Windowsの作業を自動化したり、システム設定を細かく変更したいときに便利なのが「PowerShell」です。
しかし、実際に使おうとすると「権限が足りません」「アクセスが拒否されました」といったエラーに悩まされることも少なくありません。
この記事では、Windows PowerShellで権限を変更する具体的な方法 をわかりやすく解説します。初心者の方でも安心して試せるように、一つひとつ丁寧に説明していきますので、ぜひ最後まで読んでください。
そもそもPowerShellとは?

PowerShellの基本
PowerShellは、Windowsに標準搭載されているコマンドラインツールです。コマンドを入力してWindowsを操作したり、スクリプト(自動処理のための命令)を実行できます。
システム管理者向けの強力なツールですが、最近は一般ユーザーが使う場面も増えてきました。特に、プログラミングや業務効率化に興味がある方にとって、とても便利なツールです。
PowerShellでできること
例えば、PowerShellを使えば以下のような操作ができます:
- フォルダやファイルを一括でコピー・移動
- アプリのインストール状況を一覧で取得
- ネットワークの設定を一気に変更
- システム情報の詳細確認
- 定期的なバックアップの自動化
権限が必要な理由
ただし、こうした操作の多くは「管理者権限」が必要です。これは、システムの安全性を保つためのWindowsの仕組みです。次の章では、その管理者権限について詳しく説明します。
管理者権限とは?なぜ必要なのか
権限の種類
Windowsには、大きく分けて2つの権限があります:
通常のユーザー権限
- 日常的な作業(ファイルの作成、アプリの使用など)
- 自分のユーザーフォルダ内での操作
- 基本的なシステム情報の確認
管理者権限(Administrator)
- システムに大きな影響を与える操作
- 他のユーザーのファイルへのアクセス
- システム設定の変更
- アプリのインストール・アンインストール
管理者権限が必要な場面
PowerShellで以下のような操作を行う場合、管理者権限が必要になります:
システム設定の変更
# 実行ポリシーの変更
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned
# サービスの開始・停止
Start-Service "サービス名"
Stop-Service "サービス名"
レジストリの編集
# レジストリキーの作成
New-Item -Path "HKLM:\SOFTWARE\Example"
ネットワーク設定
# IPアドレスの設定
New-NetIPAddress -InterfaceAlias "イーサネット" -IPAddress "192.168.1.100"
エラーメッセージの例
権限が不足している場合、以下のようなエラーが表示されます:
- 「アクセスが拒否されました」
- 「この操作を実行するには管理者権限が必要です」
- 「Set-ExecutionPolicy : このコンピューターでスクリプトの実行が無効になっているため…」
では、実際にどうやってPowerShellを管理者権限で起動し、権限を変更するのでしょうか。次の章で詳しく見ていきましょう。
PowerShellを管理者として起動する方法
基本的な起動方法
PowerShellを管理者権限で実行するには、以下の手順で行います。
Windows 10 / 11の場合
方法1:スタートメニューから
- スタートメニューを開く
- 「powershell」と入力
- 出てきた「Windows PowerShell」を右クリック
- 「管理者として実行」を選択
方法2:Windows + Xメニューから
Windows + X
キーを押す- 「Windows PowerShell(管理者)」を選択
コマンドから起動する方法
Win + R
を押して「ファイル名を指定して実行」ダイアログを開き、以下を入力:
powershell -Command "Start-Process powershell -Verb runAs"
起動確認
PowerShellが管理者権限で起動すると、ウィンドウのタイトルバーに「管理者: Windows PowerShell」と表示されます。これが表示されていれば、管理者権限での起動が成功しています。
セキュリティ警告について
管理者権限でアプリを起動する際、「ユーザーアカウント制御(UAC)」の警告が表示される場合があります。これは正常な動作なので、「はい」をクリックして続行してください。
PowerShellを管理者権限で起動する方法が分かりました。次は、PowerShell内部で権限(ポリシー)を変更する具体的な方法を紹介します。
PowerShellの実行ポリシーを変更する方法

実行ポリシーとは
PowerShellには「実行ポリシー」という仕組みがあり、スクリプトの実行を制限しています。初期状態では「Restricted(制限)」となっており、セキュリティを重視してスクリプトが実行できません。
現在の設定を確認
まず、現在の実行ポリシーを確認しましょう:
Get-ExecutionPolicy
おそらく「Restricted」と表示されるはずです。
実行ポリシーの種類
主な実行ポリシーは以下の通りです:
ポリシー | 説明 | セキュリティレベル |
---|---|---|
Restricted | すべてのスクリプト実行を禁止 | 最高 |
RemoteSigned | ローカルスクリプトは実行可、リモートスクリプトは署名が必要 | 高 |
Unrestricted | すべてのスクリプトを実行可能 | 低 |
Bypass | 制限なし、警告も表示しない | 最低 |
推奨設定:RemoteSignedに変更
セキュリティと利便性のバランスを考慮すると、「RemoteSigned」が推奨されます。以下のコマンドを管理者PowerShellで実行します:
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned
実行すると確認メッセージが表示されるので、「Y」(Yes)と入力してEnterを押します。
設定の確認
変更後、再度確認してみましょう:
Get-ExecutionPolicy
「RemoteSigned」と表示されれば設定完了です。
より詳細な設定
特定のスコープ(範囲)だけに設定を適用したい場合:
# 現在のユーザーのみに適用
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope CurrentUser
# 全ユーザーに適用(デフォルト)
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope LocalMachine
実際にスクリプトを実行してみる
設定が完了したら、簡単なスクリプトで動作確認してみましょう:
# 簡単なテストスクリプト
Write-Host "PowerShellスクリプトが正常に実行されました!"
Get-Date
ここまででPowerShellの権限(実行ポリシー)を変更する方法がわかりました。最後に、トラブルが起きたときの対処法を紹介します。
トラブルシューティング|よくある疑問と解決法
よくあるエラーと対処法
エラー1:「このスクリプトを実行できません」
症状 スクリプトを実行しようとすると、「このコンピューターでスクリプトの実行が無効になっているため、このスクリプトを実行できません」と表示される。
対処法
- 現在の実行ポリシーを確認:
Get-ExecutionPolicy
- 必要に応じて実行ポリシーを変更:
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned
エラー2:「アクセスが拒否されました」
症状 コマンドを実行すると「アクセスが拒否されました」と表示される。
対処法 PowerShellを管理者として再起動してください。ウィンドウのタイトルバーに「管理者」と表示されていることを確認します。
エラー3:「Set-ExecutionPolicy が認識されません」
症状 Set-ExecutionPolicy
コマンドが見つからないと表示される。
対処法 Windows PowerShellではなく、コマンドプロンプトで作業している可能性があります。PowerShellを起動し直してください。
設定を元に戻したい場合
セキュリティを重視して、実行ポリシーを初期状態に戻したい場合:
Set-ExecutionPolicy Restricted
一時的に実行ポリシーを変更
毎回設定を変更するのが面倒な場合、一時的にポリシーを無視してスクリプトを実行できます:
PowerShell -ExecutionPolicy Bypass -File "スクリプトファイル.ps1"
セキュリティに関する注意点
実行ポリシーを緩和する際は、以下の点に注意してください:
- 信頼できないソースからのスクリプトは実行しない
- 定期的にダウンロードフォルダをチェックする
- 作業後は適切なポリシーに戻す
- ウイルス対策ソフトを最新の状態に保つ
PowerShellのバージョン確認
トラブルの原因がバージョンの違いの場合もあります。バージョンを確認するには:
$PSVersionTable
Windows 10以降では、PowerShell 5.1以上が標準です。
まとめ
Windows PowerShellで権限を変更するには、以下の手順が重要です:
- 管理者として起動:スタートメニューで「powershell」を右クリック→「管理者として実行」
- 実行ポリシーの確認:
Get-ExecutionPolicy
で現在の設定を確認 - ポリシーの変更:
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned
で適切なレベルに設定 - 動作確認:簡単なスクリプトで正常に動作することを確認
これにより、PowerShellでスクリプトを自由に実行できる環境が整います。ただし、セキュリティ面には十分注意しながら利用してください。
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