTPは暗号化されていない通信、HTTPSは暗号化された安全な通信です。
HTTPの問題点:
- 通信内容が盗聴される
- データが改ざんされる
- なりすましサイトの危険
HTTPSのメリット:
- 通信内容の保護
- Webサイトの信頼性向上
- SEO対策に有利
- 高速な通信技術が利用可能
見分け方:
- HTTP:⚠️警告マーク、
http:// - HTTPS:🔒鍵マーク、
https://
安全なインターネット利用のために:
- URLが
https://で始まるか確認 - 鍵マークが表示されているか確認
- 個人情報を入力する際は特に注意
- 怪しいサイトでは証明書の詳細を確認
Webサイト運営者へ:
もしまだHTTPSに移行していない場合は、早急な対応をおすすめします。
- SEOへの影響
- ユーザーの信頼性
- セキュリティの確保
すべての観点から、HTTPSは現代のWebサイトに必須の技術となっています。
たった1文字の「s」ですが、その意味は非常に大きいのです。
安全なインターネットライフのために、ぜひHTTPSを意識して利用してください。

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