Word文書を作成していて、「この文章は間違っているけど、訂正した履歴も残しておきたい」「変更前と変更後の内容を両方見せたい」「削除した部分も見える形で記録したい」と思ったことはありませんか?
そんなときに役立つのが「棒線(取り消し線)」機能です。文字の上に横線を引くことで、削除や修正したことを視覚的に表現できます。完全に消去するのではなく、変更の経緯を残しながら新しい内容を追加できるため、文書の透明性や理解しやすさが向上します。
この機能は、校正作業や共同編集、議事録作成、契約書の修正など、様々な場面で活用されています。一度覚えてしまえば、文書作成の表現力が格段に向上します。
この記事では、Wordで取り消し線を引く基本的な方法から、実務での効果的な活用法、知っておくと便利な応用テクニックまで、初心者の方でもわかるように詳しく解説します。
棒線(取り消し線)とは?基本概念を理解しよう

取り消し線の定義
取り消し線とは、文字の中央部分に横線を引く文字装飾機能です。文字を削除したことを示しながらも、元の内容を読める状態で残すことができます。
取り消し線の表示例
基本的な使用例
これは 間違った表現 正しい表現です。
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修正の流れを示す例
会議の日時:4月15日(火) 4月16日(水)14:00から
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選択肢の決定を示す例
提案:A案 B案 C案を採用する
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取り消し線を使う意味
変更履歴の可視化
修正前の内容と修正後の内容を同時に表示することで、どのような変更が行われたかが一目でわかります。
透明性の確保
文書の変更過程を隠さずに示すことで、信頼性と透明性を確保できます。
意思決定の記録
複数の選択肢から一つを選んだ場合に、検討された他の選択肢も記録として残せます。
校正作業の効率化
編集者や校正者が修正箇所を明確に把握できるため、作業効率が向上します。
基本的な取り消し線の設定方法
リボンからの操作
ステップ1:対象文字の選択
- 取り消し線を引きたい文字や文章をマウスでドラッグして選択します
- 単語の場合は、単語をダブルクリックで選択することも可能です
- 段落全体の場合は、段落内をトリプルクリックで選択できます
ステップ2:取り消し線の適用
- Word画面上部の「ホーム」タブをクリックします
- 「フォント」グループを確認します
- 「abc」に横線が引かれたアイコン(取り消し線ボタン)を見つけます
- この取り消し線ボタンをクリックします
ステップ3:結果の確認
選択した文字に取り消し線が適用され、文字の中央に横線が表示されます。
ショートカットキーでの操作
方法1:フォントダイアログ経由
Ctrl + D を使用
- 取り消し線を適用したい文字を選択します
- Ctrl + D を押します
- 「フォント」ダイアログボックスが表示されます
- 「文字飾り」セクションで「取り消し線」にチェックを入れます
- 「OK」ボタンをクリックして適用します
ダイアログでの詳細設定
フォントダイアログでは、取り消し線以外の設定も同時に変更できます:
- フォントの種類
- フォントサイズ
- 文字の色
- その他の文字装飾(太字、斜体など)
方法2:直接ショートカット
一部のWordバージョンでの対応
- Ctrl + Shift + X:一部のバージョンで取り消し線のオン・オフ
- Alt + H + 4:リボンのアクセスキーを使用した操作
取り消し線の解除方法
解除の基本手順
- 取り消し線が適用されている文字を選択します
- 「取り消し線」ボタンを再度クリックします
- または、Ctrl + D でフォントダイアログを開き、「取り消し線」のチェックを外します
高度な取り消し線の設定
二重取り消し線の使用
二重線の特徴
二重取り消し線は、通常の取り消し線よりも強い削除の意味を表現できます。重要な変更や確定的な削除を示すときに効果的です。
設定方法
フォントダイアログからの設定
- 対象の文字を選択します
- Ctrl + D でフォントダイアログを開きます
- 「文字飾り」セクションで「二重取り消し線」にチェックを入れます
- 「OK」をクリックして適用します
使い分けの例
- 単線:軽微な修正、一時的な削除
- 二重線:重要な変更、確定的な削除
色付き取り消し線の作成
カラー取り消し線の効果
文字の色を変更することで、取り消し線も同じ色になります。これにより、修正の種類や重要度を色分けできます。
設定手順
基本的な色変更
- 取り消し線を適用したい文字を選択します
- 「ホーム」タブの「フォントの色」ボタンをクリックします
- 希望する色を選択します
- 取り消し線ボタンをクリックします
色分けの活用例
- 赤色:重要な削除、エラーの修正
- 青色:提案の変更、推奨事項
- グレー:軽微な修正、スタイルの変更
文字装飾との組み合わせ
複合的な装飾
太字との組み合わせ
削除された重要な部分を強調するために、太字と取り消し線を組み合わせることができます。
斜体との組み合わせ
注釈的な削除や、仮の削除を表現するために斜体と組み合わせることも可能です。
設定方法
- 文字を選択
- 必要な装飾(太字、斜体など)を先に適用
- 最後に取り消し線を適用
実務での効果的な活用例
校正・編集作業での活用
編集プロセスの可視化
原稿の修正例
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表現の改善例
この商品は非常に素晴らしい 画期的な特徴を持っています。
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校正者との連携
- 初稿:原文のまま
- 校正版:修正箇所に取り消し線を適用
- 最終版:取り消し線を削除して清書
会議議事録での活用
意見の変更や修正の記録
決定事項の変更例
次回会議日程:
第1案:4月20日(木)
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第2案:4月22日(土) 4月23日(日)
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最終決定:4月23日(日)14:00〜
提案の絞り込み例
新商品名の候補:
- Aプラン
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- Bプラン(採用)
- Cプラン
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契約書・法的文書での活用
条項の修正履歴
契約条件の変更例
第3条(支払条件)
支払期限:契約締結日から30日以内 10日以内
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責任範囲の明確化
甲の責任範囲:設計・製造・納品 設計・製造のみ
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教育・学習資料での活用
学習プロセスの表示
間違いから学ぶ例
正解例:
水の化学式は H2O2 H2O です。
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段階的な改善例
文章改善の例:
この本はとても面白い すばらしい内容の本です。
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プロジェクト管理での活用
タスクの状況管理
完了タスクの表示
今週のタスク:
□ 資料作成
☑ 会議準備 ← 完了
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□ 報告書提出
変更されたスケジュール
プロジェクトスケジュール:
フェーズ1:4月1日〜4月15日 4月1日〜4月20日
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注意点とベストプラクティス
使用時の注意点
読みやすさの確保
過度な使用を避ける
取り消し線が多すぎると、文書が読みにくくなります。本当に必要な箇所にのみ使用しましょう。
適切な長さの調整
長すぎる文章に取り消し線を引くと、読み手が混乱する可能性があります。簡潔な修正を心がけましょう。
印刷時の考慮
印刷品質の確認
取り消し線が薄すぎて見えにくくなったり、逆に濃すぎて文字が読めなくなったりしないよう、事前に印刷テストを行いましょう。
モノクロ印刷への対応
カラーで色分けした取り消し線も、モノクロ印刷では区別できなくなります。色以外の区別方法も検討しましょう。
効果的な使用方法
一貫性の維持
ルールの設定
文書内で取り消し線の使用ルールを決めておくと、読み手にとってわかりやすくなります。
ルール例
- 軽微な修正:通常の取り消し線
- 重要な変更:二重取り消し線
- 緊急の修正:赤色の取り消し線
説明の併記
修正理由の明記
重要な修正については、取り消し線だけでなく、修正理由も併記すると親切です。
納期:4月30日 5月15日(システム障害のため延期)
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他の機能との使い分け
変更履歴機能との違い
取り消し線の特徴
- 視覚的:修正箇所が一目でわかる
- 永続的:削除しない限り表示され続ける
- 簡単:操作が簡単で、誰でも使える
変更履歴機能の特徴
- 詳細:誰がいつ修正したかがわかる
- 管理的:承認・却下の機能がある
- 可逆的:変更を簡単に元に戻せる
使い分けの基準
- 個人作業:取り消し線が便利
- 共同編集:変更履歴機能が適している
- 最終文書:取り消し線で修正履歴を残す
応用テクニックと工夫
コメント機能との組み合わせ
修正理由の詳細説明
基本的な組み合わせ方法
- 取り消し線を適用した文字を選択
- 「校閲」タブの「新しいコメント」をクリック
- 修正理由や補足説明を入力
効果的な活用例
予算:100万円 150万円
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コメント:「原材料費高騰のため予算を増額」
スタイル機能での統一
取り消し線スタイルの作成
カスタムスタイルの作成手順
- 理想的な取り消し線の書式を設定
- 「ホーム」タブの「スタイル」グループで「新しいスタイル」を作成
- 取り消し線の設定を含めてスタイルとして保存
メリット
- 文書全体で一貫した取り消し線の書式
- ワンクリックで複雑な書式を適用
- 後からまとめて書式変更が可能
検索・置換での一括処理
特定の文字列に一括で取り消し線を適用
高度な置換機能の活用
- Ctrl + H で「検索と置換」を開く
- 「検索する文字列」に対象の文字を入力
- 「置換後の文字列」に同じ文字を入力
- 「書式」ボタンで取り消し線を指定
- 「すべて置換」で一括適用
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法
問題1:取り消し線が表示されない
原因と解決方法
原因1:文字が選択されていない
- 解決方法:対象の文字を正確に選択してから操作
原因2:表示設定の問題
- 解決方法:「ファイル」→「オプション」→「表示」で「文字の書式設定」を確認
原因3:プリンタードライバーの問題
- 解決方法:プリンタードライバーを最新版に更新
問題2:取り消し線が印刷されない
原因と解決方法
原因1:印刷設定の問題
- 解決方法:「ファイル」→「印刷」→「設定」で「文書の内容を印刷」を確認
原因2:プリンター設定の問題
- 解決方法:プリンターのプロパティで「文字装飾を印刷」を有効化
問題3:取り消し線が太すぎる・細すぎる
原因と解決方法
原因:フォントサイズとの不釣り合い
- 解決方法:フォントサイズを調整するか、別のフォントを使用
まとめ
Wordの取り消し線機能は、文書の修正履歴を視覚的に表現する強力なツールです。基本的な操作は簡単ですが、効果的に活用することで、文書の透明性と理解しやすさを大幅に向上させることができます。
重要なポイントの振り返り
基本操作
- 簡単適用:文字選択→「ホーム」タブ→「取り消し線」ボタン
- ショートカット:Ctrl + D でフォントダイアログ経由
- 解除:再度同じ操作で取り消し線を解除
応用活用
- 二重線:重要な削除を強調
- 色分け:修正の種類や重要度を区別
- 組み合わせ:他の文字装飾との併用
実務での価値
- 校正作業:修正箇所の明確化
- 意思決定:選択肢と決定の可視化
- 履歴管理:変更過程の透明性確保
効果的な活用のために
使用の原則
- 必要最小限:本当に必要な箇所にのみ使用
- 一貫性:文書内でルールを統一
- 読みやすさ:読み手の理解を最優先
継続的な改善
実際の文書作成で様々なパターンを試すことで、最適な使用方法が身につきます。読み手にとってわかりやすい、透明性の高い文書作りを心がけましょう。
取り消し線機能をマスターすることで、あなたのWord文書はより表現豊かで、読み手に優しいものになります。まずは基本的な使い方から始めて、徐々に高度なテクニックにチャレンジしてみてください。効果的な文書修正スキルは、ビジネスや学術活動において大きなアドバンテージとなるはずです。
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