パソコンを使っていると、「Cドライブ」「Dドライブ」という言葉を聞きますよね。
実は、1台のハードディスクやSSDを、複数のドライブに分けて使うことができるんです。これが「パーティション分割」という技術。
「難しそう…」と思うかもしれませんが、基本を理解すれば意外とシンプル。
この記事では、パーティションの基礎から実践的な分割方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
データの整理や、システムの安定性向上に役立つ知識ですよ。
パーティションとは
基本的な概念
パーティション(Partition)とは、1つの物理的なストレージを、複数の論理的な領域に分割することです。
例えるなら
1つの大きな土地を、フェンスで区切って複数の区画に分けるイメージ。物理的には1つの土地ですが、それぞれ独立した区画として使えます。
実際のパソコンでは
- 物理的には1台のSSD(500GB)
- 論理的にはCドライブ(250GB)とDドライブ(250GB)
このように見えるわけです。
なぜパーティションを分けるの?
主なメリット
データの整理がしやすい
- Cドライブ:Windowsとアプリケーション
- Dドライブ:写真や文書などのデータ
分けておけば、どこに何があるか分かりやすくなります。
Windowsの再インストールが楽
Cドライブだけフォーマットして、Dドライブのデータは残せます。
複数のOSを入れられる
- パーティション1:Windows
- パーティション2:Linux
デュアルブート環境が作れます。
バックアップが効率的
システムとデータを別々にバックアップできます。
デメリットも知っておこう
容量の調整が面倒
Cドライブが満杯なのに、Dドライブは空きだらけ。でも、後から調整するのは手間がかかります。
複雑になる
パーティションが増えすぎると、管理が大変になります。
SSDでは効果が薄い
高速なSSDなら、パーティション分割のメリットが少ないこともあります。
パーティションの種類
プライマリパーティション
最も基本的なパーティションです。
特徴
- OSをインストールできる
- 起動可能なパーティション
- MBR形式では最大4つまで作成可能
Windowsをインストールする場合、必ずプライマリパーティションが必要です。
拡張パーティション
4つ以上のパーティションを作りたいときに使います。
特徴
- プライマリパーティションの1つを拡張パーティションに変換
- その中に論理ドライブを複数作成できる
- MBR形式でのみ使用
拡張パーティション自体は直接使わず、その中に論理ドライブを作ります。
論理ドライブ
拡張パーティションの中に作る、実際に使える領域です。
特徴
- 拡張パーティション内にいくつでも作成可能
- 通常のドライブとして使える
- OSの起動には使えない
データ保存用のDドライブ、Eドライブなどに使われます。
システムパーティションとブートパーティション
システムパーティション
起動に必要なファイル(ブートローダー)が入っている領域。通常100〜500MB程度の小さな隠しパーティション。
ブートパーティション
Windowsの本体が入っている、メインのCドライブ。
この2つは別物ですが、初心者は特に意識する必要はありません。
MBRとGPTの違い
MBR(Master Boot Record)
古い方式のパーティションテーブルです。
特徴
- 最大4つのプライマリパーティション
- 最大容量:2TB
- 古いBIOSに対応
- Windows XP以前の標準
制限
2TB以上のディスクでは、2TBまでしか使えません。
GPT(GUID Partition Table)
新しい方式のパーティションテーブルです。
特徴
- 最大128個のパーティション
- 最大容量:9.4ZB(実質無制限)
- UEFI対応
- Windows Vista以降で標準
メリット
- 大容量ディスクに対応
- パーティション情報のバックアップ機能
- より堅牢なデータ保護
現在の推奨
新しくパーティションを作る場合は、GPT形式を選びましょう。
確認方法(Windows)
自分のディスクがどちらか確認できます。
手順
- Windowsキー + X を押す
- 「ディスクの管理」を選択
- ディスクを右クリック
- 「プロパティ」を選択
- 「ボリューム」タブを開く
- 「パーティションのスタイル」を確認
「GUID パーティション テーブル (GPT)」または「マスター ブート レコード (MBR)」と表示されます。
Windowsでのパーティション作成
ディスクの管理ツールを開く
Windows標準のツールで、パーティション操作ができます。
起動方法
- Windowsキー + X を押す
- 「ディスクの管理」を選択
または
- スタートメニューで「ディスクの管理」と検索
- 「ハードディスク パーティションの作成とフォーマット」をクリック
新しいパーティションの作成
既存のパーティションから、空き領域を分割します。
手順
ステップ1:ボリュームの縮小
- パーティション(例:Cドライブ)を右クリック
- 「ボリュームの縮小」を選択
- 縮小する容量を入力(MB単位)
- 例:100GB作りたい → 100,000MBと入力
- 「縮小」ボタンをクリック
ステップ2:新しいボリュームの作成
- 作成された「未割り当て」領域を右クリック
- 「新しいシンプル ボリューム」を選択
- ウィザードが起動
ステップ3:ウィザードの設定
- 「次へ」をクリック
- ボリュームサイズを確認(通常はそのまま)
- 「次へ」をクリック
- ドライブ文字を選択(D、E、Fなど)
- 「次へ」をクリック
- ファイルシステムを選択
- NTFS(推奨):Windowsで使う場合
- exFAT:WindowsとMacで共有する場合
- ボリュームラベル(名前)を入力
- 「次へ」→「完了」
数分でパーティションが作成されます。
パーティションのサイズ変更
作成後も、サイズ調整が可能です。
拡大する場合
- 拡大したいパーティションの右側に未割り当て領域が必要
- パーティションを右クリック
- 「ボリュームの拡張」を選択
- 拡張するサイズを指定
縮小する場合
- パーティションを右クリック
- 「ボリュームの縮小」を選択
- 縮小するサイズを指定
注意点
使用中のデータがある場合、縮小できるサイズに制限があります。
パーティションの削除と結合
パーティションの削除
不要なパーティションは削除できます。
手順
- ディスクの管理を開く
- 削除したいパーティションを右クリック
- 「ボリュームの削除」を選択
- 警告を確認して「はい」
重要な注意
削除すると、そのパーティション内のすべてのデータが失われます。必ず事前にバックアップを取ってください。
パーティションの結合
2つのパーティションを1つにまとめることもできます。
条件
- 結合したいパーティションが隣接している
- 一方を削除して未割り当て領域にする必要がある
手順
- 統合先として残すパーティションを決める
- もう一方のパーティションを削除(未割り当て領域になる)
- 残したパーティションを拡張して、未割り当て領域を取り込む
よくあるパーティション構成
標準的な構成(1台のSSD)
500GB SSDの例
パーティション1:システム予約(500MB)
- Windowsが自動作成
- 起動に必要なファイル
- 通常は触らない
パーティション2:Cドライブ(499.5GB)
- Windows本体とアプリケーション
- ユーザーデータも含む
最もシンプルな構成です。小容量のSSDなら、これで十分。
システムとデータを分ける構成
1TB HDDの例
パーティション1:Cドライブ(200GB)
- Windowsとアプリケーション専用
- システムファイルのみ
パーティション2:Dドライブ(800GB)
- 写真、動画、文書などのデータ保存
- ユーザーフォルダをここに移動
Windowsを再インストールするとき、Dドライブは残せます。
SSD + HDD の構成
SSD 256GB + HDD 2TB
SSD(物理ディスク0)
- Cドライブ(256GB):Windows とアプリケーション
HDD(物理ディスク1)
- Dドライブ(2TB):データ保存
高速なSSDにシステムを、大容量のHDDにデータを。最もバランスの良い構成です。
デュアルブート構成
512GB SSDの例
パーティション1:EFI(100MB)
- ブートローダー
パーティション2:Windows(250GB)
- Windows 11本体
パーティション3:Linux(200GB)
- Ubuntuなど
パーティション4:共有データ(残り)
- WindowsとLinuxの両方からアクセス
複数OSを使いたい上級者向けです。
サードパーティ製ツール
EaseUS Partition Master
使いやすい無料のパーティション管理ソフトです。
できること
- パーティションのサイズ変更(データを保持したまま)
- パーティションの移動
- パーティションの結合
- MBRからGPTへの変換
Windows標準ツールより柔軟な操作が可能です。
MiniTool Partition Wizard
こちらも人気の無料ツールです。
特徴
- 直感的なインターフェース
- プレビュー機能(実行前に確認できる)
- ディスクのコピー機能
初心者でも使いやすい設計です。
GParted(Linux向け)
Linux環境で使える強力なツールです。
特徴
- 完全無料のオープンソース
- 多くのファイルシステムに対応
- LiveUSBから起動可能
Windowsの操作にも使えますが、やや上級者向けです。
トラブルシューティング
縮小できる容量が少ない
「ボリュームの縮小」を実行しても、期待より少ない容量しか縮小できないことがあります。
原因
移動できないファイル(システムファイルやページファイル)が、ディスクの後方にある。
解決方法
方法1:デフラグを実行
- ドライブを右クリック→「プロパティ」
- 「ツール」タブ→「最適化」
- デフラグを実行
方法2:ページファイルを一時的に無効化
- システムのプロパティを開く
- 「詳細設定」→「パフォーマンス」→「設定」
- 「詳細設定」タブ→「仮想メモリ」→「変更」
- 「ページングファイルなし」を選択
- 再起動後、縮小を実行
- 完了したらページファイルを元に戻す
未割り当て領域が結合できない
隣接していない未割り当て領域は、標準ツールでは結合できません。
解決方法
- EaseUS Partition Masterなどのサードパーティツールを使う
- または、間にあるパーティションを一度削除(データは失われる)
パーティション削除ができない
「このボリュームは削除できません」というエラーが出る場合。
原因
- システムパーティション
- 回復パーティション
- OEMパーティション
対処法
これらは削除しないほうが安全です。どうしても削除したい場合は、diskpartコマンドを使う必要があります(上級者向け)。
Windowsが起動しなくなった
パーティション操作中に電源が切れたり、誤って重要なパーティションを削除した場合。
対処法
方法1:スタートアップ修復
- Windowsインストールメディアから起動
- 「コンピューターを修復する」を選択
- 「トラブルシューティング」→「スタートアップ修復」
方法2:ブートセクターの修復
コマンドプロンプトから以下を実行
bootrec /fixmbr
bootrec /fixboot
bootrec /rebuildbcd
パーティション分割のベストプラクティス
適切なサイズ配分
小容量SSD(256GB以下)の場合
パーティション分割は不要。全体を1つのCドライブとして使いましょう。
中容量SSD/HDD(500GB〜1TB)の場合
- システム(C):150〜250GB
- データ(D):残り
大容量HDD(2TB以上)の場合
- システム(C):200〜300GB
- データ(D):1TB程度
- バックアップ(E):残り
用途に応じて調整してください。
ファイルシステムの選択
NTFS(推奨)
- Windowsで使う場合の標準
- 大容量ファイルに対応
- 高度な機能(圧縮、暗号化など)
FAT32
- 古い互換性が必要な場合
- 4GB以上のファイルを扱えない
- 現在はあまり使わない
exFAT
- WindowsとMacで共有する場合
- USBメモリや外付けHDDに適している
定期的な見直し
パーティション構成は、一度決めたら永久ではありません。
見直しのタイミング
- Cドライブの空き容量が20%を切ったとき
- 使い方が変わったとき(例:動画編集を始めた)
- SSDを新しく追加したとき
状況に応じて、柔軟に変更しましょう。
よくある質問
パーティションを分けると速度は落ちる?
HDDの場合
データが分散すると、わずかに遅くなることがあります。ただし、体感できるほどではありません。
SSDの場合
ほぼ影響ありません。SSDは物理的なヘッドの移動がないため、パーティション分割によるパフォーマンス低下はほぼゼロです。
既存のパーティションのサイズ変更は安全?
基本的には安全ですが、リスクはあります。
推奨する予防策
- 重要なデータは事前にバックアップ
- 電源が安定している環境で作業
- ノートPCなら、バッテリーを十分充電しておく
CドライブとDドライブ、どちらが速い?
同じ物理ディスク上なら、速度差はほとんどありません。
HDDの場合、ディスクの外周(通常C)の方が、わずかに速いことがありますが、実用上は無視できるレベルです。
MBRからGPTに変換できる?
可能ですが、データが消える方法と消えない方法があります。
データが消える方法
ディスクを完全に初期化して変換。新規インストール時に使います。
データが残る方法
サードパーティツール(MBR2GPT.exeやEaseUS Partition Master)を使用。ただし、100%安全とは言えないので、バックアップ必須です。
まとめ:パーティションを上手に使おう
ストレージのパーティション分割について、基礎から実践まで解説してきました。
この記事のポイント
- パーティションは1つのディスクを複数の領域に分割する技術
- プライマリ、拡張、論理の3種類がある
- MBRは古い方式、GPTが新しい標準
- Windows標準ツールで基本的な操作が可能
- サードパーティツールでより柔軟な操作
- システムとデータを分けると管理が楽
- 小容量SSDなら分割不要
パーティション分割は、必須ではありません。
でも、上手に使えば、データ管理がしやすくなり、トラブル時の被害も最小限に抑えられます。
初心者へのアドバイス
- まずは2分割(CとD)から始める
- 頻繁に変更するものではない
- 迷ったら分割しなくてもOK
- バックアップは必ず取る
自分の使い方に合った、最適なパーティション構成を見つけてくださいね!
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