UbuntuをインストールしたばかりのOSでは、日本語の入力ができないことがあります。
「あれ?日本語が打てない…」
「英語と日本語はどうやって切り替えるの?」
そんな疑問をお持ちの方も多いでしょう。
実は、Ubuntuで日本語入力をするためには、少しだけ設定が必要です。
この記事では、パソコン初心者の方でも簡単にできる方法を、画面の写真付きで詳しく説明します。
日本語入力の仕組みを理解しよう

まず、Ubuntuでの日本語入力がどのような仕組みになっているかを簡単に説明します。
IME(Input Method Editor)とは?
IMEは、日本語や中国語などの文字を入力するためのソフトウェアです。
キーボードから入力したローマ字を、ひらがなや漢字に変換してくれる機能です。
WindowsとUbuntuの違い
- Windows:Microsoft IMEが標準で入っている
- Ubuntu:自分でIMEをインストールして設定する必要がある
Ubuntuで使われるIMEの種類
Mozc(モズク)
- Google日本語入力のオープンソース版
- 変換精度が高く、最も人気
- この記事ではMozcを使った方法を説明
Anthy(アンシー)
- 古くからあるIME
- 軽量だが変換精度はMozcに劣る
Fcitx(ファシックス)
- 軽量で高機能なIME
- 上級者向け
初心者の方には、使いやすくて変換精度の高いMozcがおすすめです。
入力の流れ
- キーボードでローマ字を入力(例:「konnichiwa」)
- IMEがひらがなに変換(例:「こんにちわ」)
- スペースキーで漢字に変換(例:「こんにちは」)
- Enterキーで確定
この流れは、WindowsやmacOSと基本的に同じです。
日本語入力を有効にする方法

Ubuntuで日本語入力をするために必要な設定を、順番に説明します。
前提条件の確認
設定を始める前に、以下を確認してください:
- Ubuntuが正常に動作している
- インターネットに接続されている
- 管理者権限(sudo)が使える
Step 1: Mozcのインストール
まず、日本語入力に必要なソフトウェアをインストールします。
ターミナルを使った方法(推奨)
Ctrl + Alt + T
でターミナルを開く- 以下のコマンドを順番に実行
# パッケージリストを最新に更新
sudo apt update
# Mozcと関連パッケージをインストール
sudo apt install ibus-mozc
# より完全な日本語環境が欲しい場合
sudo apt install language-pack-ja
各コマンドの説明:
sudo apt update
:利用可能なソフトウェアの一覧を更新sudo apt install ibus-mozc
:Mozcをインストールlanguage-pack-ja
:日本語のフォントやサポートファイル
ソフトウェアセンターを使った方法
コマンドが苦手な方は、画面操作でもインストールできます:
- 左下の「アクティビティ」をクリック
- 「Ubuntu Software」を検索して開く
- 検索ボックスに「ibus-mozc」と入力
- 表示された「Mozc」をクリック
- 「インストール」ボタンをクリック
- パスワードを入力してインストール開始
Step 2: 入力ソースの追加
Mozcをインストールしたら、システムの入力設定に追加します。
設定画面での操作手順
- 画面右上の設定アイコン(歯車マーク)をクリック
- 「設定」を選択
- 左側のメニューから「地域と言語」を選択
- 「入力ソース」の欄を確認
入力ソースに日本語を追加
- 「入力ソース」の「+」ボタンをクリック
- 言語一覧から「日本語」を選択
- 入力方式一覧から「日本語(Mozc)」を選択
- 「追加」ボタンをクリック
追加後の確認
正しく追加されると、入力ソース一覧に以下が表示されます:
- 英語(US)
- 日本語(Mozc)
Step 3: IBusの設定
IBusは、入力メソッドを管理するシステムです。Mozcが正しく動作するよう設定します。
IBusの再起動
# IBusプロセスを終了
ibus exit
# IBusを再起動
ibus-daemon -drx
自動起動の設定
Ubuntuの起動時にIBusが自動で立ち上がるよう設定します:
- 「アクティビティ」から「自動起動するアプリケーション」を検索
- アプリを開いて「追加」をクリック
- 以下の内容で新しいエントリを作成:
- 名前:IBus
- コマンド:ibus-daemon -drx
- コメント:Input method framework
Step 4: 動作確認
設定が完了したら、実際に日本語入力ができるかテストしてみましょう。
テスト方法
- テキストエディタを開く(geditなど)
- 何か文字を入力してみる
- 最初は英語で入力される
- 日本語に切り替えて入力テスト
うまく動かない場合は、一度ログアウトして再ログインしてください。
日本語入力の切り替え方法

日本語入力の設定ができたら、実際の切り替え方法を覚えましょう。
基本的な切り替えキー
デフォルトのショートカット
Super + Space
:入力言語の切り替え半角/全角
キー:日本語キーボードの場合
Superキーとは? Superキーは、キーボードの「Windows」マークが付いたキーのことです。UbuntuではこのキーをSuperキーと呼びます。
画面での切り替え確認
入力言語の表示 画面右上に現在の入力言語が表示されます:
- 「en」:英語入力モード
- 「ja」:日本語入力モード
クリックでの切り替え マウスで画面右上の言語表示をクリックしても切り替えできます。
切り替えのタイミング
いつ切り替えが必要?
- 日本語の文章を書くとき → 日本語モードに切り替え
- プログラムのコードを書くとき → 英語モードに切り替え
- パスワード入力のとき → 英語モードが安全
切り替えを忘れたとき 入力中に「あれ?文字が変?」と思ったら、入力言語を確認してみてください。
日本語入力の便利な操作方法
基本的な切り替えができるようになったら、より効率的な入力方法を覚えましょう。
変換操作の基本
ひらがな入力から漢字変換
- ローマ字で読み方を入力(例:「にほん」)
- スペースキーを押して変換候補を表示
- 上下矢印キーで候補を選択
- Enterキーで確定
変換候補の選び方
- スペースキー:次の候補を表示
- Shift + スペース:前の候補を表示
- 数字キー(1〜9):候補を直接選択
便利なショートカットキー
文字種変換のショートカット
F6
:ひらがなに変換F7
:カタカナに変換F8
:半角カタカナに変換F9
:全角英数字に変換F10
:半角英数字に変換
例:「パソコン」と入力したい場合
- 「pasokon」と入力
- F7キーを押す → 「パソコン」に変換
予測変換の活用
Mozcには、入力途中で候補を提案してくれる予測変換機能があります。
使い方
- 単語の最初の数文字を入力
- 変換候補に目的の単語が表示されたらTabキーで選択
- そのままEnterで確定
例:「おつかれさまでした」の場合 「おつ」と入力するだけで「お疲れ様でした」が候補に表示される
辞書機能の活用
ユーザー辞書への単語登録
よく使う単語や変換されにくい単語は、辞書に登録できます:
- 画面右上の入力言語表示をクリック
- 「Mozcツール」→「辞書ツール」を選択
- 新しい単語を登録
登録例
- 読み:「じぶん」
- 単語:「自分の名前」
- 品詞:人名
ショートカットキーのカスタマイズ

デフォルトの切り替えキーが使いにくい場合は、自分好みに変更できます。
キーボードショートカットの変更
設定手順
- 設定アプリを開く
- 「キーボード」を選択
- 「ショートカット」タブを開く
- 「入力ソース」の項目を確認
変更可能な操作
- 次の入力ソースに切り替え
- 前の入力ソースに切り替え
- 入力ソースを直接選択
よく使われる設定例
Windowsユーザーにおすすめ
Alt + 半角/全角
:Windowsと同じ操作感Ctrl + Shift
:Microsoft Officeと同じ
macOSユーザーにおすすめ
Cmd + Space
:macOSのSpotlight風Control + Space
:macOSの入力切り替えと同じ
設定の保存と復元
設定のエクスポート
# 現在の設定をファイルに保存
dconf dump /desktop/ibus/ > ibus-settings.txt
設定のインポート
# 保存した設定を読み込み
dconf load /desktop/ibus/ < ibus-settings.txt
よくある問題と解決方法

日本語入力でよく遭遇する問題と、その解決方法を説明します。
問題1: 日本語入力に切り替わらない
症状
- ショートカットキーを押しても英語のまま
- 画面上部の言語表示が変わらない
原因と解決方法
原因1: Mozcが正しくインストールされていない
# インストール状況の確認
dpkg -l | grep mozc
# 再インストール
sudo apt remove ibus-mozc
sudo apt install ibus-mozc
原因2: IBusが起動していない
# IBusプロセスの確認
ps aux | grep ibus
# IBusの手動起動
ibus-daemon -drx
原因3: 入力ソースが正しく設定されていない
- 設定→地域と言語→入力ソースを確認
- 日本語(Mozc)が追加されているかチェック
- ない場合は再度追加
問題2: 変換がうまくいかない
症状
- 変換候補が表示されない
- 思った通りの漢字に変換されない
解決方法
学習データのリセット
# Mozcの設定を初期化
rm -rf ~/.mozc
ibus restart
辞書の更新
- Mozcツール→辞書ツールを開く
- 「管理」→「新しい辞書にインポート」
- 最新の辞書データを取得
問題3: 特定のアプリで日本語入力できない
症状
- ブラウザでは日本語入力できるが、特定のソフトではできない
- 古いアプリケーションで入力できない
解決方法
環境変数の設定
# ~/.bashrcに以下を追加
export GTK_IM_MODULE=ibus
export QT_IM_MODULE=ibus
export XMODIFIERS=@im=ibus
設定後の確認
# 設定を反映
source ~/.bashrc
# アプリケーションを再起動
問題4: システム起動時に日本語入力できない
症状
- 毎回手動でIBusを起動する必要がある
- ログイン直後は英語入力のみ
解決方法
自動起動の設定確認
- 「自動起動するアプリケーション」を開く
- IBusが登録されているか確認
- ない場合は手動で追加
セッション設定の確認
# セッションマネージャーの設定
gsettings set org.gnome.desktop.input-sources show-all-sources true
問題5: キーボードレイアウトが英語のまま
症状
- 日本語キーボードなのに英語配列として認識される
- 記号の位置がずれる
解決方法
キーボードレイアウトの変更
- 設定→地域と言語を開く
- 「入力ソース」で英語(US)を削除
- 「日本語」を追加
- システムを再起動
より快適な日本語入力環境の構築

基本的な設定ができたら、さらに使いやすくするための設定を紹介します。
Mozcの詳細設定
Mozcの設定画面を開く
- 画面右上の言語表示をクリック
- 「Mozcツール」→「プロパティ」を選択
おすすめの設定項目
一般タブ
- 句読点:「,。」または「、。」から選択
- 記号:「全角」または「半角」から選択
- 数字:「半角」推奨(プログラミング時に便利)
入力補助タブ
- 自動英数変換:有効(URLやメールアドレスの入力が楽)
- 数字キーで候補選択:有効(変換効率UP)
サジェストタブ
- サジェスト機能:有効(予測変換が使える)
- リアルタイム変換:お好みで設定
フォント設定の最適化
日本語フォントのインストール
# 豊富な日本語フォントをインストール
sudo apt install fonts-noto-cjk
sudo apt install fonts-noto-cjk-extra
# モリサワフォント(商用利用可)
sudo apt install fonts-morisawa-bizplus
フォント設定の変更
- GNOME Tweaksをインストール
sudo apt install gnome-tweaks
- Tweaksを開いて「フォント」タブで設定
- インターフェース:日本語対応フォント
- ドキュメント:読みやすいフォント
- 等幅:プログラミング用フォント
エディタ別の設定
Visual Studio Code
- 拡張機能「Japanese Language Pack for Visual Studio Code」をインストール
- 設定で「editor.ime.mode」を「on」に設定
LibreOffice
- ツール→オプション→言語設定→言語
- 日本語を優先言語に設定
- フォントを日本語対応に変更
ターミナルでの日本語入力
ターミナルで日本語を使う設定
# ロケールの設定確認
locale
# 日本語ロケールの設定
sudo localectl set-locale LANG=ja_JP.UTF-8
ターミナル用エディタの設定
# nanoエディタで日本語入力
export EDITOR=nano
# vimで日本語入力
echo "set encoding=utf-8" >> ~/.vimrc
トラブルシューティングのコマンド集

問題が発生したときに使える診断・修復コマンドをまとめました。
診断コマンド
システム情報の確認
# Ubuntuのバージョン確認
lsb_release -a
# インストール済みの日本語関連パッケージ
dpkg -l | grep -E "(ibus|mozc|japanese|ja)"
# 現在の入力メソッド確認
echo $GTK_IM_MODULE
echo $QT_IM_MODULE
echo $XMODIFIERS
IBusの状態確認
# IBusプロセスの確認
ps aux | grep ibus
# IBusの設定確認
ibus list-engine
# IBusのバージョン確認
ibus version
修復コマンド
設定のリセット
# IBus設定のリセット
rm -rf ~/.config/ibus
ibus-daemon -drx
# Mozc設定のリセット
rm -rf ~/.mozc
完全な再インストール
# 既存パッケージの削除
sudo apt remove --purge ibus-mozc ibus
sudo apt autoremove
# キャッシュのクリア
sudo apt clean
# 再インストール
sudo apt update
sudo apt install ibus ibus-mozc
# IBusの再起動
ibus-daemon -drx
まとめ
この記事の手順に従って、Ubuntuで日本語入力ができるようになったはずです。
重要なポイントの振り返り
基本設定
- Mozcのインストール:
sudo apt install ibus-mozc
- 入力ソースの追加:設定→地域と言語→入力ソース
- IBusの起動:
ibus-daemon -drx
切り替え方法
- 基本の切り替え:
Super + Space
- 日本語キーボード:
半角/全角
キー - 画面表示での確認:右上の「en」「ja」表示
便利な操作
- 変換:スペースキー
- 文字種変換:F6〜F10キー
- 予測変換:Tabキー
トラブル時の対処
- IBusの再起動:
ibus restart
- 設定の確認:入力ソース一覧
- パッケージの再インストール
コメント