「この化粧水は弱酸性でお肌にやさしい」
「温泉のpH値が高いから美肌の湯なんだって」
「プールの水質検査でpHを測定します」
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
pH(ピーエイチ、またはペーハー)という言葉、実は私たちの生活のあちこちに登場しています。
簡単に言うと、pHは「酸性かアルカリ性かを表す数字」のこと。 0から14までの数字で、レモンの酸っぱさも、石けんのヌルヌルも、すべて表現できる便利な指標なんです。
この記事では、身近な例をたくさん使いながら、pHの世界を分かりやすく探検していきます。 化学が苦手な人も大丈夫。一緒に、pHの不思議を楽しく学んでいきましょう!
pHって何?基本をやさしく解説

0から14の数字の意味
pHは、水溶液(水に何かが溶けた液体)の性質を0から14の数字で表したものです。
数字の意味:
- pH 7:中性(純粋な水)
- pH 0~6:酸性(数字が小さいほど強い酸性)
- pH 8~14:アルカリ性(数字が大きいほど強いアルカリ性)
覚え方のコツは「7が真ん中」ということ。 7より小さければ酸性、7より大きければアルカリ性です。
身近なもののpH値
実際の数値を見ると、もっとイメージしやすくなります:
強い酸性(pH 0~3)
- 胃液:pH 1.5~2.0
- レモン汁:pH 2.0
- コーラ:pH 2.5
- 食酢:pH 3.0
弱い酸性(pH 4~6)
- オレンジジュース:pH 3.5
- コーヒー:pH 5.0
- 雨水:pH 5.6
- 牛乳:pH 6.5
中性(pH 7前後)
- 純水:pH 7.0
- 血液:pH 7.4
- 涙:pH 7.0~7.5
弱いアルカリ性(pH 8~10)
- 海水:pH 8.2
- 重曹水:pH 8.3
- 石けん水:pH 9~10
強いアルカリ性(pH 11~14)
- アンモニア水:pH 11
- 漂白剤:pH 12~13
- 水酸化ナトリウム:pH 14
なぜpHという名前?
pHの「p」は「power(力)」または「potential(潜在)」、「H」は水素(Hydrogen)を表しています。
つまり「水素イオンの力」という意味。 でも、難しく考える必要はありません。「酸性・アルカリ性の強さを表す記号」と覚えておけば十分です。
酸性・中性・アルカリ性の特徴
酸性の特徴
酸性の液体には、こんな特徴があります:
味や感触
- すっぱい味がする(レモン、酢など)
- 金属を溶かす性質がある
- 肌がピリピリすることがある(強い酸性の場合)
見た目の変化
- 青色リトマス紙を赤く変える
- 金属と反応して泡(水素)を出す
- たんぱく質を分解する(肉を柔らかくする)
だから、料理で肉を柔らかくするのに酢やレモンを使うんですね。
アルカリ性の特徴
アルカリ性の液体の特徴:
味や感触
- 苦い味がする
- ヌルヌルした感触(石けんのような)
- 皮膚のたんぱく質を溶かす(手が荒れる原因)
見た目の変化
- 赤色リトマス紙を青く変える
- 油汚れを落とす力が強い
- 髪の毛を溶かすことがある(排水口クリーナーの原理)
掃除用の洗剤にアルカリ性が多いのは、油汚れを落とす力が強いからなんです。
中性の特徴
中性は、酸性でもアルカリ性でもない状態:
- 純粋な水が代表例
- 人間の体液(血液、涙)もほぼ中性
- 肌や粘膜にやさしい
- リトマス紙の色を変えない
「赤ちゃんにも使える」という商品は、だいたい中性か弱酸性になっています。
身近な場面でのpHの重要性

肌とpHの関係
健康な肌のpHは4.5~6.5の弱酸性です。
この「弱酸性」が大切な理由:
- 悪い菌の繁殖を防ぐ
- 肌のバリア機能を保つ
- 潤いを保持する
だから「弱酸性」を売りにする化粧品や石けんが多いんです。
アルカリ性の石けんで洗った後、肌がつっぱるのは、一時的に肌のpHがアルカリ性に傾くから。 でも健康な肌なら、30分ほどで元の弱酸性に戻ります。
髪とpHの関係
髪の毛も弱酸性(pH 4.5~5.5)が理想的です。
パーマやカラーリングの仕組み:
- アルカリ性の薬剤で髪のキューティクルを開く
- 薬剤を浸透させる
- 酸性のトリートメントでキューティクルを閉じる
美容室でトリートメントをするのは、髪のpHを整える意味もあるんですよ。
プールの水質管理
プールの水はpH 7.2~7.8に保たれています。
この範囲が大切な理由:
- 目や肌への刺激が少ない
- 塩素消毒の効果が最大になる
- 藻の発生を防げる
毎日pH検査をして、適切な範囲に調整しているんです。
胃薬の仕組み
胃液は強い酸性(pH 1.5~2.0)です。
胃が痛くなる原因の一つは、胃酸が出すぎること。 胃薬の多くは、アルカリ性の成分で胃酸を中和して、痛みを和らげる仕組みなんです。
例:重曹(炭酸水素ナトリウム)が胃薬に使われる理由がこれです。
食べ物・飲み物のpHと体への影響
酸性食品の影響
酸性の食べ物や飲み物:
- 炭酸飲料(pH 2.5~3.5)
- スポーツドリンク(pH 3.5)
- ワイン(pH 3.0~4.0)
- 柑橘類(pH 2.0~4.0)
注意点:
- 歯のエナメル質を溶かす可能性がある
- 飲んだ後は水で口をすすぐと良い
- ストローを使うと歯への影響を減らせる
でも、適度な酸性食品は消化を助ける効果もあるので、バランスが大切です。
アルカリ性食品の効果
アルカリ性の食べ物:
- 野菜(特に緑黄色野菜)
- 海藻類
- きのこ類
- 大豆製品
効果:
- 体内の酸性物質を中和
- 疲労回復に役立つ
- ミネラルが豊富
「アルカリ性食品で体質改善」という話もありますが、人間の血液のpHは常に7.4前後に保たれているので、食べ物で大きく変わることはありません。
料理でのpH活用
料理でもpHの知識が役立ちます:
肉を柔らかくする
- ヨーグルト(pH 4.5)に漬ける
- パイナップル(pH 3.5)の酵素を使う
- ワイン(pH 3.5)でマリネする
野菜の色を保つ
- 緑野菜は弱アルカリ性で茹でると鮮やか
- 紫キャベツは酸性で赤く、アルカリ性で青くなる
ゼリーを固める
- ゼラチンは強い酸性だと固まりにくい
- パイナップルの酵素はゼラチンを分解する
温泉とpH

温泉の分類
温泉もpHで分類されます:
酸性泉(pH 3未満)
- 殺菌効果が高い
- 皮膚病に効果的
- 肌がピリピリすることも
- 例:草津温泉(pH 2.1)
弱酸性泉(pH 3~6)
- 肌にやさしい
- 保湿効果がある
- 敏感肌でも安心
中性泉(pH 6~7.5)
- 刺激が少ない
- 赤ちゃんも入れる
- 長湯しやすい
弱アルカリ性泉(pH 7.5~8.5)
- 肌がすべすべになる
- 「美人の湯」と呼ばれる
- 古い角質を落とす効果
アルカリ性泉(pH 8.5以上)
- 強い洗浄効果
- ヌルヌル感が強い
- 入浴後は保湿が大切
美肌の湯の秘密
「美人の湯」と呼ばれる温泉の多くはpH 8~9の弱アルカリ性です。
理由:
- 古い角質を優しく取り除く
- 肌表面の汚れを落とす
- 入浴後の肌がつるつるになる
ただし、長湯しすぎると肌が乾燥するので、入浴後の保湿ケアが大切です。
pHの測り方
リトマス紙
一番簡単な測定方法です。
使い方:
- リトマス紙を液体につける
- 色の変化を見る
- 酸性なら赤、アルカリ性なら青
ただし、大まかな判定しかできません。
pH試験紙
もう少し詳しく測れます。
使い方:
- 試験紙を液体につける
- 色の変化を見る
- 付属の色見本と比較
- pH値を読み取る
1刻みくらいの精度で測定できます。
デジタルpH計
最も正確な測定方法です。
特徴:
- 0.01単位まで測定可能
- 即座に数値が表示される
- プロの現場で使用
- 定期的な校正が必要
家庭用なら、pH試験紙で十分です。 アクアリウムや家庭菜園では、簡易型のデジタルpH計も人気ですね。
園芸とpH

土壌のpH
植物によって好むpHが違います:
酸性を好む植物(pH 5.0~6.0)
- ブルーベリー
- ツツジ
- サツキ
- 茶
中性を好む植物(pH 6.5~7.0)
- トマト
- キュウリ
- レタス
- バラ
アルカリ性を好む植物(pH 7.0~8.0)
- ホウレンソウ
- アスパラガス
- ラベンダー
土のpHを調整することで、植物が育ちやすくなるんです。
土壌改良の方法
酸性にする場合
- ピートモス(泥炭)を混ぜる
- 硫黄を加える
- 落ち葉を入れる
アルカリ性にする場合
- 石灰を混ぜる
- 木灰を加える
- 卵の殻を砕いて入れる
家庭菜園では、まず土のpHを測ってから改良すると失敗が少ないですよ。
よくある質問
Q:雨が酸性なのはなぜ?
A:空気中の二酸化炭素が雨水に溶けて、弱い酸性(pH 5.6程度)になります。 これは自然現象で問題ありません。
ただし、大気汚染がひどいと pH 4以下の「酸性雨」になり、建物や森林に被害を与えることがあります。
Q:アルカリイオン水は体にいい?
A:アルカリイオン水(pH 8~10)には、胃腸症状の改善効果があると言われています。
ただし、飲みすぎると胃酸が薄まる可能性もあるので、適量が大切。 普通の水で十分という意見もあります。
Q:赤ちゃん用品が弱酸性なのはなぜ?
A:赤ちゃんの肌は大人より薄くデリケートです。 肌と同じ弱酸性にすることで、刺激を最小限にしているんです。
また、弱酸性は悪い菌が繁殖しにくい環境でもあります。
Q:虫歯とpHの関係は?
A:口の中のpHが5.5以下になると、歯のエナメル質が溶け始めます。
食後は口の中が酸性に傾くので、できれば30分以内に歯磨きやうがいをすると良いですね。 ガムを噛んで唾液を出すのも、pHを中性に戻す効果があります。
まとめ
pHは「酸性・中性・アルカリ性を0から14の数字で表したもの」という、とてもシンプルな指標です。
覚えておきたいポイント:
- pH 7が中性(純水)
- 7より小さいと酸性(レモン、酢、胃液)
- 7より大きいとアルカリ性(石けん、重曹、漂白剤)
- 人の肌や髪は弱酸性が理想的
- 食べ物、温泉、土壌など、あらゆる場面でpHが関係している
pHを知っていると、なぜ石けんで手を洗うと汚れが落ちるのか、なぜレモンで肉が柔らかくなるのか、なぜ温泉で肌がすべすべになるのか、すべて理解できるようになります。
日常生活の「なぜ?」が「なるほど!」に変わる。 それがpHの知識の面白さです。
次にレモンを絞ったり、温泉に入ったりするときは、ぜひpHのことを思い出してみてくださいね。 きっと、いつもと違った視点で楽しめるはずですよ。
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