Ubuntuを起動したのに、画面が真っ黒で何も表示されない。カーソルだけが点滅している、あるいは完全に真っ暗。
「データは大丈夫?」「もう起動しないの?」
そんな不安に襲われる瞬間です。でも、焦らないでください。
画面に何も表示されない問題は、実は多くの場合、簡単な操作で解決できるんです。データが消えることもほとんどありません。
この記事では、Ubuntuで画面が真っ暗になる原因と、段階的な解決方法を詳しく解説します。初心者の方でも安心して試せるように、一つ一つ丁寧に説明していきます。
まず確認:どの段階で何も表示されなくなったか
対処法を選ぶために、まずは状況を整理しましょう。
パターン1:電源を入れても完全に真っ暗
- パソコンのロゴすら表示されない
- 電源ランプはつく、またはつかない
- ファンの音が聞こえる、または聞こえない
可能性:ハードウェアの問題
パターン2:ロゴは表示されるが、その後真っ暗
- メーカーロゴやGRUB(起動メニュー)は表示される
- Ubuntuのロゴや起動画面の途中で真っ暗になる
- カーソル(点滅する四角や線)だけ見える場合もある
可能性:グラフィックドライバーの問題、起動プロセスの問題
パターン3:ログイン画面が表示されない
- 起動音は鳴る
- ハードディスクのアクセス音も聞こえる
- でも画面には何も表示されない
可能性:ディスプレイマネージャーの問題、グラフィック設定の問題
パターン4:アップデート後に起動しなくなった
- 前日まで正常に動いていた
- システムアップデートやドライバー更新後に発生
- カーネル更新が原因の可能性
可能性:新しいカーネルやドライバーとの非互換性
それでは、これらの状況に応じた対処法を見ていきましょう。
【基本編】最初に試すべき5つの対処法
難しいことは後回し。まずは簡単な方法から試してみましょう。
1. ハードウェアの基本を確認する
ソフトウェアの問題だと思い込む前に、物理的な接続を確認しましょう。
チェック項目:
- ディスプレイの電源は入っているか
- ディスプレイケーブル(HDMIやDisplayPortなど)はしっかり接続されているか
- ノートパソコンの場合、画面の明るさが最低になっていないか
- 外部モニターを使っている場合、入力ソースは正しく選択されているか
実例:
デスクトップパソコンで「起動しない!」と慌てていたら、実はディスプレイケーブルが緩んでいただけ、ということはよくあります。
2. 画面の明るさを調整してみる
ノートパソコンの場合、知らない間に画面の明るさが最低になっていることがあります。
やり方:
- キーボードの「Fn」キーを押しながら、明るさを上げるキー(太陽マークなど)を何度か押す
- 通常は「F5」「F6」や「F7」「F8」などに割り当てられています
3. 別の仮想コンソール(TTY)に切り替える
画面が真っ暗でも、実はUbuntuは正常に起動している場合があります。
TTYとは:
テキストベースの画面のこと。グラフィカルな画面ではなく、文字だけで操作できる画面です。
切り替え方法:
Ctrl + Alt + F3
を同時に押す
何が起こるか:
ログインプロンプト(ユーザー名を入力する画面)が表示されたら、Ubuntuは正常に起動しています。グラフィック表示だけに問題があるということです。
ログインしてみる:
- ユーザー名を入力してEnter
- パスワードを入力してEnter(画面には表示されません)
- ログインできたら、後述のコマンドで対処できます
元の画面に戻る:
Ctrl + Alt + F2
または Ctrl + Alt + F1
4. パソコンを完全に再起動する
一時的な不具合の可能性もあります。
やり方:
- 電源ボタンを長押し(約5〜10秒)
- 電源が切れるまで待つ
- 30秒ほど待ってから、もう一度電源を入れる
注意:
強制終了は通常の方法ではありませんが、画面が真っ暗で他に方法がない場合は仕方ありません。
5. 外付けデバイスを全て外す
外付けのUSBデバイスやSDカードが起動を妨げることがあります。
やり方:
- パソコンの電源を切る
- USBメモリ、外付けハードディスク、マウス(無線も含む)を全て外す
- 最小構成(本体とディスプレイのみ)で起動してみる
【応用編】GRUBメニューを使った対処法
ここからは、GRUBという起動メニューを使った方法を説明します。
GRUBとは
GRUB(グラブ)は、Ubuntuを起動する前に表示されるメニューです。通常は一瞬だけ表示されて自動的に進みますが、ここで色々な設定を変えられます。
6. GRUBメニューを表示させる
やり方:
- パソコンを起動する
- メーカーロゴが表示されたら、すぐに「Shift」キーを連打(または「Esc」キー)
- 黒い背景に白い文字のメニューが表示される
表示されない場合:
UEFIモードでは「Esc」キー、レガシーBIOSモードでは「Shift」キーが有効です。両方試してみましょう。
7. リカバリーモードで起動する
リカバリーモードは、問題を修復するための特別な起動モードです。
手順:
- GRUBメニューで「Advanced options for Ubuntu」を選択してEnter
- 「Ubuntu, with Linux X.X.X (recovery mode)」を選択してEnter
- X.X.Xはカーネルのバージョン番号
- リカバリーメニューが表示される
- 「resume」(通常起動を再開)を選択して試してみる
それでもダメなら:
リカバリーメニューで「root」(管理者シェル)を選択し、コマンドで修復を試みます(後述)。
8. 古いカーネルで起動してみる
最新のカーネルで問題が起きている場合、古いバージョンで起動できることがあります。
手順:
- GRUBメニューで「Advanced options for Ubuntu」を選択
- 最新ではない、一つ前のカーネルバージョンを選択
- Enterで起動
実例:
カーネルアップデート後に起動しなくなった場合、この方法で古いカーネルに戻せます。起動できたら、問題のあるカーネルをアンインストールすることも可能です。
9. nomodeset オプションを追加する
グラフィックドライバーの問題を回避する方法です。
noimodesetとは:
グラフィックカードの高度な機能を無効化して、基本的な表示モードで起動するオプションです。
手順:
- GRUBメニューで起動したいUbuntuを選択(Enterは押さない)
- 「e」キーを押す(編集モード)
- 「linux」で始まる行を探す
- 行末(「quiet splash」の後)に半角スペースを入れてから「nomodeset」と追加
- 「Ctrl + X」または「F10」キーを押して起動
編集例:
変更前:
linux /boot/vmlinuz-X.X.X root=UUID=... quiet splash
変更後:
linux /boot/vmlinuz-X.X.X root=UUID=... quiet splash nomodeset
注意点:
この変更は一時的です。次回起動時には元に戻ります。恒久的に設定したい場合は後述の方法を使います。
【グラフィック問題編】ドライバー関連の対処法
NVIDIA製やAMD製のグラフィックカードを使っている場合、ドライバーが原因のことが多いです。
10. グラフィックドライバーを再インストールする
前提条件:
TTY(Ctrl + Alt + F3)またはリカバリーモードでログインできること。
NVIDIAドライバーの場合:
# 既存のNVIDIAドライバーを削除
sudo apt purge nvidia-*
# オープンソースドライバー(Nouveau)に戻す
sudo apt install xserver-xorg-video-nouveau
# 再起動
sudo reboot
説明:
NVIDIAの独自ドライバーを削除して、標準のオープンソースドライバー(Nouveau:ヌーヴォー)に戻します。
起動できたら:
その後、必要に応じてNVIDIAドライバーを正しく再インストールできます。
AMDグラフィックカードの場合
AMD製カードの場合、標準ドライバーで問題が起きることは少ないですが、念のため:
# AMESAドライバーを再インストール
sudo apt install --reinstall xserver-xorg-video-amdgpu
sudo reboot
リカバリーモードでできる修復作業
リカバリーモードの「root」シェルに入れた場合、以下の修復を試せます。
ファイルシステムの修復
# ファイルシステムをチェック
fsck -f /
# 読み書き可能にする
mount -o remount,rw /
パッケージの修復
# ネットワークを有効化(リカバリーメニューで「network」を選択)
# パッケージデータベースを修復
sudo dpkg --configure -a
sudo apt update
sudo apt --fix-broken install
ディスプレイマネージャーの再設定
ディスプレイマネージャーとは:
ログイン画面を表示するプログラムです。GDM(GNOME Display Manager)やLightDMなどがあります。
# GDMの場合
sudo dpkg-reconfigure gdm3
# LightDMの場合
sudo dpkg-reconfigure lightdm
# 再起動
sudo reboot
nomodeset を恒久的に設定する方法
nomodeset で起動できた場合、毎回GRUBを編集するのは面倒です。設定ファイルに書き込みましょう。
手順:
- TTYまたはリカバリーモードでログイン
- 設定ファイルを編集
sudo nano /etc/default/grub
- 以下の行を探す:
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash"
- 以下のように変更:
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash nomodeset"
- 「Ctrl + O」で保存、「Ctrl + X」で終了
- GRUBの設定を更新
sudo update-grub
- 再起動
sudo reboot
これで次回以降も nomodeset が有効になります。
Ubuntuインストール直後に何も表示されない場合
インストールしたばかりのUbuntuが起動しない場合は、インストールメディアから起動して修復できます。
ライブUSBから起動する
手順:
- Ubuntuのインストールに使ったUSBメモリを挿す
- パソコンを再起動
- BIOS/UEFIで起動順序を変更するか、ブートメニュー(F12やF8など)からUSB起動を選択
- 「Try Ubuntu」を選択
chroot環境でシステムを修復
ライブUSBから起動できたら、インストール済みのUbuntuにアクセスして修復できます。
# インストールされているUbuntuのパーティションを確認
sudo fdisk -l
# マウントする(/dev/sda2 は環境により異なる)
sudo mount /dev/sda2 /mnt
# chroot環境に入る
sudo chroot /mnt
# ここで修復コマンドを実行(グラフィックドライバーの再インストールなど)
# 終了
exit
sudo reboot
デュアルブート環境での注意点
WindowsとUbuntuのデュアルブート環境では、特有の問題があります。
Windows高速スタートアップが原因の場合
Windows 10以降の「高速スタートアップ」機能が、Ubuntuの起動を妨げることがあります。
対処法(Windows側での設定):
- Windowsを起動
- コントロールパネル → 電源オプション
- 「電源ボタンの動作を選択する」
- 「現在利用可能ではない設定を変更します」をクリック
- 「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外す
- 保存
GRUBが表示されない場合
やり方:
- ライブUSBから起動
- 「Try Ubuntu」を選択
- ターミナルで以下を実行
sudo add-apt-repository ppa:yannubuntu/boot-repair
sudo apt update
sudo apt install boot-repair
boot-repair
Boot Repairというツールが起動し、GRUBを自動修復してくれます。
ログファイルで原因を調べる方法
TTYやリカバリーモードにアクセスできる場合、ログファイルで原因を特定できます。
システムログを確認
# 起動ログを表示
journalctl -b
# Xorgのログを表示
cat /var/log/Xorg.0.log
見るべきポイント:
- 「error」「failed」「fatal」などのキーワード
- グラフィックドライバーに関するメッセージ
- 「No screens found」などのエラー
最終手段:クリーンインストール
全ての方法を試してもダメな場合、残念ながらクリーンインストールが必要かもしれません。
その前に:
ライブUSBから起動して、重要なデータをバックアップしましょう。
データのバックアップ方法:
- ライブUSBから起動
- 「Try Ubuntu」を選択
- ファイルマネージャーでインストール済みのパーティションにアクセス
- 重要なファイルを外付けHDDやUSBメモリにコピー
データを救出できたら、安心してクリーンインストールできます。
今後のトラブルを防ぐための予防策
予防策1:アップデート前にバックアップ
特に大きなアップデート(カーネルアップデートなど)の前には、Timeshiftなどのバックアップツールでシステムのスナップショットを取りましょう。
予防策2:安定版のドライバーを使う
最新のドライバーではなく、安定版(tested)や推奨版(recommended)を選びましょう。
予防策3:定期的なメンテナンス
# 不要なパッケージの削除
sudo apt autoremove
# パッケージキャッシュのクリーンアップ
sudo apt clean
月に1回程度、これらのコマンドを実行してシステムをクリーンに保ちましょう。
予防策4:古いカーネルを残しておく
最新のカーネルに問題があった時のために、1〜2世代前のカーネルは削除せずに残しておくと安心です。
まとめ:段階的に対処していけば必ず解決できる
Ubuntuで画面が真っ暗になった時の対処法をまとめます。
まず試すこと(ハードウェア確認):
- ディスプレイ接続を確認
- 画面の明るさを調整
- 別のTTYに切り替え(Ctrl + Alt + F3)
- パソコンを完全再起動
- 外付けデバイスを全て外す
それでもダメなら(GRUB起動オプション):
- リカバリーモードで起動
- 古いカーネルで起動
- nomodeset オプションを追加
グラフィック問題の場合:
- ドライバーを再インストール
- オープンソースドライバーに戻す
最終手段:
- ライブUSBからデータをバックアップ
- クリーンインストール
重要なポイント:
- 画面が真っ暗でも、多くの場合データは無事です
- TTYやリカバリーモードからアクセスできれば修復可能
- グラフィックドライバーが原因のことが多い
- nomodeset は多くの問題を解決する魔法のオプション
- 焦らず、一つずつ試していくことが大切
こんな時に「何も表示されない」問題が起きやすい:
- システムアップデート後
- グラフィックドライバーの更新後
- カーネルの更新後
- ハードウェアの追加や変更後
トラブルは誰にでも起こりうるものです。この記事の方法を順番に試していけば、ほとんどの場合は解決できるはずです。
どうしても解決しない場合は、Ubuntuのフォーラムやコミュニティで質問してみましょう。同じ問題を経験した人が、きっと助けてくれますよ。
あきらめずに、一歩ずつ進んでいきましょう!
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