「プリンターで印刷したいのにWi-Fiルーターがない…」そんな経験はありませんか?
実は、WiFi Direct(ワイファイダイレクト)という技術を使えば、ルーターなしでもスマホやパソコンをプリンターに直接つなげるんです。
今回は、意外と身近にあるのに知られていないWiFi Directについて、わかりやすく解説していきます。
WiFi Directってどんな技術?

WiFi Directは、Wi-Fiルーターを使わずに機器同士を直接つなげる無線通信の規格のこと。2010年にWi-Fi Alliance(ワイファイ アライアンス)という団体が作った技術です。
通常のWi-Fiでは、スマホやパソコンが「Wi-Fiルーター」という中継機を経由してつながります。でもWiFi Directなら、機器と機器が直接会話するようにつながれます。
まるでトランシーバーのような感覚ですね。
WiFi Directでできること
WiFi Directを使うと、こんなことができます:
プリンターに直接印刷
スマホやパソコンからプリンターに直接つないで、写真や書類を印刷できます。Wi-Fi環境がないオフィスの片隅にあるプリンターでも大丈夫。
テレビに写真や動画を映す
スマホに保存した思い出の写真を、リビングのテレビの大画面で家族に見せられます。旅行の動画を共有するときにも便利です。
カメラからスマホへ写真を転送
デジタルカメラで撮った写真を、その場でスマホに送れます。登山中やアウトドアなど、電波のない場所でも使えるのがポイント。
ゲームの対戦やファイル共有
友達とマルチプレイゲームをしたり、大きなファイルを素早く送り合ったりすることもできます。
WiFi DirectとBluetoothの違いは?
「あれ?それってBluetoothと似てない?」と思った方、鋭いですね。
確かにWiFi DirectとBluetoothは、どちらも機器同士を直接つなぐ技術という点で共通しています。でも、実は大きな違いがあります。
通信速度が圧倒的に速い
WiFi Directの通信速度は、Bluetoothの約10倍も速いんです。
- WiFi Direct:最大250Mbps程度
- Bluetooth:最大25Mbps程度
大容量の写真や動画を送るときは、WiFi Directのほうが断然速く終わります。
通信距離が長い
Bluetoothの通信距離は約10メートルほど。対してWiFi Directは、屋内なら50〜100メートル、屋外の障害物がない場所なら200メートル以上届くこともあります。
片方だけ対応していればOK
Bluetoothで接続するには、両方の機器がBluetoothに対応している必要があります。
でもWiFi Directは、片方の機器だけが対応していれば接続できます。もう一方は普通のWi-Fi機能があれば大丈夫なんです。これってすごく便利ですよね。
WiFi DirectとWi-Fiの違いは?
「WiFi」という名前がついているので混同しやすいのですが、WiFi DirectとWi-Fiは用途が全く違います。
Wi-Fiはインターネット接続用
普通のWi-Fiは、インターネットに接続するための技術です。スマホやパソコンをWi-Fiルーターにつないで、ウェブサイトを見たり動画を見たりします。
WiFi Directは機器間通信用
一方、WiFi Directは機器同士でデータをやり取りするための技術。
インターネットには接続できません。
「WiFi Direct対応」と書いてあっても、それだけではネットサーフィンはできないので注意が必要です。
ただしWiFi Directで通信しながら、同時に通常のWi-Fiでインターネット接続することは可能です。
WiFi Directの使い方
実際にWiFi Directを使う方法は、とってもシンプル。基本的には普通のWi-Fi接続とほぼ同じ手順です。
接続の基本手順
ステップ1:機器側でWiFi Directをオンにする
プリンターやテレビなど、接続したい機器の設定画面からWiFi Directモードを起動します。
ステップ2:SSIDとパスワードを確認
機器の画面に「DIRECT-」で始まるネットワーク名(SSID)とパスワードが表示されます。
ステップ3:スマホやパソコンから接続
お使いのスマホやパソコンのWi-Fi設定を開いて、表示されたSSIDを選択。パスワードを入力すれば接続完了です。
もっと簡単な接続方法も
最近の機器では、もっと手軽な方法も用意されています:
- WPSボタン:ボタンを押すだけで自動接続
- QRコード:コードをスマホでスキャンして接続
- PIN入力:数字のコードを入力して接続
機器によって使える方法が違うので、説明書をチェックしてみてください。
WiFi Directのメリット
WiFi Directには、こんなメリットがあります。
ルーターがいらない
一番のメリットは、Wi-Fiルーターが不要なこと。電波の届かない山奥や、Wi-Fi環境のない部屋でも使えます。
出張先のホテルや、友達の家でプリンターを借りるときにも便利ですね。
セキュリティがしっかりしている
WiFi Directは、Wi-Fiと同じWPA2という暗号化方式を使っています。これはかなり強力なセキュリティなので、通信内容を他の人に盗み見られる心配が少ないです。
Bluetoothよりもセキュリティレベルが高いと言われています。
複数の機器を同時につなげる
WiFi Directでは、複数の機器を同時に接続することもできます(実際の通信は1対1ですが)。
たとえばプリンター1台に、スマホもパソコンも登録しておくことが可能です。
通信が安定している
WiFi Directは2.4GHz帯と5GHz帯(一部の機器では60GHz帯も)を使って通信します。電波干渉が少ない5GHz帯を使えば、安定した高速通信が期待できます。
WiFi Directのデメリットや注意点

便利なWiFi Directですが、いくつか知っておくべき注意点もあります。
インターネットには接続できない
何度も言いますが、WiFi Directだけではネットにつながりません。ウェブサイトを見たりメールを送ったりするには、別途通常のWi-Fi接続やモバイル通信が必要です。
接続の相性問題がある
WiFi Direct対応と書いてあっても、メーカーや機種によって接続できないことがあります。特に古い機器と新しい機器を組み合わせるときは注意が必要です。
購入前に対応状況を確認しておくと安心ですね。
バッテリーの消費が早くなる
WiFi Directを使っている間は、通常のWi-Fi接続と同じくらい電力を消費します。スマホのバッテリーが減りやすくなるので、長時間使うときは充電しながら使うのがおすすめ。
セキュリティ設定に注意
WPS(簡易接続機能)のPINコード方式は、セキュリティが甘い場合があります。可能ならボタン方式やQRコード方式を選ぶといいでしょう。
WiFi Direct対応機器の見分け方
「自分の機器がWiFi Directに対応しているか知りたい」という方も多いはず。
残念ながら、WiFi Directにはわかりやすいロゴマークがありません。対応しているかどうかは、製品の公式サイトや取扱説明書で確認する必要があります。
対応機器の例
WiFi Directに対応している機器には、こんなものがあります:
スマートフォン
Android 4.0以降のスマホの多くが対応。iPhoneの場合、iOS 7以降で「AirDrop」や「AirPlay」という名前で同じような機能が使えます。
プリンター
エプソン、キヤノン、ブラザーなどの多くの機種が対応しています。「Wi-Fi Direct対応」や「ダイレクト接続対応」と表記されていることが多いです。
テレビ
ソニーのブラビア、パナソニックのビエラなど、多くのスマートテレビが対応。「Miracast対応」と書かれているテレビは、WiFi Directの技術を使っています。
その他
デジタルカメラ、ゲーム機、タブレット、Chromebookなど、幅広い機器で使えます。
WiFi Directが使われている意外な場面
実は、WiFi Directの技術は私たちが意識していないところでも使われています。
Rokuのリモコン
アメリカで人気のストリーミングプレーヤー「Roku」のリモコンは、WiFi Directで本体と通信しています。特別な設定なしで、リモコンと本体が自動的につながる仕組みです。
Miracast(画面ミラーリング)
スマホやパソコンの画面をテレビに映す「Miracast(ミラキャスト)」という機能も、WiFi Directの技術がベースになっています。
ワイヤレスマウスやキーボード
一部のワイヤレスマウスやキーボードも、BluetoothではなくWiFi Directで接続するものがあります。高音質なワイヤレスヘッドセットにも使われています。
よくある質問
Q: WiFi DirectとWPSは同じもの?
違います。WPS(Wi-Fi Protected Setup)は、Wi-Fi機器を簡単に接続するための仕組みの一つ。WiFi Directでも接続方法の一つとしてWPSが使われることがありますが、WiFi Direct自体はもっと広い概念です。
Q: WiFi Directは無料で使える?
はい、追加料金は一切かかりません。対応機器さえあれば、誰でも自由に使えます。インターネット回線の契約も不要です。
Q: WiFi Directは何台まで同時接続できる?
理論上は複数台の同時接続が可能です。ただし実際には、製品によって1対1の接続しかできないものも多いです。また同時に通信できるのは1対1のみで、複数台が登録されている場合は順番に通信します。
Q: WiFi Directは電波法に違反しない?
もちろん合法です。WiFi Directは正式な無線通信規格として認められています。日本国内で販売されている対応機器は、すべて技術基準適合証明(技適マーク)を取得しているので安心して使えます。
Q: WiFi Directとアドホックモードの違いは?
アドホックモードも機器同士を直接つなぐ方式ですが、設定が複雑で両方の機器が対応している必要があります。WiFi Directは設定が簡単で、片方だけ対応していればOK。より使いやすく進化したものがWiFi Directだと考えてください。
まとめ
WiFi Directは、ルーター不要で機器同士を直接つなげる便利な無線通信技術です。
Bluetoothよりも速くて通信距離が長く、片方の機器だけが対応していれば使える手軽さが魅力。プリンターへの印刷やテレビへの画面共有、ファイル転送など、日常のさまざまな場面で活躍します。
ただしインターネット接続はできないので、用途をしっかり理解して使うことが大切です。
お使いのスマホやプリンター、テレビがWiFi Directに対応しているか、一度チェックしてみてはいかがでしょうか?思っている以上に便利な機能が、すでにあなたの手元にあるかもしれませんよ。


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