パソコンの電源を入れても、Ubuntuがうまく起動しない…
アップデート後に画面が真っ暗になってしまった…
パスワードを忘れてログインできない…
こんなトラブルに遭遇したとき、あなたはどうしますか?
実は、Ubuntuにはリカバリーモードという強力な機能が標準で用意されています。
この記事では、Ubuntuのリカバリーモードについて、初心者の方でも安心して使えるように、起動方法から具体的な使い方まで詳しく解説していきます。
リカバリーモードとは?Ubuntuの「救急箱」
システム修復のための特別な起動モード
リカバリーモードは、Ubuntuに問題が発生したときに使用する、特別な起動モードです。
通常の起動では読み込まれる様々なサービスやプログラムを最小限に抑え、システムの修復や設定変更を安全に行える環境を提供します。
Windowsでいうところの「セーフモード」に近いものだと考えてください。
どんな時に役立つのか
リカバリーモードは、以下のような状況で活躍します:
- システムが正常に起動しなくなった
- グラフィカル画面(デスクトップ)が表示されない
- パスワードを忘れてログインできない
- ディスク容量が一杯でシステムが動かない
- アップデート後にシステムが不安定になった
- パッケージの依存関係が壊れてしまった
つまり、通常の方法では解決できないトラブルの最終手段として使用するものです。
リカバリーモードの起動方法
基本的な起動手順
リカバリーモードを起動する方法は簡単です。
手順:
- パソコンの電源を入れる、または再起動する
- Shiftキーを長押しする(電源投入直後から)
- UEFI環境の場合はEscキーを押す場合もあります
- GRUBメニュー(ブートローダーの選択画面)が表示される
- 「Advanced options for Ubuntu」を選択してEnter
- 「Ubuntu, with Linux X.X.X-XX-generic (recovery mode)」を選択してEnter
- X.X.Xの部分はカーネルのバージョン番号です
- しばらく待つと、リカバリーモードのメニューが表示される
GRUBメニューが表示されない場合
まれに、GRUBメニューが自動的に表示されないことがあります。
その場合は、以下の方法を試してください:
- 起動時にShiftキーを何度か押す
- Escキーを試してみる
- 別のキーボードを使ってみる
それでも表示されない場合は、GRUBの設定を変更する必要があるかもしれません。
リカバリーモードのメニュー項目を理解しよう
リカバリーモードに入ると、いくつかのオプションが表示されます。
それぞれの機能を詳しく見ていきましょう。
resume(通常起動を再開)
リカバリーモードを終了して、通常の起動プロセスに戻ります。
修復作業が終わったら、このオプションで通常モードに戻りましょう。
clean(ディスク容量の確保)
古いパッケージファイルや不要なファイルを削除して、ディスク容量を確保します。
「ディスクが一杯でシステムが動かない」というトラブルの解決に役立ちます。
具体的には、以下のような作業を行います:
- 古いカーネルの削除
- パッケージキャッシュのクリーンアップ
- 一時ファイルの削除
dpkg(パッケージの修復)
壊れたパッケージの修復を試みます。
dpkgは、Ubuntuのパッケージ管理システムの中核を担うツールです。
アップデート中に中断してしまったり、パッケージの依存関係が壊れたりした場合に使用します。
このオプションを実行すると、インストールが未完了のパッケージを自動的に設定してくれます。
fsck(ファイルシステムのチェック)
fsckは「File System Check」の略で、ディスクのエラーをチェックして修復するツールです。
ファイルシステムに問題がある場合、このオプションで修復を試みることができます。
ただし、読み取り専用でマウントされている状態では実行できません。
先に「remount」オプションで読み書き可能にする必要があります。
grub(ブートローダーの更新)
GRUB(グラブ)は、OSを起動するためのブートローダーです。
このオプションを使うと、GRUBの設定を更新できます。
デュアルブート環境で問題が発生した場合や、GRUBが壊れてしまった場合に有効です。
network(ネットワークの有効化)
リカバリーモードでネットワーク接続を有効にします。
インターネット経由でパッケージをダウンロードしたり、オンラインの情報を参照したりする必要がある場合に使用します。
ただし、セキュリティ上の理由から、必要な時だけ有効にすることをおすすめします。
root(rootシェルの起動)
root権限(管理者権限)でコマンドラインシェルを起動します。
最も強力で柔軟なオプションですが、その分、使い方を誤るとシステムを壊す危険性もあります。
このオプションを選択すると、ファイルシステムは最初は読み取り専用でマウントされます。
ファイルを編集したい場合は、以下のコマンドで読み書き可能にする必要があります:
mount -o remount,rw /
system-summary(システム情報の表示)
システムの概要情報を表示します。
ディスクの使用状況やメモリ情報など、問題の原因を特定するのに役立つ情報が得られます。
実践!よくあるトラブルの解決方法
リカバリーモードを使った、具体的なトラブル解決方法を紹介します。
パスワードをリセットする
ユーザーパスワードを忘れてしまった場合の対処法です。
手順:
- リカバリーモードで起動
- 「root」を選択してEnter
- ファイルシステムを読み書き可能にする:
mount -o remount,rw /
- パスワードをリセットするコマンドを実行:
passwd ユーザー名
- 新しいパスワードを2回入力
exit
と入力してシェルを終了- 「resume」で通常起動
これで新しいパスワードでログインできるようになります。
ディスク容量不足を解消する
ディスクが一杯でシステムが正常に動作しない場合の対処法です。
手順:
- リカバリーモードで起動
- 「clean」を選択してEnter
- 不要なファイルが自動的に削除される
- さらに容量を確保したい場合は「root」から以下を実行:
apt-get autoremove
apt-get autoclean
- 「resume」で通常起動
これで数百MB〜数GBの容量を確保できることがあります。
壊れたパッケージを修復する
アップデート中にエラーが発生した場合の対処法です。
手順:
- リカバリーモードで起動
- 「network」を選択してネットワークを有効化
- 「dpkg」を選択してEnter
- パッケージの修復が自動的に実行される
- エラーメッセージが表示されなくなるまで繰り返す
- 「resume」で通常起動
グラフィカル画面が表示されない場合
デスクトップ環境が起動しない場合の対処法です。
手順:
- リカバリーモードで起動
- 「root」を選択してEnter
- ファイルシステムを読み書き可能にする:
mount -o remount,rw /
- ディスプレイマネージャーを再設定:
dpkg-reconfigure gdm3
- GNOMEの場合はgdm3
- KDE Plasmaの場合はsddm
- グラフィックドライバーの再インストール(必要に応じて):
apt-get update
apt-get install --reinstall xserver-xorg
exit
と入力してシェルを終了- 「resume」で通常起動
リカバリーモード使用時の注意点
バックアップの重要性
リカバリーモードでの作業は、システムの深い部分に影響を与えます。
可能であれば、作業前に重要なデータをバックアップしておくことを強くおすすめします。
特に「root」オプションを使う場合は、誤った操作でシステムを壊す可能性があるため、慎重に作業しましょう。
コマンドの確認
rootシェルで作業する際は、コマンドを実行する前に必ず内容を確認してください。
特にrm
(削除)コマンドやchmod
(権限変更)コマンドは、使い方を誤ると取り返しのつかないことになります。
ネットワーク接続のセキュリティ
リカバリーモードでネットワークを有効にする際は、信頼できるネットワーク環境で行いましょう。
公共のWi-Fiなどでは、セキュリティリスクが高まります。
リカバリーモードでも解決しない場合
リカバリーモードを使っても問題が解決しない場合は、以下の選択肢があります。
Live USBからの起動
Ubuntuのインストールメディア(Live USB)から起動すれば、インストールされているシステムに影響を与えずに、データの救出や修復作業ができます。
再インストールの検討
どうしても修復できない場合は、クリーンインストール(再インストール)を検討しましょう。
その際は、/home
パーティションを残しておけば、個人データを保持したまま再インストールできます。
コミュニティのサポート
Ubuntu日本フォーラムやAsk Ubuntuなど、コミュニティのサポートを活用するのも有効です。
エラーメッセージやログファイルを共有すれば、詳しい人からアドバイスをもらえることがあります。
まとめ:リカバリーモードはUbuntuの心強い味方
Ubuntuのリカバリーモードについて、重要なポイントをおさらいしましょう。
リカバリーモードとは:
- システムトラブル時に使用する特別な起動モード
- 必要最小限のサービスだけで起動する安全な環境
- Shiftキー(またはEscキー)で起動時にアクセス可能
主な機能:
- clean:ディスク容量の確保
- dpkg:パッケージの修復
- fsck:ファイルシステムのチェック
- root:管理者権限でのシェル起動
- network:ネットワーク接続の有効化
活用シーン:
- パスワードのリセット
- ディスク容量不足の解消
- 壊れたパッケージの修復
- グラフィカル環境の復旧
リカバリーモードは、Ubuntuを使う上で知っておくべき重要な機能です。
普段は使う機会がないかもしれませんが、いざという時に必ず役立ちます。
この記事で紹介した方法を覚えておけば、トラブルに遭遇しても慌てずに対処できるようになるでしょう。
安心してUbuntuライフを楽しんでくださいね!
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