重要な書類や機密情報を含んだWordファイル。メール添付やクラウドで共有する際に「他人に見られたら困る」と感じたことはありませんか?
そんなときに役立つのが、Wordファイルへのパスワード設定です。この記事では、誰でも簡単にできるパスワードのかけ方と、解除方法、注意点について解説します。
なぜWordにパスワードを設定するべき?

文書を守るためにパスワードを設定する理由は以下のとおりです:
セキュリティ面のメリット
- 誤送信対策:間違ったメールアドレスに送信しても内容が保護される
- 第三者による閲覧防止:共有フォルダやクラウドでの不正アクセスを防ぐ
- 個人情報保護:GDPR や個人情報保護法への対応
- 業務機密の保護:競合他社や外部への情報漏洩を防止
- 法的要件への対応:業界によっては暗号化が義務付けられている場合も
ビジネス面のメリット
- 信頼性向上:取引先やクライアントからの信頼獲得
- コンプライアンス強化:情報セキュリティ対策の証明
- リスク管理:データ漏洩による損失の防止
- 品質保証:文書の完全性と機密性の保持
よくパスワード保護が必要な文書
- 契約書や提案書:価格情報や条件が含まれる文書
- 人事資料:給与、評価、個人情報を含む文書
- 財務資料:売上、利益、予算などの機密情報
- 技術仕様書:開発情報や特許に関わる内容
- 医療記録:患者情報や診断結果
Wordのパスワード保護の種類
Wordでは、用途に応じて複数の保護方法が用意されています。
開くパスワード(暗号化)
ファイル自体を暗号化し、パスワードなしでは開けなくする最も強力な保護方法です。
特徴
- AES暗号化:軍事レベルの暗号化技術を使用
- 完全保護:ファイル内容が完全に暗号化される
- 復旧不可:パスワードを忘れると回復できない
- 全機能制限:閲覧、編集、印刷すべてが制限される
書き込みパスワード(編集制限)
ファイルは開けるが、編集にはパスワードが必要な保護方法です。
特徴
- 読み取り専用:パスワードなしでも閲覧は可能
- 編集制限:内容変更にはパスワードが必要
- 部分保護:特定の部分のみ編集を許可することも可能
- 共同作業:複数人での閲覧と限定的な編集が可能
文書の部分保護
文書の一部分のみを保護する方法です。
対象となる要素
- フォーム入力:特定のフィールドのみ入力を許可
- コメント追加:コメントの追加のみを許可
- 変更履歴:変更の記録のみを許可
- フォーマット制限:書式変更を禁止
Windows版Wordでパスワードを設定する方法
開くパスワード(暗号化)の設定
手順
- ファイルを開く
- パスワードをかけたいWordファイルを開きます
- ファイルタブを選択
- 画面左上の「ファイル」タブをクリック
- 文書の保護メニューへ
- 左側メニューの「情報」を選択
- 「文書の保護」をクリック
- 「パスワードを使用して暗号化」を選択
- パスワード入力
- 任意のパスワードを入力
- 「OK」をクリック
- 確認のため、もう一度同じパスワードを入力
- 「OK」をクリックして完了
注意事項
- パスワードの記録:このパスワードを忘れると、ファイルを開けなくなるため、必ず安全な場所に記録
- 強力なパスワード:推測されにくい複雑なパスワードを設定
- 保存の確認:設定後、必ずファイルを保存
書き込みパスワード(編集制限)の設定
手順
- ファイルタブを選択
- 「ファイル」→「情報」
- 文書の保護
- 「文書の保護」→「編集の制限」を選択
- 制限設定
- 「編集の制限」セクションで制限内容を選択:
- 変更なし(読み取り専用):一切の編集を禁止
- 変更履歴:変更の記録のみ許可
- コメント:コメントの追加のみ許可
- フォーム入力:フォームフィールドの入力のみ許可
- 「編集の制限」セクションで制限内容を選択:
- パスワード設定
- 「はい、保護を開始します」をクリック
- パスワードを入力して「OK」
詳細なセキュリティ設定
暗号化オプション
- **ファイル」→「オプション」→「セキュリティセンター」
- 「セキュリティセンターの設定」をクリック
- 「暗号化プロバイダ」で暗号化方式を選択
利用可能な暗号化方式
- Microsoft Enhanced RSA and AES Cryptographic Provider(推奨)
- Microsoft Base Cryptographic Provider v1.0
- Microsoft Enhanced Cryptographic Provider v1.0
Mac版Wordでの設定方法
開くパスワードの設定
手順
- ツールメニューを開く
- ファイルを開いた状態で「ツール」→「文書を保護」
- パスワード設定
- 「パスワードを設定」にチェックを入れる
- パスワードを入力
- 「OK」で設定完了
編集制限の設定
- 校閲タブを選択
- 「校閲」タブ→「文書の保護」
- 制限内容の選択
- 編集制限の種類を選択
- パスワードを設定
強力なパスワードの作成方法

パスワードの基本ルール
推奨される条件
- 文字数:8文字以上(12文字以上を推奨)
- 文字種:大文字、小文字、数字、記号を組み合わせ
- 予測困難性:辞書にある単語や個人情報を避ける
- 一意性:他のサービスと同じパスワードを使わない
良いパスワードの例
MyDoc2024!Safe# # 16文字、4種類の文字を使用
Work@Report_2024 # 16文字、意味のある組み合わせ
Secure$File123 # 14文字、覚えやすい構造
避けるべきパスワード
- password、123456などの単純なもの
- 生年月日や名前などの個人情報
- 辞書に載っている単語のみの組み合わせ
- キーボード配列(qwerty、asdfなど)
パスワード管理のベストプラクティス
安全な保管方法
- パスワード管理ソフト:1Password、LastPass、Bitwardenなど
- 暗号化USBメモリ:物理的に分離した保管
- 社内システム:企業のパスワード管理システム
- 紙での記録:金庫など安全な場所での物理保管
運用ルール
- 定期的な変更:重要文書は3〜6ヶ月ごとに変更
- 共有の最小化:知る必要がある人のみに限定
- アクセス記録:誰がいつアクセスしたかを記録
- 退職時の対応:人事異動時のパスワード変更
パスワードを解除する方法
開くパスワードの解除
手順
- 文書の保護メニューへ
- 「ファイル」→「情報」→「文書の保護」→「パスワードを使用して暗号化」
- パスワード削除
- 表示されたパスワード入力欄を空欄にして「OK」
- これでパスワードが削除されます
- 保存確認
- Ctrl + Sでファイルを保存して変更を確定
編集制限の解除
手順
- 保護の停止
- 「校閲」タブ→「編集の制限」
- 「保護の停止」をクリック
- パスワード入力
- 設定時のパスワードを入力
- 「OK」をクリックして解除完了
トラブルシューティング
パスワードを忘れた場合
対処法の限界
Wordのパスワードは非常に強力で、基本的に解除できません:
- 回復不可能:Microsoftでも復旧できない
- 総当り攻撃の困難性:現代の技術では事実上解読不可能
- バックアップの重要性:事前の備えが唯一の解決策
予防策
- 複数箇所での保管:パスワード管理ソフトと紙記録の併用
- 定期的な確認:パスワードが正しく記録されているかの確認
- バックアップファイル:パスワード未設定のコピーを安全な場所に保管
- チーム共有:重要文書は複数人でパスワードを管理
パスワード設定ができない場合
よくある原因と対処法
互換モードの問題:
- 症状:暗号化オプションが表示されない
- 対処法:「ファイル」→「情報」→「変換」で最新形式に変換
権限の問題:
- 症状:保護設定がグレーアウトしている
- 対処法:管理者権限での実行、または社内IT部門に相談
破損ファイル:
- 症状:エラーメッセージが表示される
- 対処法:「ファイル」→「開く」→「開いて修復」を実行
ファイルが開けない場合
診断手順
- パスワードの確認
- 大文字・小文字の区別
- 数字とアルファベットの確認
- Caps Lockキーの状態確認
- ファイルの整合性確認
- 他のWordファイルが正常に開けるか確認
- ファイルサイズが異常でないか確認
- Wordの再起動
- アプリケーションの再起動
- 必要に応じてPCの再起動
セキュリティ強化の追加対策
多層防御の考え方
Wordファイルのパスワード保護に加えて、以下の対策を組み合わせることで、より強固なセキュリティを実現できます。
ファイルレベルの対策
- ZIP暗号化:パスワード付きZIPファイルでの配布
- PDF変換:編集不可のPDFとしてパスワード保護
- デジタル署名:文書の改ざん検出機能
- 有効期限設定:一定期間後に自動で開けなくなる設定
送信・共有時の対策
- 暗号化メール:S/MIMEやPGPによるメール暗号化
- セキュア共有サービス:企業向けファイル共有サービス
- VPN経由配信:安全なネットワーク経由での送信
- アクセス記録:誰がいつファイルを開いたかの記録
組織レベルの対策
- 社内ポリシー:文書管理ガイドラインの策定
- 教育・研修:情報セキュリティ意識の向上
- 定期監査:セキュリティ対策の有効性確認
- インシデント対応:漏洩時の迅速な対応体制
よくある質問
パスワード強度について
Q:どのくらい複雑なパスワードが必要?
A:以下の条件を満たすパスワードを推奨します:
- 8文字以上(できれば12文字以上)
- 大文字、小文字、数字、記号を組み合わせ
- 辞書にある単語や個人情報は避ける
- 他のサービスで使用していない一意のもの
編集制限について
Q:開くときだけでなく、編集も制限できる?
A:はい、Wordでは複数の保護レベルが設定できます:
- 開くパスワード:ファイルを開くために必要
- 書き込みパスワード:編集するために必要
- 部分保護:特定の部分のみ編集を許可
- 読み取り専用推奨:編集時に警告を表示
共同作業での活用
Q:チームで作業するときはどうすればいい?
A:用途に応じて以下の方法を使い分けてください:
- 編集制限:特定のメンバーのみ編集を許可
- コメント許可:閲覧者はコメントのみ追加可能
- 変更履歴:すべての変更を記録して管理
- セクション保護:文書の一部のみを保護
バージョン互換性
Q:古いバージョンのWordでも開ける?
A:以下の点にご注意ください:
- 暗号化方式:新しいバージョンの暗号化は古いバージョンで開けない場合があります
- 互換モード:Word 2003形式では一部機能が制限されます
- 推奨対応:同じバージョンのWordを使用することを推奨
- PDF変換:互換性を重視する場合はPDF変換も検討
まとめ
Wordファイルにパスワードをかけるのは、簡単で効果的な情報保護の手段です。ほんの数ステップで設定でき、ビジネスや個人利用どちらにも役立ちます。
重要なポイント
- 適切な保護レベル:用途に応じて開くパスワードと編集制限を使い分け
- 強力なパスワード:推測されにくい複雑なパスワードの設定
- 安全な管理:パスワード管理ソフトなどでの適切な保管
- バックアップ:パスワード未設定のコピーを安全な場所に保管
セキュリティのベストプラクティス
- 多層防御:複数のセキュリティ対策を組み合わせ
- 定期更新:パスワードの定期的な見直しと変更
- 教育・意識向上:組織全体でのセキュリティ意識の共有
- インシデント対応:万一の際の迅速な対応体制の整備
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