「表紙や目次にはページ番号をつけたくない」 「3ページ目から1ページと表示したい」 「論文の体裁を学術的な標準に合わせたい」
このような悩みは、Word でレポートや資料を作成する際に非常によく遭遇する問題です。特に以下のような場面で途中からのページ番号設定の重要性を実感することがあります:
- 学術論文の作成:表紙・目次・本文の適切な番号振り分け
- ビジネス報告書:エグゼクティブサマリーと詳細の区別
- 技術文書:概要部分と仕様詳細の分離
- 書籍・冊子作成:前付けと本文の番号体系分離
- プレゼンテーション資料:スライド番号の適切な管理
- 公的文書:公式書類の体裁要件への対応
実際にやってみると、「全部のページに番号が出てしまう」「途中から数字が変えられない」など、つまずきやすい操作の一つです。しかし、適切な手順を理解すれば、プロフェッショナルな文書体裁を実現できます。
この記事では、Wordで途中からページ番号をつける方法を、基本から応用まで詳しく解説していきます。
ページ番号設定の基本概念

セクションとは
セクションとは、Word文書内で異なるページレイアウト設定を適用できる区画のことです。以下の設定をセクション単位で個別に管理できます:
- ページ番号:開始番号、表示形式、位置
- ヘッダー・フッター:内容、表示/非表示
- ページ設定:余白、用紙サイズ、向き
- 段組み:列数、列幅
セクション区切りの種類
次のページから開始
- 効果:新しいページでセクション開始
- 用途:章の区切り、表紙と本文の分離
- 表示:「――― セクション区切り(次のページから開始)―――」
現在のページから開始
- 効果:同じページ内でセクション分割
- 用途:段組み変更、部分的な設定変更
- 表示:「――― セクション区切り(現在のページから開始)―――」
偶数/奇数ページから開始
- 効果:指定したページ種別で開始
- 用途:製本を考慮した章立て
- 使用例:右ページから章を開始する書籍
基本的な設定手順:ステップ by ステップ
準備:編集記号の表示
作業前に編集記号を表示することをお勧めします:
- [ホーム]タブ → ¶(編集記号の表示/非表示)をクリック
- セクション区切りなどが視覚的に確認可能
手順1:セクション区切りの挿入
例:3ページ目から「1」と表示したい場合
- 2ページ目の最後にカーソルを配置
- 文書の最終文字の直後
- 段落の終わりに位置付け
- セクション区切りの挿入
- [レイアウト] → [区切り] → [セクション区切り(次のページから開始)]
- 文書が前半と後半の2つのセクションに分割
- 区切りの確認
- 編集記号表示で「――― セクション区切り ―――」を確認
- 3ページ目が新しいセクションとして開始
手順2:ヘッダー・フッター編集モードの開始
- 3ページ目のフッター(またはヘッダー)をダブルクリック
- 「ヘッダーとフッターツール」タブが表示される
- 編集モードに入り、グレーの枠が表示される
手順3:前のセクションとのリンク解除
重要なポイント
「前と同じヘッダー/フッター」の解除は必須の操作です。これを忘れると、前のセクションの設定が引き継がれてしまいます。
操作手順
- [ヘッダー&フッターツール] → [デザイン]タブ
- 「前と同じヘッダー/フッター」ボタンをクリック
- ボタンがオフ状態(押されていない)になることを確認
- 右上の「前と同じ」表示が消えることを確認
手順4:ページ番号の挿入
- [ヘッダー&フッターツール] → [デザイン] → [ページ番号]
- 位置の選択:
- ページの上部:ヘッダー領域
- ページの下部:フッター領域
- ページの余白:左右の余白部分
- 配置の選択:左、中央、右から選択
手順5:開始番号の設定
- 挿入されたページ番号をクリック
- [ページ番号] → [ページ番号の書式設定]
- 「連続番号」または「開始番号」を選択
- 開始番号を「1」に設定
- [OK]をクリック
手順6:設定の確認と完了
- [ヘッダー&フッターツール] → [デザイン] → [ヘッダーとフッターを閉じる]
- 文書全体を確認:
- 1-2ページ目:番号なし
- 3ページ目以降:1、2、3…の順序
高度な設定とカスタマイズ
複数セクションでの番号管理
3セクション構成の例
セクション1:表紙(番号なし)
セクション2:目次・序文(ローマ数字:i, ii, iii...)
セクション3:本文(アラビア数字:1, 2, 3...)
設定手順
- 2つのセクション区切りを挿入
- 各セクションでリンク解除
- セクション2:ローマ数字形式で開始番号i
- セクション3:アラビア数字形式で開始番号1
ページ番号の表示形式カスタマイズ
書式設定オプション
[ページ番号の書式設定]での選択肢:
- 番号形式:1,2,3… / a,b,c… / i,ii,iii… / I,II,III…
- 章番号を含める:「第1章-1ページ」形式
- 開始番号:任意の数値から開始
実用的な組み合わせ例
学術論文スタイル:
表紙:番号なし
要旨・目次:ローマ数字小文字(i, ii, iii)
本文:アラビア数字(1, 2, 3)
付録:アラビア数字継続または別番号
ビジネス報告書スタイル:
表紙:番号なし
エグゼクティブサマリー:番号なしまたはローマ数字
本文:アラビア数字(1, 2, 3)
参考資料:アラビア数字継続
ヘッダー・フッターのカスタマイズ
異なるセクションでの個別設定
セクション1(表紙):
- ヘッダー:なし
- フッター:なし
セクション2(目次等):
- ヘッダー:文書タイトル
- フッター:ローマ数字ページ番号
セクション3(本文):
- ヘッダー:章タイトルまたは文書タイトル
- フッター:アラビア数字ページ番号
よくあるトラブルと詳細な解決法

トラブル1:すべてのページに番号がついてしまう
原因の特定
- セクション区切りが正しく挿入されていない
- 「現在のページから開始」区切りを使用
- 区切りの位置が不適切
解決手順
- 編集記号を表示して区切り位置を確認
- 不適切な区切りを削除
- 正しい位置に「次のページから開始」区切りを挿入
トラブル2:前のページにも番号が表示される
原因の特定
- 「前と同じヘッダー/フッター」が有効のまま
- リンク解除の操作忘れ
- 間違ったセクションで設定
解決手順
- 対象セクションのヘッダー・フッターを編集モードで開く
- 「前と同じヘッダー/フッター」ボタンを確実にオフ
- 右上の「前と同じ」表示が消えることを確認
- 前のセクションのページ番号を手動削除
トラブル3:ページ番号が期待した数値にならない
原因の特定
- 開始番号の設定不備
- 連続番号設定の影響
- 他セクションの番号との干渉
解決手順
- [ページ番号の書式設定]を再確認
- 「開始番号」を明示的に指定
- 他セクションの設定との関係を確認
トラブル4:セクション区切りが削除できない
原因と対処法
文書の保護:
- [校閲] → [編集の制限]で保護解除
選択の問題:
- 区切り記号を正確にクリック選択
- Deleteキーで削除実行
依存関係:
- 他の要素との関連を確認
- 段階的な削除を実行
実用的な文書テンプレート
学術論文テンプレート
構成例
1. 表紙(1ページ)
- タイトル、著者名、所属
- ページ番号:なし
2. 要旨・目次(2-4ページ)
- 要旨、目次、図表一覧
- ページ番号:i, ii, iii
3. 本文(5ページ以降)
- 序論、本論、結論
- ページ番号:1, 2, 3...
4. 参考文献・付録
- ページ番号:本文から継続
設定手順
- 1ページ目末尾:セクション区切り挿入
- 4ページ目末尾:セクション区切り挿入
- セクション2:ローマ数字、開始番号i
- セクション3:アラビア数字、開始番号1
ビジネス報告書テンプレート
構成例
1. 表紙・目次(1-2ページ)
- 会社ロゴ、タイトル、目次
- ページ番号:なし
2. エグゼクティブサマリー(3-4ページ)
- 概要、要点まとめ
- ページ番号:なしまたは独立番号
3. 詳細報告(5ページ以降)
- 分析結果、提案内容
- ページ番号:1, 2, 3...
書籍・冊子テンプレート
構成例
1. 表紙・奥付(番号なし)
2. 前書き・目次(ローマ数字)
3. 第1章以降(アラビア数字)
4. 付録・索引(継続または別番号)
応用テクニックと上級設定
章番号との連動
章番号を含むページ番号
- [ページ番号の書式設定] → [章番号を含める]
- 「章の開始スタイル」を指定
- 区切り文字を選択(ハイフン、ピリオドなど)
表示例
第1章の場合:1-1, 1-2, 1-3...
第2章の場合:2-1, 2-2, 2-3...
奇数・偶数ページでの異なる設定
設定方法
- [ヘッダー&フッターツール] → [オプション]
- 「奇数/偶数ページ別指定」にチェック
- 奇数ページと偶数ページで個別設定
活用例
奇数ページ(右ページ):章タイトル + 右下にページ番号
偶数ページ(左ページ):文書タイトル + 左下にページ番号
透かしとの組み合わせ
設定手順
- [デザイン] → [透かし]
- カスタム透かしを作成
- セクション別の透かし設定
効果的な使用例
- ドラフト版:「DRAFT」透かし
- 機密文書:「CONFIDENTIAL」透かし
- セクション別:内容に応じた異なる透かし
印刷とPDF出力での注意点

印刷プレビューでの確認
確認すべきポイント
- ページ番号の表示位置
- 番号の開始値と連続性
- ヘッダー・フッターの内容
- セクション間の設定継承状況
印刷設定での調整
- 両面印刷時の奇数・偶数ページ対応
- 余白設定とページ番号位置の調整
- 用紙サイズとレイアウトの整合性
PDF変換時の設定保持
正確な変換のための準備
- すべてのセクション設定を最終確認
- フォントの埋め込み設定
- ページ番号の表示確認
PDF変換の実行
- [ファイル] → [エクスポート] → [PDF/XPSの作成]
- [オプション]で品質設定を調整
- 変換後のPDFでページ番号を確認
効率化とテンプレート活用
カスタムテンプレートの作成
テンプレート化の手順
- 完成した文書からサンプルテキストを削除
- セクション構成とページ番号設定を保持
- [ファイル] → [名前を付けて保存] → [Wordテンプレート]
テンプレートの要素
- セクション区切りの配置
- 各セクションのページ番号設定
- ヘッダー・フッターの基本設定
- スタイル設定の統一
作業効率向上のコツ
設定作業の順序
- 文書全体の構成確定
- セクション区切りの一括挿入
- 各セクションのページ番号設定
- 最終的な微調整
チェックリスト
- [ ] セクション区切りの位置確認
- [ ] 各セクションのリンク解除
- [ ] ページ番号の開始値設定
- [ ] 印刷プレビューでの最終確認
まとめ:プロフェッショナルな文書体裁の実現
Wordで途中からページ番号をつけるには、セクション区切りと開始番号の設定が重要です。
成功のためのポイント:
基本原則の理解
- セクション概念:異なる設定を適用できる区画
- リンク解除:「前と同じヘッダー/フッター」の確実な解除
- 開始番号設定:各セクションでの明示的な番号指定
実践的な手順
- 段階的な作業:セクション区切り → リンク解除 → 番号設定
- 確認の徹底:各ステップでの結果確認
- プレビュー活用:印刷前の最終チェック
応用技術の活用
- 複数セクション管理:表紙・目次・本文の適切な分離
- 番号形式の使い分け:ローマ数字とアラビア数字の組み合わせ
- テンプレート化:再利用による効率化
品質管理
- 一貫性の確保:文書全体での統一感
- 印刷対応:紙媒体での正確な表示
- PDF互換性:電子配布での品質保持
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