「相対性理論って聞いたことあるけど、特殊相対性理論とは違うの?」「特殊と一般って何が違うの?」
アインシュタインの相対性理論は有名ですが、その中身については意外と知られていません。
この記事では、相対性理論、特殊相対性理論、一般相対性理論の関係と違いを、わかりやすく解説します。
相対性理論とは
まず、用語の整理をしましょう。
相対性理論(そうたいせいりろん、英語:Theory of Relativity)とは、ドイツ出身の物理学者アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein、1879年-1955年)が提唱した、時間と空間に関する物理学理論の総称です。
相対性理論は、大きく分けて2つの理論から成り立っています。
- 特殊相対性理論(とくしゅそうたいせいりろん、英語:Special Relativity)
1905年に発表 - 一般相対性理論(いっぱんそうたいせいりろん、英語:General Relativity)
1915年-1916年に発表
つまり、「相対性理論」は「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」を合わせた総称なのです。
日本語で単に「相対性理論」と言う場合、多くは「特殊相対性理論」を指すことが多いですが、厳密には両方を含みます。
結論:特殊と一般の最大の違い
先に結論を述べると、特殊相対性理論と一般相対性理論の最大の違いは以下の通りです。
特殊相対性理論(1905年)
- 重力の影響を考えない
- 慣性系(等速度運動または静止している観測者)のみを扱う
- 光速不変の原理が基礎
- 時間の遅れ、長さの収縮、E=mc²などを予言
一般相対性理論(1915-1916年)
- 重力の影響を含む
- すべての座標系(加速度運動を含む)を扱う
- 等価原理が基礎
- 重力は時空の曲がりとして説明される
一言で言えば、特殊相対性理論は「特殊な条件下」(重力がない状況)での理論、一般相対性理論は「一般的な条件下」(重力がある状況)での理論です。
特殊相対性理論とは
発表の経緯
特殊相対性理論は、1905年にアインシュタインが26歳の時に発表した理論です。
当時、物理学には大きな問題がありました。
光の速度について、「誰から見ても同じ速度なのか?」「それとも観測者の動きによって変わるのか?」という疑問です。
アインシュタインは、この問題を解決するために、まったく新しい時間と空間の概念を提案しました。
2つの基本原理
特殊相対性理論は、以下の2つの原理に基づいています。
1. 特殊相対性原理
すべての慣性系において、物理法則は同じ形で表現される
ここで言う「慣性系」とは、加速や減速をしていない、静止しているか等速度で動いている観測者のことです。
例えば、等速度で走る電車の中でボールを投げても、地上に静止している人がボールを投げても、物理法則は同じように働きます。
2. 光速度不変の原理
真空中の光の速さは、どの慣性系においても常に一定(約30万km/秒)
これが特殊相対性理論の最も革命的なアイデアです。
通常の物体なら、観測者の動きによって見かけの速度は変わります。
例えば、時速100kmで走る電車の中から、進行方向に時速50kmでボールを投げると、地上の観測者から見るとボールは時速150kmで飛んでいるように見えます。
しかし、光は違います。
どんなに速く動いている観測者から測っても、光の速度は常に秒速約30万kmなのです。
特殊相対性理論の主な帰結
この2つの原理から、驚くべき結果が導かれます。
時間の遅れ(時間の相対性)
動いている物体の時間は、静止している観測者から見ると遅く進みます。
これは「双子のパラドックス」として有名です。
双子の兄弟の一人が光速に近い速度で宇宙旅行をして地球に帰ってくると、地球に残った兄弟よりも若いままである——という現象です。
ただし、この効果は光速に近い速度でないと顕著に現れません。
日常的な速度では、時間のずれは極めて小さく、人間には感じられません。
長さの収縮(ローレンツ収縮)
光速に近い速度で動いている物体は、進行方向に縮んで見えます。
例えば、光速の80%の速度で飛行する宇宙船は、静止している観測者から見ると、本来の長さの60%に縮んで見えます。
質量とエネルギーの等価性(E=mc²)
世界で最も有名な物理の公式です。
E=mc²
- E:エネルギー
- m:質量
- c:光速度
この式は、質量はエネルギーと等価であり、互いに変換可能であることを示しています。
わずかな質量でも、光速度の2乗(c²)をかけると、膨大なエネルギーになります。
これが原子力発電や原子爆弾の理論的基礎です。
特殊相対性理論の限界
特殊相対性理論には、重大な限界がありました。
重力を扱えないのです。
特殊相対性理論は、加速や減速をしていない慣性系のみを対象としています。
しかし、地球上では常に重力が働いており、厳密には慣性系ではありません。
また、アインシュタイン自身も、特殊相対性理論が「特殊な条件下」(重力がない状況)でのみ成立する理論であることを認識していました。
そこで、重力を含むより一般的な理論を作る必要があったのです。
一般相対性理論とは
発表の経緯
一般相対性理論は、特殊相対性理論を発展させる形で、1915年から1916年にかけてアインシュタインが発表した理論です。
特殊相対性理論の発表から約10年をかけて、アインシュタインは重力を含む理論を完成させました。
基本原理
一般相対性理論は、以下の2つの原理に基づいています。
1. 一般相対性原理
すべての座標系において、物理法則は同じ形で表現される
特殊相対性理論では「慣性系」のみでしたが、一般相対性理論では加速度運動をしている座標系も含め、すべての座標系で物理法則が成立します。
2. 等価原理(Equivalence Principle)
重力の働きと加速度の働きは、局所的には区別できない
これが一般相対性理論の最も重要な基礎です。
アインシュタインの思考実験を紹介しましょう。
宇宙空間にあるエレベーター(重力なし)が上向きに加速している状況と、地球上に静止しているエレベーター(重力あり)を想像してください。
エレベーターの中にいる人は、窓がなければ、この2つの状況を物理的に区別できません。
どちらも、床に引っ張られる感覚があり、ボールを離せば床に向かって落ちていきます。
つまり、重力と加速度は、本質的に同じものなのです。
重力とは時空の曲がり
一般相対性理論の最も革命的なアイデアは、重力の本質についての新しい理解です。
ニュートンの理論では、重力は質量を持つ物体間に働く「力」だと考えられていました。
しかし、アインシュタインは全く異なる見方を提案しました。
重力とは、質量やエネルギーによって時空(時間と空間)が曲がることである
質量を持つ物体(例えば太陽)は、その周りの時空を曲げます。
他の物体(例えば地球)は、この曲がった時空の中を「まっすぐ」進もうとしますが、時空自体が曲がっているため、結果として曲線を描いて運動します。
これが重力の正体なのです。
よく使われる比喩として、「ゴムシートに重いボールを置くと、シートがへこむ。その上に軽いビー玉を転がすと、へこみに沿って曲がって転がる」というものがあります。
一般相対性理論の主な帰結
重力による時間の遅れ(重力赤方偏移)
重力が強い場所(大きな質量の近く)では、時間がゆっくり進みます。
例えば、東京スカイツリーの展望台(地上から高い場所=重力が弱い)では、地上よりも時間が速く進みます。
その差は1日あたり約4ナノ秒(10億分の4秒)と極めて小さいですが、実際に測定されています。
光の曲がり(重力レンズ効果)
重力によって時空が曲がるため、光も曲がります。
1919年、イギリスの天文学者アーサー・エディントンが、日食の際に太陽の近くを通る星の光が曲がることを観測し、一般相対性理論を実証しました。
この効果は「重力レンズ」と呼ばれ、現代の天文学で広く利用されています。
遠くの銀河の光が、手前にある銀河団の重力で曲げられ、複数の像として見えたり、リング状に見えたりする現象が観測されています。
ブラックホール
一般相対性理論は、ブラックホールの存在を予言しました。
非常に大きな質量が小さな領域に集まると、時空が極端に曲がり、光さえも脱出できない領域ができます。
これがブラックホールです。
重力波
加速度運動をする質量は、時空の「さざ波」を作り出します。
これが重力波です。
2015年、アメリカのLIGO(ライゴ、レーザー干渉計重力波観測所)が、ブラックホール同士の衝突によって発生した重力波を初めて直接検出しました。
この発見により、2017年にノーベル物理学賞が授与されています。
特殊と一般の違いまとめ
比較表
| 項目 | 特殊相対性理論 | 一般相対性理論 |
|---|---|---|
| 発表年 | 1905年 | 1915-1916年 |
| 扱う対象 | 慣性系(等速度運動または静止) | すべての座標系(加速度運動を含む) |
| 重力 | 考慮しない | 考慮する |
| 時空 | 平坦(ユークリッド幾何学) | 曲がる(非ユークリッド幾何学) |
| 基本原理 | 光速不変の原理、特殊相対性原理 | 等価原理、一般相対性原理 |
| 主な帰結 | 時間の遅れ、長さの収縮、E=mc² | 重力による時間の遅れ、光の曲がり、ブラックホール、重力波 |
| 適用範囲 | 重力が無視できる場合 | 宇宙論、ブラックホール、GPS衛星など |
| 数学的難易度 | 比較的易しい | 高度(微分幾何学が必要) |
なぜ「特殊」と「一般」なのか
「特殊」と「一般」という名前の由来を説明します。
特殊相対性理論の「特殊」
「特殊な条件」(重力がなく、加速度運動をしていない慣性系)のみを扱う理論だから「特殊」
一般相対性理論の「一般」
「一般的な条件」(重力があり、加速度運動を含むすべての座標系)を扱う理論だから「一般」
つまり、一般相対性理論は特殊相対性理論を包含する、より広範な理論なのです。
包含関係
一般相対性理論と特殊相対性理論の関係は、以下のように理解できます。
一般相対性理論 ⊃ 特殊相対性理論
一般相対性理論において、重力がない(または無視できるほど弱い)場合を考えると、自動的に特殊相対性理論の結果が得られます。
つまり、特殊相対性理論は、一般相対性理論の「特殊な場合」なのです。
日常生活への応用
相対性理論は、単なる理論ではなく、現代技術にも応用されています。
GPS(全地球測位システム)
GPSは、特殊相対性理論と一般相対性理論の両方を考慮しなければ正確に機能しません。
特殊相対性理論の効果
GPS衛星は時速約14,000kmで地球を周回しています。
この高速運動により、衛星の時計は地上の時計よりも1日あたり約7マイクロ秒(100万分の7秒)遅れます。
一般相対性理論の効果
GPS衛星は地上から約20,000km上空を飛んでおり、地上よりも重力が弱いです。
そのため、衛星の時計は地上の時計よりも1日あたり約45マイクロ秒(100万分の45秒)進みます。
合計の効果
45マイクロ秒 – 7マイクロ秒 = 38マイクロ秒/日
1日で約38マイクロ秒、衛星の時計が進みます。
もしこの補正をしなければ、1日で約11kmもの位置ずれが生じてしまいます。
GPSが正確に機能するのは、相対性理論によって時計のずれを補正しているからなのです。
原子力発電
E=mc²の式は、原子力発電の理論的基礎です。
ウラン原子核が分裂する際、わずかな質量が失われます。
その失われた質量が、E=mc²に従って膨大なエネルギーに変換されます。
よくある誤解
誤解1:「特殊相対性理論は加速度を扱えない」
これは誤解です。
特殊相対性理論でも、加速度運動は扱えます。
実際、電磁場によって加速される荷電粒子の運動など、加速度を伴う現象を特殊相対性理論で記述できます。
正しくは、「特殊相対性理論は重力を扱えない」です。
誤解2:「一般相対性理論は難しいから使わない」
一般相対性理論の数学は確かに高度ですが、実用的な場面では頻繁に使われています。
GPS、ブラックホールの研究、宇宙の膨張の研究、重力波の検出など、現代の科学技術や天文学には不可欠です。
誤解3:「相対性理論は『相対的』だから絶対的な真理はない」
これも誤解です。
相対性理論における「相対性」とは、「観測者によって測定値が異なる」という意味です。
しかし、物理法則そのものは、すべての観測者にとって同じです。
例えば、光速度は絶対的に一定であり、これは相対的ではありません。
まとめ
相対性理論、特殊相対性理論、一般相対性理論の関係と違いをまとめます。
用語の関係:
- 相対性理論:アインシュタインが提唱した時間と空間に関する理論の総称
- 特殊相対性理論(1905年):重力を考えない理論
- 一般相対性理論(1915-1916年):重力を含む理論
最大の違い:
- 特殊相対性理論:重力なし、慣性系のみ、光速不変の原理
- 一般相対性理論:重力あり、すべての座標系、等価原理、時空の曲がり
包含関係:
- 一般相対性理論は特殊相対性理論を包含する
- 重力がない場合、一般相対性理論は自動的に特殊相対性理論になる
日常への影響:
- GPS:両方の相対性理論が必要
- 原子力:E=mc²(特殊相対性理論)
歴史:
- 1905年:特殊相対性理論発表(アインシュタイン26歳)
- 1915-1916年:一般相対性理論発表(約10年の研究の末)
- 1919年:日食観測で一般相対性理論を実証(エディントン)
- 2015年:重力波の初検出(LIGO)
相対性理論は、現代物理学の基礎であり、宇宙の本質を理解するために不可欠な理論です。
特殊と一般の違いを理解することで、アインシュタインがどのように物理学を革新したかがわかるでしょう。

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