Windows 10では、タスクバーを画面の上下だけでなく左右(縦)にも配置できました。
「タスクバーを左に置いて、縦長でたくさんアイコンを並べたい」という人も多かったはずです。
しかしWindows 11にアップデートしたら 「あれ?タスクバーを画面の左や右に移動できない…」 と戸惑った人も多いのではないでしょうか。
そこでよく出てくるのが、「レジストリを編集して縦に配置する裏技」。
この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します:
- Windows 11でタスクバーを縦にするレジストリ操作の内容
- 実際に可能なのか、成功率はどれくらいか
- やる場合の注意点とリスク
- 安全な代替手段
Windows 11のタスクバー仕様変更
Windows 10からの大きな変化
Windows 10でできたこと:
- タスクバーを画面の上、下、左、右の4箇所に配置可能
- 設定画面から簡単に位置変更
- 小さいアイコン表示やラベル表示の選択
- タスクバーボタンの結合設定
Windows 11で変わったこと:
- タスクバーの位置は 画面の下固定
- 設定画面(個人用設定 → タスクバー)でも位置変更のオプションがない
- スタートボタンが中央寄りになった(左寄せに変更可能)
- 一部の細かいカスタマイズ機能が削除
なぜMicrosoftは縦配置を廃止したのか?
公式の理由:
- デザインの統一とシンプル化
- タブレットモードとの統合
- 新しいUIデザイン言語(Fluent Design)への対応
実際の背景:
- タスクバーのコードを完全に書き直し
- 縦配置での不具合やレイアウト崩れが多かった
- ユーザー調査で縦配置の利用者が少数だった
ユーザーからの反響
Windows 11リリース後、縦配置廃止について多くの批判が寄せられました:
- 「ワイドモニターで使いにくい」
- 「なぜ便利な機能を削除するのか」
しかし、Microsoft は現在のところ公式に縦配置を復活させる予定はないと発表しています。
レジストリをいじれば縦にできるって本当?
StuckRects3 レジストリキーの編集
一部のサイトや動画では、以下のレジストリを編集してタスクバーを縦に戻す方法が紹介されています:
編集対象のレジストリキー:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\StuckRects3
編集内容:
- 「Settings」というバイナリ値を編集
- 特定のバイト(通常は8バイト目)を以下のように変更:
00
:下(デフォルト)01
:左02
:上03
:右
実際の編集手順(参考情報)
警告:以下の手順は参考情報です。実行は自己責任で行ってください。
- レジストリエディターを開く
- Windows + R で「regedit」と入力
- 管理者権限で実行
- 該当キーに移動
- 上記のパスに移動
- 「Settings」バイナリ値をダブルクリック
- 値を編集
- 8バイト目(通常は「03」の位置)を変更
- 「01」(左)または「03」(右)に設定
- 再起動
- レジストリエディターを閉じる
- パソコンを再起動
現在の成功率と問題点
Windows 11の各バージョンでの状況:
初期ビルド(21H2):
- 一部のビルドで動作する場合があった
- 不安定で、しばしばタスクバーが破損
22H2以降(現在):
- ほとんどの場合で反映されない
- 設定しても下部に戻ってしまう
- Windows Updateで即座に元に戻る
23H2(最新):
- レジストリ変更は完全に無視される
- システムが自動的に正しい値に修正
実際にやる場合のリスク
軽微なリスク
タスクバーの表示不具合:
- タスクバーが真っ黒になる
- スタートボタンが反応しない
- 通知領域が正しく表示されない
対処法:
- Explorer.exe の再起動
- レジストリ値の元に戻し
- システムの再起動
重大なリスク
システム全体の不安定化:
- ログイン後にデスクトップが表示されない
- ファイルエクスプローラーが起動しない
- セーフモードでの起動が必要になる
修復困難な問題:
- レジストリの破損によるシステム起動不能
- Windows の再インストールが必要
- データの紛失リスク
安全対策(必須)
もしどうしても試したい場合は、以下を徹底してください:
事前準備:
- 完全なシステムバックアップを作成
- レジストリ全体のエクスポート
- システムの復元ポイントを作成
- 重要なデータを外部にバックアップ
作業時の注意:
- 編集は最小限に留める
- 一度に複数の値を変更しない
- 編集後は即座にエクスポートで確認
事後対応:
- 問題が発生したら即座に元に戻す
- 復旧できない場合は復元ポイントを使用
なぜレジストリ編集が機能しないのか?
Windows 11の新しいタスクバーアーキテクチャ
根本的な変更:
- タスクバーのコードが完全に書き直された
- 位置情報を管理する仕組みが変更
- レジストリではなく、別の方法で位置を制御
技術的な詳細:
explorer.exe
ではなく、新しいプロセスがタスクバーを管理- WinUI 3 ベースの新しいインターフェース
- 従来のWin32 APIとの互換性が限定的
Microsoft の意図的な制限
設計思想の変更:
- 「Simplicity over Customization」(カスタマイズより簡潔さを重視)
- タブレットとデスクトップの統一体験
- サポートコストの削減
技術的な制限:
- 新しいUIフレームワークでの制約
- 縦配置でのレイアウト計算の複雑さ
- 異なる画面サイズでの表示問題
縦配置を使いたいなら?代替手段
1. Windows 10を継続使用
メリット:
- 公式にサポートされた安定した縦配置
- すべての機能が正常に動作
- アップデートで設定が消える心配がない
デメリット:
- Windows 11の新機能が使えない
- セキュリティアップデートが2025年10月で終了予定
- 新しいソフトウェアとの互換性問題の可能性
検討すべき人:
- タスクバーの縦配置が業務上必須
- Windows 10で十分な機能が揃っている
- アップグレードのメリットが少ない
2. サードパーティ製ツールの利用
主要なツール:
ExplorerPatcher
- 無料のオープンソースツール
- Windows 10スタイルのタスクバーを復活
- 縦配置を含む多くのカスタマイズが可能
StartAllBack
- 有料ツール(約500円)
- より安定した動作
- 幅広いカスタマイズオプション
Start11
- Stardock社製の有料ツール
- スタートメニューのカスタマイズが中心
- 一部タスクバー機能も含む
3. 仮想デスクトップの活用
縦配置の代替案:
- 複数の仮想デスクトップを作成
- 用途別にアプリを分散配置
- Windows + Tab でデスクトップ間を切り替え
具体的な活用例:
- デスクトップ1:メイン作業用
- デスクトップ2:ブラウザとメール
- デスクトップ3:エンターテイメント
4. ランチャーソフトの利用
おすすめツール:
PowerToys Run
- Microsoft公式ツール
- Alt + Space でクイック起動
- タスクバーの代替として活用可能
Wox
- オープンソースのランチャー
- 高いカスタマイズ性
- プラグインで機能拡張
Alfred風のツール
- Listary
- Everything(ファイル検索特化)
将来の展望
Microsoft の公式見解
現在の状況:
- 縦配置復活の計画は公式に発表されていない
- ユーザーフィードバックは継続的に収集中
- 「将来的な検討課題」として位置づけ
Insider Preview での動向:
- 縦配置に関する実験的機能は確認されていない
- タスクバーの基本構造に大きな変更は少ない
トラブルシューティング
レジストリ編集後の問題と対処法
タスクバーが表示されない場合:
- Ctrl + Shift + Esc でタスクマネージャーを開く
- 「ファイル」→「新しいタスクの実行」
explorer.exe
と入力して実行
スタートメニューが動作しない場合:
- PowerShell を管理者権限で起動
- 以下のコマンドを実行:
Get-AppxPackage Microsoft.Windows.StartMenuExperienceHost | Foreach {Add-AppxPackage -DisableDevelopmentMode -Register "$($_.InstallLocation)\AppXManifest.xml"}
完全に復旧できない場合:
- セーフモードで起動
- システムの復元を実行
- 最悪の場合はWindows の修復インストール
予防と対策
定期的なバックアップ:
- システムの復元ポイントを週1回作成
- レジストリの完全バックアップを月1回実行
- 重要データは外部ストレージに保存
監視とメンテナンス:
- Windows Update後は設定を確認
- サードパーティツールの更新をチェック
- 不具合が発生したら即座に対処
まとめ
現状のまとめ
Windows 11でのタスクバー縦配置について:
- 公式サポートなし:Microsoft は意図的に機能を削除
- レジストリ編集は非推奨:現在のビルドでは正常に動作せず、システムを不安定にするリスクが高い
- 代替手段あり:サードパーティツールや Windows 10の継続使用で対応可能
推奨する対応策
安全性を重視する場合:
- Windows 10を継続使用
- 公式ツール(PowerToys など)で作業効率を向上
- 仮想デスクトップを活用して画面を整理
機能性を重視する場合:
- 信頼できるサードパーティツール(ExplorerPatcher、StartAllBack)を利用
- 定期的なバックアップを前提とした運用
- 問題発生時の復旧手順を事前に準備
レジストリ編集による縦配置は現在では推奨できません。安全で確実な代替手段を選択し、快適なWindows 11環境を構築することをおすすめします。
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