「インターネットがつながらない」
「社内ネットワークにだけ接続できない」
「急にネットが遅くなった気がする」
こんなネットワークのトラブルに遭遇したとき、役立つのがルーティングテーブルの確認です。
Windowsには、どのネットワーク宛の通信をどの経路(ゲートウェイ)に送るかを記録したルーティングテーブルという仕組みがあります。
これを見れば、通信経路の問題を自分で発見できるんです。
「ルーティングって何?難しそう…」と思うかもしれませんが、基本的な確認方法はとても簡単です。コマンドをひとつ覚えるだけで、ネットワークの問題を自分で調べられるようになります。
この記事では、初心者の方でもわかるように、Windowsでルーティングを確認する基本のコマンドから、結果の見方、トラブル時のチェックポイントまで詳しく解説します。
そもそもルーティングとは?

ネットワークの道しるべ
ルーティングとは、パソコンが「どのネットワークへの通信を、どの経路(ルーター・ゲートウェイ)に送るか」を決める仕組みです。
普段は意識しませんが、パソコンは送信先に応じて自動的に経路を選択しています:
家庭内ネットワークの例
- 同じWi-Fi内のプリンター → 直接接続
- 隣の部屋のパソコン → ルーターを経由
- インターネットのウェブサイト → プロバイダーのルーターへ
オフィスネットワークの例
- 社内サーバー → 社内ネットワーク経由
- 他の支社のサーバー → 専用回線経由
- 外部のウェブサイト → インターネット回線経由
ルーティングテーブルとは
この経路情報をまとめた一覧表がルーティングテーブルです。
パソコンは送信先のIPアドレスを見て、このテーブルを参照し、最適な経路を決定します。
よくある疑問:「自動で決まるなら確認する必要ないのでは?」
通常は自動で正しく動作しますが、以下の場合に手動確認が重要になります:
- ネットワーク設定を変更した後
- VPNや複数のネットワークを使用している
- 通信トラブルの原因を調べたい時
- セキュリティ上の設定を確認したい時
つまり、ルーティングは「ネットワークの道しるべ」のような存在なのです。
次は、実際にWindowsでルーティングを確認する方法を見てみましょう。
Windowsでルーティングを確認するコマンド

基本のroute printコマンド
Windowsでルーティングを確認する最も基本的な方法は、コマンドプロンプトでroute printコマンドを実行することです。
実行手順(詳細版)
手順1:コマンドプロンプトを開く
複数の方法がありますが、最も簡単な方法をご紹介します:
方法1:ファイル名を指定して実行
- キーボードでWindowsキー + Rを同時に押す
- 「ファイル名を指定して実行」ダイアログが開く
- **「cmd」**と入力してEnterキーを押す
方法2:スタートメニューから
- スタートメニューをクリック
- 「cmd」または「コマンドプロンプト」と入力
- 表示された「コマンドプロンプト」をクリック
手順2:コマンドを実行
- 黒い画面(コマンドプロンプト)が開く
- 以下のコマンドを入力:
route print
- Enterキーを押す
実行結果の例
コマンドを実行すると、以下のような画面が表示されます:
===========================================================================
インターフェイス一覧
3...aa-bb-cc-dd-ee-ff ......Intel(R) Wi-Fi 6 AX200 160MHz
1...........................Software Loopback Interface 1
===========================================================================
IPv4 ルート テーブル
===========================================================================
アクティブ ルート:
ネットワーク宛先 ネットマスク ゲートウェイ インターフェイス メトリック
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 192.168.1.100 25
127.0.0.0 255.0.0.0 接続中 127.0.0.1 331
192.168.1.0 255.255.255.0 接続中 192.168.1.100 281
192.168.1.100 255.255.255.255 接続中 192.168.1.100 281
最初は難しく見えますが、ポイントを押さえれば読み方は簡単です。
管理者権限での実行
より詳細な情報を確認したい場合は、管理者権限でコマンドプロンプトを開きます:
- スタートメニューで「cmd」と入力
- 「コマンドプロンプト」を右クリック
- **「管理者として実行」**を選択
- route printコマンドを実行
Mac やLinux との違い
Windowsの特徴:
- route printコマンドを使用
- GUIからでもある程度確認可能
- インターフェイス一覧も同時に表示
他のOSとの比較:
- Mac/Linux:「route -n」や「ip route」コマンド
- 基本的な考え方は同じだが、表示形式が異なる
ルーティングテーブルの見方を詳しく解説

各項目の意味
ルーティングテーブルには以下の情報が含まれています:
項目 | 意味 | 例 |
---|---|---|
ネットワーク宛先 | 送信先のネットワークアドレス | 192.168.1.0、0.0.0.0 |
ネットマスク | そのルートが適用される範囲 | 255.255.255.0 |
ゲートウェイ | その宛先に行くときに使うルーターのIP | 192.168.1.1 |
インターフェイス | 自分のどのIPアドレス(ネットワークカード)から送るか | 192.168.1.100 |
メトリック | 優先度(数字が小さいほど優先) | 1、25、281 |
重要なエントリーの解説
デフォルトルート(0.0.0.0 / 0.0.0.0)
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 192.168.1.100 25
- 最も重要なエントリー
- 「どこにも該当しない宛先はここに送る」という意味
- 通常はインターネット接続用のルーター(家庭用WiFiルーターなど)
- ほとんどのインターネット通信はここを通る
ローカルネットワークルート
192.168.1.0 255.255.255.0 接続中 192.168.1.100 281
- 同じネットワーク内の通信用
- ゲートウェイが「接続中」は直接通信できることを意味
- 家庭内やオフィス内の他のパソコンとの通信
ローカルホストルート
127.0.0.0 255.0.0.0 接続中 127.0.0.1 331
- 自分自身への通信用
- テスト用途やローカルサーバーとの通信
メトリック(優先度)の理解
メトリックとは? 複数のルートが存在する場合の優先度を示す数値です。
数値の意味:
- 小さい数字:高優先度(優先的に使用される)
- 大きい数字:低優先度(他に選択肢がない場合のみ使用)
実例:
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 192.168.1.100 25
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.10.1 192.168.10.100 50
この場合、192.168.1.1の方が優先して使用されます(メトリック25 < 50)。
よくあるパターンの読み方
家庭用ネットワークの典型例:
- デフォルトゲートウェイ:192.168.1.1(WiFiルーター)
- ローカルネットワーク:192.168.1.0/24
- 自分のIP:192.168.1.100
オフィスネットワークの例:
- デフォルトゲートウェイ:10.0.0.1(社内ルーター)
- 社内ネットワーク:10.0.0.0/8
- 特定サーバー用ルート:172.16.1.0/24
実際のトラブル時チェックポイント

チェックポイント1:デフォルトゲートウェイの確認
**症状:**インターネット全般につながらない
確認すべき点:
0.0.0.0 0.0.0.0 ???
正常な例:
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 192.168.1.100 25
問題がある例:
- デフォルトルートが存在しない
- ゲートウェイIPが間違っている(例:192.168.1.999など存在しないIP)
- メトリックが異常に高い値
チェックポイント2:特定ネットワークへのルート
**症状:**社内サーバーや特定のネットワークにだけ接続できない
確認方法:
- 接続できない宛先のIPアドレスを確認(例:192.168.10.5)
- ルーティングテーブルで該当するエントリーを探す
- ゲートウェイが正しいか確認
例: 社内サーバー(192.168.10.5)に接続できない場合:
192.168.10.0 255.255.255.0 192.168.1.1 192.168.1.100 1
このルートが存在し、ゲートウェイ(192.168.1.1)が正しいか確認
チェックポイント3:複数ネットワーク環境の優先度
**症状:**VPNと通常回線を併用していて、意図しない経路で通信している
確認すべき点:
- 同じ宛先に対する複数のルートの存在
- メトリック値による優先度設定
例:
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 192.168.1.100 25 (通常回線)
0.0.0.0 0.0.0.0 10.0.0.1 10.0.0.100 1 (VPN)
この場合、VPN経由が優先される(メトリック1 < 25)
チェックポイント4:インターフェイスの確認
**症状:**ネットワークカードが複数ある環境での通信問題
確認方法:
- 使用したいネットワークカードのIPアドレスを確認
- 該当するルートのインターフェイス列を確認
- 意図したインターフェイスが使用されているか確認
実践的なトラブル診断手順
手順1:基本情報の収集
- route printで現在のルーティングテーブルを確認
- ipconfig /allで現在のネットワーク設定を確認
- 問題の症状を具体的に把握
手順2:問題の特定
- 特定のサイトなのか、インターネット全般なのか
- 社内ネットワークの問題なのか、外部接続の問題なのか
- 最近のネットワーク設定変更の有無
手順3:ルートの検証
- 該当する宛先へのルートが存在するか
- ゲートウェイのIPアドレスが正しいか
- 優先度(メトリック)が適切か
その他の便利なネットワーク確認コマンド

tracert コマンド
実際の通信経路を調べるコマンドです:
tracert 8.8.8.8
何がわかるか:
- パケットが実際に通っている経路
- どこで通信が止まっているか
- 各ポイントでの応答時間
ping コマンド
特定の宛先への到達性を確認:
ping 192.168.1.1
何がわかるか:
- 宛先に到達できるかどうか
- 応答時間(遅延)
- パケットロス率
ipconfig コマンド
現在のネットワーク設定を確認:
ipconfig /all
何がわかるか:
- 現在のIPアドレス設定
- デフォルトゲートウェイ
- DNSサーバー設定
- ネットワークカードの詳細情報
arp コマンド
同一セグメント内の機器のMACアドレスを確認:
arp -a
何がわかるか:
- 直接通信している機器のMACアドレス
- ARPテーブルの内容
netstat コマンド
現在の通信状況を確認:
netstat -rn
何がわかるか:
- ルーティングテーブル(route printと同様)
- アクティブな通信セッション
よくある質問と回答

Q1:ルーティングテーブルに変な項目があるのですが?
**A:**まず確認すべき点:
- VPNソフトが作成した一時的なルート
- 仮想マシンソフトが作成したルート
- 過去に手動で追加したルート
対処法:
- 不要なソフトをアンインストール
- 手動で追加したルートの削除
- 必要に応じてネットワーク設定のリセット
Q2:デフォルトゲートウェイが表示されません
**A:**考えられる原因:
- ネットワークケーブルが抜けている
- WiFi接続が切れている
- DHCPサーバーからの設定取得に失敗
対処法:
- 物理的な接続を確認
- WiFi接続を再確認
- ipconfig /renew でIPアドレス更新
Q3:メトリック値はどうやって決まるの?
**A:**メトリック値の決定要因:
- 自動設定:Windowsがネットワークカードの種類や速度から自動算出
- 手動設定:ネットワーク設定で手動指定
- 接続種別:有線LAN < WiFi < VPN の順で値が大きくなりがち
Q4:ルートを追加・削除したいのですが?
**A:**基本的なコマンド:
# ルート追加
route add 192.168.10.0 mask 255.255.255.0 192.168.1.1
# ルート削除
route delete 192.168.10.0
注意点:
- 管理者権限が必要
- 設定の変更は慎重に
- 必要に応じて永続化オプション(-p)を使用
Q5:複数のネットワークカードがある場合の注意点は?
**A:**確認すべき点:
- どのカードがメインで使用されているか
- 各カードのメトリック設定
- 不要なカードの無効化
対処法:
- ネットワーク設定でアダプターの優先順位を調整
- 使用しないアダプターを無効化
- 必要に応じてメトリック値を手動調整
まとめ
今回は、Windowsでルーティングを確認する方法について、基本から実践的な活用まで詳しく解説しました。重要なポイントをまとめると:
基本操作をマスター
- route printコマンドでルーティングテーブルを表示
- コマンドプロンプトの開き方と基本操作
- 管理者権限での実行方法
ルーティングテーブルの読み方
- 5つの項目(宛先、マスク、ゲートウェイ、インターフェイス、メトリック)の意味
- デフォルトルート(0.0.0.0/0.0.0.0)の重要性
- メトリック値による優先度の仕組み
トラブル診断のポイント
- デフォルトゲートウェイの存在と正確性
- 特定ネットワークへのルート設定
- 複数ネットワーク環境での優先度設定
- 段階的な診断手順
関連コマンドの活用
- tracertで実際の経路確認
- pingで到達性テスト
- ipconfigで設定確認
- 総合的な診断アプローチ
ルーティングの確認は、ネットワークトラブルの解決において非常に重要なスキルです。
最初は複雑に感じるかもしれませんが、基本的な読み方を覚えれば、多くの問題を自分で解決できるようになります。
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