Unity でゲームやアプリを作り始めるとき、
「Android Build Support って何?」
「iOS Build Support はいるの?」
「WebGL って何に使うの?」
と、たくさんのモジュール名を見て困惑した経験はありませんか?
Unity の「モジュール」は、開発者が必要な機能だけを選んでインストールできる仕組みです。
すべての機能を最初から入れるのではなく、「Android アプリを作りたい人は Android用の機能だけ」「Web ゲームを作りたい人は WebGL の機能だけ」を追加できます。
この記事では、Unity 初心者の方でもモジュールの概念を理解し、自分のプロジェクトに必要なモジュールを正しく選択・インストールできるよう、詳しく解説します。
Unity モジュールの基本概念

モジュールシステムとは
定義 Unity の「モジュール」とは、Unity Editor の基本機能に追加できる拡張パッケージのことです。
なぜモジュール制を採用しているのか
- ダウンロードサイズの軽減:必要な機能のみインストール
- ストレージ容量の節約:使わない機能は入れない
- 起動速度の向上:不要な機能の読み込みを避ける
- 管理の簡素化:プロジェクトごとに最適な環境構築
モジュールの役割
- プラットフォーム対応:Android、iOS、WebGL などへのビルド機能
- 開発ツール統合:Visual Studio、プロファイラーなどのツール
- 言語・地域対応:多言語サポート、地域別設定
- 特殊機能:AR/VR、機械学習などの専門機能
Unity のアーキテクチャ構造
コア部分
- Unity Editor(統合開発環境)
- Unity Engine(ゲームエンジン本体)
- スクリプティング機能(C# サポート)
- 基本的なレンダリング機能
モジュラー部分
- プラットフォーム別ビルドツール
- 外部ツール統合機能
- 専門分野向け機能
- 地域・言語対応機能
主要モジュールの詳細解説

プラットフォーム別ビルドサポート
Android Build Support
含まれる機能
- Android SDK(Software Development Kit)
- Android NDK(Native Development Kit)
- OpenJDK(Java Development Kit)
- Gradle(ビルドシステム)
実際にできること
- Android APK ファイルの作成
- Google Play Store への公開準備
- Android 特有の機能(センサー、カメラなど)の利用
- 様々な Android デバイスでのテスト
必要になる場面
- スマートフォン向けゲーム開発
- Android タブレット用アプリ制作
- Google Play Store での販売を検討
iOS Build Support
含まれる機能
- Xcode プロジェクト生成機能
- iOS SDK 連携機能
- App Store Connect 対応機能
実際にできること
- iPhone/iPad 用アプリの作成
- App Store での販売準備
- iOS 特有の機能(Touch ID、Face ID など)の利用
- TestFlight を使ったテスト配布
重要な注意点
- Mac が必要:iOS アプリのビルドには Mac 環境が必須
- Apple Developer アカウント:実機テストには年間 99 ドルの登録料
- Xcode:Apple の開発環境が別途必要
WebGL Build Support
含まれる機能
- WebAssembly 変換機能
- ブラウザ最適化機能
- JavaScript 連携機能
実際にできること
- ブラウザで動作するゲーム・アプリの作成
- Unity WebGL Player での実行
- itch.io や独自サイトでの公開
制限事項
- モバイルブラウザでは性能制限あり
- ファイルサイズが大きくなりがち
- すべての Unity 機能が使えるわけではない
デスクトップ プラットフォーム
Windows Build Support (IL2CPP)
- Windows 10/11 向けアプリケーション
- Microsoft Store での販売対応
- 高性能な実行ファイル生成
Mac Build Support (Mono)
- macOS 向けアプリケーション
- Mac App Store での販売対応
- Intel/Apple Silicon 両対応
Linux Build Support (IL2CPP)
- Ubuntu、Fedora などの Linux ディストリビューション
- Steam での Linux 版販売
- オープンソースコミュニティ向け
開発ツール・IDE統合
Visual Studio Support
含まれる機能
- IntelliSense(コード補完)
- デバッガー統合
- Unity 専用のプロジェクトテンプレート
メリット
- 高度なコード編集機能
- 強力なデバッグツール
- Unity と連携したブレークポイント設定
Visual Studio Code Support
特徴
- 軽量で高速なエディタ
- 豊富な拡張機能
- クロスプラットフォーム対応
専門分野向けモジュール
XR Plugin Management
含まれる機能
- VR ヘッドセット対応(Oculus、HTC Vive など)
- AR 機能(ARCore、ARKit)
- Mixed Reality 対応
実際にできること
- VR ゲームの開発
- AR アプリの制作
- 空間認識機能の利用
Machine Learning Agents
含まれる機能
- AI エージェントの学習環境
- 強化学習アルゴリズム
- Python との連携機能
活用例
- NPC の AI 行動学習
- 自動テストの実行
- ゲームバランスの調整
言語・地域対応
Language Packs
対応言語
- 日本語(Japanese)
- 中国語(Chinese)
- 韓国語(Korean)
- フランス語(French)
- ドイツ語(German)
- スペイン語(Spanish)
変更される部分
- Unity Editor のメニュー・ダイアログ
- エラーメッセージ
- ヘルプドキュメント
モジュールのインストールと管理

Unity Hub を使った管理方法
新規インストール時の選択
ステップ1:Unity Hub の起動
- Unity Hub を開く
- 「インストール」タブをクリック
- 「エディターをインストール」を選択
ステップ2:バージョンの選択
- インストールしたい Unity バージョンを選択
- 「次へ」をクリック
ステップ3:モジュールの選択
- 必要なモジュールにチェックを入れる
- 「インストール」をクリックして開始
初心者向けおすすめセット
- 基本セット:Android Build Support、Windows Build Support
- モバイル重視:Android、iOS Build Support
- Web 重視:WebGL Build Support、Windows Build Support
- 学習用:Windows Build Support、Visual Studio Support
既存インストールへの追加
モジュール追加の手順
- Unity Hub の「インストール」タブを開く
- 対象バージョンの右側にある「⋮」(三点リーダー)をクリック
- 「モジュールを追加」を選択
- 追加したいモジュールを選択
- 「完了」をクリック
モジュール削除の方法
- 同様に「モジュールを追加」画面を開く
- 不要なモジュールのチェックを外す
- 「完了」をクリック
- Unity Hub が自動的に不要ファイルを削除
コマンドラインからのインストール
Unity Hub CLI の使用
基本コマンド
# モジュール一覧の確認
UnityHub -- --headless help
# 特定バージョンにモジュール追加
UnityHub -- --headless install-modules --version 2023.1.0f1 --module android-sdk-ndk-tools
自動化スクリプトの例
# 複数モジュールの一括インストール
UnityHub -- --headless install-modules \
--version 2023.1.0f1 \
--module android-sdk-ndk-tools \
--module ios-build-support \
--module webgl-build-support
ストレージ使用量の管理
モジュール別の容量目安
| モジュール名 | 概算サイズ | 主な構成要素 |
|---|---|---|
| Android Build Support | 3-5 GB | SDK、NDK、JDK |
| iOS Build Support | 500 MB – 1 GB | iOS 用ツール |
| WebGL Build Support | 200-500 MB | WebAssembly ツール |
| Visual Studio Support | 100-300 MB | IDE 統合ツール |
| Language Pack | 50-100 MB | 言語リソース |
容量節約のコツ
不要なモジュールの削除
- 使用していないプラットフォーム用モジュール
- 古いバージョンの Unity と重複するモジュール
- テスト用に入れたが使わなくなったモジュール
定期的なクリーンアップ
- Unity Hub での使用状況確認
- プロジェクトの要件変更に応じた見直し
- ディスク容量が不足した際の優先削除順位決定
プロジェクト種別での最適なモジュール構成

モバイルゲーム開発
必須モジュール
- Android Build Support
- iOS Build Support(Mac 環境の場合)
推奨モジュール
- Visual Studio または Visual Studio Code
- プロファイラー機能
- 言語パック(対象市場に応じて)
設定のポイント
- Android:最小 API レベルの設定
- iOS:最小 iOS バージョンの設定
- パフォーマンス最適化の考慮
PC/コンソールゲーム開発
必須モジュール
- Windows Build Support
- Mac Build Support(Mac 販売予定の場合)
- Linux Build Support(Steam 販売予定の場合)
推奨モジュール
- Visual Studio Support
- プロファイラー
- ハイエンド レンダリング機能
VR/AR アプリケーション
必須モジュール
- 対象プラットフォームの Build Support
- XR Plugin Management
- AR Foundation(AR の場合)
推奨モジュール
- 高性能レンダリングパイプライン
- 最適化ツール
- デバッグ・プロファイリングツール
Web ゲーム・アプリケーション
必須モジュール
- WebGL Build Support
推奨モジュール
- 軽量レンダリングパイプライン
- 圧縮・最適化ツール
- ブラウザ互換性テストツール
トラブルシューティング

よくある問題と解決法
モジュールが正しくインストールされない
症状
- インストールが途中で止まる
- モジュールが利用できない
- エラーメッセージが表示される
対処法
- ネットワーク接続の確認
- 安定したインターネット接続
- ファイアウォール設定の確認
- プロキシ設定の確認
- 管理者権限での実行
- Unity Hub を管理者として実行
- インストール先フォルダの書き込み権限確認
- ディスク容量の確認
- 十分な空き容量の確保
- 一時ファイルの削除
ビルドエラーが発生する
Android ビルドエラー
- JDK バージョンの確認
- Android SDK の更新
- 環境変数の設定確認
iOS ビルドエラー
- Xcode のバージョン確認
- iOS SDK の更新
- 証明書とプロビジョニングプロファイルの確認
WebGL ビルドエラー
- ブラウザ対応状況の確認
- WebAssembly の制限事項確認
- メモリ使用量の最適化
パフォーマンス最適化
開発環境の高速化
SSD の活用
- Unity インストール先を SSD に設定
- プロジェクトファイルを SSD に配置
- キャッシュフォルダを SSD に移動
メモリ最適化
- 不要なモジュールの削除
- バックグラウンドアプリの終了
- 十分な RAM 容量の確保
最新動向と将来性
Unity のモジュール戦略
Cloud Build との統合
- クラウドでのビルド処理
- ローカル環境の軽量化
- 複数プラットフォームの同時ビルド
パッケージマネージャーとの連携
- より細かな機能単位での管理
- サードパーティパッケージとの統合
- 依存関係の自動解決
新しいプラットフォーム対応
新興プラットフォーム
- ゲームコンソールの新世代対応
- AR/VR デバイスの多様化
- ストリーミングゲームプラットフォーム
技術トレンドへの対応
- 機械学習・AI 機能の強化
- ブロックチェーン・NFT 対応
- クロスプラットフォーム開発の進化
まとめ:効率的なUnity開発のためのモジュール活用
Unity のモジュールシステムは、開発者が必要な機能だけを選択して効率的な開発環境を構築するための仕組みです。
適切なモジュール選択により、ストレージ容量の節約、開発効率の向上、そして最終的にはより良いアプリケーションの開発が可能になります。


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