はじめに:メレンゲって何?

メレンゲを作ったことはありますか?
卵白と砂糖だけで、まるで雲のようなふわふわのお菓子ができる。
これって不思議だと思いませんか?
実は、メレンゲは体積の80〜90%が空気でできているんです!
シャボン玉を想像してみてください。
シャボン玉の膜が石鹸ではなく、卵白のタンパク質と砂糖でできている。
それがメレンゲなんです。
この記事では、メレンゲがなぜ泡立つのか、どうすれば失敗しないのか、科学の視点から分かりやすく解説していきます。
🥚 メレンゲの材料と成分

基本の材料はたった2つ!
メレンゲの材料はシンプル:
- 卵白(水分90%、タンパク質10%)
- 砂糖(安定性と甘さのため)
卵白に含まれる特別なタンパク質
卵白には、メレンゲ作りに欠かせないタンパク質がたくさん含まれています:
タンパク質名 | 含有率 | 役割 |
---|---|---|
オバルブミン | 54% | 泡立ちの主役 |
オボトランスフェリン | 13% | 泡を安定させる |
オボムコイド | 11% | 熱に強く、形を保つ |
リゾチーム | 3.5% | 抗菌作用と泡立ち |
オボムチン | 3.5% | 大きくて繊維状、泡を固定 |
難しい名前ですが、それぞれが「泡作りのプロフェッショナル」だと思ってください。
🔬 なぜ卵白は泡立つの?科学で解明!

タンパク質の変身(変性)
生の卵白のタンパク質は、毛糸玉のように丸まっています。
泡立て前:
- 外側 = 水が好きな部分(親水性)
- 内側 = 水が嫌いな部分(疎水性)が隠れている
泡立てると:
- 泡立て器の力で毛糸玉がほどける
- 隠れていた水嫌いな部分が出てくる
- タンパク質が空気と水の境目に整列
- 水好きな部分を水側に、水嫌いな部分を空気側に向ける
こうして、安定した「タンパク質の膜」ができるんです!
泡が安定する3つの理由
1. タンパク質同士が手をつなぐ
タンパク質同士が結合して、立体的な網目構造を作ります。
特に硫黄を含む部分(システイン)が強く結びつきます。
2. 砂糖が助っ人になる
- シロップ状になって泡を守る
- 水分が逃げるのを防ぐ
- タンパク質の網目を補強する
3. 酸を加えると効果アップ
レモン汁やクリームタルタルを加えると、タンパク質がほどけやすくなって、より安定した泡ができます。
🎂 メレンゲの3つの種類

1. フレンチメレンゲ(一番簡単!)
作り方:
- 室温の卵白を泡立てる
- 砂糖を少しずつ加える
- 加熱なし
特徴:
- 一番不安定(すぐ使う必要あり)
- 軽くてもろい
- 大きな気泡を含む
向いているお菓子: メレンゲクッキー、シフォンケーキ、スフレ
2. スイスメレンゲ(中級者向け)
作り方:
- 卵白と砂糖を湯煎で60〜71℃まで温める
- 温めながら混ぜる
- その後、冷めるまで泡立てる
特徴:
- フレンチより安定
- きめ細かくシルキー
- 殺菌効果もある
向いているお菓子: バタークリーム、パイのトッピング
3. イタリアンメレンゲ(プロの技!)
作り方:
- 砂糖シロップを116〜121℃まで加熱
- 泡立てた卵白に熱いシロップを注ぐ
- 冷めるまで泡立て続ける
特徴:
- 最も安定(冷蔵で5日間OK)
- マシュマロのような質感
- 生で食べても安全
向いているお菓子: 高級バタークリーム、ムース、マシュマロ
どれが一番安定?
🥇 イタリアン(熱で完全に固まる)
🥈 スイス(部分的に熱処理)
🥉 フレンチ(熱処理なし)
🌡️ メレンゲ作りのコツ:科学的アプローチ

温度が大切な理由
室温(20〜22℃)の卵白がベスト!
なぜ?
- タンパク質がほどけやすい
- 表面張力が下がって泡立ちやすい
- 体積が6〜8倍に増えやすい
冷たい卵白でも泡立ちますが、時間がかかります(室温5分 vs 冷蔵22分)。
砂糖を入れるタイミング
早く入れると: しっかり密度の高いメレンゲ
遅く入れると: 軽くて大きなメレンゲ
砂糖は必ず完全に溶かしましょう。溶け残りは「泣き」の原因になります。
酸を加える魔法
クリームタルタル(卵白1個につき小さじ1/8)を加えると:
- タンパク質がほどけやすくなる
- より安定した泡ができる
レモン汁や酢でもOKですが、クリームタルタルも強い。
油は大敵!
油がちょっとでも混ざると、泡立ちません。
なぜ?油が空気と水の境目に入り込んで、タンパク質が膜を作るのを邪魔するからです。
対策:
- ボウルと泡立て器は徹底的に洗う
- 卵黄が混ざらないよう注意
- プラスチックより、ガラスやステンレスのボウルを使う
💪 上手な泡立て方

速度の使い分け
- スタート:低速
タンパク質を優しくほどく - 中盤:中速
空気を取り込みながら構造を作る - 仕上げ:高速
最終的な体積と安定性を確保
泡立てすぎに注意!
泡立てすぎると、水分が絞り出されて「離水」が起きます。ツヤがなくなってボソボソになったら、泡立てすぎのサインです。
理想の泡のサイズ
- 細かく均一な泡(0.1〜0.5mm)= 滑らかで安定
- 大きく不均一な泡 = 粗くて不安定
😢 失敗の原因と対処法
よくある失敗
1. 泣き(水分が出る)
- 原因:タンパク質が水を保持できない
- 対策:コーンスターチを少し加える
2. 泡が消える
- 原因:油の混入、泡立て不足
- 対策:器具を徹底洗浄、適切な時間泡立てる
3. ざらざらする
- 原因:砂糖が溶けていない
- 対策:細かい砂糖を使う、よく混ぜる
天気も影響する?
湿度60%以上だと、メレンゲが湿気を吸って軟らかくなりやすいです。
雨の日は避けた方が無難ですが、適切な技術があれば大丈夫!
🍰 メレンゲを使った人気のお菓子
パブロバ
外はカリカリ、中はマシュマロ。100〜110℃で焼くことで独特の食感に。
マカロン
イタリアンかスイスメレンゲを使用。安定した構造が「ピエ」(足)を作るのに重要。
レモンメレンゲパイ
熱いフィリングの上にメレンゲを乗せると、密着して泣きを防げます。
ベイクドアラスカ
メレンゲの断熱効果で、中のアイスが溶けずに表面だけ焼けるんです!
📦 保存方法
焼いたメレンゲ
- 密閉容器で室温保存
- 乾燥剤を入れると効果的
- 5〜7日間保存可能
生のメレンゲ
- フレンチ:すぐ使う
- スイス:冷蔵で24時間
- イタリアン:冷蔵で5日間
注意: 冷蔵庫は湿気があるので、焼いたメレンゲは入れないで!
🌱 ヴィーガンでもメレンゲ?
ひよこ豆の煮汁(アクアファバ)でも、卵白と同じような泡が作れます!
サポニンという天然の界面活性剤が含まれているからです。卵アレルギーの方も安心してメレンゲが楽しめます。
❓ よくある質問

銅のボウルは本当に効果ある?
はい!銅イオンがタンパク質と結合して、より安定した泡を作ります。でも、クリームタルタルでも同じ効果が得られるので、必須ではありません。
生の卵白は危険?
サルモネラ菌のリスクがあります。妊婦さんや高齢者は、イタリアンメレンゲやスイスメレンゲ(加熱済み)がおすすめです。
なぜメレンゲは雨の日に作らない方がいいの?
湿度が高いと、砂糖が湿気を吸って、メレンゲがべたつきやすくなります。でも、すぐに使うなら問題ありません。
まとめ:メレンゲは台所の科学実験!
メレンゲ作りは、まさに科学実験です。
覚えておきたいポイント:
- タンパク質の変性が泡を作る
- 砂糖と酸が安定性を高める
- 温度とタイミングが成功のカギ
- 油と湿気は大敵
科学を理解すれば、天候や材料の状態に応じて調整でき、いつでも完璧なメレンゲが作れるようになります。
次にメレンゲを作るときは、「今、タンパク質が変性してる!」「砂糖が泡を守ってる!」と思いながら作ってみてください。
きっと、今までより楽しく、そして上手にメレンゲが作れるはずです!
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