Wordで資料やレポートを作成していると、「ページごとにヘッダーの内容を変えたい」と思う場面が出てきます。
しかし、普通に操作していても、すべてのページに同じヘッダーが適用されてしまい、戸惑う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Wordでページごとに違うヘッダーを設定する具体的な方法と、注意点についてわかりやすく解説します。
ヘッダーとは何か

ヘッダーの基本概念
Wordの**「ヘッダー」**とは、各ページの上部に表示される領域で、文書タイトル・章タイトル・日付・ページ番号などを入れるのによく使われます。
既定では全ページ共通の内容が設定されますが、設定を変えることでページごとの違いをつけられます。
ヘッダーが活用される場面
ページごとに異なるヘッダーは、以下のような文書で特に有効です。
学術文書での活用
- 論文:章ごとにタイトルを表示
- 研究報告書:セクションごとの内容表示
- 学位論文:左右ページで異なる情報表示
ビジネス文書での活用
- 企画書:章ごとのテーマ表示
- マニュアル:機能ごとの見出し
- 報告書:部門や期間ごとの区分
出版物での活用
- 書籍:章タイトルと節タイトルの使い分け
- 雑誌:記事ごとのタイトル表示
- カタログ:商品カテゴリごとの表示
ヘッダーに含められる情報
ヘッダーには様々な情報を表示できます。
- 文書タイトル:全体のテーマ
- 章・節タイトル:現在の位置
- 日付・時刻:作成日や更新日
- ページ番号:現在のページ位置
- 作成者名:文書の責任者
- 会社名・部署名:組織情報
ページごとヘッダー設定の基本原理
セクション区切りの重要性
ページごとにヘッダーを変えるには、**「セクション区切り」**を使うのが基本です。
通常の「改ページ」ではヘッダーは分離されません。これがとても重要なポイントです。
セクションとページの違い
理解しておくべき概念の違いを説明します。
ページ
- 物理的な区切り:印刷時の1枚
- 改ページで作成:単純な区切り
- ヘッダーは共有:前のページと同じ
セクション
- 論理的な区切り:文書の構造的な分割
- セクション区切りで作成:独立した設定可能
- ヘッダーは独立:個別に設定可能
Wordのヘッダー管理の仕組み
Wordでは、以下のような階層でヘッダーを管理しています。
- 文書全体:デフォルトのヘッダー設定
- セクション:セクションごとの独立設定
- 奇数・偶数ページ:左右ページの区別
- 最初のページ:表紙などの特別設定
基本的なページごとヘッダー設定手順
ステップ1:セクション区切りの挿入
まず、ヘッダーを変更したい位置にセクション区切りを設定します。
操作手順
- ヘッダーを変えたいページの直前にカーソルを置く
例:2ページ目からヘッダーを変えたい場合は、1ページ目の最後にカーソル - 「レイアウト」タブをクリック
画面上部のリボンから「レイアウト」タブを選択 - 「区切り」ボタンをクリック
「ページ設定」グループにある「区切り」をクリック - 「次のページから開始(セクション区切り)」を選択
セクション区切りの種類から適切なものを選択
セクション区切りの種類
区切りの種類 | 説明 | 使用場面 |
---|---|---|
次のページから開始 | 新しいページでセクション開始 | 章の区切りなど |
現在の位置から開始 | 同じページ内でセクション区切り | 段組みの変更など |
偶数ページから開始 | 次の偶数ページから開始 | 章を偶数ページから開始 |
奇数ページから開始 | 次の奇数ページから開始 | 章を奇数ページから開始 |
ステップ2:「前と同じヘッダー」の解除
セクション区切りを設定した後、重要な設定変更を行います。
操作手順
- 新しいセクションのヘッダー領域をダブルクリック
ヘッダー編集モードに入ります - 「ヘッダーとフッター ツール」の「デザイン」タブを確認
自動的に表示されるツールタブを確認 - 「前と同じヘッダー」ボタンをクリックして解除
このボタンがオンになっていると、前のセクションと連動してしまいます - 解除されたことを確認
ボタンが押されていない状態(オフ)になっているか確認
解除の重要性
この操作を忘れると、以下のような問題が発生します。
- 後ろのページのヘッダー変更が前のページにも反映
- 意図しない連動で設定が上書き
- 個別設定ができない状態が継続
ステップ3:ヘッダーの編集
「前と同じヘッダー」を解除したら、自由にヘッダーを編集できます。
編集手順
- ヘッダー領域に任意の内容を入力
テキスト、日付、ページ番号など自由に設定 - 書式を調整
フォント、サイズ、配置などを設定 - 次のページも異なる内容にしたい場合
同様にセクション区切りを追加して繰り返し - ヘッダー編集を終了
文書の本文をクリックするか、「ヘッダーとフッターを閉じる」をクリック
詳細な設定方法

複数セクションでの設定
3つ以上のセクションがある場合の効率的な設定方法です。
計画的な設定手順
- 全体の構成を決める
どのページでヘッダーを変更するかを事前に決定 - セクション区切りを一括設定
必要な箇所にまとめてセクション区切りを挿入 - 順次ヘッダーを設定
最初のセクションから順番に設定 - 最終確認
全ページを確認して意図通りの表示になっているかチェック
ヘッダーの詳細設定
より高度なヘッダー設定のテクニックです。
動的な要素の追加
ヘッダーには以下のような動的要素も挿入できます。
日付と時刻
- 「挿入」タブ→「日付と時刻」
- 形式を選択して挿入
- 「自動的に更新する」にチェック
ページ番号
- 「挿入」タブ→「ページ番号」
- 配置とスタイルを選択
- セクションごとに開始番号を設定可能
フィールドコード
- 「挿入」タブ→「クイックパーツ」→「フィールド」
- 様々な情報を自動表示
- 文書プロパティなども利用可能
特殊なヘッダー設定
最初のページを別にする設定
表紙や目次ページでヘッダーを表示したくない場合の設定です。
設定手順
- ヘッダー領域をダブルクリック
- 「デザイン」タブの「最初のページのみ別指定」にチェック
- 1ページ目のヘッダーを空にするまたは専用の内容を設定
- 2ページ目以降は通常のヘッダーが表示される
奇数・偶数ページでの使い分け
冊子形式の文書で、左右のページで異なるヘッダーを設定する方法です。
設定手順
- ヘッダー領域をダブルクリック
- 「デザイン」タブの「奇数・偶数ページ別に指定」にチェック
- 奇数ページ(右ページ)のヘッダーを設定
- 偶数ページ(左ページ)のヘッダーを設定
活用例
書籍形式の文書
- 奇数ページ:章タイトル(右ページ)
- 偶数ページ:書籍タイトル(左ページ)
学術論文
- 奇数ページ:論文タイトル
- 偶数ページ:著者名
よくある間違いと対処法
セクション区切りではなく改ページを使用
最も多い間違いの一つです。
問題の症状
- ヘッダーが全ページで同じまま
- 設定変更が全ページに反映
- 個別設定ができない
解決方法
- 改ページをセクション区切りに変更
- 「レイアウト」タブ→「区切り」で正しく設定
- 既存の改ページは削除
「前と同じヘッダー」解除の忘れ
設定の重要なステップを忘れてしまうケースです。
問題の症状
- 新しいセクションのヘッダー変更が前のセクションにも反映
- 意図しない連動が発生
- 個別編集ができない
解決方法
- 各セクションで「前と同じヘッダー」を確認
- 必要に応じて解除
- 設定後の動作確認
ページ番号の連続性の問題
セクション区切りでページ番号が意図せず変わってしまう問題です。
問題の症状
- ページ番号が1から再開始
- 通し番号になっていない
- 番号の書式が変わる
解決方法
- 「挿入」タブ→「ページ番号」→「ページ番号の書式設定」
- 「連続番号」を選択
- 開始番号を適切に設定
高度な活用テクニック

章番号との連動
章番号と連動したヘッダーの作成方法です。
設定手順
- 見出しに「見出し1」などのスタイルを適用
- 「挿入」タブ→「クイックパーツ」→「フィールド」
- 「StyleRef」フィールドを選択
- 参照する見出しレベルを指定
これにより、現在の章タイトルが自動的にヘッダーに表示されます。
条件分岐するヘッダー
特定の条件に応じてヘッダー内容を変更する高度なテクニックです。
IFフィールドの活用
{ IF { PAGE } > 10 "第2部" "第1部" }
このようなフィールドコードで、ページ数に応じてヘッダー内容を変更できます。
マクロを使った自動設定
繰り返し作業を自動化するマクロの例です。
基本的なマクロ
Sub SetSectionHeaders()
Dim sec As Section
Dim i As Integer
i = 1
For Each sec In ActiveDocument.Sections
sec.Headers(wdHeaderFooterPrimary).Range.Text = "第" & i & "章"
i = i + 1
Next sec
End Sub
トラブルシューティング
ヘッダーが表示されない場合
原因の確認
- ヘッダー領域の高さが0になっている
- 余白設定でヘッダー領域が隠れている
- 印刷レイアウト以外の表示モード
解決方法
- 「レイアウト」タブ→「余白」でヘッダー余白を確認
- 「表示」タブで「印刷レイアウト」に変更
- ヘッダー領域をダブルクリックして確認
セクション区切りが見えない場合
表示設定の確認
- 「ファイル」→「オプション」→「表示」
- 「段落記号」や「すべての書式記号を表示する」にチェック
- セクション区切りが点線で表示される
ヘッダーの書式が崩れる場合
原因と対策
- フォント設定の不一致:統一したフォントを使用
- 段落書式の問題:インデントや行間を調整
- 表の使用:ヘッダー内の表は慎重に設定
効率的な作業のコツ
テンプレート化
よく使うヘッダー設定はテンプレートとして保存しましょう。
テンプレート作成手順
- ヘッダー設定を完了した文書を作成
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」
- ファイルの種類で「Wordテンプレート」を選択
- 適切な場所に保存
スタイルの活用
ヘッダーのスタイルを統一するため、専用スタイルを作成します。
スタイル作成手順
- 「ホーム」タブ→「スタイル」
- 「新しいスタイル」を選択
- 「ヘッダー用」などの名前で保存
- フォント、サイズ、配置を設定
作業効率化のショートカット
便利なショートカットキー
- Alt + Shift + O:アウトライン表示でセクション構造確認
- Ctrl + Enter:改ページ挿入
- F9:フィールドの更新
印刷とPDF出力での注意点
印刷時の確認事項
ヘッダー設定した文書を印刷する際の注意点です。
事前確認項目
- 印刷プレビューでヘッダーが正しく表示される
- 余白設定が適切
- ページ範囲の指定が正しい
PDF出力時の設定
PDF形式で保存する際にヘッダーを保持する方法です。
PDF出力手順
- 「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPSの作成」
- 「オプション」で「文書の構造タグ」にチェック
- ヘッダー・フッター情報を保持
まとめ
Wordでページごとに異なるヘッダーを設定するための重要なポイントをまとめます。
基本的な設定手順
- セクション区切りの挿入が最重要
- 「前と同じヘッダー」の解除を忘れずに
- 順次設定で確実に作業を進める
よくある間違いの回避
- 改ページではなくセクション区切りを使用
- 設定後の動作確認を必ず実施
- ページ番号の連続性を確認
効率的な作業のために
- 事前の構成計画が重要
- テンプレート化で作業効率向上
- スタイルの統一でプロフェッショナルな仕上がり
高度な活用
- 奇数・偶数ページの使い分け
- 動的要素の活用
- フィールドコードの利用
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