突然パソコンが起動しなくなったり、ウイルス感染でどうにもならなくなった経験はありませんか?
そんなときに役立つのがリカバリーディスクです。Windowsにはパソコンを工場出荷状態に戻す機能(初期化)がありますが、その準備としてリカバリーディスクを作っておくと、いざというときに安心です。
この記事では、初心者にもわかりやすく次のことを解説します:
- リカバリーディスクとは何か、なぜ必要なのか
- 自分のパソコンに本当に必要かどうかの判断基準
- Windows標準ツールでの作成方法
- 実際にトラブルが起きたときの使い方
リカバリーディスクとは何か、どんなときに必要なのか、そして自分で簡単に作る方法まで詳しく説明します。「備えあれば憂いなし」の精神で、一緒にパソコンのトラブルに備えましょう。
リカバリーディスクって何?

パソコン復旧の救世主
リカバリーディスクは、パソコンが正常に起動できなくなったときに使う「復旧用ディスク」のことです。多くの場合、DVDやUSBメモリに作成し、そこからWindowsを修復または再インストールできます。
リカバリーディスクでできること
システムの修復:
- 起動できないWindowsを修復
- 破損したシステムファイルの復旧
- ウイルス感染後の復旧
完全初期化:
- 工場出荷状態への復旧
- 新品のようなまっさらな状態に戻す
- 重要なトラブル時の最終手段
他の復旧方法との違い
リカバリーディスク vs 内蔵回復機能:
- 内蔵回復機能:ハードディスク内の回復領域を使用
- リカバリーディスク:外部メディア(USB/DVD)を使用
- メリット:ハードディスクが故障しても使える
リカバリーディスク vs システム復元:
- システム復元:設定を数日前の状態に戻す
- リカバリーディスク:完全に初期状態に戻す
- 適用範囲:リカバリーディスクの方が強力
実際にリカバリーディスクが活躍する場面
よくあるトラブル事例
システムファイルの破損:
- Windowsアップデート中の電源切断
- 不正なソフトウェアのインストール
- ハードディスクの部分的な故障
ウイルス・マルウェア感染:
- 深刻なウイルス感染でWindowsが起動しない
- セキュリティソフトでも駆除できない場合
- システム全体が乗っ取られた状況
物理的な障害:
- ノートPCを落としてSSDが故障
- 経年劣化によるハードディスク故障
- 停電や電源トラブルによる障害
実際の復旧成功例
事例1:大学生のレポート提出前夜
- 論文作成中にパソコンがフリーズ
- 強制終了後、Windowsが起動しなくなる
- リカバリーディスクで修復し、バックアップから論文を復旧
事例2:小規模企業の経理PC
- ランサムウェア(身代金要求ウイルス)に感染
- 全ファイルが暗号化され業務停止
- リカバリーディスクで初期化し、バックアップから業務再開
事例3:家族写真の保存PC
- 子どもが誤操作でシステムファイルを削除
- Windowsが正常起動せず、写真データにアクセス不可
- リカバリーディスクで修復し、大切な写真を救出
普段は必要ないものですが、トラブルが起きたときにはこれがあるかどうかで復旧の難易度が大きく変わります。次に、自分のパソコンにリカバリーディスクが必要かどうかを見てみましょう。
リカバリーディスクは必須?
現代のパソコンの回復機能
最近のWindowsパソコンは、内部ストレージに「リカバリ領域(リカバリパーティション)」を持っていて、これで初期化できる機種が多いです。
内蔵回復機能の仕組み
ハードディスク内の回復領域:
┌─────────────────────────────┐
│ Windows システム(Cドライブ)│
├─────────────────────────────┤
│ 回復領域(通常は非表示) │ ← ここにリカバリデータ
├─────────────────────────────┤
│ その他のパーティション │
└─────────────────────────────┘
回復領域の利点:
- 追加のメディアが不要
- 高速アクセスが可能
- 紛失のリスクがない
内蔵回復機能の限界
物理的な障害に弱い:
- ハードディスク全体が故障すると使用不可
- 水没や落下などの物理ダメージで回復領域も破損
- SSD/HDDの寿命による故障
ウイルス感染のリスク:
- 一部の高度なウイルスは回復領域も感染させる
- システム全体の暗号化により回復領域もアクセス不可
外部リカバリーディスクの必要性
なぜ外部メディアが重要なのか
独立性:
- パソコン本体とは完全に独立
- 本体が完全に故障しても使用可能
- 他のパソコンでも使用できる場合がある
確実性:
- ウイルス感染の影響を受けない
- 物理的に別の場所に保管可能
- 確実にクリーンな状態からの復旧
実際の障害事例
事例:ノートPCの落下事故
- 机から床に落下、内蔵SSDが完全故障
- 内蔵の回復領域も含めて全データが読み取り不可
- 外部USBリカバリーディスクで新しいSSDに復旧成功
事例:ランサムウェア感染
- 高度なランサムウェアが回復領域も暗号化
- 内蔵回復機能が全く使用できない状態
- 事前に作成したUSBリカバリーディスクで完全復旧
どんな人に特に必要?
高リスク環境の利用者
ビジネス利用者:
- 重要なデータを扱う
- ダウンタイムが許されない
- セキュリティリスクが高い
学生・研究者:
- 論文やレポートなど代替不可能なデータ
- 提出期限がある重要なファイル
- 実験データや調査結果
クリエイター:
- 制作途中の作品データ
- クライアントからの重要なプロジェクト
- 締切に追われる制作環境
技術的知識が限られる利用者
初心者ユーザー:
- トラブル時の対処法が分からない
- 業者に頼むと高額な費用がかかる
- 自分で解決できる手段を持ちたい
高齢者:
- 複雑な復旧作業が困難
- 簡単な手順で復旧したい
- 家族のサポートが限られている
「内蔵リカバリだけで大丈夫」と思わずに、念のため外部メディアを作っておくのがおすすめです。次に具体的な作り方を紹介します。
Windowsでリカバリーディスクを作る方法

USB回復ドライブを作る(Windows 10/11)
Windowsには「回復ドライブ」作成ツールが標準でついています。これが最も簡単で確実な方法です。
必要な準備
USBメモリの要件:
- 容量:16GB以上(32GB推奨)
- 速度:USB 3.0以上(作成時間短縮のため)
- 状態:空にしておく(データは全て削除される)
作業時間の目安:
- 準備:5分
- 作成時間:30分〜2時間(PCスペックによる)
- 合計:1〜3時間程度
詳細な作成手順
ステップ1:回復ドライブツールの起動
- 検索バーに「回復ドライブ」と入力
- スタートメニューの検索ボックスを使用
- 「回復ドライブの作成」をクリック
- 管理者権限が必要なのでUACダイアログが表示される
- 「はい」をクリックして権限を許可
ステップ2:オプションの選択
- 「システムファイルを回復ドライブにバックアップします」にチェック
- このオプションは必須(チェックを忘れないように)
- これにより完全な復旧が可能になる
- 「次へ」をクリック
ステップ3:USBドライブの選択
- USBメモリをパソコンに挿入
- 作成開始前に挿入しておく
- 利用可能なドライブから選択
- 複数のUSBがある場合は正しいものを選択
- 容量を確認して間違いないことを確認
- 「次へ」をクリック
ステップ4:最終確認と作成開始
- 警告メッセージを確認
- 「ドライブ上のすべてのデータが削除されます」
- USBメモリ内のデータは完全に消去される
- 「作成」をクリック
- この時点で作成が開始される
- 中断することはできないので注意
- 作成完了まで待機
- 進行状況が表示される
- パソコンを使用し続けても問題ない
作成中の注意点
作成中に避けるべきこと:
- USBメモリを抜かない
- パソコンをシャットダウンしない
- 回復ドライブツールを終了しない
作成中にできること:
- 他のアプリケーションの使用
- インターネットの閲覧
- 軽作業(重い作業は避ける)
DVDリカバリーディスクを作る(メーカー製PCの場合)
メーカー専用ツールの利用
メーカー製のパソコン(NEC、富士通、Dell、HP、Lenovoなど)では、専用ツールでDVDリカバリーディスクを作成できるものがあります。
主要メーカーのツール名:
- NEC:「リカバリメディア作成ツール」
- 富士通:「リカバリディスクセット作成ユーティリティ」
- Dell:「Dell DataSafe Local Backup」
- HP:「リカバリメディア作成ツール」
- Lenovo:「OneKey Recovery」
DVD作成の手順(一般的な流れ)
準備段階:
- 空のDVD-Rを用意
- 通常4〜8枚程度必要
- DVD-Rを推奨(DVD-RWは避ける)
- メーカーツールを起動
- プリインストールされている場合が多い
- スタートメニューまたはコントロールパネルから
作成手順:
- ツールの起動
- DVDメディアの選択
- 作成開始
- 複数枚のDVDを順番に挿入
- 作成完了の確認
DVDリカバリーディスクの特徴
メリット:
- 大容量データを複数枚に分割
- 長期保存に適している
- メーカー独自のドライバも含む
デメリット:
- 作成に時間がかかる
- 複数枚の管理が必要
- DVD読み取り機能が必要
重要な注意点
作成回数の制限
メーカー製PCの制限:
- 多くの場合、作成は1回だけ
- 2回目以降は有料の場合がある
- 失敗すると再作成できない場合も
対策:
- 作成前に十分な準備をする
- 作成中は他の作業を控える
- 作成後は複数コピーを検討
作成したメディアの管理
適切な保管方法:
- 直射日光を避ける
- 湿度の低い場所に保管
- 傷がつかないケースに入れる
- ラベルで内容と作成日を記録
これでいざというときに備えができます。次は実際に使うときのポイントを見てみます。
リカバリーディスクの使い方
トラブル発生時の基本的な流れ
パソコンが起動しないときに、リカバリーディスクやUSB回復ドライブを差し込み、電源を入れてBIOS/UEFIからそのメディアを最初に起動するように設定します。
使用前の準備
重要なデータのバックアップ:
- 可能であれば重要なファイルを外部に保存
- リカバリー作業でデータが失われる可能性がある
- 別のパソコンやクラウドストレージを活用
必要なメディアの準備:
- 作成したリカバリーディスク/USB
- Windowsのプロダクトキー(必要な場合)
- ネットワーク設定情報
BIOS/UEFI設定での起動順序変更
起動順序の変更手順
ステップ1:BIOS/UEFI画面への入り方
- 電源投入時にキーを押す
- 一般的なキー:F2、Delete、F12、ESC
- メーカー別の例:
- Dell:F2
- HP:F10またはESC
- Lenovo:F1またはF2
- ASUS:F2またはDelete
- タイミングが重要
- 電源ボタンを押した直後から連打
- メーカーロゴが表示される前に押す
- 「BIOS Setup」などの表示を確認
ステップ2:起動順序の設定
- Boot メニューを探す
- 「Boot」「起動」「Boot Priority」等の項目
- 起動順序を変更
- USB/DVDを1番目に設定
- 矢印キーで項目を移動
- +/-キーで順序を変更
- 設定を保存
- F10キーで保存(一般的)
- 「Save & Exit」を選択
簡単な起動メニューの使用
ワンタイムブートメニュー: 多くのPCでは、BIOS設定を変更せずに一時的に起動デバイスを選択できます。
起動手順:
- 電源投入時に特定キーを押す
- 一般的なキー:F12、F11、F8
- メーカー別の例:
- Dell:F12
- HP:F9
- Lenovo:F12
- ASUS:F8
- 起動デバイス選択画面
- USB Storage Device
- DVD/CD-ROM Drive
- 矢印キーで選択してEnter
リカバリー作業の実際の流れ
回復オプションの選択
Windows回復環境が起動すると:
- 言語とキーボードの選択
- 回復オプションの選択画面
- トラブルシューティング
- このPCを初期状態に戻す
- 詳細オプション
主要な回復オプション
このPCを初期状態に戻す:
- 個人用ファイルを保持する:アプリと設定をリセット、ファイルは保持
- すべて削除する:完全な初期化、工場出荷状態に戻す
システムの復元:
- 以前の復元ポイントに戻す
- 最近のシステム変更を取り消す
スタートアップ修復:
- 起動に関する問題を自動で修復
- システムファイルの修復
作業中の注意点
時間の確保:
- 初期化には1〜4時間程度かかる
- 作業中は電源を切らない
- 安定した電源環境で実行
データのバックアップ:
- 可能な限り事前にバックアップ
- 初期化後はデータが失われる
- クラウドストレージの活用を推奨
実際の使用例
ケース1:システム修復
症状: Windowsが起動画面で止まる 手順:
- USBリカバリーディスクから起動
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」
- 「スタートアップ修復」を実行
- 自動修復完了後、正常起動を確認
ケース2:完全初期化
症状: ウイルス感染で複数のシステムファイルが破損 手順:
- 重要データを別PCで救出(可能な場合)
- USBリカバリーディスクから起動
- 「このPCを初期状態に戻す」→「すべて削除する」
- 初期化完了後、必要なソフトを再インストール
これでパソコンが壊れても復旧できる可能性が高まります。
よくある質問と注意点

作成に関するQ&A
Q: どのくらいの容量のUSBメモリが必要?
A: 16GB以上、推奨は32GB
- システムファイルを含める場合:16GB以上必須
- 余裕を持たせるなら:32GB推奨
- 64GB以上:必要ないが価格差が少なければOK
Q: 作成に失敗してしまった場合は?
A: 以下の対処法を試してください
- 別のUSBメモリで再試行
- USBポートを変更(USB 2.0ポートを試す)
- ウイルススキャンを実行
- 一時的にセキュリティソフトを無効化
- システムファイルの修復(sfc /scannow)
Q: 他のパソコンで作ったリカバリーディスクは使える?
A: 基本的には使用不可
- 同一機種・同一OS:使用できる場合が多い
- 異なる機種:ドライバの問題で使用困難
- 異なるOS:使用不可
- 推奨:各PCで個別に作成
使用に関するQ&A
Q: リカバリー後、元のデータは復旧できる?
A: 基本的に復旧困難
- 完全初期化:データは完全削除
- 個人ファイル保持:一部ファイルは残る場合あり
- 推奨:事前のバックアップが重要
Q: どのくらいの頻度で作り直すべき?
A: 以下のタイミングで更新推奨
- 大型Windows Update後
- 重要なソフトウェアインストール後
- 年1回程度の定期更新
- ハードウェア構成変更後
保管と管理
適切な保管方法
物理的な保護:
- 専用ケースに入れて保管
- 直射日光を避ける
- 湿度の低い場所
- 磁気の影響を受けない場所
複数のコピー:
- 2〜3個のコピーを作成
- 異なる場所に保管
- 職場と自宅に1つずつ
ラベル付けと記録
記録すべき情報:
- 作成日
- 対象PC(機種名・シリアル番号)
- OSバージョン
- 作成時のシステム状態
管理方法:
- 防水性のあるラベルを使用
- PCと一緒に保管場所をメモ
- 定期的な動作確認
まとめ
Windowsのリカバリーディスクについて、重要なポイントをまとめます:
リカバリーディスクの重要性
- 保険としての役割:普段は不要だが、トラブル時に威力を発揮
- 内蔵回復機能の限界補完:物理故障時でも復旧可能
- 確実な復旧手段:ウイルス感染や深刻な障害からの回復
作成のポイント
- Windows標準ツール:「回復ドライブ」作成ツールが最も簡単
- 必要な容量:16GB以上のUSBメモリ(32GB推奨)
- 作成時間:30分〜2時間程度(システムによる)
使用の要点
- BIOS設定:起動順序をUSB/DVD優先に変更
- 回復オプション:修復か初期化かを適切に選択
- データバックアップ:事前の準備が重要
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