Thunderbirdを起動したら、突然「セキュリティ例外の追加」というポップアップが表示されて、「本物の銀行、通信販売、その他の公開サイトがこの操作を求めることはありません」という不安なメッセージが…。
何か危険なことが起きているのか、ウイルスに感染したのか、と心配になりますよね。でも安心してください。ほとんどの場合、これはSSL証明書の設定に関する問題で、適切に対処すれば安全にメールを使い続けることができます。
この記事では、「セキュリティ例外の追加」エラーが出る原因と、その正しい解決方法を初心者の方にも分かりやすく解説します。
「セキュリティ例外の追加」エラーとは?

このエラーは、Thunderbirdがメールサーバーと暗号化通信(SSL/TLS)を行おうとした際に、サーバーのSSL証明書に問題があると判断したときに表示されます。
エラーメッセージの内容
よく表示されるメッセージ:
セキュリティ例外の追加
Thunderbirdが例外的に信頼する証明書として
このサイトの証明書を登録しようとしています。
本物の銀行、通信販売、その他の公開サイトが
この操作を求めることはありません。
このサイトでは不正な証明書が使用されており、
サイトの識別情報を確認できません。
こう書かれると怖いですが…
実は、メールサーバーの場合、このメッセージが出ても必ずしも危険とは限りません。サーバーの設定やThunderbirdの設定に問題があるだけのケースが多いです。
SSL証明書とは?
SSL証明書は、インターネット上での通信を暗号化し、なりすましを防ぐための電子証明書です。
分かりやすく例えると、パスポートのようなものです。「このサーバーは本物ですよ」という証明をしてくれます。
Thunderbirdが証明書を疑う理由:
- 証明書に記載されたサーバー名と、実際に接続しているサーバー名が違う
- 証明書の有効期限が切れている
- 証明書を発行した機関(認証局)を信頼できない
- 自己署名証明書(プライベート証明書)を使っている
原因1:サーバー名の設定ミス(最も多い原因)
これが最も多い原因です。 サーバー設定でIPアドレスや間違ったドメイン名を使っていると、SSL証明書とサーバー名が一致せず、エラーが出ます。
なぜ問題が起きるのか
SSL証明書には「このサーバーの正式な名前」が記載されています。例えば証明書に「mail.example.com」と書かれているのに、Thunderbirdの設定で「123.456.789.0」というIPアドレスを使っていると、「名前が合わない!」とエラーになります。
間違った設定例:
- サーバー名:123.456.789.0(IPアドレス)
- サーバー名:mail.mydomain.com(自動設定で間違ったもの)
正しい設定例:
- サーバー名:sv12345678.example.jp(実際のサーバー名)
- サーバー名:正式なメールサーバーのFQDN(完全修飾ドメイン名)
解決方法:正しいサーバー名に変更する
ステップ1:プロバイダーの正式なサーバー名を確認
まず、ご利用のメールサービスの公式サイトやマニュアルで、正式なサーバー名を確認します。
さくらインターネットの例:
- 誤:192.168.1.1(IPアドレス)
- 正:○○○○○○.sakura.ne.jp
OCN Bizメールの例:
- 誤:211.178.222.333(IPアドレス)
- 正:ユーザーID.bizmw.com
💡 ポイント
プロバイダーから最初に案内されたIPアドレスを使い続けている方は、最新のマニュアルで正式なドメイン名を確認してください。
ステップ2:受信サーバーの設定を変更
- Thunderbirdを起動
- メールアカウントを右クリック→「設定」を選択
- 左側メニューの「サーバー設定」をクリック
- 「サーバー名」を正しいドメイン名に変更
- 「接続の保護」が「SSL/TLS」になっているか確認
- OKをクリック
ステップ3:送信サーバーの設定を変更
- アカウント設定画面の左側メニューで「送信(SMTP)サーバー」をクリック
- 使用しているサーバーを選択して「編集」をクリック
- 「サーバー名」を受信サーバーと同じく正しいドメイン名に変更
- 「接続の保護」が「STARTTLS」または「SSL/TLS」になっているか確認
- OKをクリック
ステップ4:パスワードを再入力
サーバー名を変更すると、パスワードの再入力を求められることがあります。メールアドレスのパスワードを入力してください。
ステップ5:Thunderbirdを再起動
設定変更後、Thunderbirdを一度終了して再起動します。
これでエラーが出なくなるはずです。
原因2:セキュリティソフトのSSLスキャン機能
ウイルス対策ソフト(Avast、ESET、G DATA等)が、暗号化されたメール通信をスキャンするために、独自の証明書を挿入することがあります。
Thunderbirdから見ると「知らない証明書が使われている!」と判断され、エラーが表示されます。
対象となるセキュリティソフト
- Avast / AVG
- ESET Internet Security
- G DATA
- カスペルスキー
- その他、メールスキャン機能があるソフト
解決方法1:SSLスキャンを無効化する
Avastの場合:
- Avastのユーザーインターフェースを開く
- メニュー→「設定」→「コンポーネント」
- 「メールシールド」の「カスタマイズ」を選択
- 「SSL接続をスキャン」のチェックを外す
- OKをクリック
ESETの場合:
- ESETの設定を開く
- 「詳細設定」→「Webとメール」
- 「メールクライアント保護」
- 「SSL/TLSプロトコルを有効にする」のチェックを外す
G DATAの場合:
- G DATAの設定を開く
- アンチウイルス→メールスキャン
- 「SSL接続をチェック」のチェックを外す
💡 注意点
SSLスキャンを無効にすると、メール経由のウイルスチェックが弱くなる可能性があります。不安な場合は、次の「証明書をインポートする方法」を試してください。
解決方法2:セキュリティソフトの証明書をインポートする
SSLスキャン機能を維持したまま使いたい場合は、セキュリティソフトが発行する証明書をThunderbirdに登録します。
ステップ1:証明書をエクスポート
セキュリティソフトの設定画面から、ルート証明書をエクスポートします。
- Avast:「証明書のエクスポート」ボタン
- G DATA:GDataRootCertificate.crtが作成される
ステップ2:Thunderbirdに証明書をインポート
- Thunderbirdのメニュー→「設定」
- 「プライバシーとセキュリティ」を選択
- 下にスクロールして「証明書を管理」をクリック
- 「認証局証明書」タブを選択
- 「インポート」ボタンをクリック
- エクスポートした証明書ファイルを選択
- 以下の3つすべてにチェックを入れる
- この認証局によるWebサイトの識別を信頼する
- この認証局によるメールユーザの識別を信頼する
- この認証局によるソフトウェア製作者の識別を信頼する
- OKをクリック
これでセキュリティソフトの証明書が信頼され、エラーが出なくなります。
原因3:証明書の更新・変更(サーバー側の問題)

メールサーバー側でSSL証明書を更新したり、Let’s Encryptなどの証明書に切り替えたりすると、Thunderbird側で一時的にエラーが表示されることがあります。
よくあるケース
2025年5月のさくらインターネット問題
2025年5月12日、さくらインターネットがSSL証明書の仕様を変更しました。この影響で、独自ドメインやIPアドレスをサーバー名に設定していたユーザーにエラーが多発しました。
対処方法:
前述の「サーバー名の設定ミス」の解決方法と同じです。正式なサーバー名(○○○○○○.sakura.ne.jp)に変更してください。
解決方法:セキュリティ例外を承認する
サーバー側で証明書が正しく更新されているなら、Thunderbird側で例外を承認すれば問題ありません。
手順:
- 「セキュリティ例外の追加」ダイアログが表示されたら
- 「次回以降にもこの例外を有効にする」にチェックを入れる
- 「セキュリティ例外を承認」ボタンをクリック
これで、次回から同じエラーは表示されなくなります。
⚠️ 注意点
このボタンを押すのは、信頼できるメールサービス(自分の会社のメール、プロバイダーのメールなど)の場合だけにしてください。
原因4:自己署名証明書(プライベートCA)
会社の内部サーバーや自宅サーバーで、Let’s Encryptなどの公的な認証局ではなく、自己署名証明書(プライベートCA)を使っている場合、Thunderbirdはその証明書を信頼しません。
解決方法:プライベートCA証明書をインポートする
ステップ1:CA証明書ファイルを用意
サーバー管理者から、以下のいずれかの形式でCA証明書を入手してください。
- .cer
- .cert
- .crt
- .der
- .p7b
- .pem
ステップ2:証明書をインポート
- Thunderbirdのメニュー→「設定」
- 「プライバシーとセキュリティ」を選択
- 「証明書を管理」をクリック
- 「認証局証明書」タブを選択
- 「インポート」ボタンをクリック
- CA証明書ファイルを選択
- 「この認証局によるWebサイトの識別を信頼する」にチェック
- OKをクリック
💡 ポイント
中間CA証明書もある場合は、同じ手順で繰り返しインポートしてください。
手動でセキュリティ例外を追加する方法
「セキュリティ例外を承認」ボタンが表示されない、または誤ってキャンセルしてしまった場合は、手動で例外を追加できます。
手順
ステップ1:証明書マネージャーを開く
- Thunderbirdのメニュー→「設定」
- 「プライバシーとセキュリティ」を選択
- 下にスクロールして「証明書を管理」をクリック
ステップ2:サーバー証明書タブを開く
- 「サーバー証明書」タブをクリック
- 「例外を追加」ボタンをクリック
ステップ3:サーバー情報を入力
「例外を追加」ダイアログが表示されます。
受信サーバー(IMAP/POP)の場合:
例:mail.example.com:993
- サーバー名:ポート番号 の形式で入力
- IMAPの場合:ポート993
- POP3の場合:ポート995
送信サーバー(SMTP)の場合:
例:smtp.example.com:587
- サーバー名:ポート番号 の形式で入力
- ポート587または465
ステップ4:証明書を取得して承認
- 「証明書を取得」ボタンをクリック
- 証明書情報が表示される
- 「セキュリティ例外を承認」をクリック
これで手動で例外が追加されます。
SSL/TLS設定を正しく確認する
そもそもSSL/TLS接続を正しく設定していない場合にも、エラーが出ることがあります。
正しいSSL/TLS設定
受信サーバー(IMAP/POP):
- 接続の保護:SSL/TLS
- ポート番号:
- IMAP:993
- POP3:995
- 認証方式:通常のパスワード認証 または 暗号化されたパスワード認証
送信サーバー(SMTP):
- 接続の保護:STARTTLS または SSL/TLS
- ポート番号:
- STARTTLS:587
- SSL/TLS:465
- 認証方式:通常のパスワード認証 または 暗号化されたパスワード認証
設定確認手順
受信サーバーの確認:
- アカウント設定→「サーバー設定」
- セキュリティ設定の「接続の保護」を確認
- ポート番号を確認
送信サーバーの確認:
- アカウント設定→「送信(SMTP)サーバー」
- 使用しているサーバーを選択して「編集」
- 接続の保護とポート番号を確認
どうしても解決しない場合

上記すべての方法を試してもエラーが消えない場合は、以下を検討してください。
1. Thunderbirdのバージョンを確認
古いバージョンを使っている場合は、最新版にアップデートしてください。
確認方法:
- メニュー→「ヘルプ」→「Mozilla Thunderbirdについて」
- バージョン番号を確認
- 最新版でない場合は自動更新される
2. プロファイルをリセット
Thunderbirdのプロファイル(設定データ)が破損している可能性があります。
手順:
- Thunderbirdを完全に終了
- Windowsキー + Rを押す
- 「thunderbird.exe -ProfileManager」と入力してEnter
- 新しいプロファイルを作成
- メールアカウントを再設定
⚠️ 注意: 新しいプロファイルを作成する前に、現在のプロファイルフォルダをバックアップしてください。
3. 「接続の保護」を一時的に「なし」にする
これは最終手段です。 セキュリティが低下するため、本当に最後の手段としてのみ使ってください。
- アカウント設定→「サーバー設定」
- 接続の保護を「なし」に変更
- ポート番号を変更(IMAPなら143、POP3なら110)
この方法で送受信できる場合は、証明書に問題があることが確定します。プロバイダーに問い合わせてください。
4. プロバイダーに問い合わせ
ご利用のメールサービスのサポートセンターに連絡してください。
問い合わせ時に伝える情報:
- ご利用のメールアドレス
- Thunderbirdのバージョン
- エラーメッセージの正確な内容
- いつからエラーが出始めたか
- 試した解決方法
よくある質問(FAQ)
Q1:「セキュリティ例外を承認」を押しても大丈夫?
A: 信頼できるメールサービス(自分の会社、プロバイダー、Gmail等)の場合は問題ありません。ただし、怪しいサイトや知らないサーバーの場合は押さないでください。
Q2:毎回エラーが出るのはなぜ?
A: 「次回以降にもこの例外を有効にする」にチェックを入れずに承認している可能性があります。次回エラーが出たら、必ずチェックを入れてから承認してください。
Q3:複数のアカウントで同じエラーが出る
A: セキュリティソフトのSSLスキャン機能が原因の可能性が高いです。前述の「セキュリティソフトのSSLスキャン」の項目を参照してください。
Q4:サーバー名を変更したらパスワードエラーが出る
A: サーバー名を変更すると、保存されていたパスワードが無効になることがあります。新しいパスワードを入力し直してください。
Q5:Let’s Encryptの証明書でエラーが出る
A: Let’s Encryptのルート証明書が古い可能性があります。Thunderbirdを最新版にアップデートするか、最新のISRG Root X1証明書をインポートしてください。
まとめ:セキュリティ例外エラーは正しく対処すれば安全
Thunderbirdで「セキュリティ例外の追加」エラーが出る原因は、ほとんどの場合、以下のいずれかです。
主な原因と解決方法:
- サーバー名の設定ミス(最多)
- IPアドレスではなく正式なドメイン名に変更
- プロバイダーの最新マニュアルで確認
- セキュリティソフトのSSLスキャン
- SSLスキャンを無効化
- または証明書をインポート
- 証明書の更新
- 「次回以降も有効」にチェックして承認
- 自己署名証明書
- プライベートCA証明書をインポート
- SSL/TLS設定の誤り
- 接続の保護をSSL/TLSに設定
- 正しいポート番号を使用
安全に使うためのチェックポイント:
- ✅ 信頼できるメールサービスかどうか確認
- ✅ サーバー名がIPアドレスでなくドメイン名か確認
- ✅ SSL/TLS設定が正しいか確認
- ✅ セキュリティソフトの影響を確認
このエラーが出ても、適切に対処すれば安全にメールを使い続けることができます。焦らず、順番に確認していけば必ず解決できますよ。
どうしても解決しない場合は、プロバイダーのサポートに相談することをおすすめします。

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