キャッシュDNSサーバーとは?インターネットを速くする縁の下の力持ち

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「同じWebサイトを開くとき、2回目の方が速い気がする…」
「DNSサーバーって何種類もあるの?」
「キャッシュDNSサーバーって何の役割があるの?」

インターネットを使っていると、こんな疑問を持つことがあるかもしれません。

実は、あなたが快適にインターネットを使えているのは、キャッシュDNSサーバーという仕組みのおかげなんです。この記事では、キャッシュDNSサーバーの役割から実践的な活用法まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

読み終わる頃には、インターネットがもっと速く感じられる設定ができるようになりますよ!


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  1. キャッシュDNSサーバーとは?「メモ帳」を持つ案内係
    1. そもそもDNSって何?
    2. キャッシュって何?
  2. 権威DNSサーバーとキャッシュDNSサーバーの違い
    1. 権威DNSサーバー(Authoritative DNS Server)
    2. キャッシュDNSサーバー(Recursive DNS Server)
    3. 比較表
  3. キャッシュDNSサーバーの動作の流れ
    1. 初回アクセス(キャッシュなし)の場合
    2. 2回目以降のアクセス(キャッシュあり)の場合
  4. キャッシュDNSサーバーのメリット
    1. 1. 応答速度が劇的に向上
    2. 2. ネットワーク負荷の軽減
    3. 3. 権威DNSサーバーの負担軽減
    4. 4. 障害時の耐性向上
  5. TTL(Time To Live):キャッシュの有効期限
    1. TTLって何?
    2. TTLの動作
    3. TTLの設定値による違い
  6. パブリックDNSサービス:誰でも使えるキャッシュDNSサーバー
    1. Google Public DNS
    2. Cloudflare DNS
    3. Quad9
    4. OpenDNS
  7. キャッシュDNSサーバーの設定方法
    1. Windows 10/11 での設定
    2. Mac での設定
    3. Linux での設定
    4. ルーターでの設定
  8. DNSキャッシュのクリア方法
    1. Windows でのキャッシュクリア
    2. Mac でのキャッシュクリア
    3. Linux でのキャッシュクリア
    4. ブラウザのDNSキャッシュクリア
  9. セキュリティ:DNSキャッシュポイズニング攻撃
    1. DNSキャッシュポイズニングとは
    2. 対策
  10. トラブルシューティング
    1. 問題1:「DNSサーバーが応答していません」
    2. 問題2:特定のサイトだけ開けない
    3. 問題3:DNS解決が遅い
  11. よくある質問
    1. Q1. ISPのDNSとパブリックDNS、どちらがいい?
    2. Q2. DNSを変えるとネットが速くなる?
    3. Q3. 複数のDNSサーバーを設定する意味は?
    4. Q4. 家族のデバイス全部のDNSを変えるには?
  12. まとめ:キャッシュDNSサーバーは速度とセキュリティの要

キャッシュDNSサーバーとは?「メモ帳」を持つ案内係

キャッシュDNSサーバーとは、DNS情報を一時的に記憶しておくDNSサーバーのこと。

そもそもDNSって何?

DNS(Domain Name System)は、人間が読みやすいドメイン名(www.google.comなど)を、コンピュータが理解できるIPアドレス(142.250.207.46など)に変換するシステムです。

インターネット上の「電話帳」や「住所録」のような役割を果たしています。

実例:
あなたが「google.com」と入力すると、DNSサーバーが「それは142.250.207.46ですよ」と教えてくれます。

キャッシュって何?

キャッシュとは、よく使う情報を一時的に保存しておく仕組みのこと。

実例:
図書館で調べ物をするとき、毎回書庫に行くのは面倒ですよね。よく使う本を手元のメモに書いておけば、次からはすぐに参照できます。これがキャッシュの考え方です。


権威DNSサーバーとキャッシュDNSサーバーの違い

DNSサーバーには、大きく分けて2種類あります。

権威DNSサーバー(Authoritative DNS Server)

ドメイン情報の正式な管理者です。

役割:

  • ドメイン情報を保持・管理する
  • 「このドメインのIPアドレスはこれです」と正式に答える
  • ドメインの所有者が設定・管理する

実例:
google.comの権威DNSサーバーは、Googleが管理しています。
「google.comのIPアドレスは何?」という質問に対して、正式な答えを持っているのはこのサーバーだけです。

キャッシュDNSサーバー(Recursive DNS Server)

ユーザーの代わりに情報を探してきてくれるサーバーです。

役割:

  • ユーザーからの問い合わせを受け取る
  • 権威DNSサーバーに問い合わせて答えを取得
  • 取得した情報を一時的に保存(キャッシュ)
  • 次回の問い合わせには、キャッシュから即座に回答

実例:
あなたのスマホやパソコンは、通常キャッシュDNSサーバーに問い合わせます。ISP(インターネットプロバイダ)が提供するDNSサーバーや、GoogleのパブリックDNS(8.8.8.8)などがこれに当たります。

比較表

項目権威DNSサーバーキャッシュDNSサーバー
役割情報の正式な管理者情報の仲介者
情報源自分で管理他のサーバーから取得
キャッシュしないする
誰が使う全世界のDNSシステムエンドユーザー
設置場所ドメイン所有者ISP、企業、個人

キャッシュDNSサーバーの動作の流れ

実際にWebサイトにアクセスするとき、裏側でこんなやり取りが起きています。

初回アクセス(キャッシュなし)の場合

ステップ1:ユーザーが問い合わせ

ユーザー「example.comのIPアドレスは何?」
    ↓
キャッシュDNSサーバー

ステップ2:キャッシュを確認

キャッシュDNSサーバー「手元のメモ(キャッシュ)を確認…ないな」

ステップ3:ルートDNSサーバーに問い合わせ

キャッシュDNSサーバー「.comを管理しているサーバーはどこ?」
    ↓
ルートDNSサーバー「.comはこのTLDサーバーが管理してるよ」

ステップ4:TLDサーバーに問い合わせ

キャッシュDNSサーバー「example.comを管理しているサーバーはどこ?」
    ↓
TLDサーバー「example.comの権威DNSサーバーはここだよ」

ステップ5:権威DNSサーバーに問い合わせ

キャッシュDNSサーバー「example.comのIPアドレスは何?」
    ↓
権威DNSサーバー「93.184.216.34です」

ステップ6:ユーザーに回答&キャッシュに保存

キャッシュDNSサーバー「93.184.216.34だよ(メモしとこう)」
    ↓
ユーザー「ありがとう!」

2回目以降のアクセス(キャッシュあり)の場合

ステップ1:ユーザーが問い合わせ

ユーザー「example.comのIPアドレスは何?」
    ↓
キャッシュDNSサーバー

ステップ2:キャッシュから即座に回答

キャッシュDNSサーバー「メモを見るね…93.184.216.34だよ!」
    ↓
ユーザー「速い!」

このように、2回目以降は複数のサーバーに問い合わせる必要がないため、圧倒的に速くなるんです。


キャッシュDNSサーバーのメリット

1. 応答速度が劇的に向上

キャッシュから回答できるため、DNSクエリの応答時間が大幅に短縮されます。

実例:

  • 初回:200ミリ秒(複数のサーバーに問い合わせ)
  • 2回目以降:5ミリ秒(キャッシュから即答)

約40倍も速くなります!

2. ネットワーク負荷の軽減

権威DNSサーバーへの問い合わせが減るため、インターネット全体の通信量が削減されます。

実例:
100人が同じWebサイトにアクセスする場合:

  • キャッシュなし:100回の問い合わせが権威DNSサーバーに届く
  • キャッシュあり:最初の1回だけで、残り99回はキャッシュから回答

3. 権威DNSサーバーの負担軽減

キャッシュDNSサーバーが代理で答えてくれるため、権威DNSサーバーの負荷が減ります。

4. 障害時の耐性向上

一度キャッシュされていれば、権威DNSサーバーが一時的にダウンしても、キャッシュから回答できます。


TTL(Time To Live):キャッシュの有効期限

キャッシュされた情報には、有効期限があります。これをTTL(Time To Live)と呼びます。

TTLって何?

権威DNSサーバーが「この情報は○○秒間有効ですよ」と指定する値のこと。

実例:

example.com IN A 93.184.216.34 (TTL: 3600)

この場合、「example.comのIPアドレスは3600秒(1時間)有効」という意味です。

TTLの動作

時間経過とTTL:

  1. 情報をキャッシュ(TTL: 3600秒)
  2. 30分経過(TTL: 1800秒)
  3. 1時間経過(TTL: 0秒)
  4. キャッシュから削除
  5. 次回の問い合わせ時、再度権威DNSサーバーに問い合わせ

TTLの設定値による違い

短いTTL(例:60秒)

  • メリット:情報の変更がすぐ反映される
  • デメリット:DNSサーバーへの負荷が高い

長いTTL(例:86400秒=1日)

  • メリット:キャッシュ効率が高く、サーバー負荷が低い
  • デメリット:情報変更の反映に時間がかかる

一般的な設定:

  • 安定したサービス:3600秒(1時間)~86400秒(1日)
  • サーバー移転前:300秒(5分)~600秒(10分)に短縮

パブリックDNSサービス:誰でも使えるキャッシュDNSサーバー

無料で利用できる高性能なキャッシュDNSサーバーを紹介します。

Google Public DNS

IPアドレス:

  • プライマリ:8.8.8.8
  • セカンダリ:8.8.4.4

特徴:

  • 世界最大規模のDNSサービス
  • 高速で安定
  • 最も人気が高い

Cloudflare DNS

IPアドレス:

  • プライマリ:1.1.1.1
  • セカンダリ:1.0.0.1

特徴:

  • プライバシー重視(ログを保存しない)
  • 非常に高速
  • 覚えやすいアドレス

Quad9

IPアドレス:

  • プライマリ:9.9.9.9
  • セカンダリ:149.112.112.112

特徴:

  • セキュリティ重視
  • マルウェアサイトを自動ブロック
  • 無料

OpenDNS

IPアドレス:

  • プライマリ:208.67.222.222
  • セカンダリ:208.67.220.220

特徴:

  • フィルタリング機能
  • 有害サイトのブロック
  • カスタマイズ可能

キャッシュDNSサーバーの設定方法

実際にデバイスのDNS設定を変更してみましょう。

Windows 10/11 での設定

ステップ1:設定を開く

  1. 「設定」→「ネットワークとインターネット」
  2. 使用している接続(Wi-Fiまたはイーサネット)をクリック

ステップ2:IPアドレスの編集

  1. 「IPアドレス割り当て」の「編集」をクリック
  2. 「手動」を選択
  3. IPv4をオンにする

ステップ3:DNSを入力

  1. 優先DNS:8.8.8.8(Googleの例)
  2. 代替DNS:8.8.4.4
  3. 「保存」をクリック

Mac での設定

ステップ1:ネットワーク環境設定

  1. アップルメニュー→「システム環境設定」
  2. 「ネットワーク」をクリック

ステップ2:DNSサーバーを設定

  1. 接続を選択して「詳細」をクリック
  2. 「DNS」タブを選択
  3. 「+」ボタンで8.8.8.8を追加
  4. もう一度「+」で8.8.4.4を追加
  5. 「OK」→「適用」

Linux での設定

方法1:NetworkManagerを使用

nmcli connection modify "接続名" ipv4.dns "8.8.8.8 8.8.4.4"
nmcli connection up "接続名"

方法2:systemd-resolvedを使用

sudo nano /etc/systemd/resolved.conf

以下を追加:

[Resolve]
DNS=8.8.8.8 8.8.4.4

保存後、サービスを再起動:

sudo systemctl restart systemd-resolved

ルーターでの設定

家全体のDNSを変更したい場合は、ルーターで設定します。

  1. ブラウザでルーターのIPアドレスにアクセス(通常192.168.1.1)
  2. ログイン
  3. WAN設定またはインターネット設定を開く
  4. DNSサーバーを手動設定に変更
  5. 8.8.8.8と8.8.4.4を入力
  6. 保存して再起動

これで、家の全デバイスが自動的に新しいDNSサーバーを使うようになります。


DNSキャッシュのクリア方法

キャッシュが古い情報を保持していると、問題が起きることがあります。

Windows でのキャッシュクリア

ipconfig /flushdns

成功メッセージ:

DNS リゾルバー キャッシュは正常にフラッシュされました。

Mac でのキャッシュクリア

sudo dscacheutil -flushcache
sudo killall -HUP mDNSResponder

Linux でのキャッシュクリア

systemd-resolvedの場合:

sudo systemd-resolve --flush-caches

nscdの場合:

sudo /etc/init.d/nscd restart

ブラウザのDNSキャッシュクリア

ブラウザも独自にDNSキャッシュを持っています。

Chrome:

  1. アドレスバーにchrome://net-internals/#dnsと入力
  2. 「Clear host cache」をクリック

Firefox:

  1. アドレスバーにabout:networking#dnsと入力
  2. 「Clear DNS Cache」をクリック

セキュリティ:DNSキャッシュポイズニング攻撃

キャッシュDNSサーバーには、セキュリティ上のリスクもあります。

DNSキャッシュポイズニングとは

攻撃者が偽のDNS情報をキャッシュに混入させる攻撃です。

攻撃の流れ:

  1. 攻撃者が偽のDNS応答を送信
  2. キャッシュDNSサーバーがそれを本物と勘違いして保存
  3. ユーザーが正規サイトにアクセスしようとする
  4. キャッシュから偽の情報が返される
  5. ユーザーが偽サイトに誘導される

実例:
本物のbank.comにアクセスしようとしたのに、攻撃者の用意した偽サイトに誘導され、ログイン情報を盗まれる可能性があります。

対策

DNSSEC(DNS Security Extensions)

  • DNSの応答に電子署名を付ける技術
  • 改ざんを検出できる
  • 主要なパブリックDNSサービスは対応済み

DNS over HTTPS(DoH)

  • DNS通信を暗号化
  • 盗聴や改ざんを防ぐ
  • Cloudflare(1.1.1.1)などが対応

DNS over TLS(DoT)

  • TLSでDNS通信を暗号化
  • DoHと同様の目的
  • ポート853を使用

トラブルシューティング

DNSに関する問題の解決方法です。

問題1:「DNSサーバーが応答していません」

原因:

  • DNSサーバーがダウンしている
  • ネットワーク接続の問題
  • ファイアウォールがブロックしている

解決方法:

  1. DNSキャッシュをクリア
  2. 別のDNSサーバーに変更(8.8.8.8など)
  3. ルーターを再起動
  4. ネットワーク接続を確認

問題2:特定のサイトだけ開けない

原因:

  • DNSキャッシュが古い
  • ISPのDNSサーバーに問題がある

解決方法:

  1. DNSキャッシュをクリア
  2. パブリックDNS(Google、Cloudflareなど)に変更

問題3:DNS解決が遅い

原因:

  • 使用しているDNSサーバーが遠い
  • DNSサーバーが混雑している

解決方法:

DNSサーバーの応答速度を測定:

Windows:

nslookup google.com 8.8.8.8

Linux/Mac:

dig @8.8.8.8 google.com

応答が遅い場合は、別のDNSサーバーを試してみましょう。


よくある質問

Q1. ISPのDNSとパブリックDNS、どちらがいい?

パブリックDNS(Google、Cloudflareなど)のメリット:

  • 通常はISPより高速
  • 安定性が高い
  • プライバシー保護やセキュリティ機能

ISPのDNSのメリット:

  • 地理的に近いことが多い
  • 一部の国内サービスで最適化されている場合がある

一般的には、パブリックDNSの方がおすすめです。

Q2. DNSを変えるとネットが速くなる?

DNS自体の応答速度は向上しますが、ダウンロード速度そのものは変わりません。

ただし、Webページの表示開始は速くなります。

Q3. 複数のDNSサーバーを設定する意味は?

プライマリDNSサーバーが応答しない場合、セカンダリが使われます。

冗長性(バックアップ)のために重要です。

Q4. 家族のデバイス全部のDNSを変えるには?

ルーターでDNSを設定すれば、接続する全デバイスが自動的にそのDNSを使います。


まとめ:キャッシュDNSサーバーは速度とセキュリティの要

キャッシュDNSサーバーは、インターネットを快適に使うための重要な仕組みです。

キャッシュDNSサーバーの重要ポイント:

  • DNS情報を一時保存して高速化
  • 権威DNSサーバーの代わりに情報を探してくれる
  • TTL(有効期限)で情報を管理

主なメリット:

  • 応答速度の劇的な向上(最大40倍)
  • ネットワーク負荷の軽減
  • 権威DNSサーバーの負担軽減
  • 障害時の耐性向上

おすすめパブリックDNS:

  • Google DNS:8.8.8.8(高速・安定)
  • Cloudflare DNS:1.1.1.1(プライバシー重視)
  • Quad9:9.9.9.9(セキュリティ重視)

キャッシュクリア方法:

  • Windows:ipconfig /flushdns
  • Mac:dscacheutil -flushcache
  • Linux:systemd-resolve –flush-caches

セキュリティ対策:

  • DNSSEC(電子署名)
  • DNS over HTTPS(暗号化)
  • DNS over TLS(暗号化)

自分に合ったDNSサーバーを選んで設定すれば、インターネットがより快適になります。特にISPのDNSが不安定な場合は、GoogleやCloudflareのパブリックDNSを試してみてください。

快適で安全なインターネットライフを!

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