vCard(.vcf)完全ガイド:電子名刺の標準フォーマットを徹底解説

スマートフォンで連絡先を交換する時、メールに添付された「.vcf」というファイル。これを開くと、名前や電話番号が自動的にアドレス帳に追加される——こんな経験はありませんか?

あるいは、仕事で名刺交換の代わりにメールで連絡先を送る時、OutlookやiPhoneから簡単にエクスポートできる「連絡先ファイル」。

これらすべてがvCard(ブイカード)という電子名刺の標準形式です。

今回は、世界中で使われている連絡先データの共通言語「vCard形式(.vcfファイル)」について、その仕組みから使い方まで、すべてを詳しく解説します。

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  1. vCard(.vcf)とは何か?
    1. 定義:電子名刺の国際標準
    2. 紙の名刺をデジタル化
    3. vCardの特徴
  2. vCardの歴史
    1. 1995年:誕生の背景
    2. 1996年:標準化団体への移管
    3. 主要バージョンの歴史
    4. 2002年以降:CalConnectによる継続開発
  3. vCardファイルの中身を見てみよう
    1. 基本構造
    2. 各項目の意味
    3. 複数の連絡先を1ファイルに
  4. バージョンによる違い
    1. vCard 2.1の特徴
    2. vCard 3.0の特徴
    3. vCard 4.0の特徴(最新版)
    4. バージョン比較表
  5. vCardの使い方
    1. 【使い方1】iPhone / iOS
    2. 【使い方2】Android
    3. 【使い方3】Outlook(Windows / Mac)
    4. 【使い方4】Gmail / Google連絡先
    5. 【使い方5】macOS連絡先アプリ
    6. 【使い方6】メールに添付して送信
  6. vCardの主な用途
    1. 【用途1】ビジネス名刺の交換
    2. 【用途2】連絡先のバックアップ
    3. 【用途3】複数デバイス間での同期
    4. 【用途4】ウェブサイトへの埋め込み
    5. 【用途5】CRM(顧客管理)システム
    6. 【用途6】メール署名
  7. vCardの関連技術
    1. CardDAV
    2. jCard(JSON形式)
    3. xCard(XML形式)
  8. よくある問題と解決法
    1. Q1:日本語が文字化けする
    2. Q2:写真が表示されない
    3. Q3:複数の連絡先が1ファイルになって困る
    4. Q4:インポートしても連絡先が増えない
    5. Q5:Outlookで日本語の名前が逆順になる
    6. Q6:テキストエディタで開くと文字化けする
  9. vCardの未来
    1. より広範な用途
    2. セキュリティとプライバシー
    3. 新しいプロパティの追加
  10. まとめ:vCardは連絡先交換の共通言語

vCard(.vcf)とは何か?

定義:電子名刺の国際標準

vCard(ブイカード)は、電子名刺用の標準ファイル形式です。

正式名称: Virtual Contact File(仮想連絡先ファイル)

拡張子: .vcf

読み方:

  • vCard = ブイカード / バーチャルカード
  • VCF = ブイシーエフ

紙の名刺をデジタル化

紙の名刺に書かれている情報:

  • 名前
  • 会社名
  • 部署・役職
  • 電話番号
  • メールアドレス
  • 住所
  • ウェブサイト

vCardで保存できる情報:

  • 上記すべて + 写真、ロゴ、誕生日、音声メモ、SNSアカウントなど

vCardの特徴

1. 国際標準規格

  • IETF(Internet Engineering Task Force)により標準化
  • 世界中のソフトウェアで共通して使える

2. プレーンテキスト形式

  • メモ帳などのテキストエディタで開ける
  • 人間が読める形式

3. 高い互換性

  • iPhone、Android、Outlook、Gmailなど、ほとんどのシステムで対応

4. 軽量

  • テキストベースなので容量が小さい
  • メールに添付しやすい

vCardの歴史

1995年:誕生の背景

Versit Consortium(バーシット・コンソーシアム)により開発

創設メンバー:

  • Apple(アップル)
  • AT&T Technologies(後のルーセント・テクノロジー)
  • IBM
  • Siemens(シーメンス)

目的:
電子的な名刺交換の標準を作る

1996年:標準化団体への移管

Internet Mail Consortium(IMC)へ移管

  • 電子メール関連技術の標準化を推進

主要バージョンの歴史

vCard 2.1(1996年):

  • 初期バージョン
  • 広く普及
  • 現在も多くのシステムで使用中

vCard 3.0(1998年):

  • RFC 2425、RFC 2426として標準化
  • 機能が大幅拡張
  • より明確な構文ルール

vCard 4.0(2011年):

  • RFC 6350として標準化
  • UTF-8文字セットに統一
  • スタンドアロンファイル形式として正式化
  • 最新の標準

2002年以降:CalConnectによる継続開発

CalConnect(Calendar and Scheduling Consortium):

  • 2003年設立
  • vCard標準の継続的な開発と保守
  • IETFと協力して新機能を追加

vCardファイルの中身を見てみよう

基本構造

vCardファイルはプレーンテキストです。メモ帳で開くと、こんな内容が見えます:

BEGIN:VCARD
VERSION:3.0
N:山田;太郎;;;
FN:山田太郎
ORG:サンプル株式会社
TITLE:営業部長
TEL;TYPE=WORK,VOICE:03-1234-5678
TEL;TYPE=CELL:090-1234-5678
EMAIL:yamada@example.com
ADR;TYPE=WORK:;;東京都千代田区1-2-3;千代田区;東京都;100-0001;日本
URL:https://www.example.com
END:VCARD

各項目の意味

BEGIN:VCARD / END:VCARD

  • vCardの開始と終了を示す
  • この間に1人分の連絡先情報が入る

VERSION:3.0

  • vCardのバージョン
  • 必須項目

N(Name):

  • 構造化された名前
  • 形式:姓;名;ミドルネーム;敬称(前);敬称(後)
  • 例:N:山田;太郎;;;;;(セミコロンで区切る)

FN(Formatted Name):

  • 表示用の名前
  • 必須項目
  • 例:FN:山田太郎

ORG(Organization):

  • 所属組織
  • 例:ORG:サンプル株式会社;営業部(会社名;部署名)

TITLE(Title):

  • 役職
  • 例:TITLE:営業部長

TEL(Telephone):

  • 電話番号
  • TYPE で種類を指定(WORK=会社、HOME=自宅、CELL=携帯、FAX=ファックス)
  • 例:TEL;TYPE=WORK,VOICE:03-1234-5678

EMAIL:

  • メールアドレス
  • 例:EMAIL:yamada@example.com

ADR(Address):

  • 住所
  • 形式:;;番地;市区町村;都道府県;郵便番号;国
  • 例:ADR;TYPE=WORK:;;東京都千代田区1-2-3;千代田区;東京都;100-0001;日本

URL:

  • ウェブサイト
  • 例:URL:https://www.example.com

PHOTO:

  • 写真(Base64エンコードまたはURL)

BDAY(Birthday):

  • 誕生日
  • 例:BDAY:1980-01-01

NOTE:

  • メモ・備考

複数の連絡先を1ファイルに

複数人の連絡先を1つのvCFファイルに保存することもできます:

BEGIN:VCARD
VERSION:3.0
N:山田;太郎
FN:山田太郎
TEL:090-1111-2222
END:VCARD
BEGIN:VCARD
VERSION:3.0
N:佐藤;花子
FN:佐藤花子
TEL:090-3333-4444
END:VCARD

注意:

  • macOS / iOS: 通常、複数の連絡先を1ファイルにまとめる
  • Outlook: 通常、1ファイル = 1連絡先

バージョンによる違い

vCard 2.1の特徴

時期: 1996年~

文字セット:

  • 複数の文字セットをサポート
  • 日本語の場合、文字化けを防ぐため特殊なエンコーディング(Quoted-Printable)を使用

主な特徴:

  • シンプルな構造
  • 広く普及している
  • 古いシステムとの互換性が高い

制限:

  • 複雑な文字や多言語対応が弱い
  • セキュリティ機能が基本的

vCard 3.0の特徴

時期: 1998年~

改善点:

1. 明確な構文ルール

  • エラーが減少
  • パース(解析)しやすい

2. 拡張メディアサポート

  • 高品質の画像
  • 音声クリップ

3. 新しいデータ型

  • 地理的位置情報(緯度・経度)
  • タイムゾーン

4. 改善されたエンコーディング

  • 多言語サポート強化
  • 複雑なデータの保存が可能

vCard 4.0の特徴(最新版)

時期: 2011年~

大きな変更点:

1. UTF-8に統一

  • 文字セットはUTF-8のみ
  • 文字化けの問題がほぼ解消
  • 多言語対応が完璧に

2. スタンドアロンファイル形式

  • MIMEタイプ:text/vcard
  • メール添付に限らず、単独ファイルとして正式化

3. 新しいプロパティ

  • KIND:個人、組織、グループ、場所を区別
  • GENDER:性別
  • LANG:優先言語
  • CLIENTPIDMAP:同期用

4. セキュリティ強化

  • 暗号化鍵の統合

5. 互換性の改善

  • ベンダー固有の拡張を標準化

バージョン比較表

項目vCard 2.1vCard 3.0vCard 4.0
公開年1996年1998年2011年
文字セット複数対応複数対応UTF-8のみ
標準化なしRFC 2425/2426RFC 6350
画像サポート基本的高品質対応高品質対応
地理情報なしありあり
KIND属性なしなしあり
普及度★★★★★★★★
互換性高い高いやや低い

vCardの使い方

【使い方1】iPhone / iOS

エクスポート(送信):

  1. 「連絡先」アプリを開く
  2. 送信したい連絡先を選択
  3. 下にスクロールして「連絡先を送信」をタップ
  4. 送信方法を選択(メール、メッセージ、AirDropなど)

インポート(受信):

  1. メールやメッセージで.vcfファイルを受信
  2. ファイルをタップ
  3. 「新規連絡先を作成」または「既存の連絡先に追加」
  4. 自動的に連絡先に追加される

一括エクスポート(iCloud経由):

  1. iCloud.com にアクセス
  2. 「連絡先」を開く
  3. エクスポートしたい連絡先を選択(全選択も可能)
  4. 設定アイコン(歯車)→「vCardを書き出す」

【使い方2】Android

エクスポート:

  1. 「連絡先」アプリを開く
  2. メニュー(≡)→「設定」
  3. 「エクスポート」を選択
  4. 保存先を選択(内部ストレージ、SDカード、Googleドライブなど)
  5. .vcfファイルが作成される

インポート:

  1. 「連絡先」アプリを開く
  2. メニュー(≡)→「設定」
  3. 「インポート」を選択
  4. インポート元を選択
  5. .vcfファイルを選択

【使い方3】Outlook(Windows / Mac)

エクスポート(1件):

  1. Outlookで「連絡先」を開く
  2. エクスポートしたい連絡先を右クリック
  3. 「名前を付けて保存」→「vCardファイルにエクスポート」

エクスポート(複数件):

  1. 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」
  2. 「ファイルにエクスポート」を選択
  3. 「カンマ区切りの値」または「Outlook データ ファイル」
    (注:vCard形式での一括エクスポートは制限あり)

インポート:

  1. .vcfファイルをダブルクリック
  2. 自動的にOutlookが開き、連絡先が追加される

または

  1. .vcfファイルを「連絡先」フォルダにドラッグ&ドロップ

【使い方4】Gmail / Google連絡先

エクスポート:

  1. contacts.google.com にアクセス
  2. エクスポートしたい連絡先を選択
  3. 左側のメニューから「エクスポート」
  4. 形式で「vCard」を選択
  5. 「エクスポート」をクリック

インポート:

  1. contacts.google.com にアクセス
  2. 左側のメニューから「インポート」
  3. .vcfファイルを選択
  4. 「インポート」をクリック

【使い方5】macOS連絡先アプリ

エクスポート:

  1. 「連絡先」アプリを開く
  2. エクスポートしたい連絡先を選択(全選択: Command+A)
  3. 「ファイル」→「書き出す」→「vCardを書き出す」
  4. 保存先を選択

インポート:

  1. 「ファイル」→「読み込む」
  2. .vcfファイルを選択
  3. 自動的にインポートされる

または

  • .vcfファイルをダブルクリック

【使い方6】メールに添付して送信

Outlook:

  1. 新規メッセージ作成
  2. 「挿入」タブ→「名刺」→「その他の名刺」
  3. 送信したい連絡先を選択
  4. 自動的に.vcfファイルとして添付される

vCardの主な用途

【用途1】ビジネス名刺の交換

メリット:

  • 紙の名刺を持ち歩かなくても良い
  • 入力ミスがない
  • 即座にアドレス帳に追加
  • 環境に優しい

方法:

  • メール添付
  • QRコード化
  • NFC(近距離無線通信)

【用途2】連絡先のバックアップ

活用例:

  • スマホ機種変更時
  • PC故障時の復元
  • 定期的なバックアップ

推奨:

  • 月1回、全連絡先をvCardでエクスポート
  • クラウドストレージに保存

【用途3】複数デバイス間での同期

シナリオ:

  • iPhone → Android への移行
  • 会社のOutlook → 個人のGmail
  • PC → スマートフォン

vCardのメリット:
異なるシステム間でも互換性が高い

【用途4】ウェブサイトへの埋め込み

hCard(HTMLマイクロフォーマット):

  • Webページ内にvCard情報を埋め込み
  • ブラウザ拡張機能で抽出可能

例:

<div class="vcard">
  <span class="fn">山田太郎</span>
  <span class="tel">03-1234-5678</span>
  <span class="email">yamada@example.com</span>
</div>

【用途5】CRM(顧客管理)システム

活用:

  • 顧客情報のインポート・エクスポート
  • 営業チーム間での連絡先共有
  • マーケティングツールへのデータ連携

【用途6】メール署名

Outlook:
メール署名に電子名刺を含めることで、受信者が簡単に連絡先を保存できる

vCardの関連技術

CardDAV

CardDAV(カードダブ):

  • vCardデータをサーバーで管理するプロトコル
  • クライアント・サーバー間で同期

使用例:

  • iCloud連絡先
  • Google連絡先
  • Microsoft Exchange

jCard(JSON形式)

jCard:

  • vCardをJSON形式で表現
  • RFC 7095として標準化
  • Web APIでの利用に最適

例:

["vcard",
  [
    ["version", {}, "text", "4.0"],
    ["fn", {}, "text", "山田太郎"],
    ["tel", {"type":"work"}, "text", "03-1234-5678"]
  ]
]

xCard(XML形式)

xCard:

  • vCardをXML形式で表現
  • 構造化されたデータ交換に便利

よくある問題と解決法

Q1:日本語が文字化けする

原因:

  • 文字エンコーディングの不一致
  • 古いvCard 2.1形式

解決法:

方法1:vCard 3.0以降を使用

  • UTF-8対応システムでエクスポート

方法2:専用ツールで変換

  • 文字コード変換ソフトを使用

Q2:写真が表示されない

原因:

  • Base64エンコードが大きすぎる
  • 対応していない画像形式

解決法:

  • 画像サイズを小さくする(推奨:300×300ピクセル以下)
  • JPEG形式を使用

Q3:複数の連絡先が1ファイルになって困る

macOS / iOS:

  • 標準で1ファイルに複数連絡先を含める
  • 1件ずつ個別にエクスポート(手間がかかる)

解決法:

  • 専用の分割ツールを使用
  • テキストエディタで手動分割(上級者向け)

Q4:インポートしても連絡先が増えない

原因:

  • すでに同じ連絡先が存在(重複)
  • ファイル形式のエラー

解決法:

  1. テキストエディタで.vcfファイルを開く
  2. BEGIN:VCARDEND:VCARDが正しく対応しているか確認
  3. バージョンが記載されているか確認

Q5:Outlookで日本語の名前が逆順になる

原因:

  • N(構造化名前)とFN(表示名)の設定

解決法:

  • FNプロパティを正しく設定する
  • 例:FN:山田太郎(姓名の順)

Q6:テキストエディタで開くと文字化けする

Windows:

  • メモ帳のエンコーディング設定を「UTF-8」に

解決法:

  • 「名前を付けて保存」→文字コード「UTF-8」
  • または専用の連絡先アプリで開く

vCardの未来

より広範な用途

個人情報を超えて:

  • vCard 4.0では「KIND」属性で、個人・組織・グループ・場所を区別
  • 店舗情報、イベント会場などにも応用可能

セキュリティとプライバシー

課題:

  • vCardは平文(プレーンテキスト)
  • 暗号化されていない

対策:

  • 送信時にメール暗号化
  • 機密情報は含めない

新しいプロパティの追加

CalConnectとIETFで継続的に開発中

将来の可能性:

  • ソーシャルメディアアカウント(標準化)
  • 暗号通貨アドレス
  • NFCタグ情報

まとめ:vCardは連絡先交換の共通言語

vCard(.vcf)形式は、1995年の誕生以来、連絡先情報を交換する国際標準として広く使われています。

vCardの強み:

  1. 互換性の高さ
  • iPhone、Android、Outlook、Gmailなど、あらゆるシステムで対応
  1. シンプルさ
  • テキストベースで軽量
  • メールに簡単に添付できる
  1. 国際標準
  • IETFによる標準化
  • 世界中で同じ形式を使用
  1. 拡張性
  • 写真、音声、地理情報など豊富なデータに対応

主な用途:

  • ビジネス名刺の電子化
  • 連絡先のバックアップ
  • デバイス間の移行
  • CRMシステムとの連携

バージョンの選択:

  • 互換性重視: vCard 2.1 / 3.0
  • 最新機能・多言語: vCard 4.0

覚えておきたいポイント:

  • .vcfファイルはプレーンテキスト
  • メモ帳で開いて編集可能
  • BEGIN:VCARDとEND:VCARDで囲まれた1ブロック = 1連絡先
  • 複数の連絡先を1ファイルに保存可能

vCardを活用することで、紙の名刺を持ち歩かなくても手入力のミスなくすぐにアドレス帳に追加できる——デジタル時代の連絡先交換を、スマートに実現できます。

あなたも今日から、vCardで連絡先をスマートに管理してみませんか?

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