Wordで作成した文書を他人に渡すとき、「編集履歴」や「コメント」が残っていると気まずいことがあります。社内共有や提出前には、見せるつもりのない情報は確実に削除しておきたいですよね。
この記事では、Wordに残った「履歴」(変更履歴、コメント、ユーザー情報など)を安全に削除する方法を、手順付きで解説します。
削除が必要な理由

情報漏洩のリスク
意図しない情報の露出
- 編集過程の暴露:試行錯誤の内容が見られる
- 個人情報の流出:編集者名や作業時間が判明
- 機密情報の漏洩:削除したはずの情報が復元される
- 組織内の議論:コメントでのやり取りが外部に
ビジネスでの影響
- 信頼関係の悪化:意図しない情報で誤解を招く
- 競合他社への情報提供:内部戦略が漏れる
- 法的リスク:機密保持契約の違反
- ブランドイメージの損失:プロ意識の欠如と見なされる
具体的な問題例
よくある失敗事例
- 提案書:削除したはずの価格情報が残っている
- 報告書:上司への不満コメントが見える
- 契約書:交渉過程の内部議論が露出
- プレゼン資料:ライバル企業の分析が含まれる
削除すべき「履歴」の種類
Wordでは、以下のような履歴が文書に残ることがあります:
変更履歴
表示される内容
- 赤字の追加文字:新しく入力されたテキスト
- 取り消し線の削除文字:削除されたテキスト
- 書式変更:フォントや色の変更履歴
- 移動履歴:テキストの移動記録
記録される詳細情報
- 変更者の名前(ユーザー名)
- 変更した日時
- 変更の種類(追加・削除・移動・書式)
- コンピューターの識別情報
コメント
コメントに含まれる情報
- 作成者名:コメントした人の名前
- 作成日時:コメントが追加された日時
- 返信履歴:コメントへの返信のやり取り
- 関連付け:コメントが指す文書の範囲
コメントの種類
- 通常のコメント:右側に表示されるメモ
- 返信コメント:既存コメントへの返信
- 解決済みコメント:完了マークが付いたもの
- インクコメント:手書き入力のメモ
作成者情報(プロパティ)
文書のメタデータ
- 作成者名:最初に文書を作成した人
- 最終編集者:最後に変更した人
- 会社名:組織の情報
- 作成日時・更新日時:ファイルの履歴
隠れた情報
- リビジョン番号:編集回数
- 編集時間の合計:実際の作業時間
- テンプレート情報:使用したテンプレート
- カスタムプロパティ:独自に設定された項目
変更履歴とコメントを削除する手順
手順①:変更履歴を「反映」させる
基本的な操作
- 「校閲」タブをクリック
- 「変更履歴の記録」がオンになっている場合はオフにする
- 「承諾」または「元に戻す」で各変更を処理
- 「すべての変更を承諾」または「すべて元に戻す」を選べば一括対応が可能
詳細な手順
変更履歴記録の停止:
- 「校閲」タブを開く
- 「変更履歴の記録」ボタンを確認
- ボタンが押された状態(色が変わっている)なら再度クリック
- 今後の編集が履歴に残らなくなる
個別の変更処理:
- 変更箇所を右クリック
- 「変更を承諾」または「変更を元に戻す」を選択
- 各変更を個別に判断して処理
一括処理:
- 「校閲」→「変更を承諾」→「すべての変更を承諾」
- または「変更を元に戻す」→「すべての変更を元に戻す」
- 一度にすべての変更を処理
手順②:コメントを削除
基本的な削除方法
- コメント部分を選択
- 「コメントの削除」→「すべてのコメントを削除」で一括削除できます
詳細な削除手順
個別コメントの削除:
- 削除したいコメントをクリック
- 「校閲」→「削除」ボタン
- または右クリック→「コメントを削除」
返信付きコメントの削除:
- 親コメントを選択
- 「削除」を選択すると返信も含めて削除
- 返信のみ削除する場合は個別に選択
一括削除:
- 「校閲」タブの「削除」ボタンの下矢印
- 「文書内のすべてのコメントを削除」を選択
- 確認ダイアログで「はい」をクリック
手順③:表示設定の確認
変更履歴の表示モード
表示の切り替え:
- 「校閲」タブの「表示の設定」
- 「最終版」を選択
- 変更履歴が非表示になることを確認
注意点:
- 「最終版」は表示を変えただけ
- 実際の削除には手順①②が必要
- 見た目だけでは判断できない
文書プロパティから履歴を完全に削除する方法

ドキュメント検査の実行
基本手順
- 「ファイル」→「情報」→「問題のチェック」→「ドキュメント検査」を選択
- 「検査」をクリックし、コメント・プロパティ・変更履歴を確認
- 検出された情報を「すべて削除」で消去
詳細な検査項目
検査される項目:
- コメント、校正、バージョン、注釈
- 文書のプロパティと個人情報
- カスタム XML データ
- ヘッダー、フッター、透かし
- 非表示のテキスト
- 非表示のワークシート行と列(Excel連携時)
検査結果の確認と削除
結果の解釈
検出された場合の表示:
- 赤い「!」マーク:問題のある項目
- 項目名と検出数
- 「すべて削除」ボタン
削除の実行:
- 削除したい項目の「すべて削除」をクリック
- 削除の確認ダイアログで「はい」
- 再検査で削除されたことを確認
個人情報の完全削除
作成者情報の削除
プロパティ情報の編集:
- 「ファイル」→「情報」
- 「プロパティ」→「詳細プロパティ」
- 「概要」タブで作成者・会社名等を削除
- 「統計情報」タブで編集時間等を確認
自動削除設定:
- ドキュメント検査で「文書のプロパティと個人情報」を削除
- 将来の文書でも自動的に削除される設定
- プライバシー保護が強化される
高度な削除テクニック
完全クリーニングの方法
プレーンテキスト経由
手順:
- 文書の内容をすべて選択(Ctrl+A)
- コピー(Ctrl+C)
- メモ帳などに貼り付け
- メモ帳からコピーして新しいWord文書に貼り付け
メリット・デメリット:
- メリット:すべての履歴が完全削除
- デメリット:書式情報も失われる
新規文書での再構築
確実な方法:
- 新しいWord文書を作成
- 必要な内容のみを手動で入力
- 書式は一から設定
- 元ファイルは別途保管
バックアップとセキュリティ
削除前の準備
重要な注意事項:
- 元ファイルのバックアップを作成
- 日付を含むファイル名で管理
- 削除内容の記録を残す
- 重要な変更は別途文書化
セキュリティ対策
組織での運用ルール:
- 文書共有前のチェックリスト作成
- 複数人でのダブルチェック体制
- 定期的な教育研修の実施
- ツールの統一とマニュアル整備
よくある質問と対処法
Q:履歴を消しても赤字が残って見えるのですが?
A:「表示モード」が「すべての変更を表示」になっている可能性があります。「最終版(変更履歴なし)」に切り替えて確認しましょう。
詳細な確認方法:
- 「校閲」タブの「表示の設定」を確認
- 「最終版」が選択されているか確認
- それでも表示される場合は削除処理が不完全
- ドキュメント検査を再実行
Q:コメントを削除したのに、まだ表示されるのはなぜ?
A:同じファイル内に複数のセクションやバージョンがある場合、すべてを確認・削除する必要があります。
確認すべき箇所:
- ヘッダー・フッター内のコメント
- テキストボックス内のコメント
- 図形内のコメント
- 別セクションのコメント
Q:削除した履歴を復元できますか?
A:ドキュメント検査や手動削除後の復元は基本的に不可能です。削除前に必ずバックアップを作成してください。
Q:PDFに変換すれば履歴は消えますか?
A:Word内で完全削除していればPDFでも消えますが、非表示にしただけでは残る場合があります。必ず事前に完全削除してください。
Q:他のOfficeアプリケーションでも同様の問題がありますか?
A:Excel、PowerPointでも類似の履歴機能があります。各アプリケーションで同様の削除手順が必要です。
予防策と運用方法
文書作成時の注意点
最初からの対策
作成段階での工夫:
- 変更履歴は必要時のみオン
- コメントは一時的な用途に限定
- 個人情報の入力を最小限に
- 定期的な履歴クリーニング
テンプレートの活用
標準テンプレートの作成:
- 履歴削除済みのクリーンなテンプレート
- 組織の標準書式を適用
- プロパティ情報を事前削除
- 新規文書作成時の標準として使用
組織レベルでの対策
教育と啓発
研修内容:
- 履歴削除の重要性
- 具体的な操作手順
- 情報漏洩のリスク
- 成功事例と失敗事例
システム的な対策
技術的な解決策:
- 文書管理システムでの自動クリーニング
- 送信前の自動チェック機能
- アクセス権限の適切な設定
- 暗号化による情報保護
まとめ
削除手順のチェックリスト
必須確認項目
- [ ] 変更履歴の記録をオフ
- [ ] すべての変更を承諾または却下
- [ ] すべてのコメントを削除
- [ ] ドキュメント検査を実行
- [ ] 個人情報・プロパティを削除
- [ ] 表示モードで最終確認
- [ ] 印刷プレビューで確認
- [ ] PDFテストで確認
重要なポイント
Wordの履歴削除は、文書の信頼性とプライバシーを守るためにとても重要です。提出前や共有前には、「変更履歴」「コメント」「プロパティ情報」の3つを確認しておきましょう。
Wordの「ドキュメント検査」を使えば、一括で履歴を削除できるので特におすすめです。
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