Webサーバーを管理していると、「ターミナルで操作してください」と言われて困ったことはありませんか?
あの黒い画面、最初は怖いですよね。でも実は、ターミナルはWebサーバーと直接対話できる最も効率的な方法なんです。マウスでクリックするよりも、キーボードで命令を打つ方が、サーバーの管理がずっと楽になります。
この記事では、Webサーバーのターミナル操作について、基本から実践まで分かりやすく解説していきます。
ターミナルって何?基本を理解しよう

そもそもターミナルとは
ターミナルは、コンピューターに文字で命令を送るための窓口です。
想像してみてください。レストランで注文するとき、メニューを指差すのではなく、口頭で「カレーライスください」と伝えるような感じです。ターミナルでは、この「口頭での注文」を文字で行います。
CUI(Character User Interface) という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは「文字だけでコンピューターを操作する方法」という意味です。対して、普段使っているマウスでクリックする操作は GUI(Graphical User Interface) と呼ばれます。
なぜWebサーバーでターミナルを使うの?
理由は主に3つあります:
- リモート操作が簡単
- サーバーは通常、遠く離れたデータセンターにあります
- 画面の情報を送るより、文字だけを送る方が速い
- 自動化しやすい
- 同じ作業を繰り返すとき、コマンドを保存しておけば一瞬で終わる
- 定期的な作業をプログラムに任せられる
- リソースを節約できる
- 画面表示にメモリやCPUを使わないので、サーバーの性能を最大限活用できる
SSHでサーバーに接続する方法
SSHとは何か
SSH(Secure Shell) は、安全にサーバーに接続するための仕組みです。
家に鍵をかけて入るように、SSHは暗号化された安全な通信路を作ってくれます。パスワードや送信するデータが、悪意のある第三者に見られる心配がありません。
接続に必要なもの
サーバーに接続するには、以下の情報が必要です:
- IPアドレス または ホスト名(サーバーの住所)
- ユーザー名(誰として入るか)
- パスワード または SSH鍵(入るための鍵)
- ポート番号(通常は22番、変更されている場合もある)
実際の接続手順
Windowsの場合
最近のWindows 10や11では、PowerShellやコマンドプロンプトから直接SSHが使えます。
ssh ユーザー名@サーバーのIPアドレス
例えば:
ssh admin@192.168.1.100
初めて接続するときは「本当に接続していいですか?」と聞かれます。「yes」と入力してEnterキーを押しましょう。
Mac・Linuxの場合
ターミナルアプリを開いて、同じようにコマンドを入力します。
ssh ユーザー名@サーバーのIPアドレス
接続できたかどうかの確認
接続に成功すると、画面の表示が変わります。
[ユーザー名@サーバー名 ~]$
このような表示(プロンプトと呼びます)が出れば、無事にサーバーに入れています!
覚えておきたい基本コマンド10選
サーバーに接続できたら、次は基本的なコマンドを覚えましょう。
1. pwd – 今どこにいるか確認
pwd
現在いるディレクトリ(フォルダ)の場所を表示します。迷子になったときの必需品です。
2. ls – ファイルやフォルダを見る
ls
今いる場所にあるファイルとフォルダの一覧を表示します。
詳しく見たいときは:
ls -la
3. cd – 移動する
cd ディレクトリ名
別のディレクトリに移動します。
ホームディレクトリに戻りたいときは:
cd
一つ上の階層に行きたいときは:
cd ..
4. mkdir – フォルダを作る
mkdir 新しいフォルダ名
新しいディレクトリを作成します。
5. touch – 空のファイルを作る
touch ファイル名.txt
新しい空のファイルを作成します。
6. cat – ファイルの中身を見る
cat ファイル名.txt
ファイルの内容を画面に表示します。
7. cp – コピーする
cp 元のファイル コピー先
ファイルをコピーします。
フォルダごとコピーしたいときは:
cp -r 元のフォルダ コピー先
8. mv – 移動・名前変更
mv 元の名前 新しい名前
ファイルの移動や名前の変更ができます。
9. rm – 削除する
rm ファイル名
ファイルを削除します。削除したファイルは元に戻せないので注意!
フォルダを削除するときは:
rm -r フォルダ名
10. exit – 接続を切る
exit
サーバーから切断して、元のコンピューターに戻ります。
Webサーバー特有の操作

Apacheの操作(CentOS/Rocky Linux系)
Webサーバーソフトウェアの Apache を操作する基本コマンドです。
状態確認:
sudo systemctl status httpd
起動:
sudo systemctl start httpd
停止:
sudo systemctl stop httpd
再起動:
sudo systemctl restart httpd
設定ファイルの確認:
sudo httpd -t
Nginxの操作
もう一つの人気Webサーバー、Nginx の操作方法です。
状態確認:
sudo systemctl status nginx
起動・停止・再起動:
sudo systemctl start nginx
sudo systemctl stop nginx
sudo systemctl restart nginx
設定ファイルのテスト:
sudo nginx -t
ログファイルを見る
Webサーバーの動作状況を確認するには、ログファイルを見ます。
Apacheのアクセスログ:
sudo tail -f /var/log/httpd/access_log
Nginxのエラーログ:
sudo tail -f /var/log/nginx/error.log
tail -f
は、ファイルの最後の部分をリアルタイムで表示し続けるコマンドです。終了したいときは Ctrl + C
を押します。
ファイルの編集方法
サーバー上でファイルを編集する必要があるときは、テキストエディタを使います。
nano エディタ(初心者向け)
最も簡単なエディタです。
nano ファイル名
- 編集が終わったら
Ctrl + X
で終了 - 保存するか聞かれたら
Y
を押す - ファイル名を確認して
Enter
vi/vim エディタ(慣れると便利)
プロがよく使うエディタですが、最初は操作が独特です。
vi ファイル名
基本操作:
i
を押すと編集モードになるEsc
を押すとコマンドモードに戻る:wq
と入力してEnter
で保存して終了:q!
で保存せずに終了
パーミッション(権限)の管理
パーミッションとは
ファイルやフォルダに「誰が何をできるか」を決める仕組みです。
3つの権限があります:
- r (read): 読み取り
- w (write): 書き込み
- x (execute): 実行
権限の確認
ls -la
表示される文字の意味:
-rw-r--r-- 1 user group 1234 Jan 1 12:00 file.txt
最初の10文字が権限を表しています:
- 1文字目:ファイルの種類(
-
は通常ファイル、d
はディレクトリ) - 2-4文字目:所有者の権限
- 5-7文字目:グループの権限
- 8-10文字目:その他の人の権限
権限の変更
chmod 644 ファイル名
数字の意味:
- 6 (4+2) = 読み取り + 書き込み
- 4 = 読み取りのみ
- 4 = 読み取りのみ
よく使う設定:
644
: 通常のファイル755
: 実行可能ファイルやディレクトリ600
: 秘密のファイル(所有者のみアクセス可能)
プロセスとサービスの管理
実行中のプロセスを見る
ps aux
特定のプロセスを探すとき:
ps aux | grep apache
grep
は、指定した文字列を含む行だけを表示するフィルターです。
メモリやCPUの使用状況を見る
top
リアルタイムでシステムの状態が表示されます。q
で終了します。
サービスの自動起動設定
サーバーが再起動しても、Webサーバーが自動的に起動するようにします:
sudo systemctl enable httpd
自動起動を無効にする:
sudo systemctl disable httpd
トラブルシューティングのコツ

1. エラーメッセージをよく読む
エラーが出たら、まずメッセージをしっかり読みましょう。
多くの場合、何が問題なのかヒントが書いてあります。
2. ログファイルを確認
sudo tail -n 50 /var/log/messages
最後の50行を表示して、何が起きているか確認します。
3. ディスク容量を確認
df -h
ディスクがいっぱいになっていないか確認します。
4. ネットワーク接続を確認
ping google.com
インターネットに接続できているか確認します。
5. ポートが開いているか確認
sudo netstat -tlnp
Webサーバーが正しいポートで待ち受けているか確認します。
セキュリティの基本
1. 定期的なアップデート
sudo yum update
または
sudo apt update && sudo apt upgrade
セキュリティパッチを適用することは非常に重要です。
2. 強いパスワードを使う
- 8文字以上
- 大文字・小文字・数字・記号を混ぜる
- 辞書に載っている単語は避ける
3. 不要なサービスは停止
使っていないサービスは停止して、攻撃の入り口を減らします。
4. ファイアウォールの設定
sudo firewall-cmd --list-all
必要なポートだけを開放するように設定します。
よくある質問と回答
Q: コマンドを間違えて入力してしまった
A: Ctrl + C
を押せば、実行中のコマンドを中断できます。
Q: ファイルを間違えて削除してしまった
A: 残念ながら、rm
コマンドで削除したファイルは基本的に復元できません。重要なファイルは必ずバックアップを取りましょう。
Q: パスワードを入力しても画面に表示されない
A: これは正常な動作です。セキュリティのため、パスワードは画面に表示されません。正しく入力して Enter を押してください。
Q: sudoって何?
A: 管理者権限で命令を実行するためのコマンドです。「スーパーユーザーとして実行する」という意味があります。
まとめ:ターミナル操作は怖くない!
ここまで、Webサーバーのターミナル操作について基本から解説してきました。
最初は黒い画面が怖く感じるかもしれませんが、基本的なコマンドを覚えて、少しずつ慣れていけば大丈夫です。マウス操作よりも効率的で、正確な作業ができるようになります。
覚えておくべきポイント:
- SSHで安全に接続する
- 基本的なコマンドから始める
- エラーが出ても慌てない
- 重要な操作の前はバックアップを取る
- 分からないことは調べてから実行する
ターミナル操作は、Webサーバー管理の強力な味方です。今日学んだことを一つずつ実践していけば、きっとあなたもターミナルマスターになれるはずです。
次のステップとしては、シェルスクリプトの作成や、より高度なサーバー管理技術を学んでみてはいかがでしょうか。基礎がしっかりしていれば、応用も必ず身につきます!
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