Word(ワード)で一生懸命文書を作っていて、「あっ、間違えて閉じちゃった!」「保存しないでWordを終了しちゃった!」「パソコンがフリーズして作業が全部消えた!」という経験はありませんか。
特に、学校のレポートや会社の大切な資料を作っているときに起こると、本当に焦ってしまいますよね。「何時間もかけて作ったのに、全部やり直し?」と絶望的な気持ちになることもあります。
でも、諦めるのはまだ早いです。実は、Wordには「自動保存」や「自動回復」という便利な機能があって、消えてしまった文書を復元できる可能性があります。パソコンが勝手にバックアップを作ってくれているので、思っているよりも救出できることが多いんです。
この記事では、消えてしまったWord文書を復元する方法を、初心者の方でもわかるように詳しく説明します。また、今後同じようなトラブルを防ぐための設定方法もお教えします。
大切なデータを守るために、ぜひこの知識を身につけてみてください。
Wordの自動保存機能の仕組み

2つの自動保存機能
Wordには、データを守るための2つの機能があります。名前が似ているので混同しやすいのですが、それぞれ役割が違います。
自動保存(AutoSave)
どんな機能? OneDriveやSharePointに保存されているファイルを、リアルタイムで自動的に保存する機能です。
いつ動く?
- 文字を入力するたびに自動的に保存
- インターネットに接続されている必要がある
- Office 365やMicrosoft 365を使っている場合に利用可能
メリット
- 作業内容がリアルタイムで保存される
- 突然のトラブルでも、ほぼ最新の状態で復元可能
- 複数人での共同編集にも対応
デメリット
- OneDriveやSharePointに保存されたファイルのみ対象
- インターネット接続が必要
- 意図しない変更も自動保存されてしまう
自動回復(AutoRecover)
どんな機能? 一定の時間間隔で、作業中の文書のバックアップを作成する機能です。
いつ動く?
- 設定された間隔(通常10分)ごとに自動実行
- ローカル保存のファイルにも対応
- インターネット接続は不要
メリット
- すべてのWordファイルが対象
- インターネットに接続していなくても動作
- 任意の間隔で保存タイミングを設定可能
デメリット
- 設定間隔でしか保存されない(リアルタイムではない)
- 一時ファイルなので、正常に終了すると削除される
どちらが自分に適している?
OneDrive利用者
Microsoft 365を使っていて、OneDriveにファイルを保存している場合は、「自動保存(AutoSave)」が最も効果的です。
ローカル保存派
パソコンの中にファイルを保存している場合は、「自動回復(AutoRecover)」が頼りになります。
両方使うのがベスト
可能であれば、両方の機能を有効にしておくことで、より安全にデータを守ることができます。
文書が消えた時の復元手順
パターン1:保存せずにWordを閉じてしまった場合
自動表示される復元画面を使う
- Wordを再起動します
- 通常通りにWordを開いてください
- 「ドキュメント回復」画面が表示されます
- Word起動時に自動的に表示される場合があります
- 復元可能なファイルがリスト表示されます
- 復元したいファイルをクリックします
- リストから目的のファイルを選択してクリックしてください
- 内容を確認します
- ファイルが開いたら、内容が期待通りかどうか確認してください
- 「名前を付けて保存」で保存し直します
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」で、新しい名前で保存してください
復元画面が表示されない場合
自動的に復元画面が表示されない場合は、手動で探すことができます。
- Wordを開きます
- 「ファイル」をクリックします
- 「情報」を選択します
- 「ドキュメントの管理」をクリックします
- 「保存されていない文書の回復」を選択します
- 復元ファイルの一覧が表示されます
- 拡張子が「.asd」のファイルが表示されます
- ファイル名は自動的に付けられたものになっています
- 目的のファイルを開きます
- 各ファイルを開いて内容を確認してください
パターン2:パソコンがフリーズ・停電で強制終了した場合
Word再起動時の自動復元
- パソコンを再起動します
- 正常にパソコンが起動することを確認してください
- Wordを開きます
- 通常通りにWordを起動してください
- 「ドキュメント回復」画面を確認します
- 自動的に表示される復元可能なファイルをチェックしてください
- 複数のバージョンが表示される場合があります
- 「元のファイル」と「回復されたファイル」が表示されることがあります
- より新しい日時のものを選択してください
- 内容を比較検討します
- どちらがより完成度の高い内容かを確認してください
手動でバックアップファイルを探す
自動復元がうまくいかない場合は、以下の方法で手動で探すことができます。
- エクスプローラーを開きます
- Windows キー + E を押すか、フォルダアイコンをクリックしてください
- アドレスバーに以下を入力します
%AppData%\Microsoft\Word\
- Enterキーを押します
- Wordの自動保存フォルダが開きます
- 「.asd」ファイルを探します
- 自動回復ファイルは「.asd」という拡張子で保存されています
- 「.wbk」ファイルも確認します
- バックアップファイルは「.wbk」という拡張子で保存されています
- ファイルの日時を確認します
- 作業していた日時に近いファイルを選択してください
- ファイルをダブルクリックして開きます
- 内容を確認後、すぐに保存します
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」で正式なファイルとして保存してください
パターン3:OneDriveの自動保存から復元
バージョン履歴の確認
OneDriveに保存されているファイルの場合、過去のバージョンを復元できます。
- OneDrive.comにアクセスします
- ブラウザでOneDriveのWebサイトを開いてください
- Microsoft アカウントでサインインします
- 対象のファイルを右クリックします
- 「バージョン履歴」を選択します
- 復元したいバージョンを選択します
- 日時を確認して、適切なバージョンを選んでください
- 「復元」をクリックします
Wordアプリでの履歴確認
- Wordでファイルを開きます
- 「ファイル」→「情報」をクリックします
- 「バージョン履歴」を確認します
- 過去のバージョンを選択して復元します
自動保存設定の確認と最適化

現在の設定を確認する
まず、現在のWordの設定がどうなっているかを確認しましょう。
設定画面を開く
- Wordを開きます
- 「ファイル」をクリックします
- 「オプション」を選択します
- 「保存」タブをクリックします
重要な設定項目
自動回復用データの保存間隔
- デフォルトは10分間隔
- より安全にしたい場合は5分や1分に設定
- あまり短くしすぎると動作が重くなる可能性あり
保存しないで終了する場合、最後に自動保存されたバージョンを残す
- このチェックボックスは必ずオンにしてください
- 保存せずに終了した場合のデータ復旧に必要
自動回復ファイルの保存場所
- デフォルトの場所を確認しておいてください
- 必要に応じて変更も可能
推奨設定
安全性を重視した推奨設定をご紹介します。
自動回復間隔の設定
軽い文書作成(1-2ページ程度)
- 5分間隔に設定
重い文書作成(長文、画像多数)
- 10分間隔に設定(短すぎると動作が重くなる)
超重要な文書
- 1分間隔に設定(ただし、動作の重さを確認しながら調整)
バックアップ設定の有効化
- 「バックアップファイルを作成する」にチェック
- 「保存」設定画面で有効にできます
- OneDriveの自動保存も有効に
- 可能であればOneDriveも併用してください
OneDrive自動保存の設定
有効にする方法
- ファイルをOneDriveに保存します
- Word画面左上の「自動保存」トグルをオンにします
- 「保存済み」と表示されることを確認します
注意点
- インターネット接続が必要
- 意図しない変更も自動保存される
- 共有ファイルの場合、他の人の編集も反映される
よくあるトラブルと対処法
問題1:復元ファイルが見つからない
可能な原因
設定が無効になっている
- 自動回復機能がオフになっている可能性
ファイルが削除された
- 一時ファイルが自動的に削除された可能性
保存場所が変更されている
- デフォルトの保存場所が変更されている可能性
対処方法
設定の確認
- 「ファイル」→「オプション」→「保存」で設定確認
- 必要な項目にチェックが入っているか確認
別の場所を探す
- 「最近使ったファイル」を確認
- ゴミ箱を確認
- 検索機能でファイル名を検索
システム全体の検索
- Windows検索で「*.asd」を検索
- 「*.wbk」ファイルも検索
問題2:復元したファイルが古すぎる
可能な原因
保存間隔が長い
- 自動保存の間隔が長く設定されている
手動保存していない
- 定期的な手動保存を怠っている
対処方法
設定の見直し
- 自動保存間隔を短くする(5分以下)
- OneDriveの自動保存も併用
作業習慣の改善
- Ctrl + S による手動保存を習慣化
- 重要な変更後は必ず手動保存
問題3:ファイルが開けない
可能な原因
ファイルが破損している
- 強制終了時にファイルが破損した可能性
拡張子の関連付けが正しくない
- 「.asd」ファイルの関連付けに問題がある可能性
対処方法
Wordから直接開く
- Word の「ファイル」→「開く」を使用
- ファイルの種類で「すべてのファイル」を選択
- 「.asd」ファイルを直接選択
ファイル修復機能を使う
- 「ファイル」→「開く」でファイル選択
- 「開く」ボタンの横の矢印をクリック
- 「開いて修復」を選択
テキスト抽出
- 「ファイル」→「開く」でファイル選択
- ファイルの種類で「テキストファイル」を選択
- テキスト部分のみを抽出
予防策と日常的な対策
定期的な手動保存の習慣
効果的な保存タイミング
文章の区切りごと
- 段落や章を書き終えたとき
- 重要な変更を行った直後
時間間隔での保存
- 30分ごとに手動保存
- 休憩を取るときには必ず保存
ショートカットキーの活用
Ctrl + S
- 最も重要なショートカット
- 無意識にできるまで練習しましょう
F12キー
- 「名前を付けて保存」のショートカット
- バックアップ作成に便利
バックアップ戦略
複数の場所に保存
ローカル保存
- パソコンの中に保存
クラウド保存
- OneDrive、Google Drive、Dropboxなど
外部ストレージ
- USBメモリ、外付けハードディスク
ファイル名の工夫
バージョン管理
レポート_v1.0_初稿.docx
レポート_v1.1_修正版.docx
レポート_v2.0_最終版.docx
日付の追加
企画書_2024-01-15.docx
企画書_2024-01-20_修正.docx
システム全体の安定性向上
定期的なメンテナンス
Windowsアップデート
- システムを最新状態に保つ
ウイルス対策
- セキュリティソフトで定期スキャン
ディスクのクリーンアップ
- 不要ファイルの削除で動作を軽快に
ハードウェアのチェック
電源の安定性
- UPS(無停電電源装置)の導入検討
ストレージの健康状態
- ハードディスクやSSDの状態確認
実際の復元成功事例

事例1:学生のレポート復元
状況
大学生が卒業論文を作成中、深夜の作業でパソコンがフリーズ。強制終了後、5時間分の作業が消失したと思われた。
対処
- パソコン再起動後、Wordを開く
- 自動的に「ドキュメント回復」画面が表示
- 最新の自動回復ファイルを選択
- 90%以上の内容が復元に成功
結果
- 失った作業時間:約30分程度
- 自動保存間隔が5分に設定されていたため、被害を最小限に抑制
事例2:会社員の企画書復元
状況
重要なプレゼン前日、停電により企画書作成中のパソコンがシャットダウン。翌日のプレゼンに間に合わせる必要があった。
対処
- OneDriveのバージョン履歴を確認
- 停電前の最新バージョンを発見
- クラウド上に自動保存されていた版を復元
結果
- 完全復元に成功
- OneDriveの自動保存機能により、リアルタイムでバックアップされていた
事例3:フリーランサーの原稿復元
状況
締切間際の原稿作成中、誤ってWordを閉じてしまい「保存しない」を選択。数時間分の執筆内容が失われた。
対処
- 手動で自動回復ファイルを検索
- AppDataフォルダから「.asd」ファイルを発見
- 複数の回復ファイルから最も新しいものを選択
結果
- 80%程度の内容が復元
- 残りの20%は記憶を頼りに再執筆
高度な復元テクニック
レジストリからの情報取得
注意点
レジストリの編集は上級者向けです。間違った操作はシステムに悪影響を与える可能性があります。
手順
- 「Win + R」でファイル名を指定して実行
- 「regedit」と入力してEnter
- 以下のパスに移動
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\16.0\Word\Data
- 最近使用したファイルの情報を確認
サードパーティ製ツールの活用
ファイル復旧ソフト
Recuva
- 無料のファイル復旧ソフト
- 削除されたファイルの復元が可能
Disk Drill
- 高機能なデータ復旧ソフト
- Word文書の復元に特化した機能あり
注意点
- 有料ソフトの場合は事前に評判を確認
- 復旧作業は元のファイルを上書きする可能性があるため、別のドライブで実行
まとめ
Wordで文書が消えてしまったときの復元方法は、思っているより多くの選択肢があります。重要なのは、諦めずに適切な手順で復元を試みることです。
復元の基本手順:
- 自動復元機能を確認:Word再起動時の「ドキュメント回復」画面
- 手動でファイル検索:「保存されていない文書の回復」機能
- バックアップファイル探索:AppDataフォルダの「.asd」「.wbk」ファイル
- クラウドサービス活用:OneDriveのバージョン履歴
予防策の重要性:
- 自動保存設定の最適化:間隔を5分以下に設定
- 定期的な手動保存:Ctrl + S を習慣化
- 複数場所へのバックアップ:ローカル + クラウド
- システムの安定性確保:定期メンテナンスの実施
トラブル発生時の心構え:
- 慌てずに段階的に復元方法を試す
- 一つの方法で失敗しても、他の選択肢がある
- 完全復元できなくても、部分復元で作業時間を短縮可能
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