VPNを使いたいけど、専用アプリが使えない、または使いたくない…。
会社や学校のVPNサーバーに接続したいけど、設定方法が分からない…。
こんな悩みはありませんか?
実は、iPhoneやAndroidには、VPNを手動で設定する機能が標準で備わっているんです。
この記事では、VPNの手動設定の方法を、初心者でも分かりやすく、画像なしでもイメージできるように詳しく説明していきます。
VPNの手動設定とは?

VPNの手動設定とは、専用アプリを使わずに、スマホやタブレットの設定画面から直接VPN接続を構成することです。
通常、NordVPNやExpressVPNなどのVPNサービスは専用アプリを提供していて、アプリをインストールするだけで簡単にVPNが使えます。
しかし、以下のような場合には手動設定が必要になります:
- 会社や学校のVPNサーバーに接続する場合
- 自宅に設置したVPNルーターに接続する場合
- 専用アプリがないVPNサービスを使う場合
- アプリよりも詳細な設定をしたい場合
- アプリのインストールが制限されている場合
VPN手動設定のメリット・デメリット
メリット
アプリ不要で接続できる
専用アプリをインストールする必要がないため、ストレージ容量を節約できます。
企業や学校のVPNに接続できる
会社や学校が提供するVPNサーバーに接続する際は、手動設定が基本です。
設定を細かくコントロールできる
接続プロトコルやセキュリティ設定を自分で選択できます。
複数のVPN設定を保存できる
仕事用、プライベート用など、複数のVPN設定を登録して切り替えられます。
デメリット
設定に専門知識が必要
サーバーアドレスやプロトコルなど、技術的な情報を入力する必要があります。
サーバーの切り替えが面倒
専用アプリのようにワンタップでサーバーを変更することはできません。
サポートが受けにくい
手動設定の場合、VPNサービスのサポートが受けられないことがあります。
手動設定に必要な情報
VPNを手動で設定する前に、以下の情報を準備しておく必要があります。
必須情報:
- サーバーアドレス:接続先のVPNサーバーのIPアドレスまたはドメイン名(例:vpn.example.com)
- ユーザー名(アカウント名):VPNサービスから提供されるユーザー名
- パスワード:VPNサービスから提供されるパスワード
プロトコルによって必要な情報:
- L2TP/IPSecの場合:シークレット(事前共有キー)
- IKEv2の場合:リモートID
- IPSecの場合:事前共有キー
これらの情報は、VPNサービスのウェブサイトや管理画面、会社のIT部門などから入手できます。
VPNプロトコルの種類と選び方
L2TP/IPSec(Layer 2 Tunneling Protocol)
最も一般的で設定しやすいプロトコルです。
特徴:
- セキュリティが比較的高い
- 設定が簡単
- ほぼすべてのデバイスで利用可能
- 速度は中程度
おすすめ度: ★★★★☆
初心者に最もおすすめのプロトコルです。
IKEv2/IPSec(Internet Key Exchange version 2)
新しく高速なプロトコルで、特にモバイルデバイスに適しています。
特徴:
- 接続速度が速い
- モバイルネットワーク切り替え時も接続が安定
- セキュリティが高い
- 設定は比較的簡単
おすすめ度: ★★★★★
iPhoneやiPadで使うなら最もおすすめです。
IPSec(Internet Protocol Security)
単体で使われることは少なく、通常は他のプロトコルと組み合わせて使われます。
特徴:
- セキュリティが高い
- 設定がやや複雑
- 企業ネットワークでよく使われる
おすすめ度: ★★★☆☆
OpenVPN
最も安全性が高いプロトコルですが、手動設定には専用アプリが必要です。
特徴:
- 最高レベルのセキュリティ
- ファイアウォールを回避しやすい
- iOS/Androidでは「OpenVPN Connect」アプリが必要
- 設定ファイル(.ovpn)のインポートが必要
おすすめ度: ★★★★★(高度なユーザー向け)
iPhone・iPadでのVPN手動設定方法

【方法1】L2TP/IPSecで設定する
最も一般的な設定方法です。
手順:
- ホーム画面から「設定」アプリを開く
- 「一般」をタップ
- 「VPNとデバイス管理」をタップ
- 「VPN」をタップ
- 「VPN構成を追加」をタップ
- 「タイプ」で「L2TP」を選択
- 以下の情報を入力:
- 説明:分かりやすい名前(例:会社VPN、自宅VPNなど)
- サーバ:VPNサーバーのアドレス
- アカウント:ユーザー名
- RSA SecurID:オフのまま
- パスワード:VPNパスワード
- シークレット:事前共有キー(VPNサービスから提供される)
- すべての通信を送信:オン(推奨)
- 右上の「完了」をタップ
- VPN設定画面で「状況」スイッチをオンにする
- 接続が成功すると、画面上部に「VPN」アイコンが表示される
【方法2】IKEv2で設定する
より高速で安定した接続が必要な場合に使います。
手順:
- 「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」→「VPN」と進む
- 「VPN構成を追加」をタップ
- 「タイプ」で「IKEv2」を選択
- 以下の情報を入力:
- 説明:分かりやすい名前
- サーバ:VPNサーバーのアドレス
- リモートID:VPNサービスから提供されるリモートID
- ローカルID:通常は空欄のまま
- ユーザ認証:「ユーザ名」を選択
- ユーザ名:VPNユーザー名
- パスワード:VPNパスワード
- 「完了」をタップして保存
- 「状況」をオンにして接続
VPN接続を切断する方法
手順:
- 「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」→「VPN」と進む
- 「状況」スイッチをオフにする
または、設定アプリを開かずに:
- 設定アプリのトップ画面で「VPN」と表示されている部分をタップ
- 「状況」スイッチをオフにする
VPN設定を削除する方法
手順:
- 「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」→「VPN」と進む
- 削除したいVPN設定の右側にある「i」マークをタップ
- 画面を下にスクロール
- 「VPNを削除」をタップ
- 確認画面で再度「削除」をタップ
AndroidでのVPN手動設定方法
Androidの設定画面は機種によって若干異なる場合がありますが、基本的な流れは同じです。
【方法1】L2TP/IPSecで設定する
手順:
- ホーム画面から「設定」アプリを開く
- 「ネットワークとインターネット」をタップ
- 「詳細設定」をタップ
- 「VPN」をタップ
- 右上の「+」ボタンをタップ
- 以下の情報を入力:
- 名前:分かりやすい名前
- タイプ:「L2TP/IPSec PSK」を選択
- サーバーアドレス:VPNサーバーのアドレス
- IPSec事前共有キー:シークレット(事前共有キー)
- ユーザー名:VPNユーザー名
- パスワード:VPNパスワード
- 「保存」をタップ
- 作成したVPN設定をタップ
- ユーザー名とパスワードが未入力の場合は入力
- 「接続」をタップ
【方法2】IKEv2/IPSecで設定する
Android 7.0以降で利用可能です。
手順:
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「VPN」と進む
- 「+」ボタンをタップ
- 以下の情報を入力:
- 名前:分かりやすい名前
- タイプ:「IKEv2/IPSec RSA」または「IKEv2/IPSec PSK」を選択
- サーバーアドレス:VPNサーバーのアドレス
- IPSec識別子:リモートID
- IPSec事前共有キー:事前共有キー(PSKを選択した場合)
- ユーザー名:VPNユーザー名
- パスワード:VPNパスワード
- 「保存」をタップ
- VPN設定をタップして「接続」
VPN接続を切断する方法(Android)
手順:
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「VPN」と進む
- 接続中のVPN設定をタップ
- 「切断」をタップ
または、通知パネルから:
- 画面上部から下にスワイプして通知パネルを開く
- VPN接続の通知をタップ
- 「切断」をタップ
OpenVPNの手動設定方法
OpenVPNは標準では対応していないため、専用アプリが必要です。
iPhoneでOpenVPNを設定する
手順:
- App Storeから「OpenVPN Connect」をダウンロード
- VPNサービスのウェブサイトから設定ファイル(.ovpn)をダウンロード
- ダウンロードしたファイルを開く
- 「OpenVPN Connectで開く」を選択
- アプリが起動し、設定ファイルがインポートされる
- 「ADD」または「追加」をタップ
- VPNサービスのユーザー名とパスワードを入力
- 接続スイッチをオンにする
AndroidでOpenVPNを設定する
手順:
- Google Play Storeから「OpenVPN for Android」をダウンロード
- VPNサービスから設定ファイル(.ovpn)をダウンロード
- OpenVPNアプリを開く
- 「+」ボタンをタップ
- 「Import」→「Import profile from SD card」を選択
- ダウンロードした.ovpnファイルを選択
- 「IMPORT」をタップ
- 設定が追加されたら、その設定をタップ
- ユーザー名とパスワードを入力
- 「接続」をタップ
よくあるトラブルと解決方法
問題1:「VPN接続に失敗しました」と表示される
原因と対処法:
- サーバーアドレスが間違っている
→ 正しいアドレスを再確認して入力し直す - ユーザー名またはパスワードが間違っている
→ 大文字・小文字、半角・全角に注意して再入力 - シークレット(事前共有キー)が間違っている
→ VPNサービスから正しいキーを確認 - インターネット接続が不安定
→ Wi-Fiやモバイルデータの接続を確認 - VPNサーバーがダウンしている
→ しばらく待ってから再度試す、または別のサーバーを試す
問題2:接続はできるがインターネットが使えない
原因と対処法:
- DNSの設定に問題がある
→ VPNサービスに正しいDNS設定を確認 - 「すべての通信を送信」がオフになっている
→ この設定をオンにする - ファイアウォールやセキュリティアプリがブロックしている
→ 一時的に無効にして試す
問題3:VPN接続が頻繁に切れる
原因と対処法:
- ネットワークが不安定
→ 安定したWi-Fi環境で試す - プロトコルが適していない
→ L2TPからIKEv2に変更してみる - バッテリー節約モードが有効
→ バッテリー最適化の設定でVPNアプリを除外
問題4:会社のVPNに接続できない
原因と対処法:
- 証明書が必要
→ IT部門に証明書ファイルの提供を依頼 - 特定のポートが必要
→ 会社のネットワーク管理者に確認 - 二段階認証が必要
→ 認証アプリやトークンを準備
VPN接続の確認方法
VPNに正しく接続できているか確認する方法です。
接続状態の確認
iPhone:
- 画面上部のステータスバーに「VPN」アイコンが表示される
- 「設定」→「一般」→「VPN」で「接続済み」と表示される
Android:
- 画面上部の通知バーにVPNアイコン(鍵マーク)が表示される
- 通知パネルにVPN接続の通知が表示される
IPアドレスの確認
VPN接続後、本当にIPアドレスが変わっているか確認しましょう。
確認方法:
- ブラウザで「IP確認」や「what is my ip」と検索
- 表示されたIPアドレスを確認
- VPNサーバーの所在地と一致しているか確認
セキュリティと注意点

信頼できるVPNのみを使う
VPN接続を確立すると、すべての通信がVPNサーバーを経由します。
つまり、VPNプロバイダーはあなたのオンライン活動を見ることができる可能性があるんです。
必ず信頼できるVPNサービスのみを使用してください。
公共Wi-Fiでは必ずVPNを使う
カフェや空港などの無料Wi-Fiは、セキュリティが弱く、情報を盗まれるリスクがあります。
公共Wi-Fiを使う際は、必ずVPNに接続してから通信を行いましょう。
パスワードは安全に管理する
VPNのパスワードは、他のサービスと同じものを使い回さないようにしてください。
パスワードマネージャーアプリを使って、安全に管理することをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
Q1:無料VPNサービスは安全ですか?
A:無料VPNの中には、ユーザーのデータを収集・販売しているものもあります。セキュリティを重視するなら、信頼できる有料VPNサービスの利用をおすすめします。
Q2:VPN接続中は通信速度が遅くなりますか?
A:はい、VPNを使用すると暗号化処理とサーバー経由のルーティングにより、通常より速度が低下します。ただし、高品質なVPNサービスなら、速度低下は最小限に抑えられます。
Q3:複数のVPN設定を保存できますか?
A:はい、できます。仕事用、プライベート用など、複数のVPN設定を登録して、必要に応じて切り替えることができます。
Q4:VPN接続はバッテリーを消費しますか?
A:はい、VPN接続は暗号化処理のため、通常よりもバッテリーを消費します。長時間使用する場合は、モバイルバッテリーを準備することをおすすめします。
Q5:VPNを使うと違法ですか?
A:日本を含むほとんどの国では、VPNの使用は合法です。ただし、VPNを使って違法行為を行うことは当然違法です。また、一部の国ではVPN自体の使用が制限されている場合があります。
Q6:会社のVPNと個人のVPNを同時に使えますか?
A:通常、同時に複数のVPN接続はできません。どちらか一方のVPNのみが有効になります。
Q7:L2TPとIKEv2、どちらを選ぶべきですか?
A:一般的にはIKEv2の方が高速で安定していますが、サービスによってはL2TPのみ対応している場合もあります。まずはIKEv2を試して、接続できない場合はL2TPを使うのがおすすめです。
まとめ
VPNの手動設定は、最初は難しく感じるかもしれませんが、一度設定してしまえば、その後は簡単に接続できます。
VPN手動設定のポイント:
- 必要な情報を事前に準備する(サーバーアドレス、ユーザー名、パスワード、シークレット)
- 適切なプロトコルを選ぶ(初心者はL2TP、高速接続ならIKEv2)
- 設定項目を正確に入力する(大文字・小文字、スペースに注意)
- 接続状態を必ず確認する(VPNアイコン、IPアドレス)
- 信頼できるVPNサービスのみを使う
おすすめの使い方:
- 会社VPN:IKEv2またはL2TPで設定
- 自宅VPN:L2TPで設定(簡単)
- 高セキュリティが必要:OpenVPN(アプリ必要)
特にテレワークや外出先での作業が多い方は、VPNの手動設定方法を覚えておくと、いざという時に便利です。
公共Wi-Fiを使う際は、必ずVPNに接続してから通信を行うことで、あなたの大切な情報を守ることができます。
あなたも今日からVPN手動設定をマスターして、安全で快適なインターネット生活を送りましょう!

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