Thunderbirdを起動したら、突然「Thunderbirdの古いバージョンを実行しています」というエラーメッセージが表示され、起動できなくなった経験はありませんか?
このエラーは、バージョンアップ後にバージョンダウンした場合や、異なるバージョン間でプロファイル(設定やメールデータ)を共有しようとした場合に発生します。
完全なエラーメッセージ:
Thunderbirdの古いバージョンを実行しています
Thunderbirdの新しいバージョンには、この古いバージョンのプロファイルと
互換性の無い変更が含まれている可能性があります。このプロファイルを
新しいバージョンでのみ使用するか、このThunderbirdのバージョン用に
新しいプロファイルを作成してください。新しいプロファイルを作成する
場合、アカウントやカレンダー、アドオンを再セットアップする必要があります。
この記事では、このエラーが発生する原因と、メールデータを失わずに解決する方法を詳しく解説します。
この記事で解決できる状況:
- 最新版から旧バージョンにダウングレードした後に起動できない
- 別のPCからプロファイルをコピーしたら起動できなくなった
- アップデート後、古いバージョンで開こうとしたらエラーが出る
なぜこのエラーが表示されるのか
プロファイルの互換性保護機能
Thunderbird バージョン68以降から、プロファイル(設定やメールデータ)の互換性を保護する機能が導入されました。
仕組み:
- Thunderbird 新バージョンでプロファイルを開くと、プロファイルが「アップグレード」される
- アップグレードされたプロファイルには、新しいバージョンの情報が記録される
- その後、古いバージョンで同じプロファイルを開こうとすると、このエラーが表示される
なぜこの機能が必要か:
- データの破損を防ぐため
- 新旧バージョンの同時使用時の混乱を避けるため
- ベータ版と安定版を安全に使い分けるため
よくある発生パターン
パターン1: バージョンダウン後
Thunderbird 91.0 → 78.0にダウングレード
↓
エラー表示でThunderbirdが起動できない
パターン2: プロファイルの移行
Windows 10のPC(Thunderbird 91.0)
↓ プロファイルをコピー
Windows 7のPC(Thunderbird 78.0)
↓
エラー表示でThunderbirdが起動できない
パターン3: 複数バージョンの併用
安定版(バージョン91)で起動
↓
ベータ版(バージョン102)で起動
↓
再び安定版(バージョン91)で起動しようとする
↓
エラー表示
解決策1:最新版にアップデートする(推奨)
最もシンプルで安全な解決方法は、Thunderbirdを最新版にアップデートすることです。
この方法が適している場合
- 特に古いバージョンを使う理由がない
- セキュリティを重視したい
- 最も簡単な解決方法を求めている
アップデート手順
手順1:Thunderbirdをアンインストール
- Windowsの「設定」→「アプリ」を開く
- 「Mozilla Thunderbird」を選択
- 「アンインストール」をクリック
重要: アンインストールしても、メールデータや設定は削除されません。プロファイルは別の場所に保存されているため安全です。
手順2:最新版をダウンロード
- Thunderbird公式サイトにアクセス
- 「無料ダウンロード」をクリック
- インストーラーをダウンロード
手順3:最新版をインストール
- ダウンロードしたインストーラーを実行
- 「標準インストール」を選択
- インストール完了まで待つ
手順4:Thunderbirdを起動
- Thunderbirdを起動
- 自動的に既存のプロファイルが読み込まれる
- これまでのメールや設定がそのまま使える
メリット・デメリット
メリット:
- 最も簡単で確実
- セキュリティアップデートが適用される
- 新機能が使える
- データを失うリスクがない
デメリット:
- 一部のアドオンが動かなくなる可能性がある
- UIが変更されている場合がある
解決策2:–allow-downgradeオプションで起動する
古いバージョンをどうしても使いたい場合、強制的にプロファイルを開く方法があります。
この方法が適している場合
- 特定のバージョンを使う必要がある
- アドオンの互換性の問題がある
- 一時的に古いバージョンで確認したい
起動方法
Windowsの場合:
- Windowsキー + R で「ファイル名を指定して実行」を開く
- 以下のコマンドを入力
"C:\Program Files\Mozilla Thunderbird\thunderbird.exe" --allow-downgrade
- OKをクリック
32ビット版Windowsの場合:
"C:\Program Files (x86)\Mozilla Thunderbird\thunderbird.exe" --allow-downgrade
プロファイルマネージャーと組み合わせる場合:
"C:\Program Files\Mozilla Thunderbird\thunderbird.exe" -p --allow-downgrade
この方法の注意点
重要な警告:
- データ破損のリスク: 新しいバージョンで変更されたデータを古いバージョンで開くため、プロファイルが破損する可能性があります
- 一方通行: このオプションを使った後、再び新しいバージョンに戻ると問題が発生する可能性があります
- パスワードの問題: pkcs11.txtファイルを削除する必要がある場合があります
pkcs11.txtファイルの削除方法
パスワードが読み込めない場合の対処法です。
- Thunderbirdを終了
- プロファイルフォルダを開く
- Windowsキー + R
%APPDATA%\Thunderbird\Profiles\と入力
- 自分のプロファイルフォルダを開く(例:xxxxxxxx.default)
- 「pkcs11.txt」ファイルを削除
- Thunderbirdを再起動
削除すると、次回起動時にパスワードの再入力が必要になります。
解決策3:段階的にバージョンダウンする

大きくバージョンを下げる場合は、段階的にダウングレードすることで、プロファイルのデータを引き継げます。
この方法の原理
Thunderbirdでは、メジャーアップデート(例:78 → 91 → 102)の際にプロファイルの構造が大きく変わります。しかし、小さなバージョン差であれば互換性が保たれることがあります。
例: バージョン102から91に戻す場合
現在: Thunderbird 102.1.2
↓
目標: Thunderbird 91.12.0
↓
方法: まず60系の最終版をインストール
→ そこから91系にアップデート
詳細な手順
手順1:事前準備(必須)
- アドレス帳をエクスポート
- ツール → アドレス帳
- ツール → エクスポート
- CSV形式で保存
- プロファイルをバックアップ
- ヘルプ → トラブルシューティング情報
- 「プロファイルフォルダー」の「フォルダーを開く」
- フォルダ全体を別の場所にコピー
手順2:現在のバージョンをアンインストール
- Thunderbirdを完全に終了
- コントロールパネル → プログラムのアンインストール
- Mozilla Thunderbirdをアンインストール
手順3:中間バージョンをインストール
- Thunderbird旧バージョンページにアクセス
- 中間バージョンを選択(例:60.9.1)
- win32(32ビット)またはwin64(64ビット)を選択
- ja(日本語版)を選択
- インストーラー(.exe)をダウンロード
- インストール
重要: インストール完了画面で「今すぐThunderbirdを起動」のチェックを外す
手順4:バッチファイルを実行(Windowsのみ)
Thunderbirdを特殊なオプション付きで起動する必要があります。
以下の内容をメモ帳にコピーし、「thunderbird_start.bat」として保存:
@echo off
cd /d "C:\Program Files\Mozilla Thunderbird"
start "" thunderbird.exe --allow-downgrade -purgecaches
このバッチファイルをダブルクリックして実行します。
手順5:目的のバージョンにアップデート
- Thunderbirdが起動したら、ヘルプ → Thunderbirdについて
- 更新を確認し、目的のバージョン(例:91.12.0)までアップデート
- アップデートが完了したら再起動
手順6:アドレス帳をインポート
- ツール → アドレス帳
- ツール → インポート
- 手順1でエクスポートしたCSVファイルを選択
この方法のメリット・デメリット
メリット:
- メールデータを失わずにバージョンダウンできる
- アドレス帳も復元できる
デメリット:
- 手順が複雑
- 時間がかかる(複数回の再起動が必要)
- 技術的な知識が必要
解決策4:新しいプロファイルを作成する
データを諦めて、完全に新しくスタートする方法です。
この方法が適している場合
- 他の方法で解決できなかった
- メールはサーバー(IMAP)に残っている
- 設定をやり直しても構わない
手順
手順1:プロファイルマネージャーを起動
- Thunderbirdを完全に終了
- Windowsキー + R
- 以下を入力
thunderbird.exe -p
- OKをクリック
手順2:新しいプロファイルを作成
- プロファイルマネージャーが開く
- 「新しいプロファイルを作成」をクリック
- プロファイル名を入力(例:新規2024)
- 「完了」をクリック
手順3:新しいプロファイルで起動
- 作成したプロファイルを選択
- 「Thunderbirdを起動」をクリック
手順4:アカウントを再設定
- Thunderbirdが初期画面で起動
- メールアドレスとパスワードを入力
- アカウント設定を完了
IMAPの場合
IMAPアカウントの場合、メールはサーバーに残っているため、アカウントを再設定するだけで、すべてのメールが再度ダウンロードされます。
POPの場合
POPアカウントの場合、サーバーからメールを削除している可能性があるため、この方法では過去のメールを復元できません。解決策3の段階的ダウングレードを試してください。
解決策5:プロファイルを手動で復元する(上級者向け)
別のPCからプロファイルを移行する際にエラーが出た場合の対処法です。
問題のパターン
Windows 7 PC(Thunderbird 78.11.0)
↓ プロファイルフォルダをコピー
Windows 10 PC(Thunderbird 91.0)
↓
エラー: 「古いバージョンのプロファイル」
原因
コピー元のThunderbirdが実は最新版だったが、コピー先が古いバージョンだった、またはベータ版が混在していた可能性があります。
解決手順
手順1:コピー先のThunderbirdをアンインストール
- 現在のThunderbirdを完全にアンインストール
手順2:通常版をインストール
- 公式サイトから最新の安定版(ベータ版ではない)をダウンロード
- インストール
手順3:プロファイルを配置
- Thunderbirdを起動せずに、プロファイルフォルダを配置
- コピーしたプロファイルが正しい場所にあるか確認
C:\Users\ユーザー名\AppData\Roaming\Thunderbird\Profiles\
手順4:起動
- Thunderbirdを起動
- 自動的にプロファイルが読み込まれる
バージョン間の互換性について
プロファイルの互換性マトリックス
| 元のバージョン | 移行先バージョン | 互換性 |
|---|---|---|
| 60系 | 68系 | △ 可能だが注意 |
| 68系 | 78系 | △ 可能だが注意 |
| 78系 | 91系 | △ 可能だが注意 |
| 91系 | 102系 | △ 可能だが注意 |
| 102系 | 115系 | △ 可能だが注意 |
| 新 → 旧 | すべて | × 基本的に不可 |
注意事項:
- 上方向(古い→新しい)へのアップグレードは通常問題なし
- 下方向(新しい→古い)へのダウングレードは推奨されない
- メジャーバージョンをまたぐ場合は特に注意
メジャーアップデートの節目
以下のバージョンでは大きな変更がありました:
Thunderbird 68(2019年)
- プロファイルロック機能の導入
- アドオンシステムの刷新
Thunderbird 78(2020年)
- 新しいアドレス帳システム
- セキュリティ強化
Thunderbird 91(2021年)
- UI の刷新
- プロファイル構造の変更
Thunderbird 102(2022年)
- アドレス帳の大幅変更
- Matrix対応
Thunderbird 115(2023年)
- UI の大規模刷新
- カード表示の導入
自動更新を無効化する方法
バージョンを固定したい場合は、自動更新を無効化しましょう。
無効化手順
- Thunderbirdのメニューボタン(三本線)をクリック
- 「設定」を選択
- 「一般」を選択
- 下にスクロールして「Thunderbirdの更新」を探す
- 「更新を確認するが、インストールするかどうかを選択する」を選択
推奨設定
完全に無効化するのではなく、「更新を確認するが、インストールするかどうかを選択する」を選ぶことをお勧めします。
これにより:
- 更新があることは通知される
- 自分のタイミングで更新できる
- セキュリティアップデートを見逃さない
よくある質問(FAQ)
Q1. エラーが出てThunderbirdが全く起動できません
A1. 以下の順で試してください:
- 解決策1:最新版をインストール(最も簡単)
- 解決策2:–allow-downgradeオプションで起動
- 解決策4:新しいプロファイルを作成
Q2. 古いバージョンで開いたら、データが破損しますか?
A2. –allow-downgradeオプションを使うと、データが破損するリスクがあります。必ずバックアップを取ってから実行してください。特に、新しいバージョンで追加された機能を使っていた場合、その情報が失われる可能性があります。
Q3. アドオンの互換性問題でダウングレードしたいのですが
A3. アドオンの代替を探すか、アドオンの開発者に問い合わせることをお勧めします。ダウングレードはセキュリティリスクがあり、長期的な解決策ではありません。
Q4. プロファイルのバックアップはどこにありますか?
A4. プロファイルフォルダの場所:
- Windows:
C:\Users\ユーザー名\AppData\Roaming\Thunderbird\Profiles\ - Mac:
~/Library/Thunderbird/Profiles/ - Linux:
~/.thunderbird/
「ヘルプ」→「トラブルシューティング情報」→「プロファイルフォルダー」→「フォルダーを開く」でも確認できます。
Q5. 段階的ダウングレードで、どの中間バージョンを選べばいいですか?
A5. 以下を参考にしてください:
- 102系から91系: まず60.9.1をインストール → 91.12.0へアップデート
- 91系から78系: まず60.9.1をインストール → 78系へアップデート
- 115系から102系: まず91.12.0をインストール → 102系へアップデート
Q6. IMAPとPOPで対処法は違いますか?
A6. はい、大きく異なります:
IMAP:
- サーバーにメールが残っている
- 新しいプロファイルを作成しても、メールは再ダウンロードできる
- 比較的安全にバージョン変更が可能
POP:
- メールがローカルにしか残っていない可能性がある
- プロファイルが破損すると、メールを失う
- 段階的ダウングレード(解決策3)を推奨
Q7. ベータ版から安定版に戻せますか?
A7. 可能ですが、以下の注意が必要です:
- プロファイルをバックアップ
- –allow-downgradeオプションを使用
- データ破損のリスクがあることを理解する
より安全な方法は、新しいプロファイルを作成して、ベータ版用と安定版用を分けることです。
Q8. エラーメッセージで「Firefox」と表示されるのはなぜですか?
A8. これはThunderbirdのバグです。Thunderbirdは内部的にFirefoxと同じコードベースを使用しているため、エラーメッセージが正しく表示されないことがあります。「Firefox」と表示されていても、実際にはThunderbirdの問題です。
まとめ
「Thunderbirdの古いバージョンを実行しています」エラーの解決方法を5つ紹介しました。
推奨する解決順序:
- まず試す: 最新版にアップデート
- 最も簡単で安全
- データを失わない
- セキュリティも強化される
- どうしても古いバージョンが必要な場合:
- 一時的: –allow-downgradeオプション
- 恒久的: 段階的ダウングレード
- 最終手段: 新しいプロファイルを作成
- IMAPなら問題なし
- POPの場合は慎重に
重要なポイント:
✓ 作業前に必ずプロファイルをバックアップ
✓ アドレス帳も別途エクスポート
✓ IMAPかPOPかを確認
✓ バージョンを固定したい場合は自動更新を無効化
セキュリティに関する注意:
古いバージョンを使い続けることは、セキュリティリスクがあります。特別な理由がない限り、最新版の使用を強くお勧めします。
もしアドオンの互換性が理由でダウングレードを検討している場合は、代替のアドオンを探すか、最新版に対応するまで待つことを検討してください。
この記事が、Thunderbirdのバージョン問題の解決に役立てば幸いです。

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