「これからPythonを始めたいけど、どのエディタを使えばいいかわからない」
「コードを効率的に書ける環境を作りたい」と思っていませんか?
そんな方におすすめなのが Visual Studio Code(VS Code) です。VS Codeは軽量で動作が速く、Python開発に必要な機能がすぐに揃う優秀なエディタです。
この記事では、VS CodeでPythonを快適に書くための導入手順や、おすすめの拡張機能、便利な使い方 を初心者にもわかりやすく紹介します。
VS CodeでPythonを使うメリット

なぜPython開発にVS Codeが選ばれるのか
軽量で高速
- 起動が早く、大きなファイルもサクサク開ける
- メモリ使用量が少ない
- 複数のファイルを同時に開いても重くならない
豊富な機能
- インテリセンス(自動補完)でタイピングが楽
- リアルタイムエラー検出で間違いをすぐ発見
- 統合ターミナルでコマンド実行が簡単
無料で高機能
- 有料のIDEに匹敵する機能を無料で利用
- 定期的なアップデートで機能向上
- 大手企業でも広く採用されている実績
他のエディタとの比較
エディタ | 軽量性 | 機能性 | 初心者向け | 無料 |
---|---|---|---|---|
VS Code | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PyCharm | △ | ◎ | ○ | △(無料版あり) |
IDLE | ◎ | △ | ○ | ◎ |
Sublime Text | ◎ | ○ | ○ | △(有料) |
VS CodeでPythonを始める準備
VS Codeのインストール
ダウンロードと基本インストール
- VS Code公式サイトにアクセス
- お使いのOS(Windows、macOS、Linux)に応じたバージョンをダウンロード
- ダウンロードしたファイルを実行してインストール
インストール時の注意点
Windows の場合
- 「PATH への追加」を選択(コマンドプロンプトから
code
コマンドが使えるようになる) - 「ファイルの関連付け」を有効にする(右クリックメニューから VS Code で開けるようになる)
macOS の場合
- アプリケーションフォルダにドラッグ&ドロップ
- 初回起動時にセキュリティ警告が出る場合は「開く」を選択
Python本体のインストール
Python のダウンロード
VS CodeはPythonコードを編集するエディタなので、Python本体が必要です。
- Python公式サイトにアクセス
- 最新の安定版(3.11以上推奨)をダウンロード
- インストーラーを実行
インストール時の重要設定
Windows での注意点
☑ Use admin privileges when installing py.exe
☑ Add Python 3.x to PATH ← これは必ずチェック!
「Add Python to PATH」をチェックしないと、コマンドラインからPythonを実行できません。
インストール確認
ターミナル(コマンドプロンプト)で以下を実行:
python --version
または
python3 --version
バージョン情報が表示されればインストール成功です。
初回起動と日本語化
VS Code の初回設定
- VS Code を起動
- Welcome タブが表示される
- 右下に言語設定の通知が出た場合、日本語を選択
手動で日本語化する場合
- 拡張機能タブ(
Ctrl + Shift + X
)を開く - 「Japanese Language Pack」を検索
- インストール後、VS Code を再起動
VS CodeにPython拡張機能を導入

必須の拡張機能:Python
Python 拡張機能(ms-python.python)
概要 Microsoft公式が提供するPython開発の基盤となる拡張機能です。これ一つでPython開発に必要な機能がほぼ揃います。
主な機能
- インテリセンス:関数名、変数名の自動補完
- シンタックスハイライト:コードの色分け表示
- エラー検出:構文エラーのリアルタイム表示
- デバッグ機能:ブレークポイントでの実行停止
- フォーマット機能:コードの自動整形
- テスト実行:unittestやpytestの実行
インストール手順
- VS Codeの左側の拡張機能アイコン(四角いパズルピースのマーク)をクリック
- 検索バーに「python」と入力
- 一番上に表示される「Python」(提供者:Microsoft)をクリック
- 「インストール」ボタンをクリック
インストール後の確認
Python拡張がインストールされると、VS Codeの左下にPythonのバージョンが表示されます。
Python インタープリターの選択
インタープリターとは
Pythonインタープリターは、Pythonコードを実行するプログラムです。複数のPythonバージョンがインストールされている場合、使用するバージョンを選択する必要があります。
選択方法
Ctrl + Shift + P
(Mac:Cmd + Shift + P
)でコマンドパレットを開く- 「Python: Select Interpreter」と入力
- 使用したいPythonバージョンを選択
確認方法
正しく設定されていれば、VS Codeの左下に以下のように表示されます:
Python 3.11.0 64-bit
より快適にするおすすめ拡張機能
Pylance(ms-python.vscode-pylance)
必須度:★★★★★
概要 Microsoft製の高性能なPython言語サーバーです。Python拡張機能と組み合わせることで、より正確で高速な補完機能を提供します。
主な機能
- 高速な型推論:変数の型を自動的に推測
- より正確な補完:コンテキストに応じた適切な候補表示
- 型ヒント支援:Type Hintsの記述をサポート
- Import 文の自動整理:不要なimportの削除、並び替え
実際の使用例
# Pylanceが型を推論して適切な補完を提供
numbers = [1, 2, 3, 4, 5]
numbers. # ここで「append」「extend」などリストのメソッドが補完される
def calculate_sum(a: int, b: int) -> int:
return a + b
result = calculate_sum(10, 20)
# resultが int 型だと推論され、int のメソッドが補完される
Jupyter(ms-toolsai.jupyter)
必須度:★★★★☆
概要 ノートブック形式でPythonコードを実行できる拡張機能です。データ分析や機械学習の分野で特に重宝します。
主な機能
- セル単位の実行:コードを小さな単位で分けて実行
- 結果の可視化:グラフや画像を直接表示
- Markdown サポート:説明文を美しく記述
- 変数の保持:セル間で変数を共有
使用例
# セル1:データの読み込み
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt
data = pd.read_csv('sample.csv')
# セル2:データの確認
print(data.head())
# セル3:グラフの描画
plt.plot(data['x'], data['y'])
plt.show()
Jupyter Notebook の作成方法
Ctrl + Shift + P
でコマンドパレットを開く- 「Jupyter: Create New Jupyter Notebook」を選択
.ipynb
ファイルが作成される
Black Formatter(ms-python.black-formatter)
必須度:★★★☆☆
概要 Pythonコードを自動で美しく整形してくれるフォーマッター拡張機能です。PEP 8(Pythonのコーディング規約)に準拠した形でコードを統一できます。
主な機能
- 自動インデント調整:スペースとタブの統一
- 行の長さ調整:長すぎる行を適切に分割
- クォートの統一:シングルクォートかダブルクォートかを統一
- 保存時自動実行:ファイル保存時に自動フォーマット
設定方法
VS Codeの設定(Ctrl + ,
)で以下を追加:
{
"[python]": {
"editor.defaultFormatter": "ms-python.black-formatter",
"editor.formatOnSave": true
}
}
フォーマット前後の例
フォーマット前
def calculate_area(width,height):
if width>0and height>0:
return width*height
else:
return 0
フォーマット後
def calculate_area(width, height):
if width > 0 and height > 0:
return width * height
else:
return 0
その他の便利な拡張機能
Python Docstring Generator(njpwerner.autodocstring)
関数やクラスのドキュメント文字列を自動生成:
def calculate_bmi(weight, height):
"""
BMIを計算する関数
Args:
weight (float): 体重(kg)
height (float): 身長(m)
Returns:
float: BMI値
"""
return weight / (height ** 2)
Python Test Explorer(LittleFoxTeam.vscode-python-test-adapter)
テストファイルの実行と結果表示を視覚的に:
# test_calculator.py
import unittest
from calculator import add
class TestCalculator(unittest.TestCase):
def test_add(self):
self.assertEqual(add(2, 3), 5)
self.assertEqual(add(-1, 1), 0)
VS CodeでPythonを実行する方法

基本的な実行方法
ファイル全体を実行
方法1:実行ボタンを使う
- Pythonファイル(
.py
)を開く - 右上の三角ボタン(▶)をクリック
- ターミナルにコードの実行結果が表示される
方法2:ショートカットキーを使う
Ctrl + F5
:デバッグなしで実行F5
:デバッグ付きで実行
方法3:コマンドパレットから実行
Ctrl + Shift + P
でコマンドパレットを開く- 「Python: Run Python File in Terminal」を選択
ターミナルから実行
VS Code内蔵のターミナルを使って実行:
Ctrl +
でターミナルを開く- 以下のコマンドを入力:
python filename.py
または
python3 filename.py
選択したコードだけを実行
部分実行の方法
- 実行したいコードを選択
Shift + Enter
を押す- 選択部分だけがPython REPLで実行される
実際の例
# ファイル全体
import math
radius = 5
area = math.pi * radius ** 2 # この行だけを選択して実行
print(f"円の面積: {area}")
area = math.pi * radius ** 2
の行だけを選択して Shift + Enter
を押すと、その行だけが実行されます。
インタラクティブモード(REPL)
REPL とは
REPL(Read-Eval-Print Loop)は、Pythonコードを1行ずつ入力して即座に実行できるモードです。
VS Code での REPL 起動方法
Ctrl + Shift + P
でコマンドパレットを開く- 「Python: Start REPL」を選択
- ターミナルにPythonのプロンプト(
>>>
)が表示される
REPL の使用例
>>> name = "Python"
>>> print(f"Hello, {name}!")
Hello, Python!
>>> 2 + 3 * 4
14
>>> import datetime
>>> datetime.datetime.now()
datetime.datetime(2024, 1, 15, 14, 30, 25, 123456)
デバッグ機能の活用
ブレークポイントの設定
基本的な使い方
- デバッグしたい行の行番号左側をクリック
- 赤い点(ブレークポイント)が表示される
F5
でデバッグ実行開始- ブレークポイントで実行が一時停止
デバッグ中の操作
F10
:ステップオーバー(次の行へ)F11
:ステップイン(関数の中へ)Shift + F11
:ステップアウト(関数から出る)F5
:続行
変数の監視
デバッグ中は左側のパネルで以下を確認できます:
- Variables:現在の変数の値
- Watch:特定の式の値を監視
- Call Stack:関数の呼び出し履歴
デバッグ設定のカスタマイズ
launch.json の作成
- デバッグビュー(
Ctrl + Shift + D
)を開く - 「create a launch.json file」をクリック
- 「Python」を選択
基本的な設定例
{
"version": "0.2.0",
"configurations": [
{
"name": "Python: Current File",
"type": "python",
"request": "launch",
"program": "${file}",
"console": "integratedTerminal",
"justMyCode": true
},
{
"name": "Python: With Arguments",
"type": "python",
"request": "launch",
"program": "${file}",
"args": ["arg1", "arg2"],
"console": "integratedTerminal"
}
]
}
よくある質問とトラブル対処

Q. Pythonが実行できない・認識されない
症状
- 「’python’ は、内部コマンドまたは外部コマンド… として認識されていません」
- 「command not found: python」
対処法1:Pythonのインストール確認
ターミナルで以下を実行:
python --version
何も表示されない場合は、Pythonがインストールされていないか、PATHが通っていません。
対処法2:Python3 コマンドを試す
python3 --version
対処法3:PATH の確認と設定
Windows の場合
- 「システムの詳細設定」を開く
- 「環境変数」をクリック
- PATH に Python のインストール先が含まれているか確認
macOS/Linux の場合
echo $PATH
which python3
対処法4:VS Code でのインタープリター選択
Ctrl + Shift + P
でコマンドパレットを開く- 「Python: Select Interpreter」を選択
- 正しいPythonのパスを選択
Q. インテリセンス(自動補完)が動かない
症状
- 関数名や変数名の補完が表示されない
- import 文の補完が効かない
対処法1:Pylance の確認
- 拡張機能タブで「Pylance」がインストールされているか確認
- 無効になっている場合は有効化
対処法2:Python インタープリターの確認
左下のPythonバージョン表示をクリックして、正しいインタープリターが選択されているか確認。
対処法3:言語サーバーの再起動
Ctrl + Shift + P
でコマンドパレットを開く- 「Python: Restart Language Server」を実行
Q. モジュールが見つからないエラー
症状
ModuleNotFoundError: No module named 'requests'
対処法1:pip でのインストール
pip install requests
または
pip3 install requests
対処法2:仮想環境の確認
仮想環境を使用している場合、その環境がアクティブになっているか確認:
# 仮想環境の作成
python -m venv myenv
# 仮想環境のアクティベート(Windows)
myenv\Scripts\activate
# 仮想環境のアクティベート(macOS/Linux)
source myenv/bin/activate
対処法3:VS Code でのインタープリター選択
仮想環境のPythonインタープリターを選択していることを確認。
Q. コードの実行結果が文字化けする
症状
日本語が正しく表示されない
対処法:エンコーディングの設定
ファイルの先頭に以下を追加:
# -*- coding: utf-8 -*-
print("こんにちは、Python!")
Python開発をさらに効率化するテクニック

仮想環境の活用
仮想環境とは
プロジェクトごとに独立したPython環境を作る仕組みです。ライブラリのバージョン競合を防ぎ、クリーンな開発環境を維持できます。
仮想環境の作成と使用
# 仮想環境の作成
python -m venv project_env
# アクティベート(Windows)
project_env\Scripts\activate
# アクティベート(macOS/Linux)
source project_env/bin/activate
# パッケージのインストール
pip install requests pandas matplotlib
# 非アクティベート
deactivate
VS Code での仮想環境選択
- 仮想環境をアクティベートした状態でVS Codeを起動
- または
Ctrl + Shift + P
→ 「Python: Select Interpreter」で仮想環境のPythonを選択
requirements.txt の活用
パッケージ依存関係の管理
# 現在の環境のパッケージ一覧を出力
pip freeze > requirements.txt
# requirements.txtからパッケージをインストール
pip install -r requirements.txt
requirements.txt の例
requests==2.28.1
pandas==1.5.2
matplotlib==3.6.2
numpy==1.23.5
コードスニペットの活用
カスタムスニペットの作成
File
→Preferences
→Configure User Snippets
python.json
を選択- カスタムスニペットを追加
{
"Print Debug": {
"prefix": "pdb",
"body": [
"print(f\"DEBUG: ${1:variable} = {${1:variable}}\")"
],
"description": "Debug print statement"
},
"Class Template": {
"prefix": "class",
"body": [
"class ${1:ClassName}:",
" def __init__(self${2:, param}):",
" ${3:pass}",
"",
" def ${4:method_name}(self):",
" ${5:pass}"
]
}
}
Git 連携の活用
.gitignore の設定
Pythonプロジェクト用の .gitignore
ファイル例:
# Python
__pycache__/
*.py[cod]
*$py.class
*.so
.Python
build/
develop-eggs/
dist/
downloads/
eggs/
.eggs/
lib/
lib64/
parts/
sdist/
var/
wheels/
pip-wheel-metadata/
share/python-wheels/
*.egg-info/
.installed.cfg
*.egg
# Virtual Environment
venv/
env/
ENV/
# IDE
.vscode/
.idea/
# OS
.DS_Store
Thumbs.db
まとめ
VS CodeはPython開発にぴったりのエディタです。重要なポイントをまとめると:
必須の準備
- Python本体のインストール(PATH設定を忘れずに)
- VS CodeのインストールとPython拡張機能の導入
おすすめ拡張機能
- Python:Microsoft公式の基本拡張機能
- Pylance:高速で正確な補完機能
- Jupyter:ノートブック形式での開発
- Black Formatter:コードの自動整形
効率化のコツ
- 仮想環境でプロジェクトを管理
- デバッグ機能でバグを素早く特定
- カスタムスニペットで定型コードを効率化
- requirements.txtで依存関係を管理
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