夜空を見上げると、明るい星や暗い星がありますよね。
でも、その明るさをどうやって測るか知っていますか?
実は、星の明るさを測る方法は2000年以上前から使われていて、今でも世界中の天文学者が同じ方法を使っているんです。
今回は、星の明るさの秘密について分かりやすく説明します。
星の明るさの基本

星の等級って何?
星の明るさを表す数値を「等級」と呼びます。
でも、ここに面白い特徴があります。 明るい星ほど数字が小さいんです!
例えば:
- 1等星:とても明るい星
- 6等星:やっと見える暗い星
なぜこんな変な数え方をするのでしょうか?
なぜ明るいほど数字が小さいの?
約2000年前、古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスが星を分類しました。
彼は一番明るくて重要な星を「第1級の星」と呼びました。
これは「一番偉い星」という意味です。
学校のテストで1位、2位、3位…と順位をつけるのと同じですね。
1位が一番優秀なように、1等星が一番明るいんです。
マイナスの等級もある!
とても明るい天体には、マイナスの数字を使います。
明るさランキング(地球から見た場合)
- 太陽:-26.7等(ダントツ1位!)
- 満月:-12.7等
- 金星:最大-4.9等(一番明るい惑星)
- 木星:最大-2.9等
- シリウス:-1.5等(一番明るい恒星)
ゴルフのスコアと同じで、マイナスが大きいほど優秀(明るい)ということです。
見かけの明るさと本当の明るさ
近いから明るく見える?
懐中電灯を思い浮かべてください。
近くで見ると眩しいけど、100メートル離れると暗く見えますよね。 星も同じです。
見かけの等級(視等級)
- 地球から見た明るさ
- 距離によって変わる
本当の等級(絶対等級)
- すべての星を同じ距離(32.6光年)に置いた時の明るさ
- 星の本当の力が分かる
驚きの事実
太陽は地球から見ると圧倒的に明るいですが、実は普通の星なんです!
- 太陽:見かけ-26.7等 → 本当は+4.8等(平凡)
- ベテルギウス:見かけ+0.5等 → 本当は-5.8等(超巨大!)
これは、近くの豆電球が遠くのサーチライトより明るく見えるのと同じです。
どうやって星の明るさを測るの?

昔の測り方(肉眼時代)
2000年前から1850年頃まで、人々は目で見て星の明るさを比べていました。
「この星はあの星より少し暗いから…」という感じです。 精度は今と比べるとかなり低かったんです。
写真の時代(1850年代~)
カメラが発明されると、ガラス板に星を撮影して明るさを測るようになりました。
写真の星の大きさや濃さから、明るさが分かります。
現代の測り方(1980年代~)
今はCCDカメラという特別なカメラを使います。
このカメラは星から来る光の粒(光子)を一つずつ数えることができます! スマホのカメラにも似た技術が使われています。
現代の精度は驚くほど高く、0.001等級の違いも測れます。 これは、100メートル先のろうそくの炎が1ミリ大きくなったのを見分けるようなものです。
どこまで暗い星が見える?
肉眼で見える限界
場所によって見える星の数が違います:
都市部(東京など)
- 1~2等星まで(明るい星だけ)
- 見える星:約20個
郊外
- 4~5等星まで
- 見える星:約500個
山奥の暗い場所
- 6~7等星まで
- 見える星:約5,000個!
双眼鏡を使うと
普通の双眼鏡(7×50)で10~11等星まで見えます。 見える星は数万個に増えます!
望遠鏡を使うと
望遠鏡の大きさで見える限界が変わります:
- 10cm望遠鏡:13等星まで
- 20cm望遠鏡:14等星まで
- ハッブル宇宙望遠鏡:31等星まで!
ハッブル宇宙望遠鏡は、地球から月に置いたろうそくの光も見えるくらいの性能です。
有名な星の明るさ

季節の明るい星
春の星
- アルクトゥルス(うしかい座):0.0等(オレンジ色)
- スピカ(おとめ座):1.0等(青白い)
夏の星
- ベガ(こと座):0.0等(織姫星)
- アルタイル(わし座):0.8等(彦星)
- デネブ(はくちょう座):1.3等
秋の星
- 明るい星が少ない季節
- フォーマルハウト(みなみのうお座):1.2等
冬の星
- シリウス(おおいぬ座):-1.5等(全天で一番明るい)
- ベテルギウス(オリオン座):0.5等(赤い星)
- リゲル(オリオン座):0.1等(青白い星)
身近な天体の明るさ
- 北極星:2等星(意外と暗い!)
- 国際宇宙ステーション(ISS):最大-6等(金星より明るい!)
- 飛行機:-1~-2等くらい
- 人工衛星:2~5等(動いているのが見える)
明るさが変わる星がある!
変光星の不思議
明るさが変わる星を「変光星」と呼びます。
ベテルギウス(オリオン座)
- 0等から1.6等まで変化
- 星が膨らんだり縮んだりしている
アルゴル(ペルセウス座)
- 2つの星がお互いを隠し合う
- 2.9日ごとに暗くなる
ミラ(くじら座)
- 2等から10等まで変化(400倍も明るさが変わる!)
- 約332日周期
これらの星は、まるで宇宙の灯台のように明滅しています。
星の色と温度の関係

星にも色がある
星をよく見ると、色が違うことに気づきます。
青い星:表面温度30,000度以上(とても熱い!)
白い星:約10,000度
黄色い星:約6,000度(太陽と同じ)
オレンジの星:約4,000度
赤い星:約3,000度(比較的冷たい)
これは、熱した鉄が赤→オレンジ→白→青白く光るのと同じ原理です。
色から分かること
星の色を調べると:
- 星の年齢
- 星の大きさ
- 星の将来
などが分かります。青い星は若くて重い星、赤い星は年老いた星が多いんです。
現代の技術でできること
スマホアプリで星の明るさを測る
今は、スマートフォンのアプリでも星の明るさに関する情報が得られます:
- 星座アプリ:星の等級を表示
- 光害測定アプリ:空の暗さを測定
- ISS探知アプリ:国際宇宙ステーションがいつ見えるか教えてくれる
AIが変光星を見つける
人工知能(AI)が何百万個もの星を監視して、明るさが変わる星を自動で見つけています。
人間が100年かかる作業を、AIは1日でやってしまいます!
未来の観測
2030年代の計画
- もっと暗い星(35等級以上)が見える望遠鏡
- 100億光年先の星の明るさも測定
- 地球に似た惑星の発見
光害の問題
都市の明かりが星を隠す
都市部では、街の明かり(光害)のせいで暗い星が見えません。
光害レベル
- レベル1(最も暗い):7等星まで見える
- レベル5(郊外):4等星まで
- レベル9(都心):1等星だけ
日本では、本当に暗い空(レベル1)はほとんど残っていません。
星を守るために
- 必要のない照明を消す
- 上に光が漏れない照明を使う
- 星空保護区を作る
みんなで協力すれば、美しい星空を未来に残せます。
星の明るさから分かること
星までの距離
星の見かけの明るさと本当の明るさを比べると、その星までの距離が分かります。
これを使って、宇宙の大きさを測っています。
星の一生
明るさの変化を観察すると:
- 星がいつ生まれたか
- あとどのくらい輝くか
- 最後はどうなるか
が分かります。
宇宙の謎を解く
星の明るさを正確に測ることで:
- ブラックホールの発見
- 暗黒物質の研究
- 宇宙の膨張速度の測定
などができます。
まとめ:2000年続く星の物語
星の等級システムは、2000年以上前から使われている人類の知的遺産です。
古代ギリシャ人が始めた「明るい星ほど数字が小さい」という一見変わったシステムが、現代の最先端技術でも使われています。
なぜこのシステムが続いているの?
- 歴史的なつながり:昔の記録と比較できる
- 実用的:巨大な明るさの範囲を扱える
- 世界共通:どの国の人とも同じ言葉で話せる
君も星の観察者になろう!
星の等級を知ると、夜空がもっと面白くなります。
- 今夜見える一番明るい星は何等星?
- 季節によって見える星はどう違う?
- 双眼鏡があればどんな星が見える?
2000年前の人々と同じ星を、同じ方法で観察できるなんて、素敵だと思いませんか?
星の明るさは、過去と現在、そして未来をつなぐ架け橋なのです。
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