学校の先生や塾の講師をしている方なら、「漢文の教材を作りたいけど、レ点ってWordでどうやって入力するの?」と困った経験があるのではないでしょうか。また、学生の方でも「レポートで漢文を引用したいけど、返り点の書き方がわからない」と悩むことがあるかもしれません。
レ点(返り点)は、漢文を日本語として読むために欠かせない重要な記号です。でも、普段の文書では使わないため、Wordでの入力方法がよくわからないという方も多いでしょう。
この記事では、Wordでレ点を正しく、美しく表示する方法を、初心者の方でもわかるように詳しく解説します。教材作成からレポート作成まで、様々な場面で活用できる実践的な内容をお伝えします。
レ点(返り点)とは?基本知識

レ点の役割と重要性
レ点(返り点)とは、漢文を日本語の語順で読むための補助記号です。中国語の語順と日本語の語順は異なるため、漢文を日本語として理解するには、この記号が必要不可欠です。
主な返り点の種類
基本的な返り点
レ点
最も基本的な返り点で、「レ」の字で表記します。直前の漢字と直後の漢字の読む順序を入れ替える際に使用します。
一二点
「一」「二」で表記し、「二」→「一」の順で読みます。2つの語句の順序を入れ替える際に使用します。
上下点
「上」「下」で表記し、「下」→「上」の順で読みます。一二点よりも大きな範囲での語順変更に使用します。
甲乙点
「甲」「乙」で表記し、「乙」→「甲」の順で読みます。上下点よりもさらに大きな範囲での語順変更に使用します。
複合的な返り点
複雑な文章では、これらの返り点を組み合わせて使用することもあります。
返り点の読み方の例
簡単な例で説明すると:
我レ読二書一
この場合、「我、書を読む」という順序で読みます。
Wordでレ点を入力する基本方法
前提:縦書き文書の設定
レ点は縦書きの文書で使用することを前提とした記号です。まず、文書を縦書きに設定する必要があります。
縦書き設定の手順
- Wordを開き、新しい文書を作成します
- 画面上部の「レイアウト」タブをクリックします
- 「ページ設定」グループの「文字列の方向」をクリックします
- 「縦書き」を選択します
これで、文書全体が縦書きモードになります。
基本的なレ点入力方法
方法1:直接入力
最もシンプルな方法は、キーボードから直接「レ」を入力することです。
入力手順
- レ点を付けたい位置にカーソルを置きます
- 「レ」と入力します
- 変換せずにそのまま確定します
注意点
- 全角文字で入力してください(半角では見た目が崩れます)
- 文字サイズは本文よりもやや小さめに設定することが一般的です
方法2:記号からの選択
より正確な形のレ点を入力したい場合は、記号の挿入機能を使用します。
記号挿入の手順
- 「挿入」タブをクリックします
- 「記号と特殊文字」グループの「記号と特殊文字」をクリックします
- 「その他の記号」を選択します
- フォントを「MS 明朝」などの日本語フォントに設定します
- 「レ」や他の返り点記号を探して選択します
- 「挿入」をクリックします
数字や漢字の返り点の入力
一二点の入力
- 「いち」と入力して「一」に変換
- 「に」と入力して「二」に変換
上下点の入力
- 「うえ」と入力して「上」に変換
- 「した」と入力して「下」に変換
甲乙点の入力
- 「こう」と入力して「甲」に変換
- 「おつ」と入力して「乙」に変換
表記位置を整える高度なテクニック
方法1:ルビ(ふりがな)機能を活用
ルビ機能を使用すると、漢字の横(縦書きの場合は右側)にレ点を配置できます。
ルビ機能の設定手順
ステップ1:対象文字の選択
- レ点を付けたい漢字を選択します
- 1文字だけでも、複数文字でも選択可能です
ステップ2:ルビの設定
- 選択した状態で「校閲」タブをクリックします
- 「言語」グループの「ルビ」をクリックします
- ルビダイアログボックスが表示されます
ステップ3:レ点の入力
- 「ルビ」の欄に「レ」や他の返り点を入力します
- 位置やサイズを調整できます
- 「OK」をクリックして適用します
ルビ機能の利点
- 漢字とレ点の位置関係が自動的に調整される
- 文字サイズも自動的に適切なサイズになる
- 文書全体のレイアウトが崩れにくい
ルビ機能の注意点
- 縦書きモードでは、ルビが文字の右側に表示される
- 印刷時に位置がずれる場合があるため、事前確認が必要
方法2:テキストボックスを使用した自由配置
より細かい位置調整が必要な場合は、テキストボックスを使用します。
テキストボックス設定の詳細手順
ステップ1:テキストボックスの挿入
- 「挿入」タブをクリックします
- 「テキスト」グループの「テキストボックス」をクリックします
- 「シンプル – テキストボックス」などを選択します
ステップ2:レ点の入力
- テキストボックス内にレ点(「レ」など)を入力します
- フォントサイズを適切に調整します(通常は本文の70〜80%程度)
ステップ3:テキストボックスの書式設定
- テキストボックスを右クリックして「図形の書式設定」を選択します
- 「塗りつぶし」を「塗りつぶしなし」に設定します
- 「線」を「線なし」に設定します
- これにより、枠が見えない透明なテキストボックスになります
ステップ4:位置の調整
- テキストボックスをドラッグして適切な位置に移動します
- 文字列の折り返しを「前面」に設定します
- 必要に応じて、複数のテキストボックスを配置します
テキストボックス使用の利点
- 位置を自由に調整できる
- 複雑なレイアウトにも対応可能
- 他の要素との重なりを調整できる
テキストボックス使用の注意点
- 手動での位置調整が必要
- 文書の編集時に位置がずれる可能性がある
- 印刷時の位置確認が重要
方法3:表を使用した整列
規則的にレ点を配置したい場合は、表を使用する方法もあります。
表を使用した配置方法
- 「挿入」タブから「表」を選択します
- 漢文の文字数に応じた列数の表を作成します
- 上段に漢字、下段にレ点を配置します
- 表の罫線を「線なし」に設定して見えなくします
用途別の活用方法

教材作成での活用
学校の授業用プリント
- 生徒が理解しやすいよう、大きめのレ点を使用
- カラー印刷の場合は、レ点を赤色にして目立たせる
- 余白を十分に取って、読みやすさを重視
練習問題の作成
- レ点を空欄にして、生徒に記入させる形式も可能
- テキストボックスを活用して、答えを別ページに配置
学術論文での活用
引用文での使用
- 原文の引用時に正確なレ点を付ける
- 脚注での説明も併記することが一般的
研究資料の作成
- より精密なレイアウトが求められる場合
- 専門的な返り点も正確に表記
プレゼンテーション資料での活用
PowerPointとの連携
- Wordで作成したレ点付き漢文をコピーして活用
- フォントサイズを大きくして見やすさを重視
よくある問題と解決方法
印刷時の位置ずれ問題
問題の原因
- プリンターの設定とWordの設定が一致していない
- ルビやテキストボックスの位置設定が不適切
- フォントの違いによる表示差
解決方法
印刷プレビューでの事前確認
- 「ファイル」→「印刷」で印刷プレビューを表示
- レ点の位置が正しいかを必ず確認
- 必要に応じて位置を微調整
テスト印刷の実施
- 重要な文書の場合は事前にテスト印刷を行う
- 実際の用紙で位置を確認
- 問題があれば設定を調整
PDFでの保存と確認
- Word文書をPDFに変換
- PDF状態での表示を確認
- PDFから印刷することで位置ずれを防止
縦書きと横書きの切り替え問題
問題の状況
- 一部を横書きにしたい場合の対処
- 図表との組み合わせでのレイアウト調整
解決方法
セクション区切りの活用
- 縦書き部分と横書き部分でセクションを分ける
- 各セクションで個別に文字列の方向を設定
- レ点は縦書きセクションでのみ使用
フォントによる表示差異
問題の原因
- フォントによってレ点の形や大きさが異なる
- 環境によって利用可能なフォントが違う
推奨フォント
- MS 明朝:標準的で読みやすい
- MS ゴシック:はっきりした表示
- 游明朝:現代的で美しい表示
対処方法
- 使用するフォントを統一する
- 配布先の環境を考慮してフォントを選択
- 必要に応じてフォントを埋め込んだPDFで配布
応用テクニックと工夫
カラーを使った見やすさの向上
レ点の色分け
- レ点を赤色にして本文と区別
- 種類別に色を変えて理解を助ける
- 印刷時は黒色に統一することも考慮
背景色の活用
- 重要な部分の背景に薄い色を設定
- レ点を含む語句をハイライト
サイズとバランスの調整
文字サイズの最適化
- 本文:12pt
- レ点:8〜10pt程度
- 読みやすさを最優先に調整
行間の調整
- 縦書きでは行間が重要
- レ点が他の行と重ならないよう配慮
複雑な文章への対応
入れ子構造の返り点
複数の返り点が組み合わさる場合:
- 範囲を明確に区別
- 色や書体で区別
- 注釈での説明を併用
長文での活用
- ページをまたぐ場合の連続性
- 章立てとの関係
- 目次での表記方法
他のソフトウェアとの比較
PowerPointでの作成
PowerPointの利点
- より自由な配置が可能
- 視覚的なインパクトが大きい
- プレゼンテーションに適している
使い分けの基準
- 教室での授業:PowerPoint
- 印刷配布物:Word
- 学術論文:Word
専門的な組版ソフト
InDesignやLaTeX
- より精密な組版が可能
- 専門的な知識が必要
- 高品質な印刷物に適している
使用を検討すべき場面
- 出版レベルの品質が必要
- 大量の漢文を扱う場合
- 専門的な学術論文
まとめ
Wordでレ点を扱うことは、正しい方法を知っていれば決して難しいことではありません。基本的な入力方法から高度な配置テクニックまで、用途に応じて使い分けることが重要です。
重要なポイントの振り返り
基本事項
- 縦書き設定:レ点使用の前提条件
- 文字入力:全角での正確な入力
- 位置調整:ルビやテキストボックスの活用
実用的なテクニック
- 印刷確認:事前のプレビューとテスト印刷
- フォント選択:環境に応じた適切なフォント
- カラー活用:見やすさを向上させる工夫
用途別の配慮
- 教材作成:生徒の理解を助ける配慮
- 学術利用:正確性と品質の両立
- 配布方法:印刷かデジタルかに応じた最適化
継続的な改善のために
スキルアップの方向性
- 基本操作の習熟:確実で迅速な入力技術
- レイアウト感覚:美しく読みやすい配置
- 応用技術:複雑な文章への対応
実践での活用
実際に教材作成やレポート作成で使用することで、スキルは自然と向上します。最初は簡単な文章から始めて、徐々に複雑な内容にチャレンジしてみてください。
レ点を正しく美しく配置できるようになることで、あなたの漢文関連の文書は格段にプロフェッショナルな仕上がりになります。教育現場や学術研究において、読み手にとって理解しやすい資料を作成することができるでしょう。
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