「ドメインを別の会社に移したいけど、難しそう…」
「今のレジストラの料金が高いから変更したい」
ウェブサイトを運営していると、ドメインの管理会社を変更したくなることがありますよね。料金の問題、サービスの質、管理画面の使いやすさなど、理由は様々です。
この記事では、ドメイン移管の基礎から具体的な手順、注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。失敗しないドメイン移管のために、ぜひ参考にしてください。
ドメイン移管とは?

まずは基本的な知識から確認しましょう。
ドメイン移管の定義
ドメイン移管とは、ドメインの管理を現在のレジストラから別のレジストラに移す手続きのことです。
レジストラとは?
ドメイン名の登録や管理を行う業者のことです。
お名前.com、ムームードメイン、さくらインターネットなどが該当します。
重要なポイント
ドメイン移管は、あくまで「管理会社の変更」であり、ドメイン名そのものは変わりません。example.comというドメインは、移管後もexample.comのままです。
ドメイン移転との違い
混同しやすい用語を整理しておきましょう。
ドメイン移管(トランスファー)
レジストラ(管理会社)を変更すること。ドメイン名は変わらない。
ドメイン移転
サーバーやホスティング会社を変更すること。ドメインの管理会社は変わらなくても、ウェブサイトのデータを別のサーバーに移すことを指す場合もあります。
サーバー移転
ウェブサイトやメールのデータを別のサーバーに移すこと。ドメインの管理とは直接関係ありません。
移管できるドメインの種類
移管可能なドメイン
- .com、.net、.org などの gTLD(汎用トップレベルドメイン)
- .jp、.co.jp などの日本のドメイン
- .info、.biz などの新gTLD
gTLDとは?
Generic Top Level Domainの略で、国や地域に限定されない汎用的なトップレベルドメインのことです。
ほとんどのドメインは移管できますが、一部の国別ドメインには制限がある場合があります。
ドメイン移管をする理由
なぜドメインを移管するのか、主な理由を見ていきましょう。
コストの削減
更新料金の差
レジストラによって、ドメインの更新料金は大きく異なります。
料金の例(.comドメインの年間更新料)
- A社:1,500円
- B社:1,200円
- C社:2,500円
年間数百円の差でも、複数のドメインを長期間管理すれば、大きな金額になります。
サービスの質
管理画面の使いやすさ
- 直感的に操作できるか
- 必要な機能がすぐに見つかるか
- 日本語対応の質
- モバイル対応
管理画面が使いにくいと、DNS設定やWhois情報の変更など、日常的な作業がストレスになります。
サポート体制
- 日本語でのサポートがあるか
- 対応時間(24時間対応か)
- メール、電話、チャットなどの窓口
- 対応の速さと質
トラブル時に頼りになるサポートは重要です。
管理の一元化
複数のドメインを異なるレジストラで管理していると、以下の問題が発生します。
デメリット
- 更新日がバラバラで管理が煩雑
- それぞれのログイン情報を覚える必要
- 料金の支払いが複数箇所に分散
- 設定方法が異なり混乱しやすい
一つのレジストラにまとめることで、管理が格段に楽になります。
サービスの統合
ドメインとサーバーを同じ会社で管理
レジストラとホスティング会社が同じであれば、設定が簡単になります。
メリット
- DNS設定が自動化される
- トラブル時の原因特定が容易
- 請求書が一つにまとまる
- セットプランで割引がある場合も
ドメイン移管の基本的な流れ
実際の手順を段階的に解説します。
事前準備【重要】
移管を始める前に、以下を必ず確認してください。
1. ドメインの状態確認
- 登録から60日以上経過しているか
- 有効期限まで十分な余裕があるか(2週間以上推奨)
- ドメインロックがかかっていないか
ドメインロックとは?
不正な移管を防ぐためのセキュリティ機能です。移管時には解除が必要になります。
2. 認証コード(Auth Code)の取得
認証コードとは?
ドメインの正当な所有者であることを証明するための、英数字で構成されたパスワードのようなものです。EPPコード、Transfer Keyとも呼ばれます。
現在のレジストラの管理画面から取得できます。
3. Whois情報の確認
登録者のメールアドレスが現在使用可能であることを確認してください。移管承認のメールがこのアドレスに届きます。
Whoisとは?
ドメインの登録者情報(名前、住所、メールアドレスなど)を公開するデータベースです。
ステップ1:移管元での準備
手順
- 現在のレジストラにログイン
- ドメイン管理画面を開く
- ドメインロックを解除
- 認証コード(Auth Code)を発行・取得
- メールアドレスを確認
この段階では、まだ費用は発生しません。
ステップ2:移管先での申し込み
手順
- 移管先のレジストラでアカウント作成(まだの場合)
- 「ドメイン移管」メニューを選択
- 移管したいドメイン名を入力
- 認証コードを入力
- 支払い手続き
多くのレジストラでは、移管と同時に1年分の更新料金が加算されます。
ステップ3:承認手続き
メール承認
移管申請後、登録者のメールアドレスに承認メールが届きます。
確認すべきこと
- 差出人が正規のアドレスか確認
- メール内のリンクをクリックして承認
- 承認期限内に対応(通常5〜7日間)
承認を忘れると、移管がキャンセルされてしまいます。
ステップ4:移管の完了
承認後、通常5〜7日程度で移管が完了します。
完了の確認方法
- 移管先のレジストラから完了通知メールが届く
- 管理画面でドメインが表示される
- Whois検索で新しいレジストラ名が表示される
完了後は、新しいレジストラでDNS設定やWhois情報を管理します。
ドメインの種類別の移管手順

ドメインの種類によって、手順が若干異なります。
.comや.netなどのgTLD
特徴
- 最も一般的で移管しやすい
- 世界共通の手順
- 通常5〜7日で完了
前述の基本的な流れに従えば問題ありません。
.jpドメイン
日本のドメインは、独自のルールがあります。
JPRS(日本レジストリサービス)管理
.jpドメインは、JPRSという組織が管理しており、移管手続きも少し異なります。
主な違い
- 認証コードではなく「レジストラ変更申請」
- 移管元での承認が不要な場合がある
- 手続きに必要な書類が異なる
詳細は移管先のレジストラで確認してください。
.co.jpなどの属性型JPドメイン
特徴
- 法人や団体のみ登録可能
- 移管に登記書類などが必要な場合がある
- 審査に時間がかかることがある
ビジネスで使用している重要なドメインなので、慎重に進めましょう。
新gTLD(.tokyo、.shopなど)
新gTLDとは?
2014年以降に登場した新しいトップレベルドメインです。.tokyo、.shop、.blogなどがあります。
基本的には.comなどと同じ手順ですが、一部のレジストラでは対応していない場合があります。
移管時の注意点とリスク
失敗しないために知っておくべきことです。
ダウンタイムの可能性
ダウンタイムとは?
ウェブサイトやメールが一時的に利用できなくなる時間のことです。
防ぐ方法
- 移管前にDNS設定を確認
- TTL値を短く設定しておく
- 移管中もDNSレコードを維持
- 完了後すぐに新しいレジストラでDNS設定
TTLとは?
Time To Liveの略で、DNS情報のキャッシュ保持時間です。短くすることで、設定変更が早く反映されます。
適切に準備すれば、ダウンタイムはほぼ発生しません。
メール受信の中断リスク
ドメインでメールを使用している場合、MXレコードの設定に注意が必要です。
MXレコードとは?
メールサーバーを指定するDNS設定のことです。
対策
- 移管前にMXレコードの設定内容を記録
- 移管後すぐに新しいレジストラで同じ設定を行う
- 可能であれば、移管前に新レジストラのDNSに切り替えておく
移管できない期間
以下の期間は移管ができません。
制限期間
- ドメイン登録後60日以内
- 前回の移管から60日以内
- ドメイン更新の直後(レジストラによる)
理由
これは、ドメインのセキュリティを保護し、短期間に頻繁な移管が行われるのを防ぐための規則です。
コストの二重負担
移管時の費用
多くのレジストラでは、移管と同時に1年分の更新料を支払います。これは移管前の有効期限に加算されます。
例
- 現在の有効期限:2025年12月31日
- 移管費用:1,500円(1年分の更新料込み)
- 移管後の有効期限:2026年12月31日
つまり、移管直前に更新してしまうと、短期間に二重の支払いが発生します。
対策
有効期限の2〜3ヶ月前に移管を開始するのがおすすめです。
レジストラの選び方
移管先を選ぶポイントです。
料金体系
確認すべき項目
- ドメイン登録料
- 年間更新料
- 移管費用
- Whois情報公開代行の料金
- DNS管理の料金
Whois情報公開代行とは?
個人情報の代わりに、レジストラの情報を公開してくれるサービスです。プライバシー保護に役立ちます。
料金表をよく確認し、隠れた費用がないか確認しましょう。
提供機能
基本機能
- DNS管理
- ネームサーバー設定
- Whois情報管理
- ドメインロック機能
- 自動更新設定
追加機能
- サブドメインの無制限作成
- DNSSECのサポート
- API提供
- SSL証明書の提供
DNSSECとは?
DNS Security Extensionsの略で、DNSのセキュリティを強化する技術です。
必要な機能が揃っているか確認してください。
主要レジストラの比較
日本の主要レジストラ
- お名前.com
- ムームードメイン
- さくらインターネット
- バリュードメイン
- スタードメイン
海外の主要レジストラ
- Namecheap
- GoDaddy
- Google Domains(2023年にSquarespaceに移管)
- Cloudflare
それぞれ特徴があるので、自分のニーズに合ったものを選びましょう。
サポート体制
確認ポイント
- 日本語対応の有無
- サポート時間(営業時間、24時間対応)
- 連絡方法(メール、電話、チャット)
- レスポンスの速さ
- 技術的な質問への対応力
初心者の方は、日本語サポートが充実したレジストラがおすすめです。
移管後の作業
移管が完了したら、必ず確認・設定すべき項目です。
DNS設定の確認
チェック項目
- Aレコード(ウェブサイトのIPアドレス)
- MXレコード(メールサーバー)
- CNAMEレコード(サブドメインの設定)
- TXTレコード(SPF、DKIM、DMARCなど)
移管前と同じ設定になっているか、必ず確認してください。
確認方法
DNSチェックツールを使うと、設定が正しく反映されているか確認できます。
Whois情報の更新
移管後、登録者情報に変更がある場合は更新しましょう。
更新すべき情報
- 住所の変更
- 電話番号の変更
- メールアドレスの変更
- 管理者情報
正確な情報を維持することは、ドメインの所有権を証明する上で重要です。
自動更新の設定
ドメインの失効を防ぐため、自動更新を設定しておきましょう。
設定方法
- 管理画面の「自動更新」設定を開く
- クレジットカード情報を登録
- 自動更新を有効化
有効期限の数ヶ月前に通知メールが届くように設定するのもおすすめです。
セキュリティ設定
推奨される設定
- ドメインロックの有効化
- 二段階認証の設定
- Whois情報公開代行の有効化
- 不正アクセス通知の設定
セキュリティを強化することで、ドメインハイジャックなどのリスクを減らせます。
ドメインハイジャックとは?
第三者によって不正にドメインの管理権限が奪われることです。
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法です。
認証コードが取得できない
原因
- 管理画面の表示場所が分からない
- ドメインロックがかかっている
- アカウント権限が不足している
対処法
- レジストラのヘルプページで取得方法を確認
- ドメインロックを解除
- サポートに問い合わせる
承認メールが届かない
確認すべきこと
- メールアドレスが正しいか
- 迷惑メールフォルダに入っていないか
- メールボックスが満杯でないか
- Whois情報のメールアドレスが有効か
対処法
移管元のレジストラでWhois情報のメールアドレスを更新し、再度移管申請を行います。
移管が拒否された
よくある理由
- 登録から60日未満
- ドメインロックが解除されていない
- 認証コードが間違っている
- 有効期限が近すぎる
エラーメッセージを確認し、該当する問題を解決してから再申請してください。
移管後にサイトが表示されない
原因
DNSの設定が正しくない、または伝播に時間がかかっています。
DNS伝播とは?
DNS設定の変更が世界中のDNSサーバーに反映されるまでの時間です。通常24〜48時間かかります。
対処法
- 新しいレジストラでDNS設定を確認
- 移管前の設定と比較
- 誤りがあれば修正
- 24時間待って再確認
よくある質問
ドメイン移管に関する疑問に答えます。
Q1. 移管中もウェブサイトは表示される?
はい、通常は問題なく表示されます。
DNS設定が適切に維持されていれば、ダウンタイムは発生しません。
Q2. 移管にかかる期間は?
一般的に5〜7日程度です。
ただし、承認手続きのタイミングや、ドメインの種類によって前後します。
Q3. 移管をキャンセルできる?
承認前であればキャンセル可能です。
承認メールで承認しなければ、自動的にキャンセルされます。承認後のキャンセルは基本的にできません。
Q4. サーバーも一緒に移転すべき?
必ずしも必要ありません。
ドメインの管理とサーバーは別々の会社でも問題なく運用できます。ただし、同じ会社にまとめると管理が楽になります。
Q5. 移管すると有効期限はどうなる?
多くの場合、1年延長されます。
移管費用に1年分の更新料が含まれており、現在の有効期限に加算されます。
Q6. .jpドメインの移管は難しい?
手順が少し異なりますが、難しくありません。
移管先のレジストラが提供する手順書に従えば、問題なく完了します。
まとめ
ドメイン移管は、正しい手順を踏めば安全に実行できます。
この記事のポイント
- ドメイン移管はレジストラ(管理会社)の変更
- 料金、サービス、管理の一元化が主な理由
- 認証コードの取得と承認メールへの対応が重要
- 通常5〜7日で完了
- DNS設定の確認でダウンタイムを防げる
- 登録60日未満は移管不可
ドメインはウェブサイトの住所であり、ビジネスの重要な資産です。
コスト削減や利便性向上のためにレジストラを変更することは、合理的な判断と言えます。この記事を参考に、計画的にドメイン移管を進めてみてください。
適切な準備と確認を怠らなければ、スムーズに移管を完了できるはずです。より良い環境でドメインを管理し、快適なウェブサイト運営を実現しましょう!


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