「パソコンの電源を入れたのに、Windowsが立ち上がらない…」 「黒い画面に英語がいっぱい出てきて、どうしたらいいか分からない…」
そんな経験、ありませんか?
実は、Windowsが起動する前に、裏で働いている重要な仕組みがあるんです。それが「Windowsブートマネージャー」。パソコンの電源を入れてからWindowsが立ち上がるまでの、いわば「起動係」のような存在です。
普段は意識することのないこの機能ですが、トラブル時には強い味方になってくれます。また、複数のOSを使い分けたい人にとっては必須の知識でもあります。
この記事では、難しそうに見えるブートマネージャーを、身近な例えを使いながら分かりやすく解説。読み終わる頃には、起動トラブルにも慌てず対処できるようになるはずです。
ブートマネージャーって何?まずは基本から

パソコン起動の仕組みを理解しよう
パソコンの起動を、朝の準備に例えてみましょう。
通常の朝の流れ:
- 目覚まし時計が鳴る(電源ボタンを押す)
- 起きて身支度をする(BIOS/UEFIが起動)
- 今日の予定を確認(ブートマネージャーが動作)
- 仕事に出かける(Windowsが起動)
ブートマネージャーは、この「今日の予定を確認」する部分。どのOS(オペレーティングシステム)を起動するか、起動に必要なファイルはどこにあるか、などを管理しています。
なぜブートマネージャーが必要なの?
主な役割:
- 起動するOSを選択
- Windows 11とWindows 10を両方入れている場合の選択
- WindowsとLinuxを使い分ける場合の切り替え
- 起動ファイルの場所を管理
- どのドライブから起動するか
- 必要なシステムファイルがどこにあるか
- 起動オプションの提供
- セーフモードでの起動
- 回復環境への移行
- 前回正常起動時の構成での起動
- 起動エラーの処理
- ファイルが見つからない時の対処
- 起動に失敗した時の代替手段の提供
アクセス方法:3つの入り口を覚えよう
方法1:起動時に特定のキーを押す(最も基本的)
手順:
- パソコンの電源を入れる
- メーカーロゴが表示されたらすぐに「F8」キーを連打 (メーカーによってはF12、ESC、Deleteの場合も)
ポイント: タイミングが重要!ロゴが消える前に押し始めることが大切です。
方法2:Shiftキーを押しながら再起動(Windows 10/11)
手順:
- スタートメニューを開く
- 電源ボタンをクリック
- Shiftキーを押しながら「再起動」をクリック
- 青い画面で「トラブルシューティング」→「詳細オプション」
これが最も確実で簡単な方法です。
方法3:設定画面から(計画的に使う場合)
手順:
- 設定を開く(Windows + I)
- 「更新とセキュリティ」→「回復」
- 「PCの起動をカスタマイズする」の「今すぐ再起動」
時間に余裕がある時は、この方法が一番安全です。
よく見る画面と対処法
青い選択画面が出た時
「オペレーティングシステムの選択」画面
複数のWindowsがインストールされている場合に表示されます。
オペレーティングシステムの選択
Windows 11
Windows 10
30秒後に既定値で起動します
対処法:
- 使いたいOSを矢印キーで選んでEnter
- 何もしなければ30秒後に自動的に起動
黒い画面にエラーメッセージ
「Bootmgr is missing」と表示された場合
起動に必要なファイルが見つからない状態です。
対処法:
- Windows回復ディスクを用意
- ディスクから起動
- 「スタートアップ修復」を実行
「Windows Boot Manager」という英語メニュー
Boot Manager画面の見方:
Windows Boot Manager
Windows 11
Windows Memory Diagnostic
ENTER=Choose TAB=Menu ESC=Cancel
各項目の意味:
- Windows 11:通常のWindows起動
- Windows Memory Diagnostic:メモリ診断ツール
- ENTER:選択、TAB:メニュー表示、ESC:キャンセル
デュアルブート(複数OS)の設定方法

Windows 11とWindows 10を共存させる
準備するもの:
- 空きパーティション(最低60GB推奨)
- インストールメディア(USBまたはDVD)
- プロダクトキー
基本的な流れ:
- パーティションの準備
- ディスクの管理で新しいパーティションを作成
- または既存パーティションを縮小して空き領域を確保
- 2つ目のWindowsをインストール
- インストールメディアから起動
- カスタムインストールを選択
- 準備したパーティションにインストール
- ブートマネージャーが自動設定
- インストール完了後、自動的に選択画面が表示されるように
既定のOSと待機時間の変更
設定方法:
- 「システムのプロパティ」を開く(Windows + Pause)
- 「システムの詳細設定」→「起動と回復」の「設定」
- 既定のオペレーティングシステムを選択
- 表示時間を設定(5秒~999秒)
おすすめ設定:
- よく使うOSを既定に設定
- 待機時間は10~15秒程度が使いやすい
トラブルシューティング:起動しない時の対処法
レベル1:簡単な対処法
1. 電源の入れ直し
- 完全にシャットダウン(Shift + シャットダウン)
- 電源ケーブルを抜いて30秒待つ
- 再度電源を入れる
2. セーフモードで起動
- 起動時にF8連打(Windows 7以前)
- Shift + 再起動から選択(Windows 10/11)
3. 前回正常起動時の構成
- F8メニューから選択可能
- 最後に正常に起動した時の設定に戻す
レベル2:回復オプションを使う
スタートアップ修復 最も一般的な起動問題を自動的に修復します。
- 回復環境に入る(Shift + 再起動)
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」
- 「スタートアップ修復」を選択
システムの復元 過去の復元ポイントに戻します。
- 重要な更新前に自動作成される
- 手動でも作成可能
- プログラムはそのまま、設定だけ戻る
レベル3:コマンドプロンプトで修復
基本的なコマンド:
# ブートセクターの修復
bootrec /fixboot
# マスターブートレコードの修復
bootrec /fixmbr
# ブート構成データの再構築
bootrec /rebuildbcd
# システムファイルのチェック
sfc /scannow
使い方:
- 回復環境のコマンドプロンプトを開く
- 上記のコマンドを順番に実行
- 各コマンド実行後、結果を確認
UEFI vs レガシーBIOS:何が違うの?
新しいUEFIモード
特徴:
- 起動が速い(数秒で起動)
- 2TB以上のドライブに対応
- セキュアブート機能
- マウス操作可能な画面
確認方法:
- 「システム情報」を開く(msinfo32)
- 「BIOSモード」の項目を確認
- 「UEFI」または「レガシ」と表示
古いレガシーBIOS
特徴:
- 従来からある方式
- 2TB以下のドライブのみ
- テキストベースの画面
- 互換性が高い
どちらを使うかは、通常は自動的に決まりますが、古いソフトウェアを使う場合はレガシーBIOSが必要な場合もあります。
BCDEdit:上級者向けのブート設定ツール
BCDEditとは?
ブート構成データ(BCD)を編集するコマンドラインツール。細かい設定変更が可能です。
よく使うコマンド:
# 現在の設定を表示
bcdedit /enum
# ブートメニューの表示時間を変更(10秒に設定)
bcdedit /timeout 10
# セーフモードを有効化
bcdedit /set {current} safeboot minimal
# 設定をバックアップ
bcdedit /export C:\BCDBackup
注意点: 間違った設定をすると起動しなくなる可能性があるので、必ずバックアップを取ってから実行してください。
緊急時のために準備しておくべきもの
1. 回復ドライブ(必須!)
作成方法:
- USBメモリ(16GB以上)を用意
- 「回復ドライブの作成」を検索して起動
- 「システムファイルを回復ドライブにバックアップします」にチェック
- 指示に従って作成
年に1回は更新することをおすすめします。
2. システム修復ディスク
DVDに作成する回復メディア。回復ドライブとほぼ同じ機能です。
3. インストールメディア
Microsoftの公式サイトから「メディア作成ツール」をダウンロードして作成。クリーンインストールも可能です。
よくある質問と回答

Q1:ブートマネージャーを無効にできる?
A: 単一のOSしか使わない場合は、表示時間を0秒に設定できます。ただし、完全に無効にすることはおすすめしません。トラブル時の対処が難しくなるからです。
Q2:ブート順序とブートマネージャーの違いは?
A:
- ブート順序:どのドライブから起動するか(HDD、SSD、USB、DVDなど)
- ブートマネージャー:選択されたドライブ内でどのOSを起動するか
BIOSで設定するのがブート順序、その後に動くのがブートマネージャーです。
Q3:「ブートデバイスが見つかりません」と出たら?
A:
- BIOSでドライブが認識されているか確認
- ケーブルの接続を確認
- ブート順序の設定を確認
- それでもダメなら、ドライブの故障の可能性
まとめ:もう起動トラブルは怖くない
Windowsブートマネージャーは、普段は意識しない縁の下の力持ち。でも、その仕組みを理解しておけば、トラブル時に慌てることがなくなります。
覚えておきたいポイント:
- 基本操作:Shift + 再起動で回復オプションへ
- トラブル対処:まずはスタートアップ修復を試す
- 事前準備:回復ドライブは必ず作成しておく
- デュアルブート:複数OSの使い分けも簡単
- 緊急時:セーフモードという逃げ道がある
パソコンが起動しないという緊急事態でも、この記事の内容を思い出せば、きっと解決の糸口が見つかるはずです。
最後に一つアドバイス。トラブルが起きていない今のうちに、回復ドライブだけは作成しておいてください。それが、将来の自分を助ける最高の保険になります。
「備えあれば憂いなし」。ブートマネージャーの知識で、安心のパソコンライフを送りましょう!
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