Pythonを勉強したり、ちょっとしたスクリプトを書いたときに、「どうやってVS Codeで実行するんだろう?」「毎回ターミナルを開くのは面倒じゃない?」そんな風に思ったことはありませんか?
実はVisual Studio Code(VS Code)には、Pythonを簡単に実行する便利な方法がいくつもあります。
この記事では、初心者の方に向けて、VS CodeでPythonを実行する基本のやり方から、もっと効率的な実行方法までをわかりやすく紹介します。
まずはPythonの準備を確認

Pythonがインストールされているか確認
VS CodeからPythonを実行するには、まずPython本体がコンピュータにインストールされている必要があります。確認方法は以下の通りです。
Windowsの場合
- VS Codeのターミナルを開く(`Ctrl + “)
- 以下のコマンドを入力
python --version
または
python3 --version
macOS・Linuxの場合
python3 --version
正常な表示例
Python 3.11.0
のようにバージョン番号が表示されればOKです。
エラーが出る場合
「’python’ は、内部コマンドまたは外部コマンド…として認識されていません」と表示される場合は、Pythonがインストールされていないか、PATH設定が正しくありません。
対処法:
- Python公式サイトからPythonをダウンロード
- インストール時に「Add Python to PATH」にチェックを入れる
- インストール後、コンピュータを再起動
VS CodeにPython拡張機能をインストール
Pythonを快適に実行するために、Microsoft公式のPython拡張機能をインストールしましょう。
インストール手順
- VS Codeの左側の拡張機能アイコン(四角いパズルピースのマーク)をクリック
- 検索バーに「python」と入力
- 「Python」(提供者:Microsoft)を見つけてクリック
- 「インストール」ボタンをクリック
インストール確認
拡張機能をインストールすると、以下の機能が使えるようになります:
- Pythonファイル(.py)のシンタックスハイライト
- 自動補完(インテリセンス)
- 実行ボタンの表示
- デバッグ機能
Pythonインタープリターの選択
複数のPythonバージョンがインストールされている場合、VS Codeで使用するバージョンを選択する必要があります。
選択方法
Ctrl + Shift + P
(Mac:Cmd + Shift + P
)でコマンドパレットを開く- 「Python: Select Interpreter」と入力
- 使用したいPythonバージョンを選択
正しく設定されると、VS Codeの左下にPythonのバージョンが表示されます(例:Python 3.11.0 64-bit
)。
PythonをVS Codeで実行する基本の方法
ターミナルから実行する方法
最もシンプルで確実な実行方法です。どのような環境でも使える基本的な方法なので、まずはこれを覚えましょう。
実行手順
- VS CodeでPythonファイル(例:
hello.py
)を作成・保存 - VS Codeのターミナルを開く(`Ctrl + “)
- 以下のコマンドを入力
python hello.py
実際の例
hello.py の内容:
print("Hello, Python!")
name = "太郎"
print(f"こんにちは、{name}さん!")
実行結果:
Hello, Python!
こんにちは、太郎さん!
ファイルパスの指定
別のフォルダにあるファイルを実行する場合:
# 相対パスで指定
python scripts/sample.py
# 絶対パスで指定(Windows例)
python C:\Users\username\Documents\sample.py
実行ボタン(Run Python File)を使う方法
Python拡張機能をインストールすると、エディタの右上に三角形の実行ボタン(▶)が現れます。これをクリックするだけで簡単に実行できます。
使い方
- Pythonファイルを開く
- 右上の「▶ Run Python File in Terminal」ボタンをクリック
- ターミナルに実行結果が表示される
メリット
- ワンクリックで実行できる
- ターミナルを手動で開く必要がない
- ファイル名を入力する必要がない
実際の使用例
# calculator.py
def add(a, b):
return a + b
def multiply(a, b):
return a * b
# 実行部分
result1 = add(10, 5)
result2 = multiply(3, 4)
print(f"10 + 5 = {result1}")
print(f"3 × 4 = {result2}")
実行ボタンをクリックすると:
10 + 5 = 15
3 × 4 = 12
ショートカットキーで実行する方法
キーボードだけで素早く実行できる方法です。
主要なショートカットキー
ショートカット | 実行内容 |
---|---|
Ctrl + F5 | デバッグなしで実行 |
F5 | デバッグ付きで実行 |
Shift + Enter | 選択行・選択部分を実行 |
デバッグなし実行(Ctrl + F5)
通常の実行で、最も高速です:
# simple.py
for i in range(3):
print(f"カウント: {i}")
Ctrl + F5
を押すと即座に実行されます。
デバッグ付き実行(F5)
ブレークポイントやステップ実行が可能な高機能な実行方法:
# debug_sample.py
def calculate_area(width, height):
area = width * height # ←ここにブレークポイントを設定
return area
width = 10
height = 5
result = calculate_area(width, height)
print(f"面積: {result}")
行番号の左側をクリックしてブレークポイント(赤い点)を設定し、F5
を押すとその行で実行が一時停止します。
もっと便利にする実行方法

インタラクティブウィンドウ(Jupyter風実行)
Jupyter Notebookのように、コードを部分的に実行できる便利な機能です。データ分析や試行錯誤をするときに特に便利です。
セル区切りを使った実行
コメントで # %%
と書くことで、コードをセル単位に分割できます:
# %%
# セル1: データの準備
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
x = np.linspace(0, 10, 100)
y = np.sin(x)
# %%
# セル2: グラフの描画
plt.figure(figsize=(10, 6))
plt.plot(x, y)
plt.title("Sin波のグラフ")
plt.xlabel("x")
plt.ylabel("sin(x)")
plt.grid(True)
plt.show()
# %%
# セル3: 統計情報
print(f"最大値: {y.max():.2f}")
print(f"最小値: {y.min():.2f}")
print(f"平均値: {y.mean():.2f}")
セルの実行方法
- セル内にカーソルを置く
- セル上部に現れる「Run Cell」ボタンをクリック
- または
Shift + Enter
でセルを実行して次のセルに移動
選択部分の実行
特定のコードだけを実行したい場合:
# 以下のコードの一部だけを実行したい
numbers = [1, 2, 3, 4, 5]
squares = [x**2 for x in numbers] # この行だけを選択
cubes = [x**3 for x in numbers]
print(squares)
print(cubes)
squares = [x**2 for x in numbers]
の行を選択して Shift + Enter
を押すと、その行だけが実行されます。
Code Runner拡張機能を使った自動実行
より快適な実行環境を求める場合、Code Runner拡張機能がおすすめです。
インストール方法
- 拡張機能タブで「Code Runner」を検索
- 「Code Runner」をインストール
主な機能
Ctrl + Alt + N
:コード実行Ctrl + Alt + M
:実行停止- 保存時自動実行(設定で有効化可能)
- 選択部分のみ実行
設定例
.vscode/settings.json
に以下を追加:
{
"code-runner.runInTerminal": true,
"code-runner.saveFileBeforeRun": true,
"code-runner.clearPreviousOutput": true
}
Python REPL(対話型実行環境)
コードを1行ずつ試しながら実行できる環境です。
REPL の起動方法
Ctrl + Shift + P
でコマンドパレットを開く- 「Python: Start REPL」を選択
- ターミナルにPythonのプロンプト(
>>>
)が表示される
REPL の使用例
>>> name = "Python"
>>> age = 30
>>> print(f"言語: {name}, 年齢: {age}年")
言語: Python, 年齢: 30年
>>>
>>> def greet(name):
... return f"こんにちは、{name}さん!"
...
>>> greet("太郎")
'こんにちは、太郎さん!'
REPL のメリット
- 即座に結果を確認できる
- 簡単な計算や関数のテストに便利
- Pythonの文法を学習するのに最適
よくあるトラブルと対処法
「python」コマンドが見つからない
症状
'python' は、内部コマンドまたは外部コマンド...として認識されていません
対処法1:python3 コマンドを試す
python3 --version
python3 hello.py
macOSやLinuxでは python3
コマンドが標準的です。
対処法2:PATH設定の確認
Windows の場合:
- 「システムの詳細設定」を開く
- 「環境変数」をクリック
- PATH にPythonのインストール先が含まれているか確認
- 含まれていない場合は追加(例:
C:\Python311\
とC:\Python311\Scripts\
)
対処法3:Pythonの再インストール
- Python公式サイトから最新版をダウンロード
- インストール時に「Add Python to PATH」に必ずチェック
- インストール完了後、コンピュータを再起動
実行結果が期待と違う
症状
- 変数の値が前回の実行結果のまま
- モジュールのimportエラー
- ファイルパスの問題
対処法1:仮想環境の確認
仮想環境を使用している場合、正しくアクティベートされているか確認:
# 仮想環境の確認(アクティブな場合は環境名が表示される)
echo $VIRTUAL_ENV
# Windows PowerShellの場合
echo $env:VIRTUAL_ENV
ターミナルのプロンプトに (venv)
や (myenv)
のような表示があれば仮想環境がアクティブです。
対処法2:Pythonインタープリターの確認
VS Code左下のPythonバージョン表示をクリックして、正しいインタープリターが選択されているか確認。
対処法3:ターミナルのリフレッシュ
# ターミナルをクリア
clear
# 新しいターミナルを開く(Ctrl + Shift + `)
モジュールのインポートエラー
症状
ModuleNotFoundError: No module named 'requests'
対処法1:pip でのインストール
pip install requests
または
pip3 install requests
対処法2:仮想環境でのインストール
# 仮想環境をアクティベート
source venv/bin/activate # macOS/Linux
venv\Scripts\activate # Windows
# パッケージをインストール
pip install requests
対処法3:VS Codeでのインタープリター選択
仮想環境内のPythonインタープリターを選択:
Ctrl + Shift + P
→ 「Python: Select Interpreter」- 仮想環境内のPython(例:
./venv/bin/python
)を選択
日本語の文字化け
症状
日本語が正しく表示されない、文字化けする
対処法1:エンコーディングの明記
ファイルの先頭に以下を追加:
# -*- coding: utf-8 -*-
print("こんにちは、Python!")
対処法2:VS Codeの設定確認
Ctrl + ,
で設定を開く- 「files.encoding」を検索
- 「utf8」に設定されているか確認
対処法3:ターミナルの設定
Windows PowerShellの場合:
# UTF-8に設定
chcp 65001
さらに効率的な実行テクニック

実行設定のカスタマイズ
launch.json での詳細設定
デバッグ実行をカスタマイズする場合、.vscode/launch.json
を作成:
{
"version": "0.2.0",
"configurations": [
{
"name": "Python: Current File",
"type": "python",
"request": "launch",
"program": "${file}",
"console": "integratedTerminal",
"args": ["--verbose", "--config=config.json"]
},
{
"name": "Python: Main Module",
"type": "python",
"request": "launch",
"module": "mypackage.main",
"console": "integratedTerminal"
}
]
}
tasks.json での自動化
.vscode/tasks.json
でカスタムタスクを定義:
{
"version": "2.0.0",
"tasks": [
{
"label": "Run Python Script",
"type": "shell",
"command": "python",
"args": ["${file}"],
"group": {
"kind": "build",
"isDefault": true
},
"presentation": {
"clear": true
}
}
]
}
複数ファイルプロジェクトの実行
パッケージ形式での実行
# パッケージ全体を実行
python -m mypackage
# 特定のモジュールを実行
python -m mypackage.main
プロジェクト構造の例
myproject/
├── main.py
├── mypackage/
│ ├── __init__.py
│ ├── utils.py
│ └── main.py
└── tests/
└── test_main.py
環境変数を使った実行
環境変数の設定
# config.py
import os
DEBUG = os.getenv('DEBUG', 'False').lower() == 'true'
API_KEY = os.getenv('API_KEY', 'default_key')
print(f"デバッグモード: {DEBUG}")
print(f"API キー: {API_KEY}")
実行時に環境変数を指定
# Linux/macOS
DEBUG=true API_KEY=secret python config.py
# Windows
set DEBUG=true
set API_KEY=secret
python config.py
まとめ
VS CodeでPythonを実行する方法はたくさんありますが、状況に応じて使い分けることが重要です:
基本的な実行方法
- ターミナルから実行:
python filename.py
(最も確実) - 実行ボタン:右上の▶をクリック(簡単)
- ショートカットキー:
Ctrl + F5
(高速)
便利な実行方法
- セル実行:
# %%
でコードを分割して部分実行 - 選択実行:
Shift + Enter
で選択部分のみ実行 - REPL:対話型で1行ずつ実行
トラブル対策
- Python本体のインストールとPATH設定
- 仮想環境の正しい設定
- VS Codeでのインタープリター選択
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