「Thunderbirdが勝手に更新されて、アドオンが動かなくなった」「企業で統一バージョンを使いたい」「アップデート後に不具合が出た」
こんな理由で、Thunderbirdの自動更新を止めたいと思ったことはありませんか?
Thunderbirdはデフォルトで自動更新が有効になっていますが、設定を変更することで無効化できます。ただし、セキュリティリスクも伴うため、正しい知識が必要です。
この記事では、自動更新を無効化する方法から、手動更新の手順、セキュリティへの配慮まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
自動更新を無効化する前に知っておくべきこと

まず、重要な注意事項を理解しましょう。
自動更新の役割
自動更新が提供するもの:
- セキュリティ脆弱性の修正
- バグの修正
- 新機能の追加
- パフォーマンスの改善
- 最新のメールサーバーへの対応
定期的な更新は、Thunderbirdを安全に使うために重要です。
更新を無効化するリスク
セキュリティリスク:
古いバージョンには、既知のセキュリティ脆弱性が含まれている可能性があります。
具体的なリスク:
- マルウェア感染の危険性
- メールの盗聴
- 個人情報の漏洩
- 不正アクセス
互換性の問題:
メールサーバーの仕様変更に対応できず、送受信できなくなる可能性もあります。
更新を無効化してもよい場合
以下のような状況では、一時的な無効化が正当化されます:
- 企業での統一管理
- 全社員で同じバージョンを使用
- IT部門が管理・検証してから更新
- 特定のアドオンとの互換性
- 業務に必須のアドオンが最新版で動かない
- 開発元の対応を待つ必要がある
- 安定性の確保
- 新バージョンに既知の不具合がある
- 重要な期間中は変更を避けたい
- テスト環境
- 開発やテスト用の環境
重要:
更新を無効化する場合でも、定期的に手動で更新を確認し、セキュリティパッチは速やかに適用しましょう。
自動更新を無効化する方法
設定画面から変更する標準的な方法です。
方法1:設定画面から無効化(推奨)
手順:
- 画面右上の「三本線メニュー」をクリック
- 「設定」を選択
- 左側のメニューから「一般」をクリック
- 画面を下にスクロール
- 「Thunderbirdの更新」セクションを探す
更新オプションの選択:
- 「更新を自動的にインストールする(推奨)」
- デフォルト設定
- 自動的にダウンロード&インストール
- 「更新の確認のみ行う(インストールするかを選択する)」
- 更新があることを通知
- 手動でインストール判断
- おすすめの折衷案
- 「更新の確認をしない(非推奨:セキュリティリスク)」
- 完全に自動更新を無効化
- 通知も来ない
- セキュリティリスクが高い
推奨設定:
完全に無効化するより、「更新の確認のみ行う」を選択することをおすすめします。これなら更新を制御しつつ、新しいバージョンの存在は把握できます。
方法2:Config Editorで詳細設定
より細かく制御したい場合の上級者向け方法です。
手順:
- 設定画面を開く
- 一番下までスクロール
- 「一般」の最下部にある「設定エディター」をクリック
- 警告メッセージが出たら「注意して続ける」をクリック
変更する設定項目:
自動更新を完全に無効化:
検索ボックスに以下を入力し、値を変更:
app.update.auto
- ダブルクリックして
false
に変更
app.update.enabled
- ダブルクリックして
false
に変更
更新チェックを無効化:
app.update.checkInstallTime
false
に変更
app.update.silent
false
に変更
注意:
Config Editorでの変更は、設定を間違えるとThunderbirdが正常に動作しなくなる可能性があります。慎重に操作してください。
方法3:グループポリシーで一括管理(Windows企業環境)
企業のIT管理者向けの方法です。
概要:
Windowsのグループポリシーを使って、複数のパソコンで一括設定できます。
必要なもの:
- Active Directory環境
- 管理者権限
- Thunderbirdポリシーテンプレート
設定場所:
コンピュータの構成 > 管理用テンプレート > Mozilla > Thunderbird > Updates
ここで「更新を無効にする」ポリシーを有効化します。
詳細な手順は、Mozilla公式ドキュメントを参照してください。
手動で更新を確認する方法
自動更新を無効化した場合、定期的に手動で確認しましょう。
更新の確認手順
手順:
- メニューから「ヘルプ」を選択
- 「Thunderbirdについて」をクリック
- 自動的に更新チェックが始まります
表示される情報:
- 現在のバージョン番号
- 「更新を確認しています…」
- 更新がある場合:「更新をダウンロード」ボタン
- 最新の場合:「Thunderbirdは最新です」
手動でアップデートする
手順:
- 「更新をダウンロード」ボタンをクリック
- ダウンロードが完了するまで待つ
- 「Thunderbirdを再起動して更新を適用」ボタンをクリック
- Thunderbirdが再起動され、更新が適用される
重要な注意点:
更新前に、すべてのメールが送受信されていることを確認してください。
更新の頻度
推奨チェック頻度:
- 最低でも月1回
- セキュリティパッチは即座に適用
- メジャーアップデート前には事前調査
チェックすべき情報源:
- Mozilla Thunderbird公式ブログ
- リリースノート
- セキュリティアドバイザリー
アドオンの自動更新を管理する
Thunderbird本体だけでなく、アドオンの更新も制御できます。
アドオンの自動更新を無効化
手順:
- メニューから「アドオンとテーマ」を開く
- 右上の歯車アイコンをクリック
- 「アドオンを自動的に更新する」のチェックを外す
これで、すべてのアドオンの自動更新が無効になります。
個別のアドオンで設定
手順:
- 「アドオンとテーマ」を開く
- 該当するアドオンを探す
- アドオン名の横の「…」メニューをクリック
- 「設定」または「オプション」を選択
- 自動更新の設定を変更
アドオンの手動更新
手順:
- 「アドオンとテーマ」を開く
- 右上の歯車アイコンをクリック
- 「今すぐ更新を確認」をクリック
利用可能な更新がある場合、自動的にダウンロードされます。
特定のバージョンを維持する方法
古いバージョンをそのまま使い続ける方法です。
現在のバージョンを確認
手順:
- 「ヘルプ」→「Thunderbirdについて」
- バージョン番号をメモ(例:128.0.1)
古いバージョンをダウンロード
注意:
古いバージョンの使用は、セキュリティリスクを伴います。正当な理由がある場合のみ実施してください。
ダウンロード場所:
Mozilla公式アーカイブ:
https://archive.mozilla.org/pub/thunderbird/releases/
ここから必要なバージョンを選んでダウンロードできます。
ダウングレードの手順
事前準備(重要):
- プロファイルフォルダを完全にバックアップ
- アドオンのリストを記録
- 重要なメールをエクスポート
手順:
- 現在のThunderbirdをアンインストール
- プロファイルフォルダは削除しない
- 古いバージョンをインストール
- 起動時、プロファイルが使用される
リスク:
古いバージョンで作成されたプロファイルを新しいバージョンで開いた後、再び古いバージョンに戻すと、データが破損する可能性があります。
ESR版の活用
長期サポート版を使う選択肢もあります。
ESR版とは
ESR(Extended Support Release)は、長期サポート版のこと。
特徴:
- 大きな機能変更が少ない
- 約1年間同じメジャーバージョンを使用
- セキュリティパッチのみ提供
- 企業での利用に最適
ESR版と通常版の違い
通常版(Rapid Release):
- 最新機能がすぐ使える
- 4〜6週間ごとにバージョンアップ
- 変化が多い
ESR版:
- 安定性重視
- メジャーアップデートは年1回程度
- セキュリティは最新
ESR版のダウンロード
公式サイト:
Mozilla Thunderbird公式サイトから、ESR版を選択してダウンロードできます。
注意:
通常版からESR版への切り替えは、基本的に問題ありませんが、バックアップを取ってから実施してください。
企業での更新管理のベストプラクティス
IT管理者向けの推奨方法です。
段階的な展開
ステップ1:テスト環境で検証
- 新バージョンをテスト環境にインストール
- 業務に必要なアドオンの動作確認
- 主要な機能のテスト
- 問題がないか1週間程度様子を見る
ステップ2:パイロットグループに展開
- IT部門や協力的な部署で先行導入
- フィードバックを収集
- 問題があれば対策を立てる
ステップ3:全社展開
- 問題がなければ全社に展開
- 段階的に展開(部署ごと、週単位など)
- サポート体制を整える
更新ポリシーの策定
推奨ポリシー例:
- セキュリティパッチ:
- リリースから1週間以内に適用
- マイナーアップデート:
- テスト後、1ヶ月以内に展開
- メジャーアップデート:
- 十分なテスト期間を設ける
- 繁忙期を避ける
集中管理ツールの活用
利用可能なツール:
- SCCM(System Center Configuration Manager)
- WSUS(Windows Server Update Services)
- サードパーティの統合管理ツール
これらを使って、更新を一元管理できます。
トラブルシューティング
更新無効化に関する問題の解決方法です。
問題1:設定しても自動更新される
原因:
グループポリシーや外部設定で上書きされている
解決方法:
- Config Editorで設定を確認
app.update.auto
がfalse
になっているか- 企業環境の場合、IT部門に確認
問題2:更新の確認ボタンが押せない
原因:
完全に更新を無効化している
解決方法:
- Config Editorを開く
app.update.enabled
をtrue
に変更- Thunderbirdを再起動
問題3:古いバージョンで問題が発生
症状:
メールの送受信ができない、表示がおかしいなど
解決方法:
- 最新版に更新
- セキュリティリスクよりも利便性を優先すべき
- 問題のある機能だけ設定で無効化
問題4:更新後に不具合が出た
対処法:
方法1:前のバージョンに戻す
- プロファイルをバックアップ
- 古いバージョンをインストール
- 問題が解決するか確認
方法2:セーフモードで起動
- アドオンを無効化して起動
- アドオンが原因か確認
- 問題のあるアドオンを特定
方法3:新しいプロファイルを作成
- プロファイルマネージャーを起動
- 新しいプロファイルを作成
- 問題が再現するか確認
セキュリティを保ちながら更新を管理
更新を無効化しつつ、安全性を確保する方法です。
セキュリティチェックリスト
定期的に確認すべきこと:
- セキュリティアドバイザリーの確認
- Mozilla公式サイトをチェック
- 重大な脆弱性が報告されていないか
- ウイルス対策ソフトの最新化
- Thunderbirdが古くても、周辺の防御を固める
- メールの添付ファイルに注意
- 不審なファイルは開かない
- スキャンしてから開く
- パスワードの定期変更
- メールアカウントのパスワード
- マスターパスワード
リスク軽減策
対策1:ファイアウォールの設定
不要な通信をブロックし、リスクを減らします。
対策2:送信元の確認
知らない相手からのメールは慎重に扱いましょう。
対策3:バックアップの徹底
万が一の場合に備え、定期的なバックアップを。
対策4:別の環境でテスト
重要な操作は、テスト環境で試してから実行。
よくある質問
Q1. 自動更新を無効にすると、どれくらいリスクがありますか?
A. セキュリティリスクは確実に増加します。
具体的には:
- 既知の脆弱性が放置される
- マルウェアの標的になりやすい
- データ漏洩のリスク
ただし、適切な管理(定期的な手動更新、ウイルス対策)をすれば、リスクは軽減できます。
Q2. アップデート後に元に戻せますか?
A. 基本的には可能ですが、リスクがあります。
注意点:
- プロファイルの互換性問題
- データ破損の可能性
- 必ずバックアップを取る
緊急時以外は、前のバージョンに戻すことは推奨しません。
Q3. ESR版を使えば、更新の心配はなくなりますか?
A. 頻度は減りますが、更新は必要です。
ESR版でも、セキュリティパッチは定期的に提供されます。完全に更新不要というわけではありません。
Q4. 会社で統一バージョンを使いたいです。どうすればいいですか?
A. グループポリシーまたは集中管理ツールを使用してください。
IT部門で一括管理し、テスト後に全社展開するのがベストプラクティスです。
Q5. どのくらいの頻度で手動更新を確認すべきですか?
A. 最低でも月1回、理想的には週1回です。
セキュリティパッチが出た場合は、即座に適用してください。
まとめ:更新管理は慎重に、セキュリティは最優先
Thunderbirdの自動更新は無効化できますが、セキュリティリスクを理解した上で実施しましょう。
この記事のポイント:
✅ 更新無効化のリスクを理解
セキュリティ脆弱性、互換性問題など
✅ 3つの無効化方法
- 設定画面から(推奨)
- Config Editor(上級者向け)
- グループポリシー(企業向け)
✅ 折衷案:「更新の確認のみ」
完全無効化より、確認だけする設定が安全
✅ 手動更新の習慣化
月1回以上はチェック
✅ ESR版の検討
安定性を重視する場合の選択肢
✅ 企業では段階的展開
テスト → パイロット → 全社
✅ セキュリティ対策を並行
ウイルス対策、バックアップ、パスワード管理
更新管理の基本原則:
- 原則:自動更新は有効のまま
特別な理由がない限り、自動更新を推奨 - 無効化する場合は計画的に
正当な理由、管理体制、セキュリティ対策 - 定期的な手動確認
自動更新を止めても、更新情報は追う - セキュリティパッチは最優先
機能更新は待てても、セキュリティは即対応 - バックアップは必須
何があっても復旧できる体制を
最後に:
更新の無効化は、「便利さ」と「セキュリティ」のトレードオフです。業務の安定性と、情報セキュリティのバランスを考えて、最適な選択をしてください。
企業環境では、IT部門と相談しながら、組織全体で統一したポリシーを策定することをおすすめします。個人で使う場合も、リスクを十分に理解した上で判断しましょう。
安全で快適なThunderbird環境を維持するため、この記事が参考になれば幸いです!
コメント