「最近パソコンの動きがおかしい」
「原因不明のエラーが出る」
「起動が異常に遅くなった」
そんな経験はありませんか?
パソコンを長く使っていると、いつの間にかたくさんのソフトウェアがインストールされ、バックグラウンドで動作するプログラムが増えていきます。
これらが原因で、パソコンの動作が不安定になったり、謎のエラーが発生したりすることがあります。
そんなときに試してほしいのが**クリーンブート(クリーンスタートアップ)**です。
この方法を使えば、「一体何が原因なのか分からない」という状況から、問題の原因を特定できる可能性が高まります。
この記事では、クリーンブートの意味とメリット、そして具体的なやり方や注意点をわかりやすく解説します。
クリーンブートとは?

クリーンブートの基本概念
クリーンブート(Clean Boot)とは、Windowsを必要最小限のドライバとサービスだけで起動する診断方法です。
通常の起動との違い
- 通常起動: すべてのサービス、スタートアッププログラム、ドライバが動作
- クリーンブート: Microsoft純正のサービスとドライバのみで起動
これにより、サードパーティ製(他社製)のソフトウェアが原因でトラブルが起きているかどうかを判断できます。
セーフモードとの違い
多くの人が混同しがちですが、クリーンブートとセーフモードは全く異なる機能です。
項目 | クリーンブート | セーフモード |
---|---|---|
見た目 | 通常のWindows | 制限された表示 |
解像度 | 通常通り | 低解像度 |
ネットワーク | 利用可能 | 制限あり(セーフモード with ネットワーク除く) |
目的 | ソフトウェア競合の診断 | システム修復・緊急起動 |
使用場面 | 動作不安定の原因調査 | 起動できない時の復旧 |
クリーンブートの利点
- 普通の操作感覚でトラブルシューティングできる
- インターネットも通常通り使える
- ほとんどの作業が可能
クリーンブートが効果的な症状
よくあるトラブル例
パフォーマンス関連
- パソコンの起動が異常に遅い
- 動作全体が重くなった
- アプリの起動に時間がかかる
- フリーズや応答停止が頻発
エラー・不具合関連
- 原因不明のエラーメッセージ
- 特定のアプリが起動しない
- ブルースクリーン(BSOD)が発生
- 予期しないシャットダウン
アップデート後の問題
- Windows Update後の不具合
- ドライバ更新後の問題
- 新しいソフトインストール後のトラブル
実際のケーススタディ
ケース1: 起動時間の問題
- 症状:起動に5分以上かかるようになった
- 原因:写真管理ソフトのバックグラウンドスキャン
- 解決:クリーンブートで特定、該当ソフトの設定変更
ケース2: アプリクラッシュ
- 症状:Excelが頻繁にクラッシュする
- 原因:アンチウイルスソフトとの競合
- 解決:クリーンブートで問題なし→アンチウイルス設定調整
ケース3: ネットワーク接続問題
- 症状:WiFiに接続できない
- 原因:VPNソフトのサービス競合
- 解決:クリーンブートで接続可能→VPNソフト再設定
クリーンブートの詳細な実行手順
事前準備と注意事項
クリーンブートを実行する前に、以下の準備をしておきましょう。
事前準備
- 重要なデータのバックアップ
- 作業中の文書を保存
- 必要に応じてシステム復元ポイントを作成
- 管理者権限の確認
- 管理者アカウントでログイン
- パスワードを確認しておく
- 作業時間の確保
- 30分〜1時間程度の時間を確保
- 他の重要な作業は停止
注意事項
- 一部のセキュリティソフトが無効になる可能性
- 常駐ソフトの機能が一時的に使えなくなる
- ネットワークドライブが認識されない場合がある
ステップ1: システム構成ツール(msconfig)を開く
方法1: ファイル名を指定して実行
Windowsキー + R
を押すmsconfig
と入力OK
をクリック
方法2: スタートメニューから検索
Windowsキー
を押す- 「システム構成」と入力
- 検索結果から選択
方法3: 設定画面から
設定
→アプリ
→スタートアップ
- 「システム構成を開く」をクリック
ステップ2: サービスの設定
システム構成ツールが開いたら、以下の手順でサービスを設定します。
詳細手順
- 「サービス」タブをクリック
- 現在動作中のすべてのサービスが一覧表示される
- 「Microsoftのサービスをすべて隠す」にチェック
- これにより、Windows標準のサービスが非表示になる
- サードパーティ製のサービスのみが表示される
- 「すべて無効」をクリック
- 表示されているすべてのサービスが無効化される
- この時点では、まだ実際には無効化されていない
重要なポイント
- Microsoftのサービスは隠すだけで無効化しない
- サードパーティ製サービスのみを対象とする
- 後で簡単に元に戻せる
ステップ3: スタートアッププログラムの無効化
次に、起動時に自動実行されるプログラムを無効化します。
Windows 10/11での手順
- 「スタートアップ」タブをクリック
- 「タスクマネージャーを開く」をクリック
- タスクマネージャーのスタートアップタブが開く
- スタートアップ項目の無効化
- 各項目を右クリック
- 「無効化」を選択
- すべての項目を無効化(Windows標準以外)
スタートアップ項目の見極め方
- 無効化すべき項目: Adobe関連、Skype、Steam、各種ユーティリティ
- 残すべき項目: Windows Security、オーディオドライバ、グラフィックドライバ
- 判断に迷う項目: 「発行元」がMicrosoftかどうかで判断
ステップ4: 設定の適用と再起動
適用手順
- システム構成ツールで「適用」をクリック
- 「OK」をクリック
- 再起動の確認ダイアログで「再起動」を選択
再起動時の表示
- 「システム構成」のダイアログが表示される場合がある
- 「今後、このメッセージを表示しない」にチェック可能
- 一時的な診断なので、チェックしておくと便利
ステップ5: クリーンブート状態の確認
再起動後、クリーンブート状態で起動したかを確認します。
確認方法
- タスクマネージャーでプロセス確認
Ctrl + Shift + Esc
でタスクマネージャーを開く- 「プロセス」タブで動作中のアプリを確認
- 通常より少ないプロセス数になっているはず
- システムトレイの確認
- 画面右下のシステムトレイ(通知領域)
- 常駐ソフトのアイコンが表示されていないか確認
- パフォーマンスの体感
- 起動速度の変化
- 全体的な動作の軽快さ
クリーンブート状態でのトラブルシューティング

問題の切り分け方法
クリーンブート状態で問題が解決するかどうかで、原因を切り分けできます。
パターン1: 問題が解決した場合
原因: サードパーティ製ソフトウェアの競合 次のステップ: 原因となるソフトウェアの特定
段階的な復元方法
- サービスの半分ずつ有効化
- 無効化したサービスを半分だけ有効にして再起動
- 問題が再発するかチェック
- 再発しなければ残り半分、再発すれば有効化した半分をさらに半分に
- スタートアップの段階的復元
- 同様に、スタートアップ項目も段階的に有効化
- 問題が再発する項目を特定
- 個別の特定
- 最終的に問題の原因となるサービスまたはプログラムを特定
パターン2: 問題が継続する場合
原因: Windows本体、ドライバ、またはハードウェアの問題 次のステップ: より深い診断が必要
追加の診断方法
- Windows標準の診断ツール
- システムファイルチェッカー(sfc /scannow)
- メモリ診断(mdsched)
- ディスクチェック(chkdsk)
- ドライバの確認
- デバイスマネージャーでエラーの確認
- 最新ドライバの再インストール
- ハードウェア診断
- メモリテスト
- ハードディスク診断
- 温度監視
具体的なトラブル例と対処法
例1: 起動時間の問題
診断手順
- クリーンブートで起動時間を測定
- 通常起動との比較
- 大幅に改善した場合→スタートアッププログラムが原因
- あまり変わらない場合→システムまたはハードウェアが原因
よくある原因ソフト
- Adobe系ソフト(Creative Cloud)
- Officeソフト
- クラウド同期ソフト(Dropbox、OneDrive)
- セキュリティソフト
例2: アプリケーションクラッシュ
診断手順
- クリーンブート状態で問題のアプリを起動
- クラッシュしない場合→他のソフトとの競合
- クラッシュする場合→アプリ自体またはシステムの問題
競合しやすい組み合わせ
- 複数のセキュリティソフト
- 同種類のユーティリティソフト
- 古いバージョンと新しいバージョンの混在
例3: ネットワーク接続問題
診断手順
- クリーンブート状態でネットワーク接続テスト
- 接続できる場合→VPNソフトやファイアウォールが原因
- 接続できない場合→ドライバまたはハードウェアの問題
通常起動への復元方法
完全復元の手順
トラブルシューティングが完了したら、設定を元に戻します。
システム構成ツールでの復元
msconfig
を再実行- 「全般」タブで「通常スタートアップ」を選択
- 「適用」→「OK」→再起動
または、個別復元
- 「サービス」タブですべてのサービスを有効化
- タスクマネージャーでスタートアップ項目を有効化
- 再起動
段階的復元と監視
原因が特定できた場合は、段階的に復元することをおすすめします。
推奨復元順序
- 重要なセキュリティソフト
- ウイルス対策ソフト
- ファイアウォール
- VPN(必要な場合)
- 日常使用するソフト
- ブラウザの拡張機能
- クラウド同期ソフト
- 通信系ソフト
- 補助的なソフト
- ユーティリティソフト
- ゲームランチャー
- 開発ツール
監視ポイント
- 各段階で数日間使用してみる
- パフォーマンスの変化を観察
- 問題が再発した場合は最後に有効化した項目を確認
高度なトラブルシューティング
システムファイルの整合性チェック
クリーンブートでも問題が解決しない場合、システムファイルの破損が疑われます。
SFCスキャンの実行
- コマンドプロンプトを管理者として実行
sfc /scannow
と入力してEnter- スキャン完了まで待機(30分〜1時間)
- 結果を確認
DISMツールの実行
DISM /Online /Cleanup-Image /CheckHealth
DISM /Online /Cleanup-Image /ScanHealth
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
イベントログの確認
より詳細な原因分析のため、Windowsのイベントログを確認します。
イベントビューアーの起動
Windowsキー + R
eventvwr.msc
と入力- 「Windowsログ」→「システム」「アプリケーション」を確認
着目すべきエラー
- 赤いエラーアイコン
- 黄色い警告アイコン
- 時刻が問題発生時期と一致するもの
パフォーマンスモニターの活用
リソース使用状況の監視
- タスクマネージャーの「パフォーマンス」タブ
- CPU、メモリ、ディスク使用率の確認
- 異常に高い使用率を示すプロセスの特定
リソースモニターの詳細分析
resmon
コマンドで起動- プロセス別の詳細なリソース使用状況
- ファイルハンドル、ネットワーク接続の確認
予防策と定期メンテナンス

定期的なシステムメンテナンス
月次メンテナンス
- Windows Updateの適用
- ディスククリーンアップの実行
- デフラグメンテーション(HDDの場合)
- ウイルススキャンの実行
四半期メンテナンス
- 不要なソフトウェアのアンインストール
- スタートアップ項目の見直し
- システムファイルチェック
- レジストリクリーナーの実行(慎重に)
ソフトウェア管理のベストプラクティス
インストール時の注意点
- 信頼できるソースからのみダウンロード
- インストール時のオプション項目を必ず確認
- 不要な追加ソフトのインストールを避ける
- 定期的に使用状況を見直し
アンインストール時の注意点
- Windowsの「プログラムと機能」から正式にアンインストール
- レジストリエントリの手動削除は避ける
- 専用のアンインストーラーがある場合はそれを使用
システム復元ポイントの活用
復元ポイントの作成タイミング
- 新しいソフトウェアをインストールする前
- システム設定を大幅に変更する前
- ドライバを更新する前
- 定期的な自動作成(週1回程度)
復元ポイントの管理
- 「システムのプロパティ」→「システムの保護」
- 適切なドライブで復元ポイントを有効化
- ディスク容量の設定(5-10%程度)
- 手動作成の方法を覚えておく
よくある質問とトラブル対処
Q: クリーンブートができない場合
症状: msconfigが開かない、または設定できない
原因と対処法
- 管理者権限の不足
- 管理者アカウントでログイン
- 「管理者として実行」で起動
- システムファイルの破損
- sfc /scannowを実行
- システム修復を検討
- マルウェア感染
- ウイルススキャンを実行
- セーフモードでの診断
Q: クリーンブート後に重要な機能が使えない
症状: WiFi接続できない、音が出ないなど
対処法
- 必要最小限のサービスを有効化
- ネットワーク関連: WLAN AutoConfig
- 音声関連: Windows Audio
- 段階的な復元
- 一つずつサービスを有効化
- 機能確認後に次のサービス
Q: クリーンブートを忘れて放置してしまった
症状: 設定を戻すのを忘れて日常使用している
対処法
- パフォーマンスに問題がなければ
- 必要なソフトのみ段階的に復活
- より軽快なシステムとして活用
- 機能不足を感じる場合
- 必要な機能から優先的に復元
- 不要なソフトはそのまま無効のままに
Q: 原因特定後の根本解決
特定された原因への対処
ソフトウェア競合の場合
- 競合するソフトの設定変更
- 代替ソフトウェアへの乗り換え
- 使用方法の見直し
リソース不足の場合
- メモリ増設の検討
- SSDへの換装
- 不要ファイルの削除
ドライバ問題の場合
- 最新ドライバの適用
- 互換性のあるバージョンへのダウングレード
- ハードウェアベンダーへの問い合わせ
まとめ
Windowsのクリーンブートは、パソコンのトラブルシューティングにおいて非常に強力なツールです。
クリーンブートの効果
- 原因の特定: ソフトウェア競合かシステム問題かを切り分け
- 安全な診断: 通常の操作感覚で問題を調査
- 根本解決: 表面的な対処ではなく、原因からの解決
実行時のポイント
- 事前準備を怠らない: バックアップと時間の確保
- 段階的なアプローチ: 一度にすべてを変更せず、順序立てて実行
- 記録を残す: 変更内容と結果を記録して後で参照
継続的な活用
- 定期的な診断: 月1回程度のクリーンブート実行
- 新環境での確認: 新しいソフトインストール後の動作確認
- 予防的メンテナンス: 問題が起きる前の早期発見
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