Thunderbird(サンダーバード)でメールの受信はできるのに、送信だけできない…そんな経験はありませんか?
実は、メールの受信と送信では使うサーバーが違うんです。受信はできても、送信サーバー(SMTP)の設定が間違っていると、メールを送ることができません。
特に、新しくメールアカウントを設定したときや、プロバイダの設定が変更されたときに、送信サーバーの設定で困る方が多いです。
この記事では、Thunderbirdの送信サーバー設定について、基礎知識から具体的な設定方法、主要プロバイダの設定例まで、初心者の方にも分かりやすく詳しく解説していきます。
送信サーバー(SMTP)とは?

SMTPって何?
SMTPは「Simple Mail Transfer Protocol」の略で、メールを送信するための仕組みのことです。
簡単に言うと、メールを送る専用の郵便局のようなものです。
受信サーバーとの違い
メールには2種類のサーバーがあります:
受信サーバー(POP/IMAP)
- メールを受け取るためのサーバー
- 郵便ポストのようなもの
送信サーバー(SMTP)
- メールを送るためのサーバー
- 郵便局の窓口のようなもの
それぞれ別々に設定する必要があります。だから、「受信はできるのに送信ができない」という状態が起こるんですね。
なぜ設定が必要?
送信サーバーには、以下の理由で設定が必要です:
- なりすまし防止
- 勝手に他人のメールアドレスで送信されないようにする
- スパム対策
- 大量の迷惑メールを送信されないようにする
- セキュリティ確保
- メールの内容を盗み見されないように暗号化する
送信サーバーの主な設定項目
設定に必要な情報
送信サーバーを設定するには、以下の情報が必要です:
- SMTPサーバー名(ホスト名)
- 例:smtp.gmail.com、smtp.mail.yahoo.co.jp
- プロバイダから提供される情報
- ポート番号
- 一般的な値:465、587、25
- セキュリティ設定によって異なる
- 接続の保護(暗号化方式)
- SSL/TLS、STARTTLS、なし
- セキュリティのため、SSL/TLSが推奨
- 認証方式
- 通常のパスワード認証、OAuth2など
- メールアドレスとパスワードで本人確認
- ユーザー名
- メールアドレス全体(例:example@gmail.com)
- またはメールアドレスの@より前の部分
これらの情報は、プロバイダ(Gmail、Yahoo、契約しているインターネット会社など)から提供されます。
【新規設定】送信サーバーを最初から設定する方法
自動設定を試す(推奨)
Thunderbirdは主要なメールサービスの設定を自動検出できます。
手順:
- Thunderbirdを起動
- 右上の「≡」メニューをクリック
- 「アカウント設定」をクリック
- 「アカウント操作」→「メールアカウントを追加」をクリック
- 以下を入力:
- あなたのお名前(送信先に表示される名前)
- メールアドレス
- パスワード
- 「続ける」をクリック
- Thunderbirdが自動的に設定を検索します
- 設定が見つかったら、内容を確認
- 「完了」をクリック
主要なメールサービス(Gmail、Yahoo、Outlook.comなど)なら、これだけで送信サーバーも自動設定されます。
手動設定が必要な場合
プロバイダのメールアドレスなど、自動検出できない場合は手動設定が必要です。
手順:
- 上記の手順5まで同じように進む
- 「手動設定」をクリック
- 送信サーバーの欄に以下を入力:
- サーバーのホスト名:プロバイダから提供されたSMTPサーバー名
- ポート番号:プロバイダから提供された番号
- SSL:プロバイダの指定(通常はSSL/TLS)
- 認証方式:通常のパスワード認証(またはプロバイダの指定)
- 「完了」または「詳細設定」をクリック
- テストメールを送信して確認
【変更】既存の送信サーバー設定を変更する方法
すでに設定済みの送信サーバー設定を変更する場合の手順です。
ステップ1:アカウント設定を開く
- Thunderbirdを起動
- 右上の「≡」メニューをクリック
- 「アカウント設定」をクリック
ステップ2:SMTPサーバーの編集画面を開く
- 画面を下にスクロール
- 最下部にある「SMTPサーバーを編集」をクリック
ステップ3:送信サーバーを選択
- 「送信(SMTP)サーバー」の一覧が表示されます
- 変更したいサーバーを選択
- 「編集」ボタンをクリック
ステップ4:設定を変更
「送信(SMTP)サーバーの設定」画面が開きます。以下の項目を確認・変更できます:
説明
- このサーバーの名前(自分が分かりやすい名前でOK)
サーバー名
- SMTPサーバーのホスト名
- 例:smtp.gmail.com
ポート番号
- 通常は465または587
- プロバイダの指定に従う
接続の保護
- SSL/TLS:最も推奨(ポート465で使用)
- STARTTLS:セキュア(ポート587で使用)
- なし:非推奨(セキュリティが弱い)
認証方式
- 通常のパスワード認証:一般的
- OAuth2:Gmailなどで使用
- 暗号化されたパスワード認証:一部のサーバーで使用
ユーザー名
- メールアドレス全体を入力することが多い
- 例:example@gmail.com
ステップ5:設定を保存
- 内容を確認
- 「OK」をクリック
- アカウント設定画面も「OK」で閉じる
- テストメールを送信して確認
主要メールサービスの送信サーバー設定

Gmail
SMTPサーバー名: smtp.gmail.com
ポート番号: 465(SSL/TLS)または 587(STARTTLS)
接続の保護: SSL/TLS
認証方式: OAuth2(推奨)または 通常のパスワード認証
ユーザー名: メールアドレス全体(例:example@gmail.com)
重要な注意点:
- 2段階認証を有効にしている場合は、アプリパスワードが必要
- Gmail側で「安全性の低いアプリのアクセス」を許可する必要がある場合あり
- OAuth2を使えば、アプリパスワード不要で安全
Yahoo!メール(@yahoo.co.jp)
SMTPサーバー名: smtp.mail.yahoo.co.jp
ポート番号: 465
接続の保護: SSL/TLS
認証方式: 通常のパスワード認証
ユーザー名: メールアドレス全体(例:example@yahoo.co.jp)
重要な注意点:
- Yahoo側で「IMAP/POP/SMTPアクセス」を有効にする必要あり
- 2021年以降、SSL必須(暗号化なしは使用不可)
Outlook.com / Hotmail
SMTPサーバー名: smtp-mail.outlook.com または smtp.office365.com
ポート番号: 587
接続の保護: STARTTLS
認証方式: 通常のパスワード認証 または OAuth2
ユーザー名: メールアドレス全体(例:example@outlook.com)
重要な注意点:
- 2段階認証を有効にしている場合は、アプリパスワードが必要
iCloud Mail
SMTPサーバー名: smtp.mail.me.com
ポート番号: 587
接続の保護: STARTTLS
認証方式: 通常のパスワード認証
ユーザー名: メールアドレス全体(例:example@icloud.com)
重要な注意点:
- Apple IDで2ファクタ認証を有効にしている場合は、App用パスワードが必要
プロバイダのメール
プロバイダ(OCN、ぷらら、eo光など)のメールは、それぞれ設定が異なります。
契約書類やプロバイダの公式サイトで、以下の情報を確認してください:
- SMTPサーバー名
- ポート番号
- SSL/TLSの使用有無
- 認証方式
よくあるエラーと解決方法
エラー1:「SMTPサーバーに接続できませんでした」
原因:
- サーバー名が間違っている
- ポート番号が間違っている
- インターネット接続に問題がある
解決方法:
- サーバー名とポート番号を再確認
- インターネット接続を確認
- ファイアウォールがブロックしていないか確認
エラー2:「認証に失敗しました」
原因:
- パスワードが間違っている
- ユーザー名が間違っている(@以降が抜けているなど)
- 2段階認証でアプリパスワードが必要なのに通常パスワードを使用
解決方法:
- パスワードを正しく入力し直す
- ユーザー名がメールアドレス全体になっているか確認
- 2段階認証の場合は、アプリパスワードを生成して使用
エラー3:「タイムアウトしました」
原因:
- ネットワークが不安定
- ファイアウォールやセキュリティソフトがブロック
- サーバーが混雑している
解決方法:
- しばらく時間をおいて再試行
- ファイアウォール設定を確認
- セキュリティソフトでThunderbirdを許可リストに追加
エラー4:「SSL接続に失敗しました」
原因:
- SSL/TLS設定が間違っている
- ポート番号とSSL設定が合っていない
- サーバーがSSLに対応していない
解決方法:
- ポート465の場合:SSL/TLSを選択
- ポート587の場合:STARTTLSを選択
- 古いサーバーの場合:接続の保護を「なし」に変更(非推奨)
ポート番号の選び方
主要なポート番号
ポート465(SSL/TLS)
- 最初から暗号化された接続
- 最も安全
- 推奨される設定
ポート587(STARTTLS)
- 最初は平文で接続し、その後暗号化
- 安全で広く使われている
- Gmailなどで使用
ポート25
- 古い方式
- プロバイダによっては使用不可(OP25B規制)
- セキュリティが弱いため非推奨
どれを選べばいい?
- プロバイダの指定に従うのが最優先
- 指定がない場合:
- まずポート465(SSL/TLS)を試す
- ダメならポート587(STARTTLS)を試す
セキュリティ設定の重要性

なぜSSL/TLSが必要?
SSL/TLS(暗号化)を使わないと:
- メールの内容が盗み見される可能性
- パスワードが盗まれる可能性
- なりすましメールを送られる可能性
特に、公衆Wi-Fiを使う場合は、SSL/TLS必須です。
「接続の保護:なし」は使わない
一部の古いプロバイダでは「接続の保護:なし」を指定されることがありますが、これはセキュリティ上非常に危険です。
可能な限りSSL/TLS対応のメールサービスに移行することをおすすめします。
SMTP認証とは?
SMTP認証とは、メール送信時にユーザー名とパスワードで本人確認する仕組みです。
なぜ必要?
SMTP認証がないと、誰でも勝手にメールを送信できてしまいます。
現在はほとんどのプロバイダでSMTP認証が必須になっています。
設定方法
Thunderbirdでは、認証方式を以下から選択します:
- 通常のパスワード認証:最も一般的
- OAuth2:Gmailなどで使用(パスワード不要で安全)
- 暗号化されたパスワード認証:一部のサーバーで使用
よくある質問(Q&A)
Q1:送信サーバーと受信サーバーは同じですか?
A:いいえ、通常は異なります。
例:
- 受信サーバー:imap.gmail.com
- 送信サーバー:smtp.gmail.com
両方とも正しく設定する必要があります。
Q2:複数のメールアカウントで送信サーバーを共有できますか?
A:はい、できます。
ただし、送信サーバーのユーザー名とパスワードは、送信に使うメールアドレスのものを使用する必要があります。
Q3:プロバイダを変更したら設定も変える必要がありますか?
A:メールサービスを変更しない限り、変更不要です。
例:
- インターネット接続をA社からB社に変更
- メールはGmailのまま
→ Thunderbirdの設定変更は不要
Q4:「OP25B」って何ですか?
A:Outbound Port 25 Blockingの略で、スパムメール対策のために、プロバイダがポート25をブロックする仕組みです。
このため、多くのプロバイダでポート25が使えなくなっています。ポート465または587を使いましょう。
Q5:会社のメールはどう設定すればいいですか?
A:会社のIT部門に以下の情報を確認してください:
- SMTPサーバー名
- ポート番号
- SSL/TLS設定
- 認証方式
- ユーザー名の形式
まとめ
Thunderbirdの送信サーバー(SMTP)設定について、重要なポイントをまとめます:
送信サーバーとは:
- メールを送信するための専用サーバー
- 受信サーバーとは別に設定が必要
- SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)という仕組みを使用
必要な設定項目:
- SMTPサーバー名(ホスト名)
- ポート番号(465または587が一般的)
- 接続の保護(SSL/TLSが推奨)
- 認証方式(通常のパスワード認証またはOAuth2)
- ユーザー名(メールアドレス全体が一般的)
主要サービスの設定:
- Gmail:smtp.gmail.com、ポート465、SSL/TLS
- Yahoo:smtp.mail.yahoo.co.jp、ポート465、SSL/TLS
- Outlook:smtp-mail.outlook.com、ポート587、STARTTLS
よくあるエラー:
- 接続できない → サーバー名・ポート番号を確認
- 認証失敗 → パスワード・ユーザー名を確認
- SSL失敗 → ポート番号とSSL設定の組み合わせを確認
セキュリティのポイント:
- 必ずSSL/TLSを使用する
- 「接続の保護:なし」は避ける
- 2段階認証を使っている場合は、アプリパスワードが必要
送信サーバーの設定は、メールを使う上で欠かせない重要な設定です。この記事の手順に従って、正しく設定すれば、安全にメールを送信できるようになります。
困ったときは、プロバイダの公式サポートページや契約書類を確認しましょう。必要な情報は必ず記載されているはずです!


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