2値分類とは?機械学習の基本を初心者にも分かりやすく徹底解説

AI

メールを開いたとき、自動的に「迷惑メール」と「通常メール」に振り分けられている。病院で検査を受けると「陽性」か「陰性」かが判定される。銀行でローンを申し込むと「承認」か「却下」かが決まる。

これらはすべて2値分類(Binary Classification)と呼ばれる仕組みで実現されています。

2値分類とは、データを2つのグループのどちらかに分ける技術のことです。Yes か No、正常か異常、合格か不合格など、私たちの身の回りには「2択で判断する」場面がたくさんありますよね。

機械学習の世界では、この2値分類が最も基本的で、かつ最も実用的な技術の一つとなっています。スパムフィルター、不正検知、病気の診断、顧客の離脱予測など、ビジネスから医療まで、幅広い分野で活用されているんです。

「機械学習って難しそう」と思うかもしれませんが、2値分類の基本的な考え方はとてもシンプルです。コンピュータに「この2つのグループを見分けるルールを学習させる」だけなんですね。

この記事では、2値分類の基本的な仕組みから、実際の使用例、代表的なアルゴリズム、評価方法、実装のコツまで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

AIが「これはスパムです」「これは猫の画像です」と判断する仕組みを、一緒に学んでいきましょう!

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  1. 2値分類とは?
    1. 「2値」の意味
    2. 分類の基本的な考え方
    3. 分類問題の種類
  2. 2値分類の具体例
    1. 例1:スパムメールフィルター
    2. 例2:病気の診断
    3. 例3:クレジットカード不正利用検知
    4. 例4:顧客離脱(チャーン)予測
    5. 例5:画像分類
  3. 2値分類のプロセス
    1. ステップ1:問題定義
    2. ステップ2:データ収集
    3. ステップ3:特徴量エンジニアリング
    4. ステップ4:データの分割
    5. ステップ5:モデルの選択と学習
    6. ステップ6:モデルの評価
    7. ステップ7:チューニングと改善
    8. ステップ8:デプロイ(実運用)
  4. 代表的な2値分類アルゴリズム
    1. 1. ロジスティック回帰
    2. 2. 決定木(Decision Tree)
    3. 3. ランダムフォレスト
    4. 4. サポートベクターマシン(SVM)
    5. 5. ニューラルネットワーク
  5. 評価指標
    1. 混同行列(Confusion Matrix)
    2. 1. 正解率(Accuracy)
    3. 2. 適合率(Precision)
    4. 3. 再現率(Recall / Sensitivity)
    5. 4. F1スコア
    6. 5. ROC曲線とAUC
  6. トレードオフの関係
    1. 閾値による調整
    2. 閾値を変えると…
    3. どちらを重視すべきか?
  7. Pythonでの実装例
    1. 必要なライブラリ
    2. データの準備
    3. データの分割
    4. モデルの学習
    5. 予測
    6. 評価
    7. 他のアルゴリズムとの比較
  8. よくある課題と対策
    1. 問題1:不均衡データ(Imbalanced Data)
    2. 問題2:過学習(Overfitting)
    3. 問題3:特徴量のスケールの違い
    4. 問題4:欠損値(Missing Values)
    5. 問題5:カテゴリカル変数の扱い
  9. 実務での注意点
    1. 1. ビジネス目標との整合性
    2. 2. 解釈可能性
    3. 3. 運用コスト
    4. 4. データの継続的な収集
    5. 5. エラー処理
  10. まとめ

2値分類とは?

2値分類(Binary Classification)とは、データを2つのクラス(カテゴリ)のどちらかに分類する機械学習のタスクです。

「2値」の意味

「2値」は英語で「Binary(バイナリー)」といいます。

コンピュータの世界では「0と1」「オンとオフ」のように、2つの値しか取らないことを指します。2値分類も同じで、答えは必ず2択のどちらかなんですね。

分類の基本的な考え方

人間の判断プロセス

メールを見る
↓
件名や本文をチェック
↓
「怪しい言葉が多い」→ スパムかも
「知っている人から」→ 通常メールかも
↓
判断:スパムか、通常か

機械学習の判断プロセス

メールのデータを入力
↓
学習済みのモデルが特徴を分析
↓
過去のパターンと照合
↓
確率を計算:スパム 85%、通常 15%
↓
出力:スパム

機械学習では、過去の大量のデータから「どんな特徴があればスパムか」を学習し、新しいメールに対して自動的に判断できるようになります。

分類問題の種類

分類問題には、分けるクラスの数によって種類があります。

2値分類(Binary Classification)

  • クラス数:2つ
  • 例:Yes/No、正常/異常、合格/不合格

多クラス分類(Multi-class Classification)

  • クラス数:3つ以上
  • 例:動物の種類(犬/猫/鳥/…)、手書き数字認識(0〜9)

多ラベル分類(Multi-label Classification)

  • 1つのデータが複数のクラスに属する
  • 例:映画のジャンル(アクション+コメディ+恋愛)

2値分類の具体例

身近な例で2値分類を理解しましょう。

例1:スパムメールフィルター

分類対象
メールを「スパム」か「通常メール」に分類

入力データ(特徴量)

  • 件名に「無料」「当選」などの言葉が含まれるか
  • 差出人のメールアドレスのドメイン
  • 本文の長さ
  • リンクの数
  • HTML形式かテキスト形式か
  • 以前にやりとりしたことがあるか

出力

  • クラス0:通常メール
  • クラス1:スパム

実際の動作

新しいメール受信
↓
特徴量を抽出
件名:「おめでとうございます!1億円当選!」
リンク数:5個
差出人:不明
↓
モデルが予測:スパム確率 98%
↓
迷惑メールフォルダへ移動

例2:病気の診断

分類対象
患者の検査結果から「陽性」か「陰性」を判定

入力データ(特徴量)

  • 年齢
  • 性別
  • 血液検査の数値
  • 血圧
  • BMI(体格指数)
  • 喫煙歴
  • 家族歴

出力

  • クラス0:陰性(健康)
  • クラス1:陽性(疾患あり)

実際の動作

患者の検査データを入力
↓
年齢:55歳、血圧:150/95、血糖値:高め...
↓
モデルが予測:陽性の確率 75%
↓
医師が詳しい検査を実施

例3:クレジットカード不正利用検知

分類対象
取引が「正常」か「不正」かを判定

入力データ(特徴量)

  • 取引金額
  • 取引時刻
  • 取引場所
  • 利用頻度
  • 過去の平均取引額との差
  • 海外取引かどうか
  • 短時間での連続取引

出力

  • クラス0:正常な取引
  • クラス1:不正の疑い

実際の動作

深夜3時に海外で高額取引を検知
↓
通常の利用パターンと大きく異なる
↓
モデルが予測:不正の確率 92%
↓
取引を一時停止し、顧客に確認の連絡

例4:顧客離脱(チャーン)予測

分類対象
顧客が「継続利用」か「サービス解約」かを予測

入力データ(特徴量)

  • 利用頻度
  • 最終利用日からの経過日数
  • カスタマーサポートへの問い合わせ回数
  • サービスの利用時間
  • 料金プラン
  • 契約期間

出力

  • クラス0:継続利用
  • クラス1:解約の可能性が高い

実際の動作

顧客の行動データを分析
↓
利用頻度が急減、問い合わせ増加...
↓
モデルが予測:解約の確率 80%
↓
リテンション施策(特別オファー)を実施

例5:画像分類

分類対象
画像に「猫」が写っているか、いないか

入力データ(特徴量)

  • ピクセルの色情報
  • エッジ(輪郭)の形状
  • テクスチャ(質感)
  • パターンの特徴

出力

  • クラス0:猫ではない
  • クラス1:猫

実際の動作

画像を入力
↓
ディープラーニングモデルが画像を解析
↓
猫の特徴(耳の形、目の位置など)を検出
↓
モデルが予測:猫の確率 95%
↓
出力:猫

2値分類のプロセス

実際に2値分類モデルを作る手順を見ていきましょう。

ステップ1:問題定義

明確にすべきこと

  • 何を予測したいのか?
  • どの2つのクラスに分類するのか?
  • なぜその分類が必要なのか?

例:スパムフィルター

目的:メールを自動的にスパムと通常に分類したい
クラス:スパム / 通常メール
理由:ユーザーの時間を節約し、セキュリティを向上

ステップ2:データ収集

必要なデータ

  • 大量の事例データ
  • 各データに正解ラベル(どちらのクラスか)

例:スパムフィルター

データ:過去のメール 10,000通
ラベル:
- 8,000通:通常メール(クラス0)
- 2,000通:スパム(クラス1)

データの質が重要

  • 十分な量がある
  • バランスが取れている(偏りすぎていない)
  • 正しくラベル付けされている
  • ノイズ(誤ったデータ)が少ない

ステップ3:特徴量エンジニアリング

特徴量とは?
モデルが判断に使う「手がかり」のことです。

例:スパムフィルター

元データ:
件名「緊急!今すぐクリック」
本文「当選しました。こちらをクリック...」

↓ 特徴量に変換

特徴量:
- 件名の長さ:8文字
- 「緊急」が含まれる:Yes(1)
- 「クリック」が含まれる:Yes(1)
- リンクの数:3個
- 大文字の割合:20%

良い特徴量の条件

  • 分類に役立つ情報を含む
  • 数値化されている
  • ノイズが少ない
  • 計算コストが低い

ステップ4:データの分割

訓練データとテストデータに分ける

典型的な分割比率

全データ 10,000件
↓
訓練データ:8,000件(80%)
 → モデルの学習に使用

テストデータ:2,000件(20%)
 → モデルの評価に使用

なぜ分けるのか?
訓練データだけで評価すると、モデルが「訓練データを丸暗記しただけ」の可能性があります。未知のデータ(テストデータ)でテストすることで、本当の実力が分かるんですね。

ステップ5:モデルの選択と学習

アルゴリズムを選ぶ

  • ロジスティック回帰
  • 決定木
  • ランダムフォレスト
  • サポートベクターマシン(SVM)
  • ニューラルネットワーク

学習プロセス

1. 訓練データを入力
2. モデルが特徴量とラベルの関係を学習
3. パラメータを調整
4. 予測精度を最大化

ステップ6:モデルの評価

テストデータで性能を測定

  • 正解率(Accuracy)
  • 適合率(Precision)
  • 再現率(Recall)
  • F1スコア

これらの指標については後ほど詳しく説明します。

ステップ7:チューニングと改善

性能が不十分な場合

  • 特徴量を追加・改善
  • 異なるアルゴリズムを試す
  • ハイパーパラメータを調整
  • データを追加収集

ステップ8:デプロイ(実運用)

実際のシステムに組み込む

新しいメール受信
↓
学習済みモデルで予測
↓
スパムフォルダへ移動

代表的な2値分類アルゴリズム

実際に使われる主なアルゴリズムを紹介します。

1. ロジスティック回帰

概要
最もシンプルで広く使われる2値分類アルゴリズムです。

仕組み
データが各クラスに属する確率を計算します。

数式(イメージ)

確率 = 1 / (1 + e^(-スコア))

スコア = 特徴量1 × 重み1 + 特徴量2 × 重み2 + ...

確率が0.5以上ならクラス1、未満ならクラス0と判定します。

メリット

  • 計算が高速
  • 解釈しやすい
  • 実装が簡単
  • 大規模データにも対応

デメリット

  • 複雑な非線形パターンには弱い
  • 特徴量の前処理が重要

使用例

  • スパムフィルター
  • クリック率予測
  • 病気の診断

2. 決定木(Decision Tree)

概要
Yes/Noの質問を繰り返して分類する方法です。

仕組み

メールの例:

件名に「無料」が含まれる?
├─ Yes → リンクが5個以上?
│         ├─ Yes → スパム
│         └─ No  → 差出人は不明?
│                  ├─ Yes → スパム
│                  └─ No  → 通常
└─ No  → 過去にやりとりあり?
          ├─ Yes → 通常
          └─ No  → 本文が短い?
                   ├─ Yes → スパム
                   └─ No  → 通常

メリット

  • 視覚的に理解しやすい
  • 特徴量の前処理が不要
  • 非線形パターンに対応

デメリット

  • 過学習しやすい
  • データの変動に敏感

使用例

  • 顧客セグメンテーション
  • リスク評価
  • 医療診断

3. ランダムフォレスト

概要
複数の決定木の「多数決」で判断する方法です。

仕組み

100本の決定木を作成
↓
各決定木が予測
決定木1:スパム
決定木2:通常
決定木3:スパム
...
↓
多数決:
スパム 75票、通常 25票
↓
結果:スパム

メリット

  • 精度が高い
  • 過学習しにくい
  • 特徴量の重要度が分かる
  • ロバスト(安定している)

デメリット

  • 計算コストが高い
  • 解釈がやや難しい

使用例

  • 不正検知
  • 信用スコアリング
  • 病気の診断

4. サポートベクターマシン(SVM)

概要
2つのクラスを最も良く分ける「境界線」を見つける方法です。

仕組み
データを高次元空間にマッピングして、最適な分離超平面を探します。

イメージ

2次元平面上のデータ:
○ ○ ○     × × ×
 ○ ○      × × ×
  ○ ○    × × ×
      |  ← この線で分離

メリット

  • 高次元データに強い
  • 精度が高い
  • 理論的に美しい

デメリット

  • 大規模データでは遅い
  • パラメータ調整が重要
  • 解釈が難しい

使用例

  • 画像分類
  • テキスト分類
  • 手書き文字認識

5. ニューラルネットワーク

概要
人間の脳の神経細胞を模倣した学習モデルです。

仕組み

入力層 → 隠れ層1 → 隠れ層2 → ... → 出力層
(特徴量)(計算)  (計算)       (確率)

各層で複雑な計算を重ねることで、高度なパターンを学習します。

メリット

  • 非常に複雑なパターンを学習可能
  • 画像、音声、テキストなど多様なデータに対応
  • 最新の技術では最高精度

デメリット

  • 大量のデータが必要
  • 計算コストが非常に高い
  • ブラックボックス(解釈が困難)
  • ハイパーパラメータが多い

使用例

  • 画像認識
  • 音声認識
  • 自然言語処理

評価指標

モデルの性能をどう測るか、詳しく見ていきましょう。

混同行列(Confusion Matrix)

予測結果を整理した表です。

                実際
           陽性      陰性
予測 陽性  TP(50)    FP(10)
    陰性  FN(5)     TN(935)

4つの要素

  • TP(True Positive):正しく陽性と予測(真陽性)
  • TN(True Negative):正しく陰性と予測(真陰性)
  • FP(False Positive):誤って陽性と予測(偽陽性)
  • FN(False Negative):誤って陰性と予測(偽陰性)

1. 正解率(Accuracy)

定義
全体のうち、正しく予測できた割合

計算式

正解率 = (TP + TN) / (TP + TN + FP + FN)

TP=50, TN=935, FP=10, FN=5
正解率 = (50 + 935) / (50 + 935 + 10 + 5) = 985 / 1000 = 98.5%

注意点
データが偏っている場合は注意が必要です。

不均衡データの例

1000件中、陽性が10件、陰性が990件
全部を「陰性」と予測すると...
正解率 = 990 / 1000 = 99%

でも、陽性を1つも当てられていない!

このような場合、正解率だけでは不十分なんですね。

2. 適合率(Precision)

定義
「陽性」と予測したもののうち、実際に陽性だった割合

計算式

適合率 = TP / (TP + FP)

TP=50, FP=10
適合率 = 50 / (50 + 10) = 50 / 60 = 83.3%

意味
「このモデルが陽性と判断したら、83.3%の確率で本当に陽性」

重視する場面
偽陽性(FP)を減らしたいとき

  • スパムフィルター:通常メールを誤ってスパムにしたくない
  • 不正検知:正常な取引を誤ってブロックしたくない

3. 再現率(Recall / Sensitivity)

定義
実際の陽性のうち、正しく陽性と予測できた割合

計算式

再現率 = TP / (TP + FN)

TP=50, FN=5
再現率 = 50 / (50 + 5) = 50 / 55 = 90.9%

意味
「実際の陽性のうち、90.9%を正しく見つけられた」

重視する場面
偽陰性(FN)を減らしたいとき

  • 病気の診断:病気を見逃したくない
  • 不正検知:不正を見逃したくない

4. F1スコア

定義
適合率と再現率の調和平均

計算式

F1 = 2 × (適合率 × 再現率) / (適合率 + 再現率)

適合率=83.3%, 再現率=90.9%
F1 = 2 × (0.833 × 0.909) / (0.833 + 0.909) = 0.869 = 86.9%

メリット
適合率と再現率のバランスを1つの指標で表現できます。

5. ROC曲線とAUC

ROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve)
横軸に偽陽性率、縦軸に真陽性率をプロットしたグラフです。

AUC(Area Under the Curve)
ROC曲線の下側の面積。0.5〜1.0の値を取ります。

評価基準

  • 0.9〜1.0:優秀
  • 0.8〜0.9:良好
  • 0.7〜0.8:まあまあ
  • 0.5〜0.7:要改善
  • 0.5:ランダム(コイン投げと同じ)

メリット
閾値(しきい値)に依存しない総合的な評価ができます。

トレードオフの関係

適合率と再現率にはトレードオフがあります。

閾値による調整

モデルは通常、確率を出力します。その確率をもとに、どちらのクラスに分類するかを決めます。

例:病気の診断

患者A:陽性の確率 85%
患者B:陽性の確率 55%
患者C:陽性の確率 30%

閾値を50%に設定

患者A:85% ≥ 50% → 陽性
患者B:55% ≥ 50% → 陽性
患者C:30% < 50% → 陰性

閾値を変えると…

閾値を下げる(例:30%)

より多くの人を「陽性」と判定
↓
再現率:上がる(病気を見逃しにくい)
適合率:下がる(健康な人も陽性になる)

閾値を上げる(例:80%)

確実な場合のみ「陽性」と判定
↓
適合率:上がる(陽性と言ったら本当に陽性)
再現率:下がる(病気を見逃す可能性)

どちらを重視すべきか?

再現率を重視する場面
見逃しが致命的な場合

  • がんの診断:見逃すと命に関わる
  • 不正検知:不正を見逃すと大損害
  • セキュリティ:侵入を見逃すと危険

適合率を重視する場面
誤検知のコストが高い場合

  • スパムフィルター:大事なメールを捨てたくない
  • 犯罪予測:無実の人を疑いたくない

Pythonでの実装例

実際にPythonで2値分類を実装してみましょう。

必要なライブラリ

import numpy as np
import pandas as pd
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.linear_model import LogisticRegression
from sklearn.metrics import accuracy_score, precision_score, recall_score, f1_score
from sklearn.metrics import confusion_matrix, classification_report

データの準備

# サンプルデータの作成(実際は外部ファイルから読み込むことが多い)
from sklearn.datasets import make_classification

# 1000件のデータ、5つの特徴量
X, y = make_classification(n_samples=1000, n_features=5, 
                          n_informative=3, n_redundant=2,
                          random_state=42)

# データフレームに変換
df = pd.DataFrame(X, columns=['特徴1', '特徴2', '特徴3', '特徴4', '特徴5'])
df['ラベル'] = y

# データの確認
print(df.head())
print(f"クラス0の数: {sum(y==0)}")
print(f"クラス1の数: {sum(y==1)}")

データの分割

# 特徴量とラベルに分離
X = df.drop('ラベル', axis=1)
y = df['ラベル']

# 訓練データとテストデータに分割(80%:20%)
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(
    X, y, test_size=0.2, random_state=42, stratify=y
)

print(f"訓練データ: {len(X_train)}件")
print(f"テストデータ: {len(X_test)}件")

モデルの学習

# ロジスティック回帰モデルを作成
model = LogisticRegression(random_state=42)

# モデルを訓練データで学習
model.fit(X_train, y_train)

print("モデルの学習が完了しました")

予測

# テストデータで予測
y_pred = model.predict(X_test)

# 予測確率も取得
y_pred_proba = model.predict_proba(X_test)

# 結果の一部を表示
print("予測結果の例:")
for i in range(5):
    print(f"データ{i+1}: 予測={y_pred[i]}, 実際={y_test.iloc[i]}, "
          f"確率=[{y_pred_proba[i][0]:.2f}, {y_pred_proba[i][1]:.2f}]")

評価

# 各種評価指標を計算
accuracy = accuracy_score(y_test, y_pred)
precision = precision_score(y_test, y_pred)
recall = recall_score(y_test, y_pred)
f1 = f1_score(y_test, y_pred)

print("\n=== 評価結果 ===")
print(f"正解率: {accuracy:.4f}")
print(f"適合率: {precision:.4f}")
print(f"再現率: {recall:.4f}")
print(f"F1スコア: {f1:.4f}")

# 混同行列
print("\n混同行列:")
cm = confusion_matrix(y_test, y_pred)
print(cm)

# 詳細レポート
print("\n分類レポート:")
print(classification_report(y_test, y_pred))

他のアルゴリズムとの比較

from sklearn.tree import DecisionTreeClassifier
from sklearn.ensemble import RandomForestClassifier
from sklearn.svm import SVC

# 複数のモデルを試す
models = {
    'ロジスティック回帰': LogisticRegression(random_state=42),
    '決定木': DecisionTreeClassifier(random_state=42),
    'ランダムフォレスト': RandomForestClassifier(random_state=42),
    'SVM': SVC(random_state=42)
}

results = []

for name, model in models.items():
    # 学習
    model.fit(X_train, y_train)

    # 予測
    y_pred = model.predict(X_test)

    # 評価
    accuracy = accuracy_score(y_test, y_pred)
    precision = precision_score(y_test, y_pred)
    recall = recall_score(y_test, y_pred)
    f1 = f1_score(y_test, y_pred)

    results.append({
        'モデル': name,
        '正解率': accuracy,
        '適合率': precision,
        '再現率': recall,
        'F1': f1
    })

# 結果を表にまとめて表示
results_df = pd.DataFrame(results)
print("\n=== モデル比較 ===")
print(results_df)

よくある課題と対策

実際にプロジェクトで直面する問題と解決方法です。

問題1:不均衡データ(Imbalanced Data)

症状
一方のクラスが圧倒的に多い(例:正常99%、異常1%)

なぜ問題か?
モデルが「全部を多数派に分類」するだけで高い正解率が出てしまいます。

対策

1. データのリサンプリング

from imblearn.over_sampling import SMOTE

# 少数派クラスを増やす
smote = SMOTE(random_state=42)
X_resampled, y_resampled = smote.fit_resample(X_train, y_train)

2. クラスの重み付け

# 少数派クラスに大きな重みを付ける
model = LogisticRegression(class_weight='balanced')

3. 評価指標の変更
正解率ではなく、F1スコアやAUCを重視します。

問題2:過学習(Overfitting)

症状
訓練データでは高精度だが、テストデータで性能が落ちる

原因

  • モデルが複雑すぎる
  • 訓練データが少ない
  • 特徴量が多すぎる

対策

1. 正則化

# L2正則化(Ridge)
model = LogisticRegression(penalty='l2', C=0.1)

2. クロスバリデーション

from sklearn.model_selection import cross_val_score

# 5分割交差検証
scores = cross_val_score(model, X_train, y_train, cv=5)
print(f"平均スコア: {scores.mean():.4f}")

3. データの追加
より多くの訓練データを集める

4. 特徴量選択
重要な特徴量だけを使う

問題3:特徴量のスケールの違い

症状
異なる単位の特徴量が混在(例:年齢0-100、年収0-10,000,000)

なぜ問題か?
一部のアルゴリズム(SVM、ニューラルネットワーク)は、スケールの違いに敏感です。

対策

標準化(Standardization)

from sklearn.preprocessing import StandardScaler

scaler = StandardScaler()
X_train_scaled = scaler.fit_transform(X_train)
X_test_scaled = scaler.transform(X_test)

正規化(Normalization)

from sklearn.preprocessing import MinMaxScaler

scaler = MinMaxScaler()
X_train_scaled = scaler.fit_transform(X_train)
X_test_scaled = scaler.transform(X_test)

問題4:欠損値(Missing Values)

症状
データに空白や欠損がある

対策

1. 削除

# 欠損値を含む行を削除
df = df.dropna()

2. 補完

from sklearn.impute import SimpleImputer

# 平均値で補完
imputer = SimpleImputer(strategy='mean')
X_imputed = imputer.fit_transform(X)

3. 欠損フラグの追加

# 欠損していたかどうかを新しい特徴量にする
df['年齢_欠損'] = df['年齢'].isna().astype(int)

問題5:カテゴリカル変数の扱い

症状
性別、都道府県など、数値でない特徴量がある

対策

ワンホットエンコーディング

import pandas as pd

# カテゴリを複数の0/1列に変換
df_encoded = pd.get_dummies(df, columns=['性別', '都道府県'])

ラベルエンコーディング

from sklearn.preprocessing import LabelEncoder

le = LabelEncoder()
df['性別_encoded'] = le.fit_transform(df['性別'])

実務での注意点

実際のプロジェクトで気をつけるべきポイントです。

1. ビジネス目標との整合性

技術的な精度だけでなく、ビジネス価値を考える

例:スパムフィルター

目標:ユーザーの時間を節約する
↓
重視すべき:適合率(誤検知を減らす)
理由:大事なメールを見逃すと問題

2. 解釈可能性

モデルの判断根拠を説明できるか?

金融や医療など、説明責任が求められる分野では、シンプルで解釈しやすいモデル(ロジスティック回帰、決定木)が好まれることがあります。

3. 運用コスト

リアルタイム予測が必要か?

  • 計算時間
  • サーバーリソース
  • モデルの更新頻度

4. データの継続的な収集

モデルは時間とともに劣化する

ユーザーの行動やトレンドが変化すると、モデルの精度が落ちます。定期的な再学習が必要です。

5. エラー処理

予測が失敗したときの対応

  • フォールバック(代替手段)
  • 人間による確認
  • ログの記録

まとめ

2値分類は、機械学習の基本であり、最も実用的な技術の一つです。

スパムフィルターから病気の診断まで、私たちの生活のあらゆる場面で活躍しています。

この記事のポイント

  • 2値分類はデータを2つのクラスに分ける機械学習タスク
  • Yes/No、正常/異常など、2択で判断する場面で使われる
  • スパムフィルター、病気診断、不正検知など多様な応用例
  • 主なアルゴリズム:ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、SVM、ニューラルネットワーク
  • 評価指標:正解率、適合率、再現率、F1スコア、AUC
  • 適合率と再現率にはトレードオフがある
  • 不均衡データ、過学習、欠損値などの課題に対処が必要
  • ビジネス目標に合わせた評価指標の選択が重要
  • Pythonのscikit-learnで簡単に実装可能

初心者へのアドバイス
まずは身近な問題から始めてみましょう。

  • 自分のメールをスパムと通常に分類
  • 映画のレビューをポジティブ/ネガティブに分類
  • アイリスデータセットで2種類の花を分類

小さなデータセットで基本を学び、徐々に複雑な問題に挑戦していけば、いつの間にか実践的なスキルが身についているはずです。

2値分類をマスターすれば、機械学習の世界への第一歩を踏み出したことになります。

あなたも実際にコードを書いて、AIに「判断」を学習させる面白さを体験してみてください!

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