Word(ワード)で文書を校正・修正するときに便利な「変更履歴」機能。しかし、完成した文書を他人に共有する際に「変更履歴を見せたくない」と感じたことはありませんか?
この記事では、Wordの変更履歴を表示させないための方法と、非表示にする際の注意点をわかりやすく解説します。
変更履歴とは何か

変更履歴機能の基本
Wordの**「変更履歴」**とは、誰がどこをどのように修正したのかを記録・表示する機能です。
校正者やチーム内でのレビュー作業には便利ですが、クライアントや第三者に見せる文書には不適切なこともあります。
変更履歴が問題になる理由
変更履歴には以下のような情報が含まれるため、外部共有時には注意が必要です。
- 修正過程が丸見え:試行錯誤の跡が残る
- 個人的なコメント:内部向けの率直な意見
- 削除した内容:最終的に不要と判断した情報
- 編集者の名前:誰が修正したかの履歴
- 修正回数:どれだけ手直しをしたかがわかる
よくある問題例
実際にこんな問題が起こることがあります。
- 企画書の修正履歴から競合他社の名前が見えてしまう
- 契約書のコメントで社内の本音が露呈
- 報告書の削除箇所から隠したかった情報が判明
- プレゼン資料の修正回数で準備不足がバレる
非表示と削除の違いを理解する
変更履歴への対処法には、大きく分けて2つの方法があります。それぞれの特徴を理解して、適切な方法を選びましょう。
一時的な非表示
- 変更履歴は残っているが、画面上に表示されない
- 設定を戻せば再表示される
- 社内確認や印刷時に便利
完全な削除
- 変更履歴が文書から消去される
- 元に戻すことはできない
- 外部共有や最終版作成時に必要
一時的に非表示にする方法
基本的な非表示設定
変更履歴を文書上に表示させず、見た目をスッキリさせたい場合は以下の手順で対応できます。
手順(Windows版)
- 「校閲」タブをクリック
画面上部のリボンから「校閲」タブを選択します - 「変更履歴の表示」をクリック
「変更履歴」グループにあるボタンをクリック - 「最終版」を選択
ドロップダウンメニューから「最終版」を選びます
これで一時的に変更履歴が非表示になります。
Mac版での手順
Mac版Wordでも基本的な流れは同じです。
- 「校閲」タブを選択
- 「変更履歴の表示」をクリック
- 「最終版」を選択
表示オプションの詳細
変更履歴の表示には複数のオプションがあります。
表示オプション | 説明 | 使用場面 |
---|---|---|
すべての変更を表示 | 変更履歴がすべて見える状態 | 校正作業中 |
シンプルな変更の表示 | 変更箇所を左側の線で表示 | 軽い確認時 |
最終版 | 変更を反映した完成版を表示 | 印刷・共有時 |
元の文書 | 変更前の状態を表示 | 元版との比較時 |
一時非表示の注意点
データは残っている
非表示にしただけでは、変更履歴のデータは文書に残っています。
- 設定を戻せば履歴が復活する
- 他の人が設定を変更すれば見られる
- PDFにしても履歴が残る場合がある
確実な非表示のためには
一時的な非表示だけでは不安な場合は、以下を確認しましょう。
- 受け取る人のWordスキルを考慮
- 文書の機密性を評価
- 完全削除の必要性を判断
変更履歴を完全に削除する方法
基本的な削除手順
文書を完全にクリーンにしたい場合は、変更履歴を削除する必要があります。
すべての変更を承認する方法
- 「校閲」タブを開く
画面上部の「校閲」タブをクリック - 「承諾」ボタンの▼をクリック
承諾ボタンの下向き矢印をクリック - 「すべての変更を承諾」を選択
すべての修正が一度に確定される - 「すべてのコメントを削除」を実行
「削除」ボタンから「すべてのコメントを削除」を選択
個別に承認・却下する方法
慎重に確認しながら処理したい場合は、個別対応も可能です。
- 変更箇所をクリック
- 「承諾」または「却下」を選択
- 次の変更箇所に移動
- すべて処理するまで繰り返し
コメントの削除
変更履歴と同時に、コメントも削除しておきましょう。
コメント削除の手順
- 「校閲」タブ→「削除」をクリック
- 「すべてのコメントを削除」を選択
- 文書からコメントが完全に削除される
削除の確認方法
変更履歴とコメントが本当に削除されたか確認しましょう。
確認手順
- 「校閲」タブを開く
- 「変更履歴の表示」で「すべての変更を表示」を選択
- 何も表示されなければ削除完了
印刷時の設定
印刷で変更履歴を表示しない方法
印刷時にも変更履歴を含めないよう設定できます。
印刷設定の手順
- 「ファイル」→「印刷」をクリック
- 「設定」欄を確認
- 「校閲マークの印刷」をオフにする
- 「印刷」を実行
PDF保存時の注意
PDF形式で保存する際も、変更履歴の扱いに注意が必要です。
PDF保存の手順
- 「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPSの作成」
- 「オプション」をクリック
- 「校閲マークを含める」のチェックを外す
- 「OK」→「発行」
高度な削除方法

文書検査機能の活用
Wordには、個人情報や変更履歴を一括で検出・削除する機能があります。
文書検査の手順
- 「ファイル」→「情報」をクリック
- 「問題のチェック」→「文書検査」を選択
- 「検査」をクリック
- 検出された項目の「すべて削除」をクリック
検査対象項目
文書検査では以下の項目をチェックできます。
- コメント、校閲、バージョン、注釈
- 文書のプロパティと個人情報
- カスタムXMLデータ
- ヘッダー、フッター、透かし
- 非表示のテキスト
メタデータの削除
文書には見えない情報(メタデータ)も含まれています。
メタデータに含まれる情報
- 作成者名
- 最終更新者
- 編集時間
- 会社名
- コメント履歴
メタデータ削除の重要性
- プライバシー保護
- セキュリティ向上
- プロフェッショナルな外観
よくある失敗例と対策
実例:提出書類で履歴がバレてしまったケース
ケース1:企画書の修正履歴
あるマーケティング担当者がクライアントに企画書を提出した際、誤って変更履歴を残したまま送付。
問題点
- 競合他社の名前が削除履歴に残っていた
- 予算の修正過程が見えてしまった
- 内部のネガティブなコメントが露呈
対策
- 最終版作成時の履歴削除を徹底
- 提出前のダブルチェック体制
- テンプレート化による作業効率化
ケース2:契約書のコメント
法務担当者が取引先に契約書を送った際、社内向けのコメントが残っていた事例。
問題点
- 交渉戦略が相手に知られた
- 社内の本音が露呈
- 信頼関係にヒビが入った
対策
- 外部送付用の専用版を作成
- コメント削除の手順書作成
- 送信前の最終確認ルール
失敗を防ぐためのチェックリスト
共有前の確認項目
- [ ] 変更履歴の表示設定を確認
- [ ] すべての変更を承諾済み
- [ ] コメントをすべて削除済み
- [ ] 文書検査を実行済み
- [ ] PDFの場合は校閲マークを除外
- [ ] メタデータを削除済み
- [ ] 印刷プレビューで最終確認
セキュリティの観点
機密文書の扱い
特に機密性の高い文書では、変更履歴の管理が重要です。
セキュリティリスク
- 企業秘密の漏洩
- 個人情報の流出
- 戦略情報の露呈
- 内部情報の外部流出
対策方法
- 変更履歴の完全削除
- アクセス権限の管理
- 暗号化の実施
- バージョン管理の徹底
パスワード保護との併用
変更履歴の削除と合わせて、文書の保護も検討しましょう。
パスワード設定方法
- 「ファイル」→「情報」→「文書の保護」
- 「パスワードを使用して暗号化」を選択
- パスワードを設定
- 安全な共有が可能
組織での運用方法
社内ルールの整備
組織全体で変更履歴の適切な管理を行うためのルール作りが重要です。
運用ルールの例
- 内部レビュー:変更履歴をオンで実施
- 外部共有:必ず履歴を削除してから送付
- 保存版:履歴削除版を別途保存
- 承認プロセス:削除前の上司確認
教育・研修の実施
チーム全体のスキルアップも重要です。
研修内容の例
- 変更履歴機能の基本操作
- 削除方法の実習
- 失敗事例の共有
- セキュリティ意識の向上
ツールとテンプレートの活用

効率化のためのツール
変更履歴管理を効率化するツールの活用も検討しましょう。
便利なアドイン
- 文書クリーナー:一括削除ツール
- バージョン管理システム:履歴の自動管理
- セキュリティチェッカー:漏洩リスクの検証
テンプレートの作成
よく使う文書形式は、テンプレート化しておきます。
テンプレート作成のメリット
- 作業時間の短縮
- ミスの防止
- 品質の統一
- セキュリティの向上
まとめ
Wordの変更履歴は便利な機能ですが、共有時には適切な処理が必要です。
基本的な対処法
- 一時非表示:「校閲」→「変更履歴の表示」→「最終版」
- 完全削除:「すべての変更を承諾」→「すべてのコメントを削除」
- 文書検査:「ファイル」→「情報」→「文書検査」で一括削除
使い分けのポイント
- 社内確認:一時非表示で十分
- 外部共有:完全削除が必要
- 機密文書:文書検査も併用
失敗を防ぐために
- 提出前のチェックリストを活用
- 組織での運用ルールを整備
- 定期的な教育・研修を実施
セキュリティの向上
- メタデータの削除
- パスワード保護の併用
- アクセス権限の管理
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