「なぜ10円玉は緑青でボロボロになるのに、金貨は何千年も輝いているの?」 「電池の仕組みがイオン化傾向と関係あるって本当?」 「金属の反応性の順番が覚えられない…」 「酸と反応する金属としない金属の違いは?」
化学を勉強していて、金属の反応で混乱していませんか?
実は、これらすべての疑問に答えてくれるのが「イオン化傾向」という概念なんです。イオン化傾向を理解すれば、金属の反応が予測でき、電池の仕組みも分かり、入試問題もスラスラ解けるようになります。
この記事では、イオン化傾向の基本から覚え方、実験での確認方法まで、すべてを分かりやすく解説していきます。
もう金属の反応で迷うことはなくなりますよ!
イオン化傾向とは? – 金属の「電子を手放したがり度」

シンプルに言うと「陽イオンになりやすさ」
イオン化傾向とは、金属が電子を失って陽イオンになりやすい性質の順番のことです。
分かりやすい例え:
- イオン化傾向が大きい = 電子を手放したがり屋さん
- イオン化傾向が小さい = 電子を手放したくない頑固者
化学式で表すと:
M → M^n+ + ne^-
(金属Mが電子を失って陽イオンになる)
なぜ金属によって違うの?
金属原子の最外殻電子の「居心地」が違うからです。
イオン化傾向が大きい金属(Li、K、Caなど):
- 最外殻電子が原子核から遠い
- 引力が弱くて電子が逃げやすい
- すぐに陽イオンになる
イオン化傾向が小さい金属(Au、Pt、Agなど):
- 電子が原子核にしっかり捕まっている
- なかなか陽イオンにならない
- だから錆びにくい!
イオン化列 – 絶対に覚えるべき金属の順番
基本のイオン化列(覚える必要あり!)
大 ← イオン化傾向 → 小
Li > K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H2) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au
※H2(水素)は金属じゃないけど、比較のために入れています
最強の語呂合わせで完璧暗記!
定番の語呂合わせ:
「リッチに貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金」
Li K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb (H) Cu Hg Ag Pt Au
もう一つの覚え方:
「リカちゃん貸そうかな、まあアルミ缶の鉄にすんな、
ひどすぎ、どうせ銀ぷら金」
自分に合った語呂を選んで、毎日唱えましょう!
イオン化傾向の3大ルール – これで反応が予測できる!

ルール1:イオン化傾向が大きい金属が小さい金属を追い出す
金属の単体 + 金属イオンの反応:
イオン化傾向:Zn > Cu なので
Zn + Cu²⁺ → Zn²⁺ + Cu
(亜鉛が銅イオンを追い出して、銅が析出)
逆は起こらない!
Cu + Zn²⁺ → 反応しない
(銅は亜鉛イオンを追い出せない)
ルール2:水素より前の金属は酸と反応する
H₂より左側の金属(Li~Pb):
Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂↑
(亜鉛は塩酸と反応して水素発生)
H₂より右側の金属(Cu~Au):
Cu + HCl → 反応しない
(銅は塩酸と反応しない)
ルール3:両端の金属で電池ができる
イオン化傾向の差が大きいほど、強力な電池になります。
ボルタ電池(Zn-Cu):
- 負極:Zn(イオン化傾向大)→ Zn²⁺ + 2e⁻
- 正極:Cu(イオン化傾向小)で水素発生
水との反応 – 激しさの違いを理解しよう
グループ別の反応パターン
Group 1:超激しく反応(Li、K、Ca、Na)
2Na + 2H₂O → 2NaOH + H₂↑
- 常温の水と激しく反応
- 水酸化物を作る
- 実験では危険!
Group 2:熱水と反応(Mg)
Mg + 2H₂O(熱水) → Mg(OH)₂ + H₂↑
- 常温の水とはほとんど反応しない
- 熱水や水蒸気なら反応
Group 3:高温水蒸気と反応(Al、Zn、Fe)
3Fe + 4H₂O(水蒸気) → Fe₃O₄ + 4H₂↑
- 赤熱状態で水蒸気と反応
- 鉄の場合は四酸化三鉄ができる
Group 4:水と反応しない(Ni以降)
- 通常の条件では水と反応しない
- だから水道管に銅が使われる!
酸との反応 – 濃度と種類で変わる!

希酸(希塩酸、希硫酸)との反応
H₂より前の金属のみ反応:
反応する:Li, K, Ca, Na, Mg, Al, Zn, Fe, Ni, Sn, Pb
反応しない:Cu, Hg, Ag, Pt, Au
酸化力のある酸(濃硝酸、熱濃硫酸)
銅や銀も溶かせる!
Cu + 4HNO₃(濃) → Cu(NO₃)₂ + 2NO₂ + 2H₂O
3Ag + 4HNO₃(希) → 3AgNO₃ + NO + 2H₂O
水素は発生せず、NO₂やNOが発生します。
王水(濃硝酸:濃塩酸 = 1:3)
金やプラチナも溶かす最強の酸!
Au + HNO₃ + 4HCl → HAuCl₄ + NO + 2H₂O
実験で確認!イオン化傾向
金属樹の実験
硫酸銅水溶液に亜鉛板を入れる:
- 青色の溶液が薄くなる
- 亜鉛板の表面に赤褐色の銅が析出
- まるで木の枝のように成長(金属樹)
反応式:
Zn + CuSO₄ → ZnSO₄ + Cu↓
金属板の組み合わせ実験
様々な金属板と金属イオン溶液で確認:
- Fe + CuSO₄ → 銅が析出(○)
- Cu + FeSO₄ → 反応なし(×)
- Mg + ZnSO₄ → 亜鉛が析出(○)
- Zn + MgSO₄ → 反応なし(×)
電池との関係 – イオン化傾向が電気を生む!
ダニエル電池の仕組み
構成:
- 負極:Zn(亜鉛板)in ZnSO₄水溶液
- 正極:Cu(銅板)in CuSO₄水溶液
- 素焼き板で仕切る
反応:
負極:Zn → Zn²⁺ + 2e⁻(酸化)
正極:Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu(還元)
全体:Zn + Cu²⁺ → Zn²⁺ + Cu
イオン化傾向の差(Zn > Cu)が起電力を生む!
身の回りの応用例
めっき
イオン化傾向を利用:
- 鉄にZnめっき(トタン)→ 犠牲防食
- 鉄にSnめっき(ブリキ)→ 傷つくと鉄が先に錆びる
貴金属の精製
イオン化傾向の違いで分離:
- 粗銅から純銅を電解精製
- 金や銀は陽極泥として回収
錆の防止
犠牲陽極法:
- 船体や地下パイプにMgやZnを取り付け
- より錆びやすい金属を犠牲にして本体を守る
入試頻出ポイント
よく出る問題パターン
1. 反応の可否を問う問題 「次の組み合わせで反応するものを選べ」
2. 電池の電極を問う問題 「正極・負極を答えよ」
3. 金属の推定問題 「未知の金属Xのイオン化傾向を推定せよ」
覚えておくべき数値
標準電極電位(重要なもの):
- Li⁺/Li:-3.04V(最も卑)
- Zn²⁺/Zn:-0.76V
- H⁺/H₂:0.00V(基準)
- Cu²⁺/Cu:+0.34V
- Au³⁺/Au:+1.50V(最も貴)
練習問題で確認!
基本問題
- Mg、Fe、Cu、Auをイオン化傾向の大きい順に並べよ
- 希塩酸と反応する金属を3つ挙げよ
- AgNO₃水溶液に銅線を入れるとどうなるか
応用問題
- なぜトタン(亜鉛めっき鉄)は傷ついても鉄が錆びにくいか
- ダニエル電池で、時間とともに何が変化するか
- 王水でも溶けない物質は何か
解答
- Mg > Fe > Cu > Au
- Mg、Al、Zn、Fe など(H₂より前)
- 銀が析出し、溶液が青くなる
- Zn > Feなので、亜鉛が先に酸化される
- Zn板が溶け、Cu板に銅が析出、起電力低下
- ガラス、プラスチックなど非金属
まとめ – イオン化傾向で化学反応が予測できる!
イオン化傾向、実はシンプルな概念でしたね!
今日学んだポイント:
✅ イオン化傾向 = 陽イオンになりやすさの順番
✅ 語呂合わせで順番を完璧暗記
✅ 大きい金属が小さい金属を追い出す
✅ H₂より前は酸と反応して水素発生
✅ 電池の正極・負極が一瞬で分かる
マスターへの道:
- まず語呂合わせを毎日唱える
- 反応の可否を予測する練習
- 実験動画で確認
- 入試問題で実戦練習
イオン化傾向は化学の「羅針盤」です。
これさえあれば、金属の反応で迷子になることはありません。
さあ、今すぐ語呂合わせを10回唱えて、完璧に覚えてしまいましょう!
化学が得意科目になる第一歩です!⚗️
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