「パソコンの調子が悪いけど、アプリを全部入れ直すのは面倒…」
Windowsには、インストール済みのアプリやファイルを残したまま、システムだけを再インストールできる便利な機能があります。それが「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」です。
この記事では、この機能の使い方、何が引き継がれるのか、そして選択できない場合の対処法まで、詳しく解説します!
「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」とは?

「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」は、Windowsを再インストールする際に、現在の環境をできるだけ保持したまま、システムファイルだけを新しくする機能です。
正式には「上書きインストール」や「インプレースアップグレード(In-place Upgrade)」と呼ばれます。
この機能で引き継がれるもの
- 個人用ファイル: ドキュメント、写真、動画、音楽、ダウンロードなど
- インストール済みアプリ: Microsoft Office、Adobe製品、ゲームなど
- ユーザー設定: デスクトップのテーマ、壁紙、スタートメニューの配置
- アカウント情報: ユーザーアカウント、PIN、パスワード
- ブラウザのブックマーク: お気に入り、拡張機能
- ドライバ: インストール済みのデバイスドライバ
- Windowsの更新プログラム: 適用済みのアップデート状態
この機能で削除されるもの
- 破損したシステムファイル: これを新しくするのが目的
- 一部のカスタムフォント: システムフォント以外
- Wi-Fi設定: 再接続が必要になる場合がある
- 一部のシステムアイコン: カスタマイズしたもの
どんなときに使うの?
この機能は、以下のような状況で役立ちます。
1. Windowsの動作が不安定なとき
システムファイルが破損して、以下のような症状が出る場合:
- 設定アプリが開かない、または勝手に閉じる
- エクスプローラーが頻繁にフリーズする
- 起動や動作が異常に遅い
- 原因不明のエラーメッセージが頻繁に表示される
2. Windowsのバージョンアップグレード
- Windows 10 → Windows 11
- Windows 10のバージョン(20H2 → 21H1など)
3. 通常の修復方法で解決できないとき
以下を試しても直らない場合の最終手段として:
- システムファイルチェッカー(sfc /scannow)
- DISM修復
- システムの復元
具体的な手順(Windows 10/11)
準備:必要なもの
必須:
- Windowsのインストールメディア(USBメモリまたはDVD)
- または Windows ISOファイル
推奨:
- 重要なファイルのバックアップ
- 十分な空き容量(Cドライブに8〜16GB以上)
手順1:Windowsインストールメディアを作成する
公式サイトからMedia Creation Toolをダウンロードします。
ダウンロード先:
- Windows 11: https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows11
- Windows 10: https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10
手順:
- 上記のリンクにアクセス
- 「ツールを今すぐダウンロード」をクリック
- ダウンロードしたファイルを実行
- ライセンス条項に同意
- 「別のPCのインストールメディアを作成する」を選択
- 言語、エディション、アーキテクチャを選択
- 重要: 現在使用しているWindowsと同じ言語・エディションを選ぶ
- 「ISOファイル」を選択(またはUSBフラッシュドライブ)
- 保存先を指定してダウンロード
手順2:ISOファイルをマウントする(ISOファイルの場合)
Windows 10/11の場合:
- ダウンロードしたISOファイルを右クリック
- 「マウント」を選択
- 仮想ドライブとして開かれる
手順3:セットアップを実行する
重要な注意点:
- Windowsが正常に起動した状態で実行してください
- セーフモードでは実行できません
- 周辺機器(キーボード・マウス以外)は外してください
手順:
- マウントしたドライブまたはUSBメモリを開く
- 「Setup.exe」をダブルクリック
- ユーザーアカウント制御が表示されたら「はい」をクリック
手順4:セットアップの設定
画面1:更新プログラムのダウンロード
- 「Windowsセットアップでの更新プログラムのダウンロード方法の変更」をクリック
- 「今は実行しない」を選択
- 「次へ」をクリック
画面2:ライセンス条項
- 「同意する」をクリック
画面3:準備中
- しばらく待つ(環境によって数分かかる)
手順5:引き継ぐ項目を選択する【重要!】
インストール準備完了画面が表示されます。
選択肢の確認:
デフォルトでは「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」が選択されているはずです。
念のため確認するには:
- 「引き継ぐものを変更」をクリック
- 以下の3つの選択肢が表示されます:
選択肢1:個人用ファイルとアプリを引き継ぐ
- ファイル、アプリ、設定をすべて保持
- おすすめ: アプリを再インストールしたくない場合
選択肢2:個人用ファイルのみを引き継ぐ
- ファイルと設定は保持
- アプリは削除される
- おすすめ:アプリが原因で問題が起きている場合
選択肢3:何も引き継がない
- すべて削除(クリーンインストール)
- おすすめ:完全にリセットしたい場合
選択したら:
- 「次へ」をクリック
- 必要な作業の確認画面が表示される(そのまま待つ)
- 「インストール」をクリック
手順6:インストール開始
画面の表示:
「Windows をインストールしています」と表示されます。
所要時間:
- 環境によって30分〜2時間程度
- 何度か自動的に再起動します
- 途中でキャンセルしないでください
進行状況:
- ファイルのコピー
- 更新プログラムのインストール
- 機能とドライバのインストール
- 設定の構成
- 再起動(数回)
手順7:完了
再起動後、以前と同じ環境でWindowsにログインできます。
確認すべきこと:
- デスクトップのファイルがあるか
- インストールしたアプリが起動するか
- インターネット接続(Wi-Fiの再接続が必要な場合あり)
「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」が選択できない!

この問題は意外と多く報告されています。主な原因と対処法を紹介します。
原因1:言語が一致していない【最も多い原因】
Windowsのシステム言語とISOファイルの言語が異なると、引き継ぎができません。
確認方法:
- コマンドプロンプトを管理者として実行
- 以下を入力してEnter:
DISM /online /get-intl
- 「Default system UI language」と「System locale」を確認
対処法1:言語を変更する
- コマンドプロンプト(管理者)で以下を実行:
DISM /online /set-uilang:en-US
- パソコンを再起動
- 再度セットアップを実行
対処法2:正しい言語のISOをダウンロードする
- Media Creation Toolを再度実行
- 言語選択で、現在のシステムと同じ言語を選択
- 日本語版Windowsなら「日本語」
- 英語版なら「English (United States)」
- 新しいISOファイルでセットアップ
実例:
日本語版Windowsに英語版ISOを使おうとすると、「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」がグレーアウトします。
原因2:Windowsのエディションが異なる
Home版のWindowsにPro版のISOを使おうとすると、引き継ぎができません。
確認方法:
- 「設定」→「システム」→「バージョン情報」
- 「エディション」を確認(Home、Pro、Educationなど)
対処法:
現在と同じエディションのISOファイルを使用してください。
原因3:古いバージョンのISOを使っている
現在インストールされているWindowsより古いバージョンのISOでは引き継ぎができません。
確認方法:
- 「設定」→「システム」→「バージョン情報」
- 「OSビルド」を確認(例:19045.xxxx)
対処法:
- 常に最新版のISOをダウンロードする
- Microsoft公式サイトから取得したISOを使う
原因4:ユーザーフォルダの場所が移動されている
レジストリを編集してユーザーフォルダ(C:\Users)の場所を変更している場合、引き継ぎができません。
対処法:
この場合は、残念ながら「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」は使えません。
代替案:
- 重要なファイルをバックアップ
- 「個人用ファイルのみを引き継ぐ」を選択
- アプリは後で再インストール
原因5:Program Filesの場所が変更されている
レジストリでProgram Filesの場所を変更している場合も、引き継ぎができません。
確認方法:
- レジストリエディタを開く(Win + R → regedit)
- 以下に移動:
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion
- 「ProgramFilesDir」の値を確認
- デフォルトは「C:\Program Files」
対処法:
変更している場合は、元に戻すか、「何も引き継がない」でクリーンインストールする必要があります。
原因6:空き容量が不足している
Cドライブの空き容量が少ないと、引き継ぎができません。
必要な空き容量:
- Windows 10:約8GB以上
- Windows 11:約16GB以上
対処法:
- 不要なファイルを削除
- ディスククリーンアップを実行
- 大きなファイルを別のドライブに移動
- 十分な空き容量を確保してから再試行
原因7:特定のWindows Updateが原因
特定のアップデート(KB4562830など)が原因で引き継ぎができないバグが報告されています。
対処法:
- 「設定」→「更新とセキュリティ」→「Windows Update」
- 「更新履歴を表示」をクリック
- 「更新プログラムをアンインストールする」をクリック
- 問題のある更新プログラム(KB4562830など)を探す
- 右クリックして「アンインストール」
- 再起動後、セットアップを再試行
代替方法:「このPCをリセット」機能
「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」が使えない場合の代替手段です。
特徴
- 引き継げるもの: 個人用ファイルのみ
- 削除されるもの: すべてのアプリ
- メリット: ISOファイル不要、簡単
手順
- 「設定」を開く
- 「システム」→「回復」(Windows 11)
または「更新とセキュリティ」→「回復」(Windows 10) - 「このPCをリセット」の「PCをリセットする」をクリック
- 「個人用ファイルを保持する」を選択
- 「ローカル再インストール」または「クラウドダウンロード」を選択
- 「次へ」→「リセット」をクリック
注意:
この方法ではアプリは削除されるので、後で再インストールが必要です。
よくある質問と回答
Q1:ライセンス認証はどうなりますか?
A: 正規のWindows 10/11を使用している場合、再インストール後も自動的に認証されます。同じエディション、同じバージョンであれば、プロダクトキーの再入力は不要です。
Q2:インストール済みのゲームはどうなりますか?
A: 「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」を選択した場合、ほとんどのゲームはそのまま残ります。ただし、一部のゲーム(特にオンラインゲーム)は再起動や再認証が必要になる場合があります。Steamのゲームは基本的にそのまま使えます。
Q3:所要時間はどのくらいですか?
A: 環境によって大きく異なりますが、30分〜2時間程度です。データ量が多い場合やパソコンのスペックが低い場合は、さらに時間がかかることがあります。
Q4:途中でキャンセルできますか?
A: 「インストールしています」の画面が表示されるまではキャンセル可能です。それ以降はキャンセルできません。途中で電源を切ると、Windowsが起動しなくなる可能性があります。
Q5:Microsoft Officeはどうなりますか?
A: プリインストール版またはサブスクリプション版(Microsoft 365)の場合、「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」を選択すればそのまま残ります。ただし、稀に再認証が必要になる場合があります。
Q6:デスクトップアプリとMicrosoft Storeアプリの違いはありますか?
A: デスクトップアプリ(従来のexeファイル)は引き継がれます。Microsoft Storeからインストールしたアプリも基本的に引き継がれますが、一部は再インストールが必要になる場合があります。
Q7:ドライバは再インストール必要ですか?
A: 基本的には引き継がれるので、再インストール不要です。ただし、グラフィックカードなどの一部のドライバは、最新版に更新することを推奨します。
まとめ:安全にWindowsを修復しよう
「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」機能を使えば、時間のかかるアプリの再インストールをせずに、Windowsを新鮮な状態に戻せます。
手順のおさらい:
- Media Creation ToolでISOファイルを作成(同じ言語・エディション・最新版)
- ISOをマウントしてSetup.exeを実行
- 「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」を選択
- インストール完了まで待つ(30分〜2時間)
選択できない場合:
- 言語の一致を確認
- 同じエディションのISOを使用
- 空き容量を確保
- 問題のあるWindows Updateをアンインストール
代替案:
- 「このPCをリセット」で個人用ファイルのみ保持(アプリは削除される)
重要なのは、事前に必ずバックアップを取ることです。万が一失敗しても、データを失わずに済みます。
この機能を正しく使えば、パソコンを買い替えたような快適さを取り戻せますよ!

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