スマートフォンやパソコンをWi-Fiに接続すると、自動的にIPアドレスが割り振られますよね。
この便利な仕組みを実現しているのがDHCPという技術。そして、その中で重要な役割を果たすのがリース期間という設定です。
「リース期間って何?」「どれくらいに設定すればいいの?」「期限が切れたらどうなるの?」
この記事では、DHCPリース期間の基本から、適切な設定方法、トラブル対策まで、初心者の方にも分かるように丁寧に解説していきます。
ネットワークの自動設定を支える重要な仕組み、一緒に見ていきましょう!
DHCPとは?基本を理解しよう

DHCPの役割
まず、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)について説明しますね。
DHCPは、ネットワークに接続した機器に対して、IPアドレスなどの設定を自動的に割り当てる仕組みです。
DHCPがないと:
- 各機器にIPアドレスを手動で設定する必要がある
- IPアドレスの重複を手作業で管理しなければならない
- 新しい機器を追加するたびに設定作業が発生する
つまり、DHCPは「自動でネットワーク設定をしてくれる便利屋さん」なんです。
DHCPが配布する情報
DHCPサーバーは、以下のような情報を配布します。
- IPアドレス:ネットワーク上の住所
- サブネットマスク:ネットワークの範囲
- デフォルトゲートウェイ:外部への出口(通常はルーター)
- DNSサーバー:ドメイン名をIPアドレスに変換するサーバー
- リース期間:IPアドレスを使える期限
これらを自動で設定してくれるので、ユーザーは何も意識せずにインターネットが使えるわけですね。
リース期間とは?
それでは本題のリース期間について詳しく見ていきましょう。
「リース」の意味
リース(lease)は英語で「賃貸」「貸し出し」という意味。
車のリースと同じで、「一定期間だけ貸し出す」というイメージです。
DHCPでは、IPアドレスを「永久にあげる」のではなく、「期限付きで貸し出す」んですね。
なぜ期限があるのか
IPアドレスは限りある資源です。
例えば、「192.168.1.0/24」のネットワークでは、254個のIPアドレスしか使えません。
期限がないと起きる問題:
- 一度接続した機器が、もう使われていなくてもIPアドレスを占有し続ける
- 新しい機器に割り当てるIPアドレスがなくなる
- 「IPアドレス枯渇」が発生する
期限を設けることで:
- 使われていないIPアドレスを回収できる
- 効率的にIPアドレスを再利用できる
- 常に新しい機器が接続できる状態を保てる
つまり、リース期間は「IPアドレスの有効活用」のための仕組みなんです。
リース期間の単位
リース期間は、通常秒単位で設定します。
よく使われる設定:
- 1時間 = 3,600秒
- 8時間 = 28,800秒
- 24時間(1日) = 86,400秒
- 7日間 = 604,800秒
設定画面によっては、時間や日数で入力できる場合もあります。
リース期間の動作の流れ
IPアドレスがどのように貸し出され、更新されるのか見ていきましょう。
1. DHCPディスカバー(DISCOVER)
機器がネットワークに接続すると、「誰かDHCPサーバーいませんか?」とブロードキャスト(一斉送信)します。
これが接続の第一歩です。
2. DHCPオファー(OFFER)
DHCPサーバーが応答し、「このIPアドレスを使えますよ」と提案します。
この時点では、まだ正式な割り当てではありません。
3. DHCPリクエスト(REQUEST)
機器が「そのIPアドレスをください」と正式に要求します。
4. DHCPアック(ACK)
DHCPサーバーが「OK、これで確定です」と承認します。
この時点で、リース期間がスタートします。
機器は、設定されたリース期間の間、そのIPアドレスを使用できるんです。
5. リース更新(RENEWAL)
リース期間の途中で、自動的に更新処理が行われます。
更新タイミング:
- T1(更新時刻):リース期間の50%経過時点
- T2(再結合時刻):リース期間の87.5%経過時点
例えば、リース期間が24時間の場合:
- 12時間後(50%):元のDHCPサーバーに更新要求
- 21時間後(87.5%):どのDHCPサーバーでもいいので更新要求
更新が成功すれば、リース期間がリセットされて新しく始まります。
6. リース期限切れ
更新に失敗し、リース期間が完全に切れると、そのIPアドレスは使えなくなります。
機器は再度DHCP DISCOVERから始めて、新しいIPアドレスを取得する必要があるんです。
適切なリース期間の設定

では、リース期間はどれくらいに設定すればいいのでしょうか。
デフォルト値
多くのルーターやDHCPサーバーでは、以下のようなデフォルト値が設定されています。
家庭用ルーター:
- 24時間(86,400秒)が最も一般的
- 製品によっては12時間や8時間
企業向けネットワーク機器:
- 8時間〜7日間
- 環境に応じて調整可能
ISPのDHCP:
- 1〜7日間程度
- プロバイダーによって異なる
短いリース期間のメリット・デメリット
メリット:
- IPアドレスの回収が早い
- 接続機器の入れ替わりが激しい環境に適している
- 設定変更がすぐに反映される
デメリット:
- 更新通信が頻繁に発生する
- ネットワークトラフィックが増える
- DHCPサーバーの負荷が高くなる
適した環境:
- カフェやホテルなどの公共Wi-Fi
- 会議室など短時間利用が多い場所
- IPアドレスが不足しがちな環境
長いリース期間のメリット・デメリット
メリット:
- 更新通信が少なく、ネットワーク負荷が低い
- DHCPサーバーダウン時も影響を受けにくい
- IPアドレスが変わりにくく、安定性が高い
デメリット:
- 使われていないIPアドレスが長期間占有される
- IPアドレス不足が起きやすい
- 設定変更が反映されるまで時間がかかる
適した環境:
- 家庭のネットワーク
- 固定的な機器が多いオフィス
- IPアドレスに十分な余裕がある環境
環境別の推奨設定
家庭・小規模オフィス:
推奨: 24時間(86,400秒)
理由: バランスが良く、管理も簡単中規模オフィス(固定PC多め):
推奨: 3〜7日間(259,200〜604,800秒)
理由: 安定性重視、機器の入れ替わりが少ない公共Wi-Fi、ゲストネットワーク:
推奨: 1〜4時間(3,600〜14,400秒)
理由: 利用者の入れ替わりが激しい企業のVPNクライアント:
推奨: 8〜24時間(28,800〜86,400秒)
理由: 接続時間が限定的データセンター:
推奨: 無期限または非常に長期間
理由: サーバーのIPは固定すべき(予約推奨)リース期間の設定方法
実際にリース期間を設定する手順を見ていきましょう。
家庭用ルーターでの設定
多くの家庭用ルーターでは、Web管理画面から設定できます。
一般的な手順:
- ブラウザでルーターの管理画面を開く(例:192.168.1.1)
- ログイン(ユーザー名・パスワードは製品マニュアル参照)
- 「DHCPサーバー」または「LAN設定」メニューを開く
- 「リース期間」または「Lease Time」の項目を探す
- 希望する時間を入力(秒、分、時間、日数など)
- 設定を保存して再起動
主要メーカーの設定例:
Buffalo:
詳細設定 → LAN → DHCPサーバー → IPリース時間
NEC(Aterm):
詳細設定 → DHCPサーバ設定 → リース時間
TP-Link:
Network → DHCP Server → Address Lease Time
Linuxサーバー(ISC DHCP)での設定
DHCPサーバーソフトウェアを使う場合の設定方法です。
設定ファイル編集:
sudo nano /etc/dhcp/dhcpd.confリース期間の設定:
default-lease-time 86400;      # デフォルト24時間
max-lease-time 604800;          # 最大7日間
subnet 192.168.1.0 netmask 255.255.255.0 {
    range 192.168.1.100 192.168.1.200;
    option routers 192.168.1.1;
    option domain-name-servers 8.8.8.8, 8.8.4.4;
}設定の説明:
- default-lease-time:通常のリース期間(秒単位)
- max-lease-time:クライアントが要求できる最大期間
サービス再起動:
sudo systemctl restart isc-dhcp-serverWindows Server DHCP
手順:
- サーバーマネージャーを開く
- 「ツール」→「DHCP」を選択
- 該当スコープを右クリック→「プロパティ」
- 「リース期間」タブを選択
- 日数、時間、分を設定
- 「OK」をクリック
Dnsmasq(軽量DHCPサーバー)
設定ファイル編集:
sudo nano /etc/dnsmasq.confリース期間の設定:
# 24時間のリース期間
dhcp-range=192.168.1.100,192.168.1.200,24h
# 無期限(infiniteを指定)
dhcp-range=192.168.1.100,192.168.1.200,infiniteサービス再起動:
sudo systemctl restart dnsmasqリース情報の確認方法
現在のリース状況を確認する方法を紹介します。
クライアント側での確認
Windows:
ipconfig /all「リース取得」と「リースの有効期限」が表示されます。
macOS:
ipconfig getpacket en0または、システム設定 → ネットワーク → 詳細 → TCP/IP で確認できます。
Linux:
# NetworkManagerを使用している場合
nmcli device show
# dhclientのリース情報を確認
cat /var/lib/dhcp/dhclient.leasesサーバー側での確認
ISC DHCP Server(Linux):
# リース情報を表示
cat /var/lib/dhcp/dhcpd.leases
# アクティブなリースを抽出
grep "^lease" /var/lib/dhcp/dhcpd.leasesWindows Server DHCP:
DHCPコンソール → スコープ → アドレスリース で確認できます。
家庭用ルーター:
多くの製品で、「接続機器一覧」や「DHCPクライアントリスト」から確認可能です。
リース期間に関するトラブルと対処法
よくある問題と解決方法を見ていきましょう。
問題1:IPアドレスが頻繁に変わる
症状:
- 毎日違うIPアドレスが割り当てられる
- ポート転送が機能しなくなる
原因:
リース期間が短すぎる、またはDHCP予約が設定されていない。
解決方法:
方法1:リース期間を長くする
24時間以上に設定する(推奨:7日間)
方法2:DHCP予約(固定IPアドレス)を設定する
MACアドレスに基づいて、特定のIPアドレスを常に割り当てる設定多くのルーターで、「DHCPアドレス予約」や「Static DHCP」という名前で設定できます。
問題2:リース期間切れでネットワーク接続が切れる
症状:
- 定期的にインターネット接続が切れる
- Wi-Fiは繋がっているのに通信できない
原因:
DHCPサーバーとの更新通信に失敗している。
解決方法:
即座の対処:
# Windows
ipconfig /release
ipconfig /renew
# macOS
sudo ipconfig set en0 DHCP
# Linux
sudo dhclient -r
sudo dhclient恒久的な対処:
- リース期間を長くする
- DHCPサーバーの安定性を確認
- ネットワーク機器を再起動
問題3:IPアドレス不足が発生する
症状:
- 新しい機器がネットワークに接続できない
- 「IPアドレスを取得できません」エラー
原因:
リース期間が長すぎて、使われていないIPアドレスが解放されない。
解決方法:
方法1:リース期間を短くする
24時間または12時間に設定する。
方法2:DHCPの範囲を拡大する
変更前: 192.168.1.100 〜 192.168.1.150(51個)
変更後: 192.168.1.100 〜 192.168.1.200(101個)方法3:古いリースを手動で削除
DHCPサーバーの管理画面から、使われていないリースを削除する。
問題4:DHCP更新時に一瞬通信が途切れる
症状:
- オンラインゲームやビデオ会議中に切断される
- 定期的に短時間の接続断が発生
原因:
リース更新処理によるもの。
解決方法:
重要な機器には固定IPアドレスまたはDHCP予約を設定する。
これにより、リース更新の影響を受けなくなります。
リース期間のベストプラクティス

効果的な設定のためのポイントをまとめます。
1. 環境に応じた適切な設定
- 家庭:24時間
- オフィス:3〜7日間
- 公共Wi-Fi:1〜4時間
画一的ではなく、使用状況に合わせて調整しましょう。
2. 固定IPが必要な機器はDHCP予約
以下のような機器は、IPアドレスを固定すべきです。
- プリンター
- NAS(ネットワークストレージ)
- 監視カメラ
- サーバー
- ゲーム機(ポート転送を使う場合)
DHCP予約を使えば、自動設定の利便性と固定IPの安定性を両立できます。
3. 余裕を持ったアドレスプールの設定
接続機器数の2倍以上のIPアドレスを用意しておくと安心です。
接続機器: 30台
推奨プール: 60個以上(192.168.1.100〜192.168.1.160など)4. 定期的なリース情報の確認
月に1回程度、リース状況をチェックしましょう。
- 使われていない古いリースがないか
- IPアドレスの残りは十分か
- 異常な接続がないか
5. ドキュメント化
設定内容を記録しておくと、トラブル時に役立ちます。
【DHCPサーバー設定】
- IPアドレス範囲: 192.168.1.100 〜 192.168.1.200
- サブネットマスク: 255.255.255.0
- デフォルトゲートウェイ: 192.168.1.1
- DNSサーバー: 8.8.8.8, 8.8.4.4
- リース期間: 86,400秒(24時間)
- 更新日: 2025年10月24日まとめ:リース期間で快適ネットワークを
DHCPリース期間について、ここまで詳しく見てきました。最後に要点を整理しておきましょう。
リース期間の重要ポイント:
- IPアドレスを「期限付きで貸し出す」仕組み
- 50%経過時点で自動更新される
- 環境に応じて適切な長さを設定することが重要
- 短すぎても長すぎても問題が起きる
推奨設定まとめ:
- 家庭用:24時間(86,400秒)
- オフィス:3〜7日間
- 公共Wi-Fi:1〜4時間
- 固定的な環境:7日間以上
設定のコツ:
- 環境の特性を理解する
- 接続機器の入れ替わり頻度を考慮
- IPアドレスに余裕を持たせる
- 重要な機器はDHCP予約を使う
- 定期的に見直す
トラブル対策:
- IPアドレスが変わる → リース期間を長く、またはDHCP予約
- 接続が切れる → DHCPサーバーの確認、リース更新
- IPアドレス不足 → リース期間を短く、または範囲拡大
- 更新時の切断 → 固定IPまたはDHCP予約
 
  
  
  
   
               
               
               
               
              
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