「原子に+2とか-1とかついてるけど、何これ?」 「電子がマイナスで陽子がプラスって、なんで?」 「イオンの電荷ってどうやって数えるの?」 「静電気と化学の電荷って同じもの?」
化学の授業で必ず出てくる電荷(でんか)。 目に見えないし、プラスとマイナスがごちゃごちゃして、混乱しますよね。
でも実は、電荷は私たちの身の回りにめちゃくちゃ溢れているんです。 スマホのバッテリー、静電気でバチッとなる現象、雷、そして体の中の神経伝達まで… すべて電荷の働きなんです!
この記事では、静電気の実験のような身近な例から始めて、イオンの電荷計算まで段階的に解説。 さらに、電荷がわかれば化学反応が予測できるようになる方法まで伝授します!
読み終わる頃には、「電荷って、化学を理解するための最強の道具だったのか!」と思えるはずです。
電荷とは?30秒でわかる基本概念

一言で説明すると…
電荷とは、物質が持つ電気の量のことです。 磁石にN極とS極があるように、電気にもプラス(+)とマイナス(-)があります。
身近な例:静電気で理解しよう
下敷きで髪の毛が逆立つ理由
- 下敷きをこする
- 電子が移動して電荷が偏る
- 下敷き:マイナスの電荷
- 髪の毛:プラスの電荷
- プラスとマイナスが引き合って髪が逆立つ!
これが電荷の基本的な性質です。
電荷の3つの重要な法則
1. 電荷の引力と斥力
同じ電荷:反発する(+と+、-と-)
異なる電荷:引き合う(+と-)
2. 電荷保存の法則
電荷は作ったり消したりできない
移動するだけ!
3. 電荷の単位
基本単位:e(電気素量)= 1.6×10⁻¹⁹ クーロン
電子1個 = -e
陽子1個 = +e
原子の中の電荷:陽子・電子・中性子
原子を構成する3つの粒子
粒子 | 電荷 | 質量 | 場所 | 役割 |
---|---|---|---|---|
陽子 | +1 | 1(基準) | 原子核 | 元素を決定 |
中性子 | 0 | 1 | 原子核 | 質量を担う |
電子 | -1 | 1/1840 | 電子殻 | 化学反応 |
原子が電気的に中性な理由
通常の原子では:
陽子の数 = 電子の数
例:炭素原子
陽子6個(+6) + 電子6個(-6) = 0(中性)
電子配置と電荷の関係
電子殻のイメージ
原子核(+)
●
/ | \
● ● ● ← 電子(-)
/ \
● ●
外側の電子ほど:
- 原子核から遠い
- 引力が弱い
- 失いやすい・もらいやすい
これが化学反応の鍵!
イオンと電荷:なぜ原子は電子をやり取りするのか

イオンができる仕組み
電子を失う → 陽イオン(カチオン)
Na(11個の陽子、11個の電子)
↓ 電子を1個失う
Na⁺(11個の陽子、10個の電子)
電荷:+11 - 10 = +1
電子を得る → 陰イオン(アニオン)
Cl(17個の陽子、17個の電子)
↓ 電子を1個得る
Cl⁻(17個の陽子、18個の電子)
電荷:+17 - 18 = -1
なぜイオンになりたがるのか?
安定な電子配置を目指す(オクテット則)
希ガスの電子配置(最外殻8個)が最も安定!
Na:最外殻1個 → 1個捨てて安定(Na⁺)
Cl:最外殻7個 → 1個もらって8個に(Cl⁻)
イオンの電荷の求め方
簡単な計算式
イオンの電荷 = 陽子の数 - 電子の数
具体例
イオン | 陽子数 | 電子数 | 計算 | 電荷 |
---|---|---|---|---|
Mg²⁺ | 12 | 10 | 12-10 | +2 |
O²⁻ | 8 | 10 | 8-10 | -2 |
Al³⁺ | 13 | 10 | 13-10 | +3 |
分子・化合物の電荷計算
分子全体の電荷
中性分子の場合
H₂O(水)
H:+1 × 2個 = +2
O:-2 × 1個 = -2
合計:+2 + (-2) = 0(中性)
多原子イオンの場合
SO₄²⁻(硫酸イオン)
S:+6(酸化数)
O:-2 × 4個 = -8
合計:+6 + (-8) = -2
酸化数と電荷の関係
酸化数は、化合物中の原子の見かけ上の電荷。
酸化数のルール
- 単体の酸化数 = 0
- 単原子イオン = イオンの電荷
- 酸素は通常 -2
- 水素は通常 +1
- 化合物全体の酸化数の和 = 0
電荷のバランス(電気的中性)
化合物を作るとき、全体の電荷は必ず0になる!
例:塩化アルミニウム
Al³⁺ × 1個 = +3
Cl⁻ × 3個 = -3
合計:0 → AlCl₃
電荷が関わる身近な現象

日常生活での電荷
1. 静電気
- 冬にドアノブでバチッ
- 服を脱ぐときのパチパチ
- 髪の毛が逆立つ
**原理:**摩擦で電子が移動し、電荷が偏る
2. 電池
負極:電子を放出(酸化)
正極:電子を受け取る(還元)
→ 電流が流れる
3. 雷
雲の中:電荷の分離
上部:プラス
下部:マイナス
→ 地面との間で放電
体の中の電荷
神経伝達
神経細胞の内側:K⁺(カリウムイオン)
神経細胞の外側:Na⁺(ナトリウムイオン)
→ イオンの移動で信号伝達
筋肉の収縮
Ca²⁺(カルシウムイオン)の移動
→ 筋肉が収縮
技術への応用
半導体
- n型:電子が余る(マイナス)
- p型:電子が不足(プラス)
- 組み合わせてトランジスタに
液晶ディスプレイ
電圧で液晶分子の向きを変える → 光の透過を制御
電荷とクーロンの法則
クーロンの法則:電荷間に働く力
F = k × (q₁ × q₂) / r²
F:力の大きさ
k:クーロン定数
q₁、q₂:それぞれの電荷
r:距離
グラフで理解する
力
↑
│\
│ \
│ \___
│ ───___
└────────────→ 距離
距離が2倍 → 力は1/4 距離が3倍 → 力は1/9
実例で計算
**問題:**Na⁺とCl⁻が2Å離れているときの引力は?
ポイント:
- 異なる電荷なので引力
- 距離が近いほど強い力
- イオン結合の強さに関係
電荷に関する重要な化学反応

酸化還元反応(電子の移動)
酸化:電子を失う(電荷が増える)
Fe → Fe²⁺ + 2e⁻
(0) (+2) (-2)
還元:電子を得る(電荷が減る)
Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu
(+2) (-2) (0)
電気分解
電気エネルギーで化学反応を起こす!
水の電気分解
陰極(-):2H⁺ + 2e⁻ → H₂
陽極(+):2OH⁻ → H₂O + 1/2O₂ + 2e⁻
電池の仕組み
ダニエル電池の例
負極:Zn → Zn²⁺ + 2e⁻(酸化)
正極:Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu(還元)
電子の流れ = 電流!
電荷の計算問題を解いてみよう
**基本問題】
**問1:**Fe³⁺の陽子数は26個。電子は何個?
解答:
電荷 = 陽子数 - 電子数
+3 = 26 - 電子数
電子数 = 26 - 3 = 23個
**応用問題】
**問2:**NH₄⁺の電荷を各原子から計算せよ
解答:
N:陽子7個、電子7個 → 0
H:陽子1個、電子1個 → 0(×4個)
でもNH₄⁺は+1の電荷
→ 電子が1個足りない状態
**実践問題】
**問3:**MnO₄⁻でMnの酸化数は?
解答:
全体の電荷:-1
O:-2 × 4 = -8
Mn + (-8) = -1
Mn = +7
よくある間違いと注意点
間違い1:電荷と質量を混同
❌ 間違い:「電子が増えると重くなる」
✅ **正解:**電子の質量は極めて小さい(ほぼ無視できる)
間違い2:電荷の符号
❌ 間違い:「電子を失うとマイナス」
✅ 正解:
- 電子を失う → プラス
- 電子を得る → マイナス
間違い3:イオンの大きさ
❌ 間違い:「陽イオンの方が大きい」
✅ 正解:
- 陽イオン:元の原子より小さい
- 陰イオン:元の原子より大きい
間違い4:電荷0は電荷がない?
❌ 間違い:「電荷0 = 電荷が存在しない」
✅ **正解:**プラスとマイナスが打ち消し合っている状態
電荷を理解するための実験
**簡単にできる電荷の実験】
1. 静電気の実験
準備:
- プラスチック下敷き
- ティッシュペーパー
- 細かく切った紙
手順:
- 下敷きをティッシュでこする
- 紙片に近づける
- 紙が引き寄せられる!
2. 電気ペンの実験
準備:
- 風船
- 毛糸のセーター
- 蛇口の水
手順:
- 風船をセーターでこする
- 細く出した水に近づける
- 水が曲がる!
**電荷の可視化】
電気力線のイメージ
+ -
\ /
\ /
\ /
\/
/\
/ \
/ \
/ \
プラスからマイナスへ向かう!
まとめ:電荷は化学の基本中の基本!
電荷について、基礎から応用まで完全にマスターできましたね!
絶対に覚えておくべきポイント:
✅ 電荷 = 電気の量(プラスかマイナス)
✅ 陽子 = +1、電子 = -1、中性子 = 0
✅ イオンの電荷 = 陽子数 – 電子数
✅ 異なる電荷は引き合い、同じ電荷は反発
✅ 化学反応は電子のやり取り
レベル別学習ガイド:
📗 初級 → 原子とイオンの電荷を理解
📘 中級 → 酸化数と電荷の計算
📙 上級 → 電気化学への応用
電荷の本質は…
物質の性質を決める根本的な要素。 化学結合、化学反応、電気現象… すべて電荷の相互作用で説明できる。
これが分かれば、化学がグッと面白くなります!
身の回りの電気現象を見たとき、「あ、これも電荷の働きだ!」と気づけるようになれば、あなたも電荷マスター!
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